• ★米中貿易戦を知りたくば、この3点を★ 2018年5月5日

    by  • May 30, 2018 • 日文文章 • 0 Comments

     トランプ米大統領が、3月22日に、中国が米国の知的財産権を侵害しているとして、幅広い中国製品に対して追加関税制裁措置「中国の経済侵害に対する大統領覚書」に署名しました。以来、米中貿易戦争というテーマが、世界中のメディアで重要なニュースとなり、ほぼ毎日の様に、「戦場報道」が紙面をにぎわせています。ホワイトハウスの期限の5月22日にはまだ一ヶ月ありますが、不断変わる「新たな戦況」を、どう捉えれば大勢を理解できるのでしょうか? 私は、3つの点をしっかり抑えれば、基本的な判断が下せると思います。(訳注;トランプ大統領は22日、米通商代表部に15日以内に関税対象となる中国製品のリストを公表するよう命じ、最大600億ドル=6兆4000億円相当=の中国からの輸入品に、25%の関税を発動する方針を表明。また、米国が戦略的と判断するテクノロジー保護を目的に、中国企業の対米投資への新たな制限を60日以内に提案するようムニューシン米財務長官に指示した)。

     ★対中国貿易戦争の鍵はどこに?

     この「覚書」がターゲットにしているのは、「メイド・イン・チャイナ2025」(「中国製造2025」)が定める重要な10の戦略分野です。(訳注;次世代情報技術、高度なデジタル制御の工作機械とロボット、航空・宇宙設備、海洋エンジニアリング設備とハイテク船舶
    先進的な軌道交通設備、省エネ・新エネ車、電力設備、農業機械、新材料、生物薬品・高性能医療機器)。中でもとりわけ、AI技術、機械化、量子計算機は、米国産業の競争力と米国の国家的、軍事的安全に関わります。中国の知的財産権侵害の轟く悪名に鑑みて、米国は更に、中国資本の米国戦略分野への進出を、極力阻もうとしており、中国の知的財産権の窃盗に対して、打撃を加えようとしています。 — 米国の反知的財産権窃盗委員会の報告によれば、米国は毎年、2250億ドルから6000億ドルの損害を被っており、その窃盗行為の王様は中国です。

     トランプの署名した大統領覚書は、2017年12月の米国の新国家安全保障戦略を徹底しようとういうことです。これは、米国の将来の軍事、外交政策、国防支出、貿易交渉と国際協力の青写真であり、「最大の危険と継続する脅威に対処する」もので、内容は、米国とロシア、米国と中国の競争は、日々激化しており、このライバル両国は、「米国の影響力、価値観、富に対して、挑戦しようとしている」とし、「中国の”経済的侵略”には、必ずや報復しなければならない」としています。

     今年は米国の中間選挙の年ですから、中国側の報復はトランプの弱点を突いて、大豆など80項目の農産物に関税を課すと宣言しました。農業州の大部分は、大統領選挙ではトランプ支持でしたから、トランプの政治基盤です。多くの農場主が、貿易戦争によって、自分たちが被害を受けるのではないかと、様々なルートを通じて、ホワイトハウスに圧力をかけました。そこで、トランプは、「大きな問題をしっかりやって、小さな問題はほうっておく」方式で、4月12日には農業州の知事と共和党議員たちに、「米中は最終的には、お互いに新たな関税を課すことは不可能だ」と言って、なだめようとしました。

     しかし、4月17日には、米国の制裁規定に違反したとして、米国企業に今後7年間、通信機器大手の中興通訊(ZTE)に対して、大ダンビラを振りかざしました。続いて、英国政府も、通信インフラが破壊される懸念から、自国企業にZTEの設備を使うことを禁止したのでした。

     ZTEは、華為(ファーウェイ)と並ぶ通信機器の中国最大の企業で、世界でもトップ5に入ります。華為の企業契約は、大部分、中国軍部と関係があります。この二つの企業は、もともと世界に覇を唱える野心満々の企業です。ZTEは、全世界の電信設備マーケットの1割のシェアを持ち、中国国内マーケットの3割を抑えていますが、しかし核心部品は米国から購入しており、現在の部品在庫は2月で尽きます。もし米国からの輸入が全面封鎖されたら、部品を買うことができず、技術的な支援も得られない絶望的です。少なからぬ業界人士は、ZTEが受けた傷は、短期的な財務的損失に止まらず、さらには、一気に不審におちいり立ち上がれないだろうとしています。ZTE自身も、米国政府による今回の販売禁止令は、深刻な危機で、自社の存亡に関わると認めています。

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    ★トランプはなぜ貿易戦争を?

