• 2018年「北戴河政治予想」の虚々実々  2018年8月5日

    by  • August 6, 2018 • 日文文章 • 0 Comments

     近年、いつもこの7、8月になると、いわゆる中共トップ連の「北戴河会議」が、海外の中国語メディアのホットな話題となります。でも、中共の制度にはそんな会議は別にありませんし、政府側もこの会議に関連する情報を発表したことはありません。メディアの分析や論評もみんな「北戴河政治予想」といったものに過ぎません。

     今年の「北戴河政治予想」は、ここ数年来のより遥かに危機的なもので、「北戴河会議では、江沢民(か、誰か元老の重鎮)が、習近平に向かって『お前はもうやめちまえ』と言い出し、他の元老も賛同して、習近平が低姿勢でお説教される」というものです。

     ★2018年北戴河政治予想の重点

     なぜ、正式でもない、有るか無いかも判明しない会議がこんなに重視されるのか?それは、つまり中共政治が密室政治で、毎年、7月中旬から一カ月、中共の歴代トップの元老たちが、河北省の秦皇島の北戴河に休暇に避暑に来て、元老たちが推薦した現任の最高指導者が、国の大事、主に人事の調整を行うからです。「北戴河」は毛沢東の時代から始まって、時代とともに変化し、次第に元老と現在の指導者の間の政治バランスと妥協を求めるための会議になったのでした。ですから、まさに北戴河は、外部から見れば、老人が政治に干渉する重要な舞台とされるのです。

     習近平は2012年に権力の座についてから、「反腐敗キャンペーン」で、政・党・軍の3大システムの「江沢民路線を胡錦濤が維持」を完全に覆し、一説によれば200万人もの役人たちが失脚したと言われます。ですから、習近平時期には「北戴河政治予想」がいつまでも、「元老の不満、軍将校たちがクーデータを起こそうとしている」といった話題が尽きないのです。こうした「北戴河政治予想」が本当になることはなくとも、中共トップから見ればその悪影響は甚だしいものです。2015年にも世間で「北戴河クーデター」が起こるぞ、といった噂がホットに流れた際には、とうとう北京も我慢ならず、新華社傘下の「財経国家週刊」雑誌を使って、「北戴河で大事なことが決まるなどという時代はとっくに過ぎ去っている」という記事を掲載させました。

     ただ、今年の違いといえば、一つには北戴河会議の時間が、秦皇島公安局の発表によって、7月14日から8月19日までであると、大体の予定が決まったことです。外国メディアの米国の多維ニュースは、習近平が7月29日に外国訪問を終えて帰国し、8月2、3日には「人民日報」から、政治局の7人の常務委員グループの情報がなくなったのは、北戴河期間に入ったからだ、と報じました。二つ目は、各種の噂の多さです。その中で一番影響が大きく、広く伝わったのはツイッター上で“阿里妞妞”と名乗る人物が7月12日に流したもので、「①王滬寧(第19期中央政治局常務委員・中央書記処書記主任)が、米中貿易戦争の責任をとって解任される。②胡春華が変わって常務委員になり、次期後継者となる。③憲法改正がまた行われ、国家主席の任期制が書き込まれる、でした。これが広範に広まったので、一部の西側国家の中国語メディアでもそうした予想が盛んになりましたが、7月31日に、多維ネットニュースによって、正式に「デマ」だとされました。

     しかし、香港メディアが報道した「中国国内では、江沢民、朱鎔基、温家宝などの元老たちが、連盟で政治局に中共19回大会以後の左翼化による個人崇拝の出現を指摘して、政治局拡大会議開催をようキュした」という情報はまだデマだとはされていません。まだ8月20日には結構日数がありますから、外部ではこの北戴河での”政治局拡大会議”を期待する向きもあります。

     でも、私は、この元老たち、とくに江沢民・朱鎔基時代にとても仲良しだったとはいえない温家宝は二人と深い関係にありませんし、19大前に、孫政才を中央常務委員にしようという試みも失敗しています。(*重慶市書記を解任され、収賄で無期懲役判決)こうしたことを考えると、個人的には皆、大変不満であっても、「連名で上書」などはやらないでしょう。

