• ★中国ネット革命の”成熟” — リーダー探しから革命階級探しへ — 2018年7月9日

    by  • July 13, 2018 • 日文文章 • 0 Comments

     海外の中国語界では、中国革命の足音はますます大きくなってきています。2017年3〜10月に、国家安全部の内通者だった郭文貴による「郭文貴ツイッター革命」では、革命の指導者を求めていた、とすれば、今年の6月10日に全中国十数省で、1800万人が参加したとされる”全国トラック運転手の大ストライキ”は、革命を望む人々が革命階級を求めた行為なのだ言えます。と言うのは、このこのストライキは、いくつかの要素が生んだバーチャル革命だったと事実が証明しているからです。多くの海外の中国語ネットメディアは、事実を確かめず、ネット情報に依って、この「ストライキ関連ニュース」を発表したものです。

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     ★ネット上のバーチャル革命の今昔

     ★ネット上のバーチャル革命の今昔

     とは言え、これをただの「フェイクニュース」と見るならば、中国の現状に対する理解の欠如でしょう。と言うのは、この背後には、恐らく数千万人は存在するであろう中国革命を待ち望む人々の願いが存在しましょう。2011年の2月17日に始まったアラブの春の「中国ジャスミン・バーチャル革命」類似性があるのです。もっとも、効果のほどは、昔のそれには遥かに及びませんが。

     「中国ジャスミン・バーチャル革命」の時は、2011年2月17日に、“@mimitree0 秘密樹洞”と名乗る人物が、ツイッター上で「中国ジャスミン革命の第一回の集会日時決定。2011年2月20日日曜日午後2時に、全国の大都市での集合場所は、博訊ネットで発表される。状況が変化して通知が間に合わない時は、それぞれ大都市の中心広場を目指せ」という情報を流しました。

     このニュースは数人の転載を経て、自由アジア放送(米政府系のラジオ・フリーアジア)の記者によって、「中東のデモ鎮圧が注目されている? 中国ジャスミン革命の日はもう決まったとネットで伝わる」というニュースとして流されました。続いて、大手の博訊ニュースが「中国ジャスミン革命各大都市集合地点」を流したため、あっという間に国中に広まってしまいました。誰かが全国集合地点のグーグル地図を作り、別の誰かが「我らは飯を欲し、仕事を欲し、住居を欲し、公平を欲し、正義を欲し、一党独裁の終了を欲し、報道の自由を欲する」というスローガンを発表して、本当かウソかも分からない「中国ジャスミン革命」が、ネット上でどんどん”熟成”、拡散されたのでした。

     中国語ツイッター愛用者たちは皆、このニュースを疑い、大部分の人々は一種の「行動芸術」だと見なしていました。ところが、なんと中国政府は、これを真に受けて本格的に警察を動員して「芸術」の完成に手を貸してしまいました。この後、何カ月間も毎週末に、ネット上で「集会」が発表される都度、軍や警察が出動し、北京などの都市ではそれが、10月初めまで続いたものです。

    私は、当時「一部伟大的现实魔幻主义作品:2.20茉莉花革命(偉大な現実のシュールレアリズム作品、2・20ジャスミン革命)」(2011年2月23日)で、「たった一つのツイートがジャスミン革命を引き起こす」、中共の体制的過剰防衛は、中国政府内部の極度の脆弱性を暴露した。中国語ツイッター世界の多くの人々がある程度の参加者となって、これを伝達し論評を加えた。その人たちのマウスが”革命”の促進道具となった。「この地下から突然、吹き上がって、地上にシュールな作品となって花開き炎は、行動芸術の部類である」と書きました。

     このいわゆる「中国ジャスミン革命」は、中国の革命的大衆が革命の好機を求め、アラブの春というチャンスに、中国政府を笑い者にしたのでした。しかし、それから6年経った2017年3月に、米国の中国語ツイッター圏で始まった「郭氏ツイッター革命」は、こうしたチャンスを探し求める動きは、機会があれば噴出すること、そして、少なからぬ中共政権反対者たちが、デタラメな発言の郭文貴であっても、「民主革命のリーダー」と見なしてしまうことを証明しました。その中には、日陰の民衆ばかりか、国外の著名な民主運動家、少なからぬ知識人エリートもいたのです。

     ★「6・10全国トラック運転手ストライキ」の構成要素

     というわけで、2018年6月10日の「中国トラック運転手連盟の全国ストライキ」というニュースは、中国の革命家たちが、革命的階級を求めるという「新たな作品」なのです。