     ZTEと華為などの中国企業の米国輸出協定規則違反は、オバマ政権時代に摘発されたものです。ZTEは、4月20日の声明で、2016年4月以来、過去の教訓に学び、米国の輸出規制管理規定を極めて重視して、全面的に米国のコントロールに協力していると弁明しました。これは、オバマ政府はZTEの違反に対して比較的遠慮がちだったことを示しています。

     今回、中国政府やZTEが心中、不可解な思いを抱いているのは、自分たちが米国の輸出規制に違反したのは、トランプ大統領の時期ではなくく、米国は本気じゃなかった。それなのに、なぜ今になって俺らはボコボコにされるのだ?ということです。これは、トランプが米国の1990年以来の対中国政策を否定して、中国に、「民主主義を買い与え、民主化を促す」のをやめたからなのです。

     米国の対中国外交戦略は、1971年、「氷を割る旅」でのヘンリー・キッシンジャーと深く関係しています。米中国交回復は、米国の「中国と仲良くして、ソ連を牽制する」必要から生まれました。それ以後、米国の中国政策は「接触、協力、影響、改変」の8文字となりました。「接触」と「協力」は手段であり、「影響」と「改変」は目的です。いわゆる「影響」というのは、経済上の協力を通じて、NGOによって各種の中国社会、中国政治を変えていくプログラムを送り込んで、次第に中国を国際社会に融合させ、責任ある国際社会のメンバーにしていこうということでした。米国のNational Endowment for Democracyの言い方で言えば、「経済発展で中国を変えて、最終的には中国民主化を促進する」です。

     ですから、米国は積極的に中国がWTO(世界貿易機構)に加盟するのを後押しし、ずっと、中国が何度となくそのルールに違反するのも我慢し、知的財産権を侵害も容認してきました。同時に、米国が派遣した中国のNGOは1000にも上り、環境保護、人権、慈善など各種の活動を行い、同時にさらに、中国政府の管轄する研究機関、大学、”NGO”などに各種援助を与えてきました。こうした活動の全ては一つの目標、つまり、「中国に民主を買い与える」でした。しかし、これは中国政府は、中国にカラー革命を起こし、平和的クーデターを起こそうというものだ、とみておりました。

     トランプが選挙で挙げた公約は、「米国を再び偉大に」です。当選後は、外国とのイデオロギー競争を放棄するとし、この主張は民意の支持を獲得しました。というのも911事件以後、米国人はますます強烈に、大多数が支持している海外民主思想と民主主義を広める計画は全く有効性がなく、援助された国々は感謝するどころか、米国を敵視するようになっていると感じていたからです。ピュー・リサーチセンターが、この5年間行ってきたアンケートでは、半数以上の米国人が政府は自国の問題により力を注ぐべきで、外国に余計なことをしないでほしい、外国の面倒はその国の政府に任せるべきだ思っているという結果が出ています。

     トランプがホワイトハウス入りして以後、直ちにオバマ政府時代の米国の対外援助の成果をチェックしました。米国保守派のシンクタンクであるヘリテージ財団のジェームズ・ロバーツの研究は以下のことを証明しています。
     ;米国、経済協力開発機構(OECD)など西側国家の行ってきた援助の大部分は、最後にはただ腐敗した政府が引き続き政権を掌握するのを助けただけだった。

     そして、ホワイトハウスは、国務省の対外援助の37%の外溝費用を削減し、強力な反対にもかかわらず、最後には通過させました。その予算は、2018年財政年度の、「正義と民主主義」のための出費を、2016財政年度の23億米取るから16億ドルまで削減したのでした。

     これは、ニューヨーク・タイムズ紙に、「トランプは全世界の民主主義から撤退」(Trump’s Global Democracy Retreat,2017年9月27日)、米国自身にその損害は跳ね返ってくると批判されました。しかし、中国は、以後、米国が人権や民主主義などのテーマで圧力をかけてくることはない、カラー革命を輸出することもないだろうと、大歓迎しました。今から見ると、彼らは大いにトランプを見くびっていたようです。

     北京の、米国の新国家安全戦略に対する見方は大変偏ったものでした。トランプの対中国外交は、中国のイデオロギーを変えることはもはや目的にはしません、それはトランプが、米国の利益を犠牲にしてまで、中国のために「民主主義を買ってやる」策略など、全く役に立たないと考えたからです。しかし、「買ってやる作戦」がどうあろうと、米国は、もはや中国が米国から、知的財産権を侵害して、購入後にそっくりコピーすることや、窃盗行為を許す気はなかったのです。なぜなら、中国産の偽物は世界中に広がっており、米国企業を破産させ、米国の経済再浮上に影響を与えるからです。これがトランプが、米国大統領として必要だと考える国家利益でしたし、彼が中国経済の侵略に反対する貿易戦争に打って出た主な理由です。

    ★トランプの決心の固さは?

