• ★理論機関誌に「私有制消滅」だって!?…心配ご無用 ★2018年1月27日

    by  • January 29, 2018 • 日文文章 • 0 Comments

     最近、中国国外の中国語ネット界で、「私有制消滅」が話題となりました。「小さな浮草の揺らぎが大事に発展」するのでは? と騒がれたのです。「浮草の揺らぎ」とは、中共中央の党政治理論誌の「求是」に掲載された「共産党人は、自らの理論を『私有制消滅』の一言で言い表せる」なる一文のせいでした。筆者は中国人民大学マルクス主義学院の博士課程教授の周新城です。党政治理論誌という性格上、この署名記事はどう解読すべきかという話になったのです。一部のおふざけ的なものを除いて、底辺層青年を中心とする、今の政治に反対する少なからぬ人々からは、習近平の大方針に対する批判だとか、更には、「中国農民のスズメの涙のような財産まで奪い取るものだ」という説さえ登場し、なんとも苦笑いさせられました。

     

    ★貧乏人の財産を奪い取る話ではない

     私は15年前に「中国の改革の得失」で、「毛沢東は暴力的な方法で『化私為公』(=私企業を国に接収)し、全国の私有財産を略奪し、中共を中国唯一の大地主兼資本家にした。江沢民・胡錦濤時代を含めた鄧小平時代には、紅色貴族や役人をやりたい放題にさせて、『化私為公』の名の下に、中国の暴富階級を生み出した」と書きました。

     去年書いた「中国:溃而不崩」(邦訳「中国 — 膿んで潰れず」)の主要な分析は、「中共は経済改革を通じて、中共と資本主義という本来なら水と油の存在を結び付けて、資本主義(*私有制)を使って中共を救おうという、専制独裁と市場経済を結合させた中国モデルを作り出した」と指摘しました。ですから、もし私有制を消滅させようとするなら、まさに自殺行為で、中共自救の道はありません。

     農民のスズメの涙ほどの私有財産を奪い取るのは不可能だ、とまず言っておきます。中国の富のほとんどは、極めて少数の手中にあるのです。北京大学中国社会調査センター(Institute of Social Science Survey, iSSS)の「中国民生発展報告2015」によると、中国では1%の家庭が、全国の3分の1以上の財産を占有しており、底辺層の25%の財産の総計は1%前後です。いかなる政治行動も、コストがかかりますし、生活保護の対象者は、全てこの25%に含まれています。4億人前後の人々を裸にして、居場所をなくしたところで、ますます生活保護の対象者が増えて、政府に手に入るものといえば、あばら家ぐらいで、何の役にもたちません。他の階層や政府からみても何の価値もない資産しかないのです。

     共産主義が、プロレタリアートによる有産者からの搾取だということ、中共が最初「土豪をやっつけて、田畑を分配する」から出発したことを考えてみれば、そんな何も得るところのないところへ、わざわざ強奪に行くはずもありません。ましてや、農民たちの土地といっても、元々使用権に過ぎず、所有権は集団所有で国有ですから、地方政府はいつでも取り上げることが出来るのです。

     中国の中産階級は、人口の19%ちょっとで、その4%は底辺層に近いのです。彼らの家庭の財産の8割前後は不動産です。政府は、こうした人々に仕事をしてもらい、税金を納めてもらわなければなりません。ですから、彼らから何かを奪えば、「鶏を殺して卵をとる」愚行になります。

      

    ★私有制消滅は共産党資本主義の命脈を断つ

     1%の富める家庭が社会の富の3分の1を所有するのですから、こちらの方こそ、奪い取るべきものを持っています。しかし、中共は彼らから奪ったりしません。というのも、中国の富豪の主体のうち、紅色家族、新旧中共中央常務委員たちが占める割合が大変大きいからです。「中国オフショア金融の秘密」と「パナマ文書」のリストがこれを証明しています。
     