     中央政治局拡大会議は特別な事情があるときに開かれる政治局の拡大会議で、メンバーは政治局委員に限りません。今年の「北戴河政治予想」の内容が、習近平の廃嫡に関わるものが多かったことから、多維ネットは「伝説の北戴河では最近の世論感情について話される」のだと”ネタバラシ”しています。

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     ★民衆の世論感情 — 習近平への大不満

     各種の習近平憎しの噂は7月上旬からすでにありました。一番大胆なものでは、習近平が外遊帰国後には、”王座”は失われているだろうというのがありました。しかし、そんなお話のクーデターはおこりはしませんでした。

     とはいえ、「デマで中共をやっつけろ」の盛り上がりには、確かに各種の習近平に対する不満は本当に存在します。厳しく取り締まられている社会や世論、外国から援助を受けていたNGOの大量禁止措置、社会的な自由がますます狭められている現状は、体制の外にある人々や、一部の知識人たちの不満を引き起こしています。しかし、それでも体制内部のエリートたちの共鳴を呼んではいません。体制内の役人とビジネス界の一番の不満は、「永久に続く反腐敗キャンペーン」なのです。

     官僚たちの不満の声は、とっくに朝野を揺るがしています。中国国内のメディア報道はプレッシャーが強すぎて、なかなか本音は言わないのですが、香港の「端伝媒」の2015年11月に掲載された「中国で県の書記なんか、よっぽど気が強く無いとやってらんないよ」という記事には、大変はっきりと、習近平に対する不満がどこからきているかが、いきいきと書かれています。例えばこんな具合です。

     取材を受けた県の書記は、2015年9月4日の四川南充市で477人が関わった汚職調査の結果を例に挙げた。同市の時の書記だった劉宏は、一銭も汚職をしていなかったが、「職務怠慢」によって3年の刑を言い渡された。この県の書記は、「四季が一緒くたになって、毎日変わるようだった」と以下のように述べています。

    「政治上の春。中共中央は、党規を粛清して腐敗をやっつけ清廉に、”民を愛したみに親しむ”重要性を再三強調。しかし、役人はみな反腐敗の猛烈な勢いに、自分たちの旧悪が暴かれるのではないかとびくびくもの。誰かが問題を起こせば、みな県委の書記のせいにされてしまう」

    「社会的な気分は真夏。ここ数年、すごいスピードで発展してきた間に累積した社会矛盾が浮かび上がって、集中的に爆発する時期になった。経済が落ち目になって失業率が高まったし、一人当たり収入も減った。その上さらに世論が開放されて、人々の価値観が混乱をきたし、社会が不安定になった。

    「でも、社会保障は逆に収穫の秋だ。大量の社会保険、貧民救済、社会保険全員加入、最低生活保障水準の引き上げ、底辺層中国人の生活水準の向上などだ」

     「しかし経済は真冬。企業は破産し、倒産は山の如しで、しかも始まったばかりときてる」

     ちょっと奇妙なのは、「春」 — 政治上の清潔さが歓迎されていないことです。これは、国家安全部の流れを組む、アメリカに逃亡したビジネスマンの郭文貴が去年、中国語ツイッターで真偽不明の”爆弾発言”によって、「王岐山を失脚させ、200万失脚官僚と家族の名誉回復を」と叫んで、海外の民主団体や少なからぬ国内のプロテスター、自由主義者にいたる支持を集めました。外部では、ずっと中国人の大多数は中共の腐敗を恨んでいるだろうと思っていたのですが、なんと逆に「反腐敗キャンペーン」の方が恨まれていたのだった、というわけです。

     「清潔な春」が嫌われているわけですから、「経済的に厳しい冬」ときたら、中国人には、その倍も嫌われています。「秋の豊かな収穫」 — 底辺層への恩恵 — などは誰もありがたいと思いませんから、結局、すべて「真夏のような」熾烈な社会的情緒になってしまうのです。

