• ★「薄紅色コングロマリット」 — 生死をかけた権力闘争 2018年03月12日

    by  • March 12, 2018 • 日文文章 • 0 Comments

     

     最近、全てのニュースが、中国の全国両会(全国人民代表大会と全国政協会議)に集中していますが、きわめて重要なニュースが見落とされています。国務院発展研究センター副所長の張文奎が発表した「中国は薄紅色コングロマリットに警戒しなければならない。さもないと危機を生じかねない」(中國要警惕粉紅財團 否則可能發生危機)です。というのは、今回、初めて「紅色」と「薄紅色」が区別されているからです。ちょっと鋭いウォッチャーには、これで中国政府が、どのような「金融界の大ワニ」(大物)を重点的に粛正しようとしているかが、はっきりと分かるのです。

     

    ★「紅色」と「薄紅色」

     この張文奎の原題は「マクロ病的ミクロ病巣 — 財団化と隠れた金融危機」で、中国経済には、二つのミクロ的病巣があると指摘。一つは、大量のゾンビ企業、二つにはコングロマリット企業。第一の話は何度も書いてきたので、第二の病巣を分析してみましょう。

     まず、「ゾンビ企業」ですが、その意味は、既に生産していない、或いは半ば生産をやめた、長年損を出し続けていたり、資本より借金が多かったり、政府からの補助金や銀行の貸付でやっと息をついている国営企業です。政府側の発表では、2005年から2013年、工業部門のゾンビ企業は7.51%。しかし、民間ではこの数字は低すぎると見られています。

     続いて、何を以って「紅色コングロマリット」や「薄紅色コングロマリット」とされるのでしょうか?

     世界各国で「コングロマリット」(複合企業)が意味する経営範囲が異なり、業務領域の違う大企業が協力する連合体を意味します。中国では、なぜ紅色と薄紅色があるのか?といえば、これは中共政府からの距離の遠近に関わります。紅色コングロマリット(紅色コン)といえば、国有企業、とりわけ中央国有企業(訳注;央企と呼ばれる。国家が全ての資本をもつ独資企業。国有資産監督管理委員会=国資委に所属する中央国有と地方国有に分かれる。)の意味です。その多くが中国500強どころか、世界500強に入る金融証券、不動産、国際貿易など、合計90社以上のことです。それぞれの中央国有企業の傘下には、平均500以上の法人企業が、通常だと5、6層に重なっており、時には11~12層にもなり、構造は複雑で、業務は膨大かつ複雑です。こうした「央企」は、中国政府の財政の柱で、中国政府からは、「共和国の長男」と呼ばれ、借款や政策の方面で、極端に優遇されます。

      

    ★薄紅色コングロマリットとは?

    中国の金融分野に入る敷居は極めて高いものです。金融の許可が必要な業界は、銀行、保険、信託、証券、ファイナンス・リース、先物取引、ファンド、ファンド管理、ファンド売買、第三者決済(訳注;第三者の独立機構が国内外の大型銀行と契約して提供する取引支援サービス)、消費者ローンなど12種類あります。

     中国のいくつかの財経専門誌によると、2002年の金融業への私営企業の参加が許されてから、10余年の発展の中で、中信系(訳注;中国中信集団公司 鄧小平氏が自ら提唱・認可、栄毅仁が1979年に創設。中国政府が100%出資)、平安系(同;中国平安保険集団公司;深圳市に本社)、中国光大集団(国務院系)が、相次いで全金融部門の許可を獲得しました。しかし、民営資本系で、全金融部門の許可を得たのは、広大な分野を持った明天グループ(蕭建華の指導層御用達ファンド)だけでした。

     許可獲得競争は、つまり各社の背景に存在する力の強さの争いです。既に全て集めた、または集める寸前まで行けた企業は4種類です。第一は中央国有企業を代表とする金融コングロマリット(金コン)、第二は地方国有資本が地方資源を整合して作った金コン。第三は民営企業がつくった金コン。第四はインターネットの巨人達が、金融領域に入ってきてつくった小型金コンです。

     前二者は当然、国営の紅色コンで、後者の二つが薄紅色コングロマリット(薄紅コン)です。中国では情報は不透明ですから、彼らの背後にどんな人間がいるのか、国内のメディアは報道しません。しかし、西側メディアは各種の取材ルートを通じて得た情報(中国のトップ層内部の争いを通じて漏らされる暴露材料)で、明天系、阿里系、安邦系、万達系集団などが、ニューヨーク・タイムズ紙が最近の調査取材で明らかにした薄紅コンの切り札的存在です。

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    ★「薄紅コン」の政治的後ろ盾

     呉小暉の安邦の崛起は迅速でした。というのは「鄧小平の孫娘の旦那」という特別な身分を存分に利用して、2003年、3億元の起業家だったのが、2017年には9000億元の、金融業許可の全カードを持つ大コングロマリットにのし上がっていたのですから。

     王健林の万達には複数の大型バックがついていました。ニューヨーク・タイムズ紙の傅才德記者の長年の調査によると、その株主には前中共政治局常務委員の賈慶林、全国人大副委員長の王兆国、現任の中国最高指導者の姉の斉橋橋と夫の鄧家貴(2009年に株主に、2012年に習近平の家族会議で退出)、前国家主席・胡錦濤の息子の胡海峰のファンド、前総理温家宝の娘の温如春のビジネスパートナーの金怡などがいます。