     習近平皇帝が2013年に反腐敗キャンペーンをスタートさせて、周永康の下にあった政治勢力と軍隊のトラたちをやっつけた(当然、これには直接関係のない官僚たちも巻き添えはくらいましたが)後、「今後の追及の重点対象者は、中国共産党第十八回全国代表大会(2012年)以後になっても、依然としてやめない連中に限る」と表明したのは、つまり、もうこれ以上、紅色家族の面々やその家族には手を出さない、という意味でした。朱鎔基の息子の朱雲来や、温家宝の息子の温雲松らは、その意を察し、ビジネスからさっと手を洗いました。

     習近平だって、中国の私有財産の最大の所持者は紅色貴族と官僚だとは当然知っています。しかし、この両者は中共の本当の意味での社会基盤です。紅色貴族と中共は運命共同体ですし、「反腐敗」の本来の目的は、統治体制を強固にすることですから、これ以上手を触れたら、党を根源から傷つけることになります。また官僚連中を動かす「甘いミルク」も限度があります。2017年の郭文貴の「ツイッター革命」は、習近平に深刻な教訓を与えています(訳注;汚職官僚を無罪にせよ、という郭文貴のネットを通じたアピールが極度の支持を集めたことを指す)。ですから、政治的に必要な「反腐敗」は別にして、役人たちが、企業から各種のルートで獲得した秘密株などを含めた私有財産を没収するのは、習近平にも不可能です。

     以上述べたことをまとめれば、習近平は、鄧小平、江沢民、胡錦濤の3代の指導者が、権力の市場化で育てて来た、いわゆる私有制には、基本的に触れません。中共の利益に合致しませんし、彼の利益にもなりませんから。しかし、彼は、確かにしっかりと、1%の富豪の中の民間資本には狙いを定めています。ただ目標は、彼らを消滅させるのではなくて、彼らを中共のために働かせ、その財産を中共のために使うことにあります。習近平は別に隠そうとはしていません。政府側のメディアもはっきり、中国共産党第十九回全国代表大会(十九大、2017年10月)以後、政治とビジネスの関係の再構築が必要だと明らかにしています。
      

    ★政治とビジネスの関係再構築とは?

     十九大前に、習近平は確かに政治とビジネスの関係の再構築を願っていました。しかしこの再構築は二つの側面に限られた話です。

    ⑴ 国有経済と民営経済の共存 — 主導は国有経済

     2015年9月に出された「国営企業改革方案」(中共中央、国务院关于深化国有企业改革的指导意见)は、はっきりと、「積極的にその他の国有資本、あるいは各種の非国有資本を導入して、株式権利の多元化をすべきだが、国有資本は絶対多数、相対多数を所持し、かつ積極的に全体を上場すべし」と書いています。それでも、まだ説明不足が不安だったのか、第二条の基本原則には特に、「公有制度が主導的地位であり、基本的経済制度であることが強固な発展の重点であり、非公有経済は従属的な地位である」、「基本的経済制度の完全なる姿を堅持することが、国有企業改革が必ず把握しなければならない根本的要求である」と書いています。

     つまり、この方案が大変はっきり言っていることは

     ;いわゆる「混合所有制」とは、つまり国営企業が、経営状態の良い、あるいは市場の前途が明るい民間企業を株主に選べる。民間企業はお金で国営企業の株式を買うことが出来て、株主にもなれるが、比率は国営企業が親分で、私営企業は従属的な立場に過ぎず、政策決定権や発議権は持たない、ということです。前半は、私営企業は国営資本のために働いて金を稼ぎ、後半は私営企業が国営企業のためにお金を出しなさい、ということです。これが、ここ数年来、一部の中国の私営企業が心配してきた「公私合営」です。

     これは、もう去年には現実になっています。2017年8月16日、中国聯合通信有限公司(中国聯通、チャイナ・ユニコム)が発表した780億元規模の「混改」(国有私有共同持ち株の混合所有制)方案で目を剥いたのは、BATJ(バイドゥ、アリババ、テンセント、京東)などのネット巨人私営企業が、それぞれ何十億から百億元の資金を中国聯通に投入して、2015版国営企業改革法案の目標を実現しています。民営資本を吸収して国有企業とし、しかし、民営資本には発言権を与えないのです。

