• ★習近平はなぜ、温家宝一家の金庫番を狙ったか?★ 2018年02月20日

    by  • February 21, 2018 • 日文文章 • 0 Comments

     2月7日にニューヨーク・タイムズ紙が中国の重要ニュースとして、「温家宝一家の女性ビジネスコンサルタント・段偉紅を拘束」と報じました。多くの人々は、習近平の反腐敗キャンペーンの狙いが、温家宝前総理に向いたものだと思っています。しかし、私は詳細にこの記事を分析して、最近の政治動向と合わせて考えると、これは3月に開催される両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)前の政治的に”敏感”な時期に、こうしたネタをニューヨーク・タイムズ紙にリークするのには、二つの狙いがあると思います。一つは、温家宝一家の財産処置を利用して、政治とビジネス界の関係を再構築する”標識”とすること。二つには「山を叩いて、トラを驚かす」もので、他の超大物たちを震え上がらせることです。

    ★段偉紅;温家宝一家の白手袋

     中国の政治高層にある連中が、自分たちの権力をお金に変えようとするときには、自分の子供や兄弟姉妹を通じてやらるのが常です。しかし、賢い連中は、「白手袋」(ホワイトグローブとも呼ばれる汚れ仕事をやる)仲介者を使った方が更に安全だと考えました。ニューヨーク・タイムズ紙の中国駐在記者は、長年、この件に関して調査報道を続けており、中国金融界のビッグマンである蕭建華、アリババの馬雲、不動産王の王健林らは、皆、中国中央政治局常務委員の家族が共通で使っている「スーパー白手袋」たちだとしています。

     先に述べた段偉紅は、ニューヨーク・タイムズ紙によれば、数年前に同紙がスクープした「温家宝総理一家の財産」(参考;温家宝は何故「善き晩節を語る」一手を打ったのか?⑴&⑵)によれば、温家宝の母親の楊子雲、夫人の張培莉、御曹司の温雲松が平安保険公司の大量の株式を持っていたのは、段偉紅から受け取ったものだった、ということです。段偉紅はニューヨーク・タイムズ紙の記者に対して、自分は温家宝一家と家族のような親密な関係で、彼らの名義で企業を登記して、温家宝の母や、妻子の身分証で平安株を購入して、自分が平安公司の株主であることを隠したのだ、と言いました。こうして売られた株式は当時の価格にして60億米ドル(当時の価格で380億人民元)でした。

     一般には、紅色貴族権力階級は他人名義で株式を持ちますが、温家宝一家は、それに反して、「李下の冠瓜田の履」(人などに疑われるような事はするな)のことわざに反して、一家全員が一人のビジネスウーマンのために、名義を貸して、自分たちが段偉紅の「白手袋」になった、というわけです。(*嘘くさい話だ、の意味)

     ニューヨーク・タイムズ紙によると、中国の紅色権力貴族たちの財産は、この他に前中央銀行総裁の戴相竜の娘婿の車峰や、大金持ちの王健林、馬雲の背後の中央常務委員の親戚がいます。温家宝一家が、ニューヨーク・タイムズ紙の報道を会見してまで否定した他は、中国の官僚やその他の誰もがこの報道については沈黙しています。

     

    ★反腐敗の三種の戦略

     中共の腐敗は、とっくの昔に自分たちが「盗賊型の政権」だという特徴を露呈してしまっており、上は中央政治局常務委員クラスから、下は役人とも言えないような村の幹部まで、ほとんど全ての中共党員の役人たちが手段を選ばず蓄財に励んでおります。江沢民時代にはもう、「下級役人以上の幹部を全部銃殺したら中には無実なのに罪をなすりつけられたのもいるだろうし、一人おきに銃殺したら、今度は悪いのが漏れちまう」(それほど多い)と言われました。これに対して習近平は、2012年に反腐敗キャンペーンを始めてから、紅色特権階級家族、権貴とよばれる特権官僚、底辺役人の腐敗に対して、三種類の異なった方法で対処してきました。

