• ★米国の攻撃目標は、中国の国家資本主義なのか?★ 2018年05月25日

    by  • May 27, 2018 • 日文文章 • 0 Comments

     5月19日、米国と中国の二巡目の貿易交渉における共同声明では、米中双方が製造業とサービス業分野における、双方に有利な条件を作り出し、中国側が、対米貿易黒字減少措置に同意し、米国から大量の商品とサービスの購入を増やし、米国側の農産品とエネルギー輸出を増加共通認識を達成した、とはっきり述べています。この声明では、中国が最も切実に考えている中興通訊公司(ZTE)の命運については触れられていません。

     ★”観客”はどちらも不満

     今回の貿易戦争で、伝えられるところによると、中国側は2000億ドル分の大量発注によって、トランプ大統領の政治支持基盤である農業州の選挙民が利益、輸出拡大と、エネルギー輸出を拡大させることによって、少なからぬ就職のチャンスを増やすことになります。これは、トランプが大統領選で公約した「貿易赤字の縮小」「就職先を増やす」という公約を果たすことになり、今年の中間選挙での共和党議員に有利になります。

     米国の不満は、知的財産権問題です。米中の共同声明では、トランプが持ち出した知的財産権方面の核心に関しては、曖昧に「双方は知的財産権の保護について極めて重要であると認識し…中国は、特許法を含む関連法律法規を修正を促進する」とあるだけだからです。中国はこれによって、うまく逃れるかもしれないのです。

     中国人側の不満は、政治的な立場によって異なります。愛国者たちは1842年に英国と締結した南京条約に比肩するものとして、「屈辱的な国の恥」とし、中国が無理やり米国の農産物やエネルギーを購入させられたのは、中国の譲歩のし過ぎであり、「ため息が出る全面的譲歩、なんと悲しむべきことか」と嘆いています。

     一方、中共政権に反対する中国人は、もともと、この貿易戦争が「新たな冷戦」にエスカレートすることを期待していましたから、米国が中共政権の経済的基礎に打撃を与えて、政権崩壊させるような、自分たちが期待する「光栄な任務」をより拡大しなかったことに、不満を感じています。

     この両者の不満は、愛国者は狭隘な国家主義的な意識によって、農産物とエネルギーというのは、どちらも中国が必要とするものであること。中国が、南米の農産物と、ロシア、中東から購入していたエネルギーの購入先を大幅に米国に変えて、価格的にも優遇されていることを見ようとはしません。さらには、米国は中国に長い間甘い汁を吸われることに甘んじてきており、損続きなことや、トランプ大統領が太っ腹にも、この件で、中国を責めないで、自分たちの前任者に非ありと責めていることも見ようとはしません。

     政治的反対派が米国を責めるのは、もっと無茶な話で、彼らは米国が軍隊によって、中国の政権を打倒し、中国人民を解放するのを願っているのですが、これはもともと、彼らが勝手に米国に押し付けただけの話です。歴史的にも、現実的にも、米国は毎年、欧州連合(EU)や日本、ラテンアメリカ諸国と貿易戦争をやってきており、だからと言って、貿易戦争のために相手国のトップをやっつけ、新たに別の王様を立てようとしたことなどないのです。

     となると、次に残る問題は、一部の論者が言うような、米国は中国の国家資本主義を倒そうとしているのかどうか、です。

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     ★中国の経済制度の改変が目的ではないと米国は明言

     今回の貿易戦争で、トランプ大統領は、はっきりと対中貿易の赤字現象と、米国の国家の安全、中国が知的財産権の侵害による米国の高度科学技術の窃盗行為によって競争するのを防止するとは言っていますが、一言足りとも、中国の政治制度に対する不満は述べてはいません。トランプの側近集団もこのボスの意図をよく理解しており、5月1日、米国貿易代表のRobert Lighthizerは、米国商工会の講演で、今回の訪中の目的は中国をより広い国際競争に引き込むことにあったとして、こう語りました。

     ;「私の目標は、中国の経済制度を変えようとかすることではない。この制度は、みたところ彼らにとっては大変、役立っているわけだし…しかし、私はアメリカをこの交渉で前進させなければならないし、私たちの役割は米国を、中国の経済制度の被害者にしないことであり、それが私たちの仕事だ」「我々の厄介なリストはものすごく長いものだ。私はずっと希望を持っているが、しかし、希望に満ちているわけではない。これは一つの大きな挑戦である。中国の経済システムは大変異なる制度であって、実を言うと、中国にはとても役立っている」。

