• ★反貧困の戦い — 「魚」ではなく「漁」を与えるトランプ★ 2018年07月21日

    by  • July 25, 2018 • Uncategorized, 日文文章 • 0 Comments

     今年の6月から7月にかけて、国連とホワイトハウスは前後して二つのレポートを発表しました。前者は米国の貧困問題に関してで、後者は米国が50年間続けてきた反貧困との戦いを止める宣言です。この二つの報告の間に、米国の有名なトークショーのキャスターが「2015年の貧困統計を使って、2017年に大統領になったトランプのせいだ」と”オウンゴール”発言をしました。

     この”自殺点”を軽んじてはなりません。それが今の米国の民主党を代表とする”進歩派”と保守主義の、反貧困戦略での深刻な分裂を体現しているのです。

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     ★なぜオバマの”政治成果”をトランプに?

     国連人権理事会の極度の貧困と人権問題に関する特別レポーターのニューヨーク大学法学部・フィリップ・アルストン教授が国連に報告書を提出しました。それによると、現在、米国には4000万人の貧困人口がおり、そのうち1850万人が「極度の貧困」状態で、更に530万人の生活状態が「堪え難い」もので、第三世界の極貧階層に等しいものだとありました。注目に値するのは、この教授が引用したのはオバマ大統領時期のデータだったにもかかわらず、彼はトランプ政権を批判したのです。

     「今日のロシア」の米国チャンネル「Redacted Tonight」が鬼の首を取ったように、政治風刺番組で、多くの米国のトークショーキャスターに発言させ、7月2日にはジョン・オドンネルにこの報告を元に、トランプが貧困を生み出したと批判させました。「米国が一番貧乏人を作り出しているなんて聞いたこともなかった」と。しかし、この放送での事実が間違っていることに気がついた外国メディアは、「オバマ政権当時のデータで、なぜトランプが貧困を生み出したと言えるのか?」と疑問を持ち、件の教授にインタビューしたのですが、教授は、資料が古いのを認めつつも、「だとしても、やはり自分は現在の情勢悪化はトランプのせいだと思う」と答えたものです。

     米国のメディアと学会は極端に左寄りで、すべて進歩派(新自由主義)の牙城で、彼らのお気に入りのオバマの悪口は決して口にせず、悪いことはみなトランプのせいにしてしまうというのは無茶です。

     2016年の選挙期間中、私は時間をかけて、当時の激しく対立した選挙情勢をもとに、米国の現状を知ろうとしました。そして分かったのは、米国の貧困人口が増加し、中産階級の数と収入が減っていることなど様々な社会の病でした。米政府機関が当時発表していたデータは大変よくそれを説明するものでした。(訳注;何清漣氏は「トランプ現象から伺える米国政治の三つの乖離」など選挙前の一連の論評で度々この問題を取り上げてきた)

    ★オバマ政権時代はメディアに黙殺されていた貧困のデータ

     米国家庭の5家族に1家族は誰も働いていない。2016年4月22日、アメリカ合衆国労働省労働統計局が公表したデータでは、2015年の全米8141万家庭のうち、誰も働いていない一家が1606万家族、19.7%でした。1995年にこの統計を取り始めてから、この数字には大きな変化はありません。
     1995年のそれは18.8%、2011年には20.2%で、2012年、2013年は20%、2014年に少し下がって19.9%,2016年が19.7%です。まさにビル・クリントン大統領がグローバル化推進の旗手として、大量の製造業が中国などの発展途上国に移転し、米国の失業現象はますます深刻になっていったのがこの20年でした。

     中産階級の数は既に米国人口の半分を割って、収入も減っています。ピュー・リサーチセンターの2015年12月のレポートによると、米国中産階級家庭の比率は1971年の61%から2014年の49.4%に減っています。中産階級は、もはや大多数ではないのです。中産階級の没落は収入の分配とともに、不平等の拡大はますます拡大しました。同レポートによると、2014年の米国の総収入の49%は富裕な家庭に流れ込みましたが、これは、1970年には29%でした。同時に、2014年の全米の総収入のうち中産階級の懐に入ったのは43%で、それは1970年の62%です。

     失業に連動して白人の中年男性の自殺率も大幅に増加しています。2013年5月2日の疾病管理予防センターの発表だと、1999から2010年の経済衰退とサブプライムローン危機の10年で、米国の中年男性の自殺率は28%上昇しています。うち白人のそれは40%です。つまり、失業が米国中年白人男性の自殺率上昇の主要な原因なのです。

