• ★「郭文貴ツイッター革命」は、中国の未来の革命の姿を映し出す(1) 2017年9月

    by  • September 20, 2017 • 日文文章 • 0 Comments

     2017年3月、米国を発信地とするツイッター中国語圏で起きた奇怪な「郭氏ツイッター革命」参加者の行動は、毛沢東の文化大革命の際の、「紅衛兵」とそっくりでした。しかし、文革では財産への要求は別にありませんでしたが、この度の、郭文貴ツイッター革命では、文革的要素の他に、「土豪を打倒して、田畑をよこせ」という土地改革運動の要素が一緒になっていましたから、「郭氏ツイッター革命」と呼ぶのがふさわしいでしょう。参加者は、言い出し兵衛の郭文貴を、曲解したふりを装い、どんどん要求を積み重ねて行ったのですが、それは、未来の中国革命もかくや、と思わせるナマナマしいものがありました。私は★「郭文貴のツイッター革命」の意味を考える★ 2017年6月4日でも書きましたが、これは、中国の未来の底辺層による革命の予行演習です。

     事態の経過を簡単に言うとこうでした。

     中共第18回全国代表大会時のトップレベルでの後継者問題争いの権力闘争を巡って、薄熙来や周永康などが敗れ、2015年1月には、中国国家安全部常務副部長の馬建が入獄し、彼のお気に入りの実業家(つまり国安部に仕えた)郭文貴は、関わり合いを恐れて海外に逃亡しました。馬建が調べられた事件と、財新の「権力のハンター・郭文貴」という暴露記事が、郭文貴の海外での”爆弾”の導火線になりました。2017年になって間もなく、郭文貴は、明鏡ネットとボイス・オブ・アメリカ(VOA)から、連続取材を受け、4月からYoutubeで自分の直接放送を始めました。そのTwitterアカウントのフォロワーは、毎日1万人という勢いで増え、あっというまに30万人にふくれあがりました。(ツイッター上では、お金で買った偽フォロワーが居る、とも言われています)。

    郭の「暴露爆弾」の中身の多くは、中国の官僚たちに関わる話で、その主要なターゲットは、現任の中共中央政治局常務委員で、中央紀律検査委員会書記の王岐山とその家族と実業家の「国家に対する盗賊行為」、腐敗、インサイダー取り引きでした。郭は、王岐山夫人の姚明珊とその親族の米国での地位や、十数軒の家を持っていることなどの情報を提供し、こうした情報は、全て米国での公開情報ネットで調べられたのだと主張しました。しかし、米国の中国語ネットのアポロネットの調査では、不動産のデータの登記人は、全部、王岐山夫人の姚明珊とその親族とは無関係だと分かりました。

    8月になると“福瑞德牧‏ @furuidemu101”の耿绍宽という人物が登場して、王岐山と”私生児”の貫軍と劉呈傑の関係はどうやってでっち上げたかとか、不動産の話はどうやって作ったかとか等々、郭文貴がガセネタを作る手伝いをした全過程を自分がやったと言い出しました。これ以前にも、似たような「真相披露」がありました。

     しかし、不思議なことには、真相は、郭文貴の鉄板のファンたちの姿勢には影響しなかったのです。真相が浮かび上がる過程で、郭文貴が悪いとする人たちはほとんどおらず、多くは沈黙を守ったのですが、更に少なからぬ郭文貴ファンは、しっかと郭を信じ続けたのです。たとえ信じていなくても、それでも、郭がでっち上げたデマを支持し続けたというのは、中共にとっては大きな打撃でした。ツイッターで私は「郭ファンにとっては、郭に対する態度は事実とは無関係で、一種の”信仰”になった」と書きました。

