• ★米「インド太平洋戦略」に旗色悪い 中国の「一帯一路」 2018年8月10日

    by  • August 14, 2018 • 日文文章 • 0 Comments

     7月30日、米国は、中国の「一帯一路」に対抗する「インド太平洋戦略」を正式に発表しました。その内容は科学技術、エネルギー、観光、インフラ建設を含みます。中・米貿易戦争がエスカレートしつつある時、米国のこの戦略には、当然、中国も深く注目していますが、多くの分析は、「自分たちは『一帯一路』に一兆ドルの”手付金”を払っているのに、米国がが1億1300万ドルしか出さないと言うのでは、お話にならない」という見方です。

     ★アジア太平洋戦略とインド太平洋戦略の違い

     米国も中国も、アジア太平洋(インド太平洋)地域の戦略構想には、第三の国々の力が必要です。中国の多くの分析はこの点が欠けています。インド太平洋戦略と一帯一路の、肝心な点は、どちらが沢山お金をばらまくか、ではなくどちらが多く「第三の国々を味方につけることができるか」にあり、中・米両国の力比べは、その第三の国々がどちらに対して政治的信頼を寄せるかにあります。

     オバマ政権が「アジア太平洋リバランス戦略」(2011年11月)を口にするより前に、米国の学会とシンクタンクは、「インド太平洋」という概念を使い始めていました。米国政府の「インド太平洋」という概念には、故意にアジア太平洋とインドを一つのまとまりと見ようとする、なかなか興味深い表現が見て取れます。ただ、当時は、政策レベルまでになることはありませんでした。それが、2017年12月18日、トランプ政府が「米国国家安全戦略」のレポートで、正式に、「インド太平洋」を米国の安全戦略中の最重要地域にして、欧州や中東より、米国国防戦略の最重要関心事になったのでした。

     米国のマティス国防長官は、6月2日、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)で、米国の理想とする”インド太平洋”は、安全、安定、繁栄と自由だとするインド太平洋戦略の5大原則と4大手段を述べました。この原則の中から、世界は米国の戦略とは、つまり地政学と経済地理学的な意味だとはっきりと見て撮りました。地政学上の重点は、海上の主導権を握り、中国の海上支配への野望を牽制して、経済方面の重点は地域内の国家の貿易と投資での協力によって、中国の日増しに強まる経済影響力を打ち消そうというものです。

     マティス談話以後、「インド太平洋」は外交分野で、ホットワードとなり、その違いは「アジア太平洋」は中共独裁政権を中心にしすぎていたが、「アジア太平洋」よりさらに広い地域を指しているということです。

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     ★米国のインド太平洋戦略の基本は「第三国の参加」

     中国の「一帯一路」にせよ、米国の「インド太平洋戦略」にせよ、どちらもただ国際政治の土台を作っただけで、それには第三国の積極的な自主参加を必要としています。

     中・米関係の研究では、第三国家(地域)の中・米関係への影響は、ずっと従属的な地位に置かれてきており、本来、重視されてしかるべきそれらの国家の意思は重視されてきませんでした。しかし、事実としてアジア太平洋地域には、例えば日本や韓国、フィリピン、台湾、朝鮮、ロシア、さらにオーストラリアやインドを含む多くの第三者国家が存在するのです。これらの国々と中国の関係は非常に複雑で、経済上は中国と密接な関係(つまり「経済発展は中国頼み」)でありながら、歴史と現実の中での領土紛争やその他の政治的葛藤によって、米国とはずっと安全上の義務や協力関係を持ってきました。(つまり、政治的には米国頼り)。こうした国家が、中・米の太平洋地域の競争における、第三の国々であり、その参加や熱意の度合いが、中米両国の地政学戦略の成否を決定するのです。

     日本を例に見ましょう。1990年代から、中・日関係はずっと比較的緊張したものでした。日本が国連常任理事国になるのを阻止するために、中国政府は何度も全国的な反日デモを裏で操つり、反日国民感情を煽りました。アジア太平洋地域での、暘谷の指導的地位をめぐる争いは久しいものです。オバマが中国排除のTPPを唱えた時、日本は大変積極的でしたし、トランプがTPP離脱を決定した後も、日本はずっとこの組織を維持に努力し、米国のカムバックを望んできました。オバマ政府が「リバランス戦略」に興味を持つようになって以来、安倍内閣はインド太平洋地政学政治に積極的に反応し、安全保障、経済協力、文化・人文社会交流の3方向の方針を定めました。2017年版の「開発協力白書」には、安倍内閣の提起した「自由解放のインド太平洋戦略」が政府の援助に与えた働きと、「海上交通の安全確保と発展途上国支援の法律整備によって、グローバル経済発展に貢献する」と書かれています。日本の「インド太平洋」地政学外交の実質は、政治大国の地位を求めるもので、中国との力比べゲームです。ですから米国の対中国に目標を定めたインド太平洋戦略を、当然歓迎するわけです。

     オーストラリアは、かつては中国と仲が良かったのです。しかし、中国が、それをいいことに、政界、学会、メディア業界に浸透を図っため、オーストラリア側に深刻な憂慮を引き起こしました。2016年、オーストラリアのターンブル首相はある調査を命じました。その結果、中国は、対オーストラリア浸透の一番、深刻な相手だと判明したのでした。中共は確かに、オーストラリアの政治に影響を与え、政府の各レベルパイプを通じていました。ですから、オーストラリアは、対中国防衛ラインを作りたかったのですが、相棒がいませんでした。今年3月に、シドニーで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)=豪州特別サミットで、オーストラリア外交官は、アセアン諸国と「インド太平洋戦略」の可能性を討論しましたが、多くのアセアン外交官からは、その実現性疑う声とともに、「インド太平洋」の概念の具体的な意味を問う声が聞かれました。ですから、米国が米国がインド太平洋戦略を正式に宣言したとたんに、7月31日には、オーストラリアの外務大臣が米国への投資計画で米・日と共に、豪州が、インド太平洋地域でのインフラ設備建設に協力すると宣言したのです。