     中国共産党第十八回全国代表大会(18大、2012年11月)前後の、権力闘争に関わった特権トップ官僚とその関係者は、全て腐敗としてやっつけられました。政治局委員、重慶市委員会書記の薄熙来、中央政治局常務委員、中央政法委書記の周永康、元中央弁公室主任の令計劃および152省庁の大臣級高官、2人の元軍事委員会副主席を含む90人以上の将軍が監獄入りとなりました。彼らに関係したビジネスエリート、例えば「薄熙来一家の金庫番」と言われた徐明、周永康関連の石油利権グループ、四川のビジネスマンなど数十家族の大物ビジネスエリートたちも牢に繋がれ、彼らの巨額の財産は消えてしまいました。

     底辺レベルの役人たちの深刻な腐敗ぶりは、習近平の第1期の5年間は、攻撃の重要対象ではありませんでした。中国の地方の下級レベル(県)の政治は、地元政界、公安当局およびヤクザたち(多くは自分たちの商売を持っている)三種の勢力によって牛耳られていました。今年1月下旬、中共中央は、国務院の「ブラックなギャングたちを一掃する件に関する通知」を出していますが、地方のブラック勢力の多くは公安や役人と結託していますので、その効果は今後よく見ないと分かりません。

     

    ★紅色貴族家族には「財産を差し出せば身は安全」に

     習近平にとって、いささか厄介なのは紅色貴族の家族と、権力闘争に巻き込まれてはいない特権官僚家族たちです。こうした一族に対して甘いというのが、習近平に対する大きな不満となっていました。

     18大以後の5年間、習近平は比較的柔軟な姿勢で臨みました。自分の二人の姉とその旦那に資産を売らせて、ビジネスから手を引かせました。「率先垂範」することで、紅色貴族の一家がそれを真似て、財産をむさぼらなければ災難を免れるように望んだのでした。また、党中央規律検査委員会(中紀委)を通じて、「18大以後もやめないで、問題となる場合を重点的に調べて、大衆からの訴えの強いケースの集中的な手がかりを報告し、重要な地位に今後使える党員幹部を抜擢する」(中紀委副書記・楊暁渡の2014年5月26日談話)と、なだめるような警告を出して、紅色貴族家族たちと特権官僚の家族たちが、政府の苦労のほどを察するようにしたのでした。

     しかし、残念ながら前総理の朱鎔基の息子の朱雲来が自ら、中金公司理事長の地位から身を引いた以外は、多くの紅色家族たちは、財産の返却など応じようとはしませんでした。前総理の李鵬の娘で「紅色お姫様CEO」、「電力ナンバーワン女」と言われた李小琳などは、その総裁の地位を手放したがらず、強制的に別の二流国営企業の三番手に降格されたほどです。(中国電力理事長から中国大唐集団副社長に)

     その他の少なからぬ連中は海外に資産を移そうとしました。その中には鄧小平の娘婿の呉小暉や、背後に何人もの元党中央常務委員の家族が株主控えていた王健林は、それ以前より一層海外の企業買収によって、大規模な資産移転を計りました。

     こうした状況の下で、中共当局は「大根引っこ抜き」方式で、一つ一つこうした特別なバックを持つ大ビジネスマンに対応しました。2017年2月には、「資本市場のスーパー・ホワイトグローブ」と呼ばれた、金融界の超大物だった蕭建華が、当局によって香港で秘密裏に逮捕されました。ニューヨーク・タイムズ紙によると、蕭建華は少なからぬ正解の高層レベルとの密接な関係があって、前党中央政治局常務委員の曽慶紅の息子、曽偉のために山東魯能電力の買収を行い、30数億元で700億元以上の価値のある魯能を買収したと言われます。私は以前、蕭建華は多くの権貴一家の財務管理人であって、彼を捕まえたのはその「帳簿」を抑えて、財産の在処を探すためだと言っておきました。(★スーパー白手袋マン・蕭建華失踪への推理★ 2017年2月9日 
     呉小暉に対しては、中国当局は直接身柄を抑えるやり方をとりました。そして8ヵ月後に釈放された時には、安邦グループのリーダーはもう取り代えられていました。王建林はプレッシャーをかけられて、やむをえず資産を売却して、中国国内での債務を返済させられています。彼の万達グループの資産が目減りするということは、その株主の常務委員級の家族の資産も目減りするということです。

     

    ★2017年の郭文貴はなぜ王岐山を主敵としたか? 

