• ★中国に「ミンスキーモーメント」は来るか? 2018年9月11日

    by  • September 12, 2018 • 日文文章 • 1 Comment

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    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

     ちょっと前に、P2P(*個人間で資金を融通するピア・ツー・ピア融資会社)破綻が爆発的に起こったので、多くの人々が中国は「ミンスキーモーメント」に直面している、と予言しました。

     いわゆる「ミンスキーモーメント」というのは、米国の経済学者ハイマン・ミンスキーが述べている「すべての資産価値が崩壊する時点」のことです。それには二つの主要なメルクマールがあって、例えば、債務増加、レバレッジ比率(負債比率)の上昇ですが、どちらも中国では極めて深刻です。彼のいう「内部的な金融危機の爆発と、長期的周期のレバレッジ化による危険段階」には、中国は疑う余地なく到達しています。その意味で言えば、経済学界が、中国はミンスキーモーメントに達しているという判断は根拠があります。

     ★中国がミンスキーモーメントから逃れうる要素

     ただ西側の概念で中国を判断すると、往々にして最も重要な制度的要素を見逃します。ミンスキーの観察対象は米国など民主政治体制における市場経済です。しかし、中国は、専制独裁政治の強制的なコントロールが効いた不完全な市場経済なのです。この二つには幾つもの大きな違いがあります。

     ⑴ 米国市場経済は私有制の基礎の上に成り立っており、政府はルールを決め、市場のガードマンであり、石油や土地など各種資源を握ってるわけではありませんし、多国籍企業の所有者でもありません。例えば、トランプ減税によって、資本を米国に呼び戻すとか、特定経済分野の発展を促したり、制限したりできるだけで、自らがゲームに参加することは出来ません。

     中国政府は違います。中国経済は公有制度を主導とし、政府が土地、森林、鉱産資源など一切の資源を独占しており、全国のあらゆる国営企業の所有者であり、全国の土地の最終的な所有者でえあって、ルールを制定し、自らチームを組んでゲームに参戦し、さらに審判団まで組織する存在です。

    ⑵ 西側国家の中央銀行は独立しており、独立の立場で通貨政策を行い、インフレ抑制の任務も果たします。米国政府は、2008年の金融危機の折に、連邦準備制度理事会に政府への協力を求めましたが、通常の状況下では干渉できません。連邦準備制度理事会は主に、利率を上げ下げすることで経済をコントロールします。しかし、中国の中央銀行には独立性はなく、完全に政治局常務委員会の会議の決定の言いなりです。

     ウォール・ストリート・ジャーナルの2011年6月2日の「中国の通貨政策は誰が握るのか」では、消息筋の話として、中国の通貨政策は各官僚機構が、秘密に包まれた謎の委員会と、表には出ないけれどもいたるところに存在する中共との間で協議・妥協の結果決められると伝えられました。どこかの誰かが鶴の一声で決めるなどということはありません。ですから、他の強国が、中国と経済政策で協力し合うなどということはほとんど不可能です。中央銀行総裁を連続三期務めた周小川でさえ、政治局常務委員会の通貨政策会議に出席する資格はありませんでした。

     こうした質的な違いによって、中国政府の経済コントロール能力の強さは、西側国家とはお話にならないぐらい高いのです。その短所ははっきりしています。今や金融システムは時限爆弾だらけです。例えば、中国金融システムの危険性には、銀行の巨額の不良債務(中では、不動産産業への貸し出しと国有企業への債務が最大の危険です)、巨額の地方債務(今年は22兆元の地方債権が違約によって、爆発しかねないと報道されています)、シャドーバンクシステムの各種金融プラットフォームの危険性などすべて、政府が不断に推進してきた各種の通貨政策によって生じたものです。
     
     近年では、国際的な大舞台をうまく使って、中国政府は一帯一路やアフリカを中・米貿易戦争の第二戦場にするといった「空間を時間に換える」方法と、P2Pはうまく”制御して爆発”させ、地方債務の危機は先送りする「時間を空間に換える」方法を使ってやりくりしていますが、その余地はますます小さくなってきています。

     ★下り坂経済で中国はどう危険に対処する?

    中国のような「全能型」の政府は、つまり全能であることの責任も負います。例えば、現在の金融危機でいつ爆発してもおかしくない大爆弾 — 60兆元の地方債務、史上空前の巨大不動産バブル、数百万の投資家にかかわるP2Pのプラットフォームを全て押さえ込むことはできませんから、かならずやどれかを「制御された爆発」をさせなければなりません。

     これが米国なら、政府はどれを先に爆発させよう、などということはできません。こんなに経済分野で多岐にわたる危機は、とっくに制御できなくなっており、せいぜい出来るのは爆発した後の処理方法です。しかし中国は、ものすごいコントロール能力で、何でも出来るといっていいほどですから、それぞれの利害を測って、全局に与える影響を最小にとどめられるP2Pを選んで、金融システムへの圧力を緩めることにしたのでした。