     「中国トラック運転手大ストライキの内幕」は、6月12日に、袁斌と名乗る人物が発表しました。その内容はこうです。

    ;6月8日、江西省、上海、湖北省、安徽省、重慶、山東省、貴州省などのトラック運転手がストライキを起こした後、6月10日に、中国大陸10余省・地域で再度、連合してストライキを行い、燃料価格の値下げ、運賃の値上げ、交通警察や運輸部門が大型トラックに対して勝手に罰金を科すことをやめるように要求した。消息筋によると、協調行動をとるために、各地のトラック運転手組織は連盟を結成し、全体の利益のために、よその地域での貨物の積み下ろしをしないように要求する。
     
     というものでした。

     署名は「成都協会」で、ネット上のスローガンは、「6月10日、全ての営業トラックは全体ストライキを行い、成都市向け、または成都発のいかなる運送も禁止する。これに違反するものは全て報復されるし、分からず屋は打倒される、反抗者は”その場で解決”される。ストライキの責任は、万に上る運転手仲間によって担われる」でした。

     報道では、更にトラック運転手の仕事の実情が詳細に記述されていました。しかし、ニュースソースは不明でした。また、「海外メディアによると、今回の大ストライキに至った主要原因は、燃料値上がり、輸送費の安さ、様々な名目の通行料、渡橋料、延着による給料べらし、各地の交通警察による様々なトラック運転手に対する搾取」だと述べています。「誰もが承知しているが、中国の貨物運送量の76%はトラック輸送頼りであり、この巨額の数字の背後には、道路上の遊牧民族ともいうべき3千万トラック運転手の献身がある」とあり、この報道や他にも、中共政権が倒れる未来を予想した内容もありました。

     ボイス・オブ・アメリカ(VOA)や、RFI(フランス国際放送サービスの)中国ウェブサイト、自由アジア放送などは、このニュースを短く報道しましたが、ロイターやAP通信、中国に支局を持つ全ての英文メディアは、このニュースを全く報じませんでした。

     ネットを調べて分かったのですが、1800万人(全国のトラック運転手3千万人で、6割が参加したとしての数字)、10余省が参加した超大型ストライキにしては、ネット上のビデオや写真はほとんどありません。幾つかのストライキの数枚の写真がありましたが、いつのものか不明で、湖南のそれは6月8日のものでした。またストライキ参加者は誰もインタビューを受けていません。唯一、自分はトラック運転手の親戚だという”西安の記者”(所属不明)が発言しているだけです。トラックが延々と繋がっている写真も、ストライキなのか、ただの渋滞なのか不明で、日付も場所も記されていません。中国国内のトラック運転手のネットサイト「トラックの友」も通常通りでした。ツイッター上でだけ、このニュースがリツイートされているのですが、一向に具体的な解説も写真もありません。各地のツイ友も、地元では何も起こっていないとしています。そんなわけで、自分でネットを調べて見ましたが、その結果、このニュースは三つの要素から構成されていることが分かりました。

     袁斌が言うところの、今回のストを招いた主要な原因である、燃料価格の値上がり、安い運賃、様々な名目の通行料、遅れによる給料減額、各地の交通警察のピンハネといった資料の出所は、中国社会科学文献出版社が今年3月に正式出版した「中国トラック運転手レポートNo1」という236ページの本でした。これは伝化慈善基金会公益研究院が2017年度から始めた自主調査で、精華大学社会学部学科長の沈原教授が責任者となって、中国の3千万トラック運転手に対して行った研究によるものです。この報告が出されてから、中国の大ネットでは様々に詳細な報道がされて、トラック運転手層の5大特徴、各種の問題、労働環境の改善に関する九つの対策などが詳しく報じられています。袁斌の報道は、専らこうした公開資料を分析したものです。

     過去数年にわたって、中国各地では確かに地方性のトラック運転手の小さな抗議活動があって、6月8日には、中国の、例えば湖南や江西の堤防などで小規模なトラック運転手の抗議活動が行われ、写真もネットに上がっています。

     また、全国トラック運転手連盟という組織は確かにあるのですが、それはブラジルにあるのです。中国は、こうした組織を厳しく取り締まっており、袁斌の”報道”にしか登場しない謎の存在です。今年5月下旬に、ブラジルのトラック運転手たちは、5月21日から全国的な大ストライキを行いました。その原因は燃料の値上がりで、ストライキは11日間続き、全国各地の燃料、食品が不足となり、交通はストップし、ブラジルの航空業界や、農業、サービス業などの業界が大損害を被りました。こうした深刻な結果は、袁斌の報道でもそっくりコピーされています。

     で、この1800万人が参加した610トラック運転手全国大ストライキの話は、それっきり後続の報道はありません、つまり上述の要素を組み合わせた「お話」だったのです。

     ★トラック運転手がなぜ、「革命階級」に選ばれたのか?