     しかし、米国大統領も米国貿易代表も、本当のアメリカの考え方を代表してはいないようです。各種の論評はそこらじゅうにゴロゴロしており、その中で最も大上段に構えたものは、「米中貿易戦争は二つの制度の力比べで、米国は中国の国家資本主義を崩壊させることであり、それはZTEに対する制裁が証明している」というものでした。

     ★中国が担う特殊な役割

     いわゆる「国家資本主義」の定義は、政府が経済発展で決定的な役割を演ずることで、市場原理ではなく、政府がその国の資源と富の分配を支配することです。この意味では、中国が行なっていることは100%中100%国家資本主義です。何故ならば、中国政府は、国家資源のコントロールを全て握っており、全国の土地の唯一の最終的所有者だからで、いわゆる「市場原則」は、ただ政府の経済支配を押し隠す「白手袋」に過ぎませんし、大型国営企業は「人民共和国の長男」として、各種の優遇政策補助を享受しています。ただ、近年では、国際社会と商売をして行く必要性から、一番、寵愛を受けているのは、むしろZTEのような、国家が株をコントロールする「混合企業」になっています。

     スマートフォンやネットワークプロダクトなど通信機器大手のZTEは、1985年に「深圳市中興半導体有限公司」として、誕生し、その創設者の侯為貴は高級官僚と強いコネを持つ企業家(紅頂商人)です。元は、中国航太工業部691工場のエンジニアでした。1992年から、理事会は「中興維先通」として、これを技術優先のエンジニア集団として民営企業として経営責任を持たせ、二つの国有企業は運営からは手を引き、中国国内で最初の「国が株式を持ち、経営権を与える」(国有民営)の全く新しいモデルとなりました。この種の「混合所有制」経済モデルは極めて強大な生命力を誇ります。「国が株式を持つ」ということで、ZTEは大変な政策の優先的な援護を得られ、「経営権利は与えられる」ということで、技術者の幹部たちは十二分に報われ、自分たちが主人だという気持ちを持ちますから、経営における積極性や士気も、国営企業の経営者よりははるかに高いのです。

     今やZTEは軍系の企業であるファーウェイ(華為)と並ぶ、通信機器インプラ企業であり、全世界のマーケットでベスト5に入る、市場専有率では10%を閉める企業で、中国では市場占有率3割です。しかし、ZTEの弱点は、米国から購入した核心的な部品に頼り過ぎていたことでした。

     4月17日に、米国商務部が米国企業が、イラン制裁措置違反への懲罰として、ZTEに対して、いかなる電子技術及び通信部品の提供も7年間禁止しました。その根拠は、米国の輸出規制法規で、米政府は米国製の科学技術生産品をイランに輸出することを禁じており、その対象にはハイテク関連のクアルコムやインテルのチップなどの核心となる部品が含まれています。ZTEのこうした行為は、実は中国政府が下した秘密命令によるものですから、ZTEが懲罰を受けて、大慌てした中国政府は、第二次交渉で、広く伝えられた、2000億ドルのツケを払うという話になったのでした。

     多くの人々が、ZTEは、中国国家資本主義の寵児であり、国家命令をしょっちゅう受けていたから、トランプ政権は中国の国家資本主義に打撃を加えたいのだ、という話は、希望的観測が過ぎるものです。

     ★米国は中国がルールを守らないのが不満なのです

     国家資本主義はトランプが対中防衛き戦争で発動したターゲットではないのです。それでも多くの人々が、こういうお話を聞きたがるのですね。でも、私は事実に基づいた話を申し上げます。違います。全然違います。

     経験的な事実を言えば、国際関係においてシンガポールは、国家資本主義のお手本のような国です。でも、米国との関係は良好ですし、政治的にはテッパンの米国ファンでした。

     米国の中国に対する姿勢から見ると、昔、中国がWTOに加入する前、米国議会では毎年、中国に最恵国待遇を与えるべきや否やで論議が起こり、いつも持ち出される反対の理由は、中国の経済体制が非市場経済主義だから、というものでした。中国企業と取引するということは、つまり国有企業と取引するということなのでした。国有企業は当然、国家資本主義そのものの代表ですから、国家の補助を受けています。これは米国の私企業からすれば、大変不公平なのです。