     トランプが始めた貿易戦は、中国と経済的に関係するほとんどすべての企業家から反対されています。4月中旬、トランプの対中国政策に反対する米国の商業団体は、ワシントンのヘビー級組織である、米国小売業連盟と証券業協会から、比較的小さな、例えば、サンディエゴ税関仲買人協会といった地方の団体まで107に達しました。小売業連盟は最近、ロビー活動として、歳入に関する米国下院委員会に対して、「すべての米国の各業界部門の企業、労働者、農民、消費者はすべて、貿易戦争と関税の影響を受ける」「関税は隠された、後ろ向きの税金であり、商品が値上がりすることによって、米国企業と消費者にツケを回す」と警告メールを送りました。

     トランプは、5月初めの議会の公聴会で、今後の情勢を察知し、中間選挙で上院・下院のどちらかを失えば、今後の政権運営が困難になることから、危険な賭けをするつもりはありません。もし選挙で負けたらレームダック化してしまい、自分の二期目の夢も水の泡ですから。しかし、彼はあらゆる反対意見の中に、中国が様々な分野で、米国からうまい汁を吸い取っているという不満があることも見て取っています。ですから、もう一つの手段として、「経済緊急事態法」の発動を考えだした。4月19日、国際市場と投資政策担当の、米国財務副局長のヒース・ターバートは、ワシントンの会議で、政府は現在「国際緊急状態経済権力法案」((International Emergency Economic Powers Act)の発動を考慮していると述べ、トランプ大統領が、先月行った投資圧縮措置の一部とするつもりだと言いました。この法律は、通常、「ならずもの政権」やテロ組織に対する制裁措置として使われます。イラクやイラン、ロシアに対して使われたのです。これはトランプに、全面的に中国が米国の半導体やロボットなど、デリケートな分野での投資を制限する権限を与えるものです。トランプは、北京が意図的にこうした分野に投資して米国のテクノロジーを買収する戦略だと懸念しているのです。

     米国財務省の出した時間制限が5月一杯で、トランプが出した関税への話し合いの期限が5月22日だというこからを考えると、トランプは、5月初めの公聴会以後、もし関税の全面的な増額が支持されなくても、「メイド・イン・チャイナ2025」を攻撃は必ずやろうと決心してるということです。

    ★結論

     以上三つの点から、私の結論は

    ⑴ 中米貿易戦争は新型の冷戦にはエスカレートしない。米国の歴史上、関税をめぐる争いは100回も起きているが、その大部分は先進国同士の争い。
     米国は日本と、1985〜1995年に10年にわたる貿易戦争をおこなった。この戦争では、米国はその強大な総合力を展開し、貿易、金融、為替など多方面から攻撃し、最後に圧勝し、日本経済は「失われた20年」に陥った。欧州連盟(EU)との貿易戦争は、もっと激しく、止んだことがありません。1970年以後を例にとると、当時、世界各国はみな産業発展の段階で、航空宇宙、コンピューター、情報産業などまだ、壮大な発展を遂げる前で、鉄鋼、機械、自動車、化学工業などが依然として、欧米など先進国の大黒柱だった頃でしたが、その時期に爆発的に起きた貿易戦争は主に、農産品と鉄鋼の分野でした。

     ですから、トランプが貿易戦争を仕掛けている目的は、米国の長期的利益の保護からであって、イデオロギー的に中共政権をどうこうしようというのではありません。

    ⑵ 「メイド・イン・チャイナ2025」に対する各種の攻撃的措置は、中国の未来産業の発展に致命的です。というのはこの計画の10の領域、とりわけ、人工知能、機械化、量子計算機などの産業は、おもに知的財産権の窃盗行為によって進めてきたもので、自主開発などではないからです。

    ⑶ 世界の大親分として、米国の中国への態度は模範となる効果があります。英国は米国に倣って行動しました。ドイツの日韓経済新聞のハンデルスブラット紙は4月18日、EU加盟28カ国のうち、ハンガリーを除く27カ国が、中国の「一帯一路」計画は、EUの貿易自由化協定に違反しているとの共同署名文書を北京大使に手渡し、政府補助を受けている中国企業を不公平だと批判しました。

     中国の「平和的崛起」は、2003年から、世界の共通認識であり、政治的強権と市場経済を結合させた中国モデルとして、一度は西側の学者から、「ワシントン・コンセンサス」に取って代わるものだと思われました。

     2008年以後、世界の疑いの眼差しは、「崛起」にではなく、「平和的」の方に向けられています。2016年の米国大統領選挙でのトランプ現象は、グローバリズムに対する深い不満と逆流への懸念となりました。西側メディアの代表のニューヨーク・タイムズ紙やファイナンシャル・タイムズなどは、中国が米国に変わって、グローバリズムの経済的リーダーになるとさえ言いました。しかし、トランプが「メイド・イン・チャイナ2025」に与えたヘビー級パンチは、中国が知的財産権を「ごっちゃん」できる道を断ち切り、中国崛起の夢は、基本的に終わったのです。(終わり)

     原文は;「看雑誌」

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