     ⑵ 独占業界に入り込んだ民営資本には、強制的に退出させ、しかし、資本所有権の問題は曖昧にしておく。

     最も典型的な例が呉小暉の安邦集団です。安邦は2004年に寧波で生まれ、当時の資本はたった5億元で、呉小暉は「鄧小平の孫娘の夫」という特権身分をうまく利用して、民営企業のまま金融業界の全ての営業許可を取り付け、保険業、証券業、銀行業に手を広げました。2016年までのわずか12年間に安邦の資産は、9616億元にまで爆発的に増えました。

     しかし、呉小暉は2017年6月に警察に連行され、8カ月留置され、今年の1月に保釈されました。安邦の内部情報では、呉小暉は一定の自由を許されてはいるが、既に安邦集団を指揮しておらず、中国保険監督管理委員会から天下りした人物が、監督に当たっているとのことです。(訳注;同年5月、呉小暉は詐欺、職権乱用で懲役18年の判決を受けた)

    呉小暉の安邦と王健林の万達集団には、民営企業として二つの重要な共通点があります。どちらも背後に強力なバックがついており、呉小暉は鄧小平との縁戚関係、後者は新旧常務委員会の家族でした。2015年、中共が混合所有制の改革を開始すると宣言したとき、二人はともに大量の資産を海外へ移しました。今や、安邦の株主は主を変え、万達は海外移転資産を中国に戻すと約束しています。二人は、バックの威光で、世界の富豪列伝でも前代未聞の急速度で神話となりましたが、しかし、最高権力者が変わったとたんに、「ガラガラと高楼も傾く」(紅楼夢)こととなったのです。

      

    ★習近平は資本主義で中共を救う?

     このような問題は、私は「中国溃而不崩」(邦訳;中国——とっくにクライシス、なのに崩壊しない“紅い帝国”のカラクリ)の第一章の「富と権力の継承」、第二章の「共産党資本主義」で、はっきり分析しております。ですから、ツイッター上で、習近平が農民の私有財産を奪うと心配している方々には、「習近平は、そんな社会底辺層の貧乏人の資産になど興味はなく、彼が国家の経済的地位を強化したいとしているにせよ、そんなものには目もくれない。水滸伝の盗賊たちの知恵は十分持ち合わせているんだから」と安心するように言いました。

     事情は後になってはっきりしました。「求是」の私有制消滅について、官製メディアが「”私有制消滅”の発酵が中国に待望の思想開放をもたらす大討論」と「マルクス主義の教条的認識を甘やかしてはならない」が、周教授の文章が第十九大に混乱を生じさせたと、周教授に対して「求是の編集者ですらこんな論文を通すのか」と、皮肉な批判を加えました。

     習近平皇帝と、元祖皇帝の毛沢東の相違を言えば、毛沢東は、「鶏を殺して、卵を取る」で、私有制という鶏を殺して、全国人民が食うや食わずになったのですが、習近平は、私有制経済の存在を許し、「鶏を養って卵を取る」やり方です。ただ、その「鶏を太らせる」考え方は、以前の中共の考え方のままで、卵を取った後は、鶏を跳ね回らせておく、ぐらいの考えでしょう。というのは、「共産党資本主義」という言葉は良く出来ており、「資本主義は従属的地位で、鄧小平が開いた私営経済の道は、共産党を救うためであって、既に有効性が証明されているから、習近平も当然放棄はしない。しかし、彼は資本家をじゅずつなぎにして、中共のために働かせ、もうけさせたお金は中共と分かち合う」なのです。(終)

     原文は;提出消灭私有制,缘于不了解共产党资本主义

    当Webサイト連載のブログ集改訳;日中両文収録 
    「中国2016 何清漣」Amazon電子ブック発売中。
     何清漣さんの「中国2016」表紙

    Print Friendly, PDF & Email

    Leave a Reply

    Your email address will not be published. Required fields are marked *