     トラック運転手という社会的グループが、今回選ばれたのはその暮らしぶりの5大特徴の中に、「バーチャル団結」があるからでしょう。前述のレポートでは、トラック運転手は仕事や生活で、スマホとインターネットを高度に使いこなしていることが指摘されています。積荷の存在する場所、ナビゲーション、救援要請、相互援助、友人との連絡、時間つぶしが、トラック運転手がスマホとネットを使う6大ポイントでした。この基本的な使い方の中で、二つ、特に注目に値するのは、一つはスマホを使って、交通網で助け合う仲間だということ。もう一つは、ネットを利用して、さまざまな強いきずなと交流の場を持っていることです。互いに自分たちの意見を交わし、批判し、表明し、訴える中で、グループとしての団結を生み出しているのです。

     こうしたネットを使った「バーチャル団結」とでもいうべき運転手仲間ならではの極めて重要な特徴を持っています。「全国のトラック運転手が大ストライキをやれば、こうしたバーチャル団結精神がひょっとすると、大衆を動員する働きをするのではないか、というのがこの”ニュース”が流された理由でしょう。

     6月11日、中国の左翼青年たちがやっているサイトの「土逗公社」に、「闘うトラック運転手たちの任侠街道」なる一文が発表されました。そこでは、トラック運転手の社会貢献は大変大きく、「不断に膨張する消費世界を支えているにもかかわらず、彼らの暮らしに注意を向ける人は少なく、昼間は夜の暗さがわからない」、「道路上で数々の苦難に出合って、プレッシャーを受けている」、「反抗する意思と能力をもち、様々な人々と知恵や勇気を競い合っている」、「ネットでいかに相互援助のサイトを運用しているか?」。トラック運転手を主役に、こうした愛と憎しみのドラマをみなさんに、お伝えしたい、などと書かれていました。

     しかし、「中国トラック運転手レポートNo1」が、トラック運転手に行ったインタビューと、この「土逗公社」サイトの記事を含む、”6月10日の全国ストライキ”についてのあらゆる報道は、すべて転載、転載ばかりです。ですから、一体、トラック運転手たちは、自分たちが”革命階級”たる使命を与えられたことを、知っているかどうか、それをどう感じているかについては、外からはさっぱり分かりません。

     ★バーチャル革命は本物に変わるのか?

     2011年の「中国ジャスミン革命」は”創造”へのきっかけとなりました。2017年の「郭文貴ツイッター革命」は、革命的大衆が革命指導者を求めたものでした。2018年の「610全国トラック運転手大ストライキ」は、革命者が革命階級を求めたものです。この三度の革命創造家たちと支持者たちは当然、革命がバーチャルからホンモノに発展することを願い、ネット上の怒りが革命行動に転化することを望んでいました。しかし、中国政府は、惜しみなく大金を投入して膨大なネット監視システムを構築していますし、全国で200万人にのぼるネット監視分析要員を抱え、ネットと現実の世界の連動を阻止して、革命がバーチャルから本物にならないようにしています。

     私は今回のニュース自体の真偽はどうでもいいのです。ただ、注目すべきは以下のような現実があるということです。

    ;「1000万人にものぼる革命大衆(行動者、行動予備軍、便乗組)はとっくに存在している。そして、彼らが求めているのは革命のリーダーだった。それが、これまでは行動芸術家の艾未未や、権力闘争に敗れた側のビジネスマンの郭文貴だった。レーニンの革命理論に従えば、革命をするには、革命的階級、革命組織、革命リーダー、そして革命の経費が必要です。そして、中国では革命大衆は、少なく見積もっても一千万は超えており、彼らは受動的に革命指導者がやってきて自分たちを組織してくれるのを待っているのではなく、自分から探し求めています。その求める対象には、革命のリーダー、革命的階級、革命のチャンスが含まれているのです。ここで紹介した2011年のジャスミン革命、2018年のトラック運転手大ストライキは、つまり、彼らがそのチャンスを生み出そうという試みだったのです。

     中共当局にとっても、中国の革命家たちにとっても、この攻防戦は長期にわたる厳しい戦いになることでしょう。(終わり)

     原文は;台湾《看》杂志,2018年6月,第191期,https://www.watchinese.com/gb/article/2018/23846)

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