     しかし、米国にはロビイストを使ったKストリート政治というのがあり、外国政府や商業団体などの利益集団が、もっぱらホワイトハウと、数百人の議会と各界の名士連をを説得する商売を行なっております。当時、米国の多くの企業は、中国と商売を始めるのを急いでおり、中国から海外に亡命したプロテスターたちだって、中国経済の発展は民主化を促すと信じていましたから、皆が、中国に最恵国待遇を与えるようにと運動したのでした。米国は中国のWTO加盟を後押しした時には、WTOが15年の観察期間をおいて、業界が解放へのタイムテーブルを守り、中国が市場経済体制国家の基準を満たすかどうかを観察するように、促したのでした。

     つまり、米国が中国のWTO加入促進を後押ししたということは、すなわちワシントンの政界人たちは、根本的に中国の国家資本主義経済体制を、気にもしていなかったのです。当時の理由は、中国を国際社会の責任あるメンバーにさせるには、経済を発展させ、中国の民主化を促せばよく、中国と「接触、協力」の度合いを増やすことによって、「影響、改変」させれば良い、というもので、この8文字が、米国国務省がキッシンジャー以来、作り出してきた対中国外交8文字方針なのです。

     私は別稿の「米中貿易戦争の趨勢を知るための三つのこと」(5月5日)の方で、トランプ大統領は最初から、中国という独裁国家に影響を与え、変えられるなどとは考えていないこと、大統領に就任後はきっぱりと中国で民主主義を拡大する方針を放棄したことを述べておきました。彼の目には、中国とはつまり利益競争の関係であり、まず、一番に経済利益であり、貿易赤字の解消、中国の知的財産権泥棒を防ぐことが、貿易戦争発動の目的なのです。米国貿易代表が言うところの、中国の経済制度の改変や国家資本主義経済が、米国に害を与えることを防止する、というのがトランプの考え方というべきです。この「害を与える」と言うのは、知的財産権の侵害であり、ZTEが米国のイラン禁輸条例に違反して、米国から輸入した電子部品をこっそりイランに売るのを支持することです。しかし、それは中国政府がルールを守らないからであり、中国が国家資本主義制度だからということではありません。

     中国がルールを守らないと言うのは、国際社会公認の事実です。WTO加盟当初から、朱鎔基総理は、内部談話で、「規則は死んだものであって、人間は生きている。中国がWTOのルールを真剣に研究して、隙間を探し出し、それを利用しなければならない」と語っています。2009年のAPECハワイサミットで、オバマ大統領と中国外交部の役人がやり合ったことがあります。オバマが「中国人はもっと大人のふるまいをしてほしい」と述べたのに対して、中国側は、「中国がルール制定にか関わらないルールを尊重する義務はない」と言い返したのでした。当時、私は、「中国は国際社会に遅れてきたメンバーであり、国際組織に入ろうとするなら、そこがとっくの昔に定めていたルールを守るという約束で入ったわけで、ルールは守らなければならないのに」と申し上げました。

     中国の延々と続く違反の数々は、「国家オポチュニズム」という言葉で総括出来ます。いわゆる「国家オポチュニズム」は、「中国の改革開放の主任エンジニア」と呼ばれた鄧小平が「猫論」で言っていた通りです。つまり、「白い猫でも黒い猫でもネズミを捕るのが良い猫だ」です。その意味は、「目的を達成するためには手段は選ばない」です。ですから、いわゆる国際ルールも、中国から見れば、自分に有利な時にはこれを守り、守っても益のない時はルールをくぐり抜けたり、平気で違反するのです。

     西側の国家が中国の貿易のやり方に反対する理由は、ずっとこれまで、中国側が、選択性の不公平な法律やルールの運用を行なって、絶対主義体制的な重商主義的目標を達成しようとするからです。米国は長年、中国にしてやられっぱなしでした。5月17日には、トランプがZTEを許してしまいそうになった(訳注;3億ドル=約1400億円の罰金や経営陣の刷新、米国部品の購入を増やすことを条件に「ZTEの事業を再開させる」とツイッターに書き込んだ)ので、米国議会歳入委員会は緊急に修正決議を採択し、米国商務省がZTEに関して、再協議に応じるのを阻止しようとしました。これには共和党、民主党の両党の議員が賛成しました。(訳注;現在も、大統領府と議会の間で落とし所を巡って駆け引きが続いている)
     
     予想できるのは、今後、米中の摩擦は常に起きるということで、それがエスカレートして貿易戦争になることも常態化するでしょうが、中国人は、米国が貿易戦争をやるのは中共政権を打倒し、新政権を打ち立て、民主制度建設を中国に広めるためだ、などとは思わないほうがよろしい。全てには自助努力が必要なのです。(終わり)

    原文は;美国打击的目标是中国国家资本主义吗

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