• ★中国金融システムの爆弾処理と金融難民★  2018年7月30日

    by  • July 30, 2018 • 日文文章 • 0 Comments

     6月初め以来、中国では約150社以上のネット貸金会社が「突然の爆弾」に見舞われました。この「爆弾」とはP2P(ピア・ツー・ピア・ネット上の貸金業)の用語でP2Pを通じての投資が投資家に元金・利子を償還出来ず営業停止したり、逃亡、連絡が取れなくなったり、倒産する問題を指します。7月18日の1日だけで23社が営業停止となり、そのうちの十余社は100億元単位で、最大の阜興グループ系の3社の総額は270億元です。こうした「爆弾」で損した人々は「金融難民」と呼ばれています。

     ★銀行監査会主席の警告

     投資家にとって不安が深まるのは、この150社で「爆弾」が終わりと言うわけではなく、2014年にはこの種のネット貸借ブラットフォームは総計260もの「爆弾」があったことです。今回、P2Pが、政府の「爆弾処理」の対象になるにあたっては、事前警告がありました。銀行監査会主席の郭樹清が、6月中旬、上海・陸家嘴での金融工作会議の席上で、12文字からなる談話を発表しています。それは「金融拆弹,定向爆破,压力测试(金融爆弾処理、方向性を定めて爆破し、圧力を測る)」でした。もっとも注目された警告は「理財商品の収益率が10%を超えるものは、元金を失うことを覚悟せよ」でした。この時、私はツイッターで、「政府は一部の金融プラットフォームの貸し倒れさせる準備しているよ」と投資家のツイ友に警告しました。

     郭樹清が言及した中国金融のシステム的危険性には、銀行の巨額の不良債権(不動産業界の借金と国営企業の借金が最大)、巨額の地方債務(メディアはちょっと前に、今年は22兆元の地方債の期限が来て支払い出来ない事例が各地で爆発するだろうと報道)、シャドーバンクシステムの各種の金融プラットフォームの「爆弾」が含まれます。「爆弾」がかくも多いのでは、順序をつけて処理していくしかありません。P2Pがまず第一の「方向ずけされた爆発」とされました。総額1.3兆元の規模であるP2P業界は、252兆元の銀行の総資産からいえば、たった1000分の5でしかありませんから、体制に与える影響は小さいので、政府は、まずここから、手をつけました。第二に、このプラットフォームは百万人から千万人を超す「金融難民」を生み出すでしょうが、それでもその損失規模は、政府の生死に関わるほど深刻にはなりません。こうしたP2P投資者の多くは中産階級で、大多数の投資額は1〜5万元程度だと分かっていますので、「爆弾処理」をしても、始めは権利がどうのとか騒がれても、命がけではやるまい、しばらく経てば、怒りは次第にただの恨み節になってしまう、と政府ははっきりと承知しているのです。

     今年満期を迎える22兆元の返還不能問題のプレッシャーは大変重いもので、政府の重点はそちらに置かれています。

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     ★中国の投資家はなぜ、政府が責任を負うべきだと考えるのか?

     多くのプラットフォームが消え失せ、中国の金融難民たちの元手はパアになってしまいましたが、この責任は政府にあると彼らは考え、政府に責任を取れと要求します。これは「中国的特色」で、米国ではあり得ません。この違いは米中両国政府の経済関係での役割の違いから起きます。

     米国は私有制を基礎としており、政府は直接各種の経済資源をコントロールしていませんで、主にマーケットのガードマン役であり、経済コントロールの手段としては、主に通貨政策、議会立法です。例えば、独占禁止、資本マーケットのルールづくり、経済領域の開放や閉鎖、制限などです。ですから、米国の投資における危険は、投資家自身が負います。たとえ、投資会社が詐欺行為をしても、法律で罰せられるだけで、政府が投資会社に替わって賠償することはありません。例えば、2008年のリーマンショック後には、米国人の93%の財産が減少し、半数近くの人々が4割の財産を失いましたが、投資家が政府に賠償を求めはしませんでした。というのは、政府はただの市場のガードマンであり、各種の投資銀行や投資会社の信用を裏書きしているわけではないからです。