     インドの北京に対する姿勢は結構、矛盾したものです。近年、中・印間の経済関係はずっと向上してきました。しかし、他の方面では、インドはずっと中国に対して傍観の姿勢です。一つには、インドは世界の諸事情に対して独立自主の態度を取ってきていることと、米国と同盟して、膨大な領土を持つ隣国である中国に対抗したいとおもっていません。別の方面では、しかし、中国とインドは海洋の概念では矛盾と衝突が存在します。中国が「真珠のネックレス」戦略でインドを包囲するかたちで航路を開発し、スリランカとジブチに港を建設し、不断に海上基地を拡大していることに、インドは脅威を受けています。数年前に、モディ首相はオバマ大統領と連合で声明を発表し、北京が南海での支配権を巡って、隣国と衝突していることを責め、再び、米国や日本、豪州などとアジアにゆるやかな安全保障のネットを作ろうという提案をしました。しかし、インド太平洋戦略の核心国家としては、中国との経済協力が強まっていることもあり、今回のアメリカが言うインド太平洋戦略には、日本や豪州ほど積極的ではありません。

     ★中国の一帯一路から、次々に離れる第三国家群

     中国が2013年に正式に「一帯一路」計画を打ち出したとき、本来は中国の膨大な生産過剰能力 — 高速鉄道建設を中心に、何十もの過剰な業界の生産物をその一帯の国家に輸出しようと言うものでしたし、それらの国々もこれに対して積極的に歓迎しました。しかし、2017年5月、北京で開かれた「一帯一路サミット」では、最初の勢いはありませんでした。それまでずっと中国と同様に「BRICs」と言われたインドやブラジルもこれに賛同しませんでした。インドはアジア投資銀行の第二の大株主ですが、モディ首相は参加を断ったのです。

     その理由は大変単純です。三年前にこの計画が出されたときには、中国は「お金あまり」でしたが、このときには「お金足らず」になっていたからです。「お金あまり」の時期に、中国政府は、資本の外国逃避の巨大な力を過小評価していました。そして、外貨準備高が4分の1減ってしまってから財布の紐を締めにかかり、外貨備蓄防衛戦を余儀なくされ、これを金融安定維持の重大な措置としました。北京サミットの前夜の5月4日、時の中央銀行総裁の周小川は、「中国金融誌」の政府マイクロブログに、署名文を寄せました。その要点は、ひとつは、「今後、一帯一路沿線国への投資は、中国だけが出資するのではなく、投資国の企業や機関が出資することで、危険を分かち合う」ことと、「中国政府の投資は人民元を主として、これまでのようなドルの大盤振る舞いはしない」でした。

     「一帯一路」のいわゆるグローバルな影響力と言うのは、制度が魅力があるからではなく、お財布のお金の吸引力です。過去5年間、中共は数千億米ドルを投入して、融資を通じて、アジア、東欧やアフリカの重大プロジェクトで、そのグローバルな影響力を高めてきました。しかし、一旦、中国が出せる米ドルが減れば、その指導力はそのぶん、低下するのです。

      現実に、一帯一路プロジェクトは多くの厄介事に遭遇しています。今年7月、ワシントンに総本部を置くコンサルタント企業のRWR Advisory Groupが発表した報告によると、2013年以来、中共の66の「一帯一路」沿線国家に対するプロジェクトの1674のインフラ整備計画のうち、すでに14%、234項目が、反対によって阻止されたり、困難に陥っています。大衆が反対している、労働者政策に抗議活動が起きたための施工延期や、他国の安全保障上の懸念など、そうした問題の大部分が、北京の不透明な発展融資方式によって引き起こされた争議か、管理不十分によるものでした。同報告書は、現在「厄介事」はますます激増しているとしています。

     中国も一帯一路への投資を引き締めにかかっています。中央銀行は「高度危険国家と地域の説明に関して」を下部に配布して、一部の国家へのプロジェクトの金融支援を引き締めています。そこには54の国家が列挙され、アジアでは、ラオス、カンボジア、ハザフスタンで、その他多くはアフリカの国家です。

     ウォール・ストリート・ジャーナル誌の最近の報道では、約70カ国が一帯一路計画に参加していますが、多くが多額の債務未返済を抱え、スリランカはIMFに債務解決を要請し、パキスタンも今秋にもそうなりそうです。パキスタンは目下、620億ドルの債務を抱え、その一部は一帯一路のプロジェクトによるものです。ですから、米国上院では16人の議員が、トランプ大統領に「IMFの最大出資国として、米国はその影響力を使って、IMFの融資金を一帯一路への中国への借金返済、または新たな一帯一路のプロジェクトのために使うことを禁止するよう」要請したと伝えられました。

     以上の分析が明らかにしたことは、米国のインド太平洋戦略は、始まったばかりなのに、中国の「一帯一路」は、既に旗色が良くないということです。中国が誇る「お金持ち」ぶりは、実は続けられないのです。中・米両国とも戦略の成否を分けるものは、どちらが多くお金を使うかではなく、第三の諸国がどちらに政治的な信頼を寄せるか、です。お金で国際的友情を買収することに慣れている中国政府は、国家間の信頼という話になれば、お金で買収するのはなかなか難しいことが理解しにくいのです。(終)

    (終)

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