     とりわけ興味深かったのは、国内の反体制知識人や海外の民権運動に関わる人々が、郭文貴を強く支持したことです。中国国内では、沈良慶、章立凡、海外では李偉東、私、何清漣が強く反対しましたが、胡平ら少数の人々が支持を表明しなかった他は、大多数の人々が支持しました。民権運動のベテランたる楊建利らが、郭文貴が自らの暴露資料は「以黑反腐」(ブラックな材料で反腐敗キャンペーンと戦う)、「何百万人の汚職官僚の敵を討つ」と表明しているのも無視して、郭文貴の暴露ネタ活動は、中共を打倒し、中国を民主憲政の方向に向けるチャンスだとして、支持する態度を公表したのでした。

     徳望ある元趙紫陽の秘書だった鲍彤氏はさらに、郭文貴を「先生」と呼び、郭文貴の”保証人”になりました。郭文貴支持者たちはこのように郭への信仰が厚く、郭文貴自身がそのyoutubeのビデオで、彼らに対して、いささかの容赦もなく何度もバカにしていることも、完全に無視していました。例えば、郭文貴は6月7日のビデオで、「いま騒いでいるあれやこれやの連中ときたら、ちょっとなんか言えば、全中国を変えるとか、ちょっと口を開くと、全人類を変えるとか、ちょっと何かほざけば共産党をひっくり返せるとか、お前ら何ができるのよ? 飯だって満足に食えてないくせに。お前らときたら、毎日、毎日、何十年も1日のごとく、このニューヨークのチャイナタウンの隅っこにいるくせに。お前ら、若い子たちをたぶらかして、自分らに付いてきて革命やれとかいうておってや、どこが正しいちゅうんや?」と言っています。

     李方という人が、見ておられず、「民主運動人士のみなさん、郭文貴を持ち上げるのは、もうやめたらどうですか」《民运人,围猎郭文贵该歇歇了》という文章を書いて、郭文貴への幻想を放棄させようとしました。しかし、郭を支持する民主運動人士は、後からあとから湧いてくるように支持者の行列に並びました。米国各地に居住する人々、欧州、カナダ、オーストラリアの民衆運動家たちも続々と、支持者の行列に加わったのです。その一部は、確かにお金が理由だったのかもしれませんが、私は、更に多くの支持者たちは、郭の暴露によって、権力への幻想をいっぱい抱くようになったからだと思います。

     社会心理学者の角度から見ると、郭文貴の暴露事件が熟成していく経過は、まるで清王朝中期の乾隆帝時期(1768年)に江南地区でおきた「叫魂事件」(訳注 : 乾隆帝の盛世1768年浙江地方で起きた大衆ヒステリー騒乱)を彷彿とさせ、研究に値します。この事件からは、中国の「集団発狂的行動を促進する三つの要素の結合」 — エセ信仰、恐怖と暴戻の社会心理、超法治的非常時政治体制 — が見られます。こうした要素は、ずっと歴史の暗い伏流水となって流れており、今でも消えていません。一旦、それが特定のチャンスに合流すると、大規模なヒステリーが様々な形をとって新たに演じられるのです。

     郭文貴の例には、多くの独特の要素があります。出身社会層、権力者へのへつらい、金銭と権勢への底なしの媚び、中国の権力の中でも最も暗黒の国家安全部勢力の横行する実業界、常に録音・録画される資料、ゆすり恐喝等々です。研究者的に見れば、このうちの幾つかの要素は、中国人なら皆持っています。しかし、国家安全部との接点というのは真似できませんし、社会学的な意味では研究価値はありません。しかし、全過程を見れば、郭氏ツイッター革命は、巨大なミキサーのようなもので、中国という泥沼の中から、長年にわたって積もった汚泥を一気にかき混ぜて、水面に浮かび上がらせ、そこに中国の未来の革命に関する様々なファクターがうかがえて、極めて研究に値するものです。
    (続く)

    「郭文貴ツイッター革命」は、中国の未来の革命の姿を映し出す(1) 2017年9月

     訳者注;これは、近く出版される「中国——とっくにクライシス、なのに崩壊しない“紅い帝国”のカラクリ -(ワニブックスPLUS新書) の中国語版「中国;潰而不崩的紅色帝国」のあとがきに、中国語で掲載される予定です。
    中国——とっくにクライシス、なのに崩壊しない“紅い帝国

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