     しかし、中共政府は政治、経済、文化の三大権力を皆、独占している全能の政府です。経済上は国有経済を主導とし、土地、鉱山、森林、湖水河川など全ての主要資源は国有です。政府は資源の所有者であり、分配者です。国有企業は、あらゆる国家の安全と経済の命脈に関する重要領域をコントロールしています。ですから、政府はフィールド上のプレイヤーでもあり、共産党が司法を牛耳っていますから、あらゆる利益に関わるトラブルの審判でもあるのです。この数十年来、中国で発生したあらゆる経済にかかわる抗争の矛先は、最後は皆政府に向かいます。全能の政府が統治する国ですから、政府があらゆることの最終的な責任者なのです。

     P2Pネット貸し出しプラットフォームが投資者を勧誘、誘引した際に強調したのも、自分たちには政府のバックがあるということでした。例えば、7月中旬の「爆弾」だった杭州の「火銭理財」の宣伝文句は、「国資がバック」でした。爆弾が破裂する数日前まで、火銭理財は、自分たちが「国家商務部の信用弁公室の監督のもとにあり」「中国電子ビジネス協会」が出した「企業信用AAA級信用企業」の推薦があると宣伝していました。

     ★中国政府はなぜ責任があるか?

     中国政府がネット金融プラットフォームの爆弾で負うべきは二つの重い責任です。

     一つは、政府の監督管理が、深刻なまでに不適切なことです。中国は2007年からいわゆる「金融創新」改革として、かなり膨大なシャドー銀行システムを作りました。P2Pネット融資はそのうちの一つです。このシャドーバンクシステムは、生まれたその日からすでに深刻な問題を抱えていたのです。政府側の「伝播大資料」でも、泛亜、MMM、卓逹などの大型借金機関は、参入障壁が低いのを利用して、監督管理条件がないままに、様々な名目の理財商品を売り出していました。ネット上のプラットフォームでは度々、「金融創新」の旗印を掲げ、銀行の預金金利よりはるかに高い利息で、投資家を引きつけ、ネットのプラットフォームは、詐欺、マネーロンダリング、違法出資金集めなど犯罪の温床になってしまいました。資金の連鎖が絶たれることによって、不断に金融会社が「爆弾」となって事件を起こしました。民間の「非新聞」ネット(政府によって閉鎖された情報サイト)の分析では、給料欠配、商業詐欺などが引き起こした「群体制事件」(三人以上による集団訴え事件)は、2015年の統計で事件の半数を占めています。

     中共政府は2015年から、毎年、P2Pネット貸金業の危険性を改めさせようと、ネット上の貸し借りの仲介業に戻させるべく、「届出制」を敷こうとして、また、この度、それを延期しました。(訳注;統一基準が作れなかったため、と言われる)政府の監督管理がないことから、政府の役人と金融システムが共謀して、中国のシャドーバンクはずっと、「制度を整える」としつつ、一方では「野放し状態」でもあったため、一面では少なからぬ金融プラットホームが「爆弾」となり、別の方面では、バックが強力で、リソースが豊富な企業が、続々とP2P業界に参入したのです。

     中国政府のこうした経済管理については、「中国:溃而不崩」(邦訳;中国——とっくにクライシス、なのに崩壊しない“紅い帝国”のカラクリ – 在米中国人経済学者の精緻な分析で浮かび上がる – ワニブックスPLUS新書) で書きました。

     経済管理者が同時に、自分自身が経済の厄介事を起こす張本人だということから、最後にはどうしたって、「爆弾処理班」が必要になり、自分たちで埋め込んだ爆弾を処理しなければならず、いろいろなへんてこりんな「治療」が行われます。

     二つには、中国政府はこの30年来、通過のジャブジャブ発行で、中国人も始終、自分たちの財産が目減りするのを心配して来ました。私がツイッター上で、「お金と競争する中国人」で、こう書きました。