     金持ちが主導する国家は保守化しますし、貧乏人が主導権を持てば国内政治はもっぱら変革へとなりますが、どちらも国の動揺を招きます。米国は一貫して、自国は中産階級を中心とする社会階層構造だと誇りを持ち、中産階級家庭が全国の家庭の大多数であり、それが社会の安定に寄与し、社会消費を促進すると思ってきたのです。しかし、今世紀になって、米国の中産階級は日増しに縮小し続け、米国の衰えとなり、また、それが今後の米国政治の肝心要の問題となってしまったのです。

     過去数年、民主党、共和党の体制派はどちらも、実行可能な解決方法を提起できませんでした。そこで、選挙民たちは、どうしようもない絶望感の中で、政治の素人であるトランプに目を向けるようになったのです。これが2016年の大統領選挙の社会的背景でした。

     ★福祉の拡大か、就職先の拡大か?

     アルストン教授ら”進歩派”のエリートたちは、意図的に米国の現在の就職機会の増加に目を向けようとせず、ずっと貧乏人に食料切符を提供することにこだわり続け、トランプの金持ち減税を批判してきました。ホワイトハウスは7月12日、これに真っ向から反するレポートを発表しました。それは「米国は1964年に『貧困戦争』を始めたが、既に勝利に終わったというものでした。レポートは、消費とのバランスで、米国の貧困率は1961年以来90%減って、現在、貧困ライン以下の米国人はたった3%だ、とするものです。
     
     このレポートの背景は、つまり、トランプ就任以来の一連の経済政策、例えば、国際資本の米国誘導は製造業を復活させ、就職チャンスを急速に増加させ、失業率を18年に最低の3.8%に下げ、レーガン政権以来、最良の状態にした、ということです。

     今年4月、貧困者への医療保険と医療補助、栄養補助計画を含む低収入国民への就業促進援助計画の行政命令に署名しました。この二つの計画は1964年1月、当時の民主党のリンドン・ジョンソン大統領は政権スタート時に、「貧困撲滅戦争」という言い方で、貧困市民に対する社会のセフティーネットとして、開始されたものです。

     この行政命令は、トランプ政府はケンタッキー、インディアナ、アーカンソー、ニューハンプシャーが出した、医療補助を受けている人に仕事をさせよう、という要求に応え、許可を与えたの です。これは、ジョンソン大統領が始めた計画に対する、初めての制限です。

     今年6月には、米国下院は僅差である農業法案を通過させましたが、その中には、食料補助の福祉措置を受けている大人に仕事をさせよという内容がありました。民主党議員全員と共和党議員20人が反対しましたが、現在、上院の通過待ちです。

     就職情勢が順調なことから、同報告は、今が、社会福祉措置を受けている人、無職で、障害者以外の人々に対する就職を要求を拡大するのに大変いい時期なのだとしています。結局のところ、仕事への要求は現在、福祉措置を受けている人々の生活を改善し、同時に仕事の重要性と尊厳を尊重することになります。

     こうしたことが、アルストン教授らに言わせると、「すでに穴だらけの社会のセフティーネットのカナメを破壊する」と非難されているのです。

     この論争は、米国ではもう半世紀近く続いています。つまり、貧困問題を解決するのには、仕事先を増やすべきか、福祉の範囲を広げるべきかということです。

     ★トランプは、「魚ではなく、漁を」

     自由主義経済思想を世に広げるのが難しい理由は、人々に与える少なからぬ利点が理解されにくいことにあります。例えば、福祉主義を唱える左派の方が、基本的な福祉を拡大し、貧困差を縮めることが出来る一方、自由市場主義の右派は経済発展にしか興味がなく、貧乏人などどうでも良いと思っている、といった誤解があります。これは事実ではありません。米国の学者だってとっくにこの問題に気がついています。

     1964年にジョンソン大統領が「貧困との戦い」を開始して以来、増税と福祉拡大が主要手段となってきました。しかし、米国の学者は、「貧困との戦い」が始まってから、福祉予算は膨大に膨れ上がったにも関わらず、貧困率は変わらず、ジニ係数は1964年の0.36から、2010年の0.44に上がってしまったことを発見しました。この現実は、社会メンバーが福祉に寄りかかるならば、長期的貧困を生むことを、学者連にも認識させ、そこから抜け出す方法を考えるようになったのです。