     ★「北戴河政治占い」の2冊のタネ

     中共エリート集団の不満は、今年の「北戴河政治」時期の二編の文章からありありと分かります。

     2018年7月24日に、清華大学法学院教授の許章潤による「当面の恐怖と期待」という一文が天測経済研究所のネットに発表され、あっというまに広まりました。中国当局の政治的後退が底抜けで、全国民に数々の恐慌状態を招いたことを鋭く批判し、天安門事件の名誉回復を定期し、国家主席の任期制回復、個人崇拝の中止、官僚の財産発表法案を提起しています。

     このうち、天安門事件名誉回復と官僚の財産公表以外は、ほとんど中国の体制内エリートたちに共通する考え方です。多くの民主活動家はこれに対して、「素晴らしい」と快哉の声をあげたのですが、この文書の「4つのボトムライン」の第一に挙げられている「長年続ける運動はやめよう」という一条を注意しませんでした。習近平時代になって「何年も続ける運動」というのは、反腐敗キャンペーンしかありません。これに続く、「8項目の期待」で求めている「役人の財産公表法案」というのは、実は、キャンペーン運動型の「反腐敗」をやめて、反腐敗を法的な軌道に乗せようということなのです。そして、「4つのボトムライン」にある「限度ある私有財産保護」というのは、習近平が反腐敗の中で徹底的に調査させた、重点的に打撃を与えた昨年の「ピンク色財団」(*親中共を標榜する私営企業)を含んでいます。このように逆鱗に触れたのですから、作者も、この先何が待ち受けているかについて、「言うべきことは言った。あとの運命は天に任せよう」ということでしょう。

     続いて、現任の安信証券のトップエコノミストで、国務院発展研究センター金融研究所の総合研究室主任・高善文の録音が流れたことです。高善文は7月28日に、山西証券の30周年記念活動で小一時間講演し、「中・米関係を回顧して、鄧小平時代にベトナム戦争を起こし、危険を顧みず、『仲間になる申請書』を書いて、それがこの40年間の中・米の新たな関係を切り開いた」と回顧しました。そして更に、高は現在の指導部は鄧小平の「韜光養晦」(*能ある鷹は爪隠す)の策を放棄してしまい、中・米関係を台無しにした。「2015年から、米国はますます中国を新たな戦略的ライバルとみなして」いるから、中国の今後30年から50年の国運に影響すると述べたのです。

     中国とベトナム間の戦争の背景については、中国国内では既に定説となっているのは、国内の情勢が鄧小平にこの一戦を決意させ、中には鄧小平がこの戦争を通じて、軍事を掌握しようとしたという分析まであります。鄧小平はカーター大統領と会見した時、ベトナム戦争に言及して「子供が言うことを聞かない時にはお尻を叩いてやらねば」と言ったという話は、鄧小平は米国に「ベトナムを叩いたのはソ連の勢力伸張を止めるためだった。米国に頭を下げたわけではない」と分からせたかったということだ、となっています。

     高善文の文章が今、ネットに流れたのは、文章の内容が現在の体制内の主流意見だからです。それは、習近平の強硬な姿勢が中米関係をだいなしにした、ということで、この文章も当然、「北戴河政治予想」の一つなのです。しかし、高善文はこの記事が流れるや、数時間後に自分の文章ではないと否定しました。同時に財新ネット上に「中・米貿易摩擦の奥深い憂慮 — 高善文博士の山西証券記念活動に関する正しい説明」として、録音と文章が全く違っており、録音と文章を比べてみれば本人のものでない事は一目瞭然だとしました。ですから、高善文がネットの文章を認めないこともまた一種の政治的な態度表明です。

     許教授も高善文の記事も、どちらも体制内人士の不満と心配の主なありようを表していますから、必然的に「北戴河政治予想」になり、予想する人々が元老たちが何かするだろうという期待につながっていくのです。

     私の結論はこうです。

     「北戴河政治」が生んだ「北戴河政治予想」(政府からすれば政治的デマ)は、中共の密室政治と共存するものです。しかし、歴史は、北戴河政治はただ与党内の権力闘争に関係するだけです。たとえ、2018年の「予想」の夢が的中して、習近平が二期だけで引退したとしたところで、体制内人士が「春」を感じるだけで、中国の経済の「冬」と、社会の世論の「炎夏」は変えることはできません。(終)

     原文は;2018年“北戴河政治猜想”的虚虚实实
     

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