     1990〜2017年の27年間、中国の広義の貨幣(M2)は123倍になった。1990年には中国の広義の通貨は1.39兆元だったが、2017年末は、167.68兆元になった。1990年、中国のGDP総額は米ドル換算で3608.58億ドルだったのが、2017年には12.24兆ドルで40倍に満たず、通貨供給量の増加の3分の1にもなっていない。(訳注;M1は、現金通貨と預金通貨の合計。M2は、M1に準通貨=解約することでいつでも現金通貨や預金通貨となる定期性預金を含めたもの)

     通貨供給量がGDPの速度をはるかに超えてしまっているなら、その結果は深刻なインフレになります。この27年間で、個人の財産が123倍になってこそ、通貨供給量とイーブンになるのです。中国人がインフレの強い圧力を感じないでいられるのは、前の中央銀行頭取だった周小川が発明した「貯水池」論、つまり株式市場や不動産市場を貯水池にして、流動性を生み出していたからです。

     これによって、金持ちは土地や資産を奪い、丸儲けして海外に移転させることができましたが、中上層階層と中産階層は、ただ、不動産が買えただけです。中国の不動産は、中国の溢れるほどのお金の貯水池なのです。しかし、この5年来、大都市の不動産は、ややもすれば1平米34万元もして、中、小都市の不動産価格も急速に値上がりし、数百万元の現金でもなければ、根っから買うことが出来ないものになりました。

     多くの中・低階層の手中にある余分なお金が減るのを恐れる人たちは、しかたなくP2Pに投資したのでした。こうした理財商品の利率は、別に高くありません。年間の収益率は最高で14.2%、多くは7〜8%でした。ですから、P2P投資家は、欲張りと言うよりは、中国の中央銀行が通貨をジャブジャブに発行する状況下で、自分の財産保全をしようとしたのです。

     ★いつまでも「爆弾処理」は続けられない

     1990年代後期から、中国経済の成長は完全に資源に対する過度の搾取によって行われて来ました。経済成長はどんな領域でも、社会的反抗は大変激しいものでした。しかし、政府と民間の利益をめぐる争いがもたらす社会矛盾は、中国の社会危機の一面に過ぎません。さらに重要なことは、こうした経済モデルは、「酖毒を飲むまで喉の渇きを止められない」ことにあります。ある分野で短期的利益を得ようとすれば、同時に時限爆弾を埋設することになってしまうのです。

     郭樹清のレポートで言及された不動産の負債、地方政府の債務、インターネット金融に存在するシステム的危険は、まさに誤った政策によって、埋められた爆弾なのです。これらの爆弾は大小様々で、いつでも爆発する状態です。中国政府は2016年から、通貨の安定維持(1回目の戦いは外貨準備防衛戦)の戦いを始めましたが、これはつまり金融システムの様々な爆弾を処理しようとしたわけです。

     天下に弾けないバブルはありませんし、中国経済のバブルぶりは史上空前のものです。中共政府は、考えられるあらゆる手段を使って、極力、その破裂の到来する時間を引き延ばして、時間を空間に変えて、最後に軟着陸を果たすことを願って来ました。2018年は、中国政府が本来なら地方債務の爆弾を重点処理するはずでした。しかし、人知は天意に及びません。期せずして中・米貿易戦争が起こり、完全に中国政府の本来の意図を、混乱させてしまいました。爆弾撤去の困難さと中国経済の不確定性に拍車をかけてしまったのです。(終)

     原文は;中国金融系统拆弹与金融难民的产生  元のページのリンクがきれています。こちらにもあります。>https://botanwang.com/articles/201807/%E4%BD%95%E6%B8%85%E6%B6%9F%EF%BC%9A%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E9%87%91%E8%9E%8D%E7%B3%BB%E7%BB%9F%E6%8B%86%E5%BC%B9%E4%B8%8E%E9%87%91%E8%9E%8D%E9%9A%BE%E6%B0%91%E7%9A%84%E4%BA%A7%E7%94%9F.html
     

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