     ヘリテージ基金の研究によると、米校区の貧困率は第二次大戦以後穏やかな下降線をたどってきましたが、1964年の「貧困との戦い」がスタートしてから、福祉費が膨れあがり、貧困率は下がらず、貧富の差は却って広がりました。1000億ドルの福祉予算を使った1960年代後期に、貧困率は約13%でした。その後、福祉関係支出は毎年増え、2013年には毎年9500億ドルになりましたが、貧困率は一度も下がったことはなく、13%を上下しています。

     国勢調査局の統計レポートによれば、2015年の米国の貧困率は13.5%で、貧困人口は4310万人で(貧困ライン以下の家庭。四人家族の年収は24000ドル以下。収入ベースで、今年7月のホワイトハウスの消費率とは異なる)、つまりこの長らく続けられてきた持久戦は基本的に失敗だったということです。

     オバマ政権の8年間、最初の5年間は不断に福祉支出を拡大してきましたが、その結果は2013年になって、米国の貧富の差は不断に拡大を続けていることを認めざるを得ませんでした。2015年11月の共和党候補を選ぶ初弁論で、司会者のランド・ポールは、貧富格差問題が注目されていない中、あえて勇敢にも、「当然関心を持つべき問題で、どこが一番、貧富の差がひどいのか?民主党の首長の年であり、民主党政権の州であり、民主党政権の国家である」と答えました。

     ここで、マービン・オラスキーが1992年に出した「米国の同情心と悲劇」(The Tragedy of American Compassion)に触れておきましょう。これは1990年代に「福祉と社会政策に関する最重要な本」と言われ、元米国下院議長のニュート・ギングリッチ(共和党)が「アメリカの契約」のお手本だと評価しました。

     その中心思想は、

     米国人は小さい時から同情心が必要である、とりわけ貧しい人々へのそれは大切だと教えられる。だから、政府は数多くの貧困撲滅法案を作り出し、宗教や社会団体も各種の貧困救済活動を行う。金持ちは各種のファンドに寄付をして、米国は日増しに「福祉社会」になる。しかし、同情や気前の良さ、善行心といった米国の良き伝統が、今では社会の不満や腐敗を生む主要な原因になってしまった。1960年代から、米国の貧乏人の心は、自分で働くより福祉措置を享受したほうが良いと思うようになってしまった。だから、政府は福祉救済措置を減らし、多くの人々を就職させ、家庭と社会の関係を密接にすることによってこそ、貧困化からの脱出をはかれるのだ。

     ということです。

     オラスキーの思想的遍歴も注目されます。青年期は典型的な無心論者で大学ではマルクス主義者で、1972年には米国共産党に加入した典型的な社会的反抗者でした。自分でも、当時、「殺すなかれ」という以外の全てはやったよ、と認めています。しかし、一年ちょっとで、1973年末には共産党を離党し、1976年にキリスト教に帰依しています。

     こうした経歴を持つオラスキーの福祉主義に対する批判は極めて詳細なもので、保守主義が福祉国家(ここの福祉政策に反対してるわけではない)ん反対する二つの大きな考え方、例えば「いき過ぎた福祉は救援の対象者に仕事へのやる気をなくさせ、その人格、尊厳を失わしめる。政府が一旦、政府が守るべき一線を超えてお金をばら撒くなら、必然的に辛い仕事に耐え、自己実現へ向かおうというプロテスタンティズムの精神を破壊し、ビジネスに携わろうという経営者の積極性を失わしめ、自由市場経済を傷つけるだろう」と述べていますが、鋭い批判であり、この種の批判書では右にでるものはありません。

     この「米国の同情心と悲劇」が述べてい道理は、中国のことわざにもあります。「人を助けるなら、魚を与えるのではなく、漁法を与えよ」です。共和党の選挙民の7割以上が”金持ちの肉”を貧乏人に”輸血”することには反対しています。今、トランプ大統領が保守主義的な反貧困戦略を守って、民主党の長年の、「魚を与える」やりかたを「漁法を教える」に変えているのは、貧乏人の自立と自尊心を育てるにあたって有利なばかりでなく、米国の未来の発展のためにも有利なことなのです。(終)

    原文は;何清漣專欄:反貧困之戰-川普變「授人以魚」為「授人以漁

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