     2017年の郭文貴が海外で騒いだ「爆弾資料」の矛先は、習近平の反腐敗キャンペーンの実行者である「反腐敗皇帝」王岐山中紀委書記に向けられていました。この話では、ぜひ指摘しておかなければならないのは、2007年1月に胡舒立女史が編集長だった「財経」雑誌が発表した「魯能は誰のものか?」です。これは、山東のトップ大企業の魯能集団が謎の人物によって安値買収された話を暴露し、資産が738億元の魯能集団が、37.3億元で買収され、700億元の国家財産が毀損したという話です。実際の買収者が曽慶紅の息子の曽偉だったと暴露されたのでした。

     当時、胡舒立女史が、こんな「虎の唇の上でヒゲを抜く」ような危ないことを敢えてやれたのも、背後に時の国務院副総理の王岐山がいたからだといわれます。十を超える国家部門がこの魯能買収事件の調査を要求するようになってから、曽偉は2007年にオーストラリアに移民しましたが、これは災難を逃れるためだったと言われています。この話を理解してこそ、なぜ郭文貴の「爆弾資料」が、胡舒立と王岐山に泥を塗ろうとするデマ攻撃の重点標的にしていたのかが分かります。

     郭文貴の背後には、国家安全部(長年、曽慶紅が仕切っていた諜報部門)の支持があって、郭文貴がネットでSNS(ソーシャルメディア)を使って攻撃し、習近平がその対応に苦慮していたわけです。中国の対外宣伝メディアである「多維ニュースネット」は、2017年10月8日に「習近平のこの5年 — 改革と反改革の命がけの力比べ(习近平这五年:改革与反改革的生死较量)」という記事でも「この5年間は、習近平の『生死をかけたゲーム』だった。政治生命どころか、命がけの闘いだった」とはっきり認めています。「中国政府の面目を潰す闘いであったばかりか、中国共産党第十九回全国代表大会(19大)での反習近平への水面下での逆流にもなった」と述べています。

     「郭文貴ツイッター革命」は一度に、官僚集団、知識人階層、民主運動家、護憲活動家の大きな支持を得たことは、中共を大いに弱らせて、19大で王岐山引退の切り札になりました。習近平は、やむを得ず57人の中共指導部と中央軍事委員会のいわゆる「党内の老同志」を慰撫する内容の談話を出さざるを得ませんでした。

     しかし19大以後、習近平は直ちに権力をもって、引き続き軍部内の、新たな政治協商会議から紅2代目をほとんど追い出し、隠れた災いの元を断ち、人事的に王岐山復活への道をならしました。現在、言われているのは王岐山を国家副主席にすると同時に、新たに作られる国家主席や国務院総理と同等の国家指導者である国家監察委員会のトップとする、ということです。

     こうなると、特権的な汚職高級官僚の恨みの的である反腐敗キャンペーンは、この先も更に継続されそうです。これがニューヨーク・タイムズ紙が、なぜ今のこの時期に、こうした内部リーク資料がなければ書けなかったような記事を掲載出来たかという理由でしょう。

     ところで、温家宝は18大で薄熙来の味方などせず、正しく習近平側に立ちましたし、習近平の邪魔をしたこともありません。それなのになぜ、習近平は今頃になって、自分たちの一家の協力者に手を出したのでしょうか?これは多分、二つの理由からです。

     一つは、習近平は外国メディアを使って、「風を吹かせる」ことによって、温一家に圧力をかけ、呉小暉が王健林(と万達グループの株を持っていた元常務委員クラスの一家も含めて)、「財産を差し出すことによって、罰を逃れる」ようにしたことの真似をさせる。

     二つには、「山を叩いて、トラを驚かす」で、郭文貴の言う「後ろ盾の大物元指導者」を大人しくさせ、第二第三の郭文貴を出現させないためです。

     引退したトップクラスの高官たちの中で、温一家の蓄財ぶりは、ニューヨーク・タイムズ紙がすっぱ抜いたので最も有名です。しかし、温家宝本人には、もう大した政治力はありませんから、彼を突破口としても、別に大きな反発は生まれません。いかにして温一家の財産を処理するかは、習近平が19大以後、再構築しようとしている政治とビジネスの世界の関係にとって、メルクマールとなる事件なのです。

     (終)

     原文は;温家财富故事 将成「重构政商关系」标志 

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