     この二日ほど、P2P破産が爆発したために自殺した金融難民が何人も出て、ネット上は罵声一色です。しかし、政府はとっくにこの危険を「想定内」としていました。6月中旬、中国銀行業監督管理委員会(CBIRC)の郭樹清主席は、陸家嘴金融工作会議の席上で談話を公表しています。彼が提出した金融危機解決の方法は「金融拆弹,定向爆破,压力测试」(金融の爆弾を取り除くには、制御した爆破によって、圧力をテストする)の12文字で表現されています。そして、P2Pについては特に警告して、「理財商品の収益率が10%を超えるものは、元金が全てパアになることを覚悟せよ」でした。理屈は簡単で、「爆弾がこんなに多くては、ひとつひとつやっていくしかない」からです。

     P2Pが第一に選ばれたのは、二つの側面を政府が考慮したからです。一つは、総量の多寡です。総規模1.3兆元のP2P業界は、252兆元の銀行業界の総資産価値に比べれば、1000分の5でしかありませんから、全体に与える影響は比較的小さいのです。二つには、この貸借プラットフォームが生み出す「金融難民」は、数から言えば百万から一千万人を超えますが、損失を被っても、「政府と死んでも戦う」というほどには、まずならないからです。

     中国政府がこうした手段を取るのは初めてではありません。銀行の不良債権で、朱鎔基時代には4大資産管理会社を作って、そこに不良債権を移し、折から中国市場参入を狙っていた外資金融投資業界に、パッケージにして売りつけました。温家宝時代にも、外資銀行を戦略的投資家として、中国の不良債権だらけの国有銀行株を組み替えて上場して売り抜け、こうして2度にわたって銀行危機を「災い転じて福に」することに成功しました。

     リーマンショック後の2009年、政府が行った4兆元の史上最大の救済措置以後は、中国は世界最大の紙幣印刷マシンとなり、株式市場と不動産市場を「通貨の貯水池」として、通貨乱発の危険に順番に対処させました。2015年の5.28株式市場暴落(*訳注;ちなみに何清漣氏はこれを直前に予言して的中させてますな)、市場から4兆元が消え失せました。

     今年の6月19日には、中国の株式市場で大量の株が暴落し、市場から2兆元が蒸発しました。2009年以来の中国経済下降の危険は、完全に政府の銀行貸し出しを通じてコントロールされています。不動産に対して、次々に投機的売買を促した後、それまでのレバレッジの累積の大部分を不動産購入者に押し付けたのです。

     その結果、数年にもわたった「不動産在庫の一掃」の後は、全国の不動産所有者と政府が一種摩訶不思議な「利益共同体」になりました。不動産価格が下がれば、政府は巨額の銀行不良債務に直面します。(地方政府、不動産開発業社、不動産購買者は、みな国有銀行がお金を貸し出していますから)。不動産所有者は、財産が目減りするのを心配して、政府が不動産バブルを維持する政策を支持します。例えば、今年、全国各地の地方政府は、不動産購入後、2年間の売買を禁じ、不動産の流動性をロックしました。これで中央銀行はまた人民元を増発できるのです。

     米国と中国は完全に異なった体制ですから、米国のリーマンショックが「ミンスキーモーメント」になりました。しかし、中国では現在、あらゆる条件が整っていても、政府によっていわゆる「通貨創新」(*通貨創新=創新通貨;中央銀行発行の通貨以外の代用品である電子マネー、クレジットカード、バーチャル通貨など)を通じて、「コントロールされた中国経済を維持し、インフレを起こさせながら、引き締め措置も講じる」という奇観を呈しています。

     が、例えば、火力発電、アルミ、建材、粗鋼、石炭業界といった借金で支えられている業界から、過剰生産力を解消していくことはできません。

     そして、全局面には影響しない金融の悪性腫瘍、例えばP2Pは退治しているのです。ですから、中国はまだしばらく「ミンスキーモーメント」になることはありません。しかし、借金はいずれは返さざるを得ませんから、その時期が到来する危険は、終始存在するのです。(終わり)

    元原稿は;「大紀元」中国离明斯基时刻还有多远?

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    One Response to ★中国に「ミンスキーモーメント」は来るか? 2018年9月11日

    1. 杰克
      September 14, 2018 at 03:19

      10年前,即使日子过得艰辛,也不会过于为钱发愁,今天的衣食住行好的地方不比过去好多少,差点地方却差了很多,掌握了财富少部分人只是钱多了,其余人生活却一落千丈,生存突然成了问题,不用提医疗教育法律,更不用提人性的生活,精神生活。人的意识在嬗变,钱成了全民的一天主题,有些东西已经来了,暴戾无知的人蠢蠢欲动,苟且的人逃不掉,而我们还在挣扎,上帝啊!

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