     蕭建華は、「資本市場のスーパー白手袋」(他人に代わってヨゴレ仕事をする、の意味)とまで呼ばれましたが、その資本帝国の名称が「明天系」です。ニューヨーク・タイムズ紙傅才德記者の「天安門事件で運命を変えたビジネスマン・蕭建華」によると、蕭建華は、頻繁に「ダミー会社」使って、本当の株主の身分を隠して投資を繰り返していました。業界内では早くから、蕭建華が特権を持ち、国有資産の取引や統治階級の家族の共同利益にも関わることが知られておりました。蕭建華本人も、ビジネスパートナーに前政治局常務委員の曽慶紅の息子の曽偉がいたことや、曽偉に代わって山東の魯能電力を買収したことを認めていました。魯能は300億元以上の価値があったのですが、それを、30億元で購入したのでした。

     こうした「薄紅コン」は、江沢民時代と胡錦濤時代の20年間に、中共の家族と国家を一緒くたにした利益吸い上げ体制によって、大発展を遂げたものです。習近平は、2012年10月に中共総書記に就任して以来、2013年から反腐敗キャンペーンを開始して、170人の各省や庁の大臣級、副大臣級170人とビジネスマンを粛清しましたが、これまでは、こうした「薄紅コン」には手をつけませんでした。しかし、薄紅コンたちは恐怖を感じて、海外へキャピタルフライト(資産逃避)を測り始めていました。

     2014年から、呉小暉、王健林、蕭建華らは皆、海外に巨額の資金を移し始めました。2017年6月までに中国の外貨準備高は3兆0567.9億ドルとなりましたが、その時、呉小暉は保険理財商品投資で、対外投資が200億ドルをゆうに超えていました。王健林も中国国内で大量の債権を発行して海外投資をはかり、367億ドル、中国外貨準備の1.2%でした。資本の大量の国外転移によって、外貨準備は深刻に流失し、中国政府は2016年8月から、外貨準備防衛戦を開始せざるを絵図、金融危機を全力で防衛して、まもなく習近平が「政治とビジネスの関係の再構築」構想を言い出しました。

     

    ★当局は「野蛮な成長」で警告

    中共が、薄紅コンたちをやっつけるにあたっては、事前の警告が無かったわけではありません。中国証券監督管理委員会の劉士余は少なからぬ大富豪の心胆を寒からしめるような談話をしています。例えば、2016年12月3日には、中国証券投資基金業協会の第二回会員代表大会の席上で、「ファンドの管理者は、過度の贅沢の限りを尽くす土豪のようにならず、波風を起こす妖怪にならず、人民に害をなす人妖にならず、不当なお金をレバレッジ(資金を何倍にも使う)で企業買収をせず、野蛮人のようになっては、最後に待っているのは業界の強盗になる。そんなことは許されない!」。「国家の法規が最低限禁止していることに挑戦し、個人の禁止事項に挑戦し、刑法に挑戦するならば、諸君を待っているのは牢獄の正面玄関ですぞ」と警告しました。

    劉士余が「妖怪、人妖、強盗」と表現したファンド管理者は誰か?業界では当時、一般的に、これは恒大系、宝能系、安邦系といった企業買収のもっとも目立つ保険系のファンドだとおもわれました。更に大胆な投資業界人士は、劉士余を大っぴらに批判し、金融改革を妨害するものだとしましたが、誰も、習近平がこのとき既に、「政治とビジネスの関係の再構築」を決意していたことにまでは思い至らなかったのでした。

     習近平にしてみれば、政府が金融危機を防止すべく全力で頑張って、資本の流出を食い止めようとしている時に、自分たちの一家のメンバーである紅色貴族たちが、国と憂いを共にしないどころか、足元に穴を掘る速度を上げているのを我慢すべきか?という話になります。ですから、「政治とビジネスの関係の再構築」の重点は、金融分野における粛正に置かれ、食べたものは吐き出させよ、ということになりました。外国に資金を逃避させたものから、まず吐き出させることにしたのです。呉小暉の安邦は現在、既に中国保険監督管理委員会に接収され、王健林は資産を売却して債務返還中です。多くの紅色貴族の「スーパー白手袋」だった蕭建華は香港の四季飯店に何年も避難していましたが、ついに2017年2月に中国当局によって秘密裏に中国に連れ戻され、現在の任務は核家族の帳簿の明細を自白することです。

      

    ★薄紅コンの背後の生死をかけた闘い

     ここまで書いてきて、昔話をどうしてもしておかねばなりません。1998年6月、私は中央紀律委員会に、反腐敗対策の内部討論会議に招待され、北京に行きました。席上、私は遠慮会釈なしに、中国の反腐敗に欠けているのは最高レベルの規律だ。江綿恒(江沢民の子)の各種の関わりはずっと止まない。もし江沢民総書記が自分の子供さえ何とも出来ないのであれば、それが悪い模範となって、下はそれを見習うようになるだろうし、人々は皆、「俺らも国をひと齧りしようぜ」となる。こうした状況は、明らかに国家を損なうことは明らかであり、自分の財産も明るみに出せず、最後はろくなことにはならない、と言いました。

     指折り数えれば、もうあれから20年経ちます。権力を使って大金をつかんだ中国の権力貴族も大金持ちも、今や、自分たちが呉小暉の後を追わされる羽目になるのではないかと、ビクビクしています。中国のことわざに「他人の財産を奪うのは、両親を殺すようなものだ」(夺人钱财,有如杀人父母)があります。こうした薄紅コンの生死の背後には、習近平と紅色貴族と江沢民・胡錦濤時代の権力貴族との間の、激烈な闘争があります。この種の闘争は、まさに今も続けられており、習近平の第二期にも続くでしょう。この点に注目せず、今年の全国両会の憲法修正の波風を分析するのであれば、それはおバカさんな論議になってしまいます。(終)

     原文は;“粉红财团”生死劫背后的权力斗争 

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