• ★中・米貿易戦争の深い影響 — グローバル産業チェーン再配置 2018年09月22日

    by  • September 22, 2018 • 日文文章 • 0 Comments

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    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

     9月18日、米国政府が同月24日から、中国商品に対して10%の課税を発表した後、中国政府は同夜、米国からの輸入品に対して600億ドルの課税措置を同時に実施すると発表しました。これに対して、トランプ大統領は、将来、2570億ドルの中国商品に課税を考えると応じました、

     中国にとって、関税は浅い傷を負うにすぎません。深い傷となるのは二つあります。一つは関税の脅威による外資の中国撤退。二つ目は、WTO(世界貿易機関)が米国の要求に応じて、ルールを変更することです。本文では、グローバルな産業の供給チェーンの再配置が中国経済にもたらす悪影響を分析します。

     ★外資撤退 グローバルな産業再配置へ

     中国商務部は9月20日に開かれた記者会見で、米国の対中国2000億ドルの関税措置は、機械と電力設備、軽工業、紡績、衣服製造などの6大分野に係り、影響を受ける企業の半分は外資企業であり、米国はこれによって、中米両国の企業と消費者の利益、更に全地球規模の産業チェーン構造の安全を損なうとしました。

     中国政府のこれまでの言い分は半分嘘でした。しかし、今回の話は本当です。そのうち、物価が消費者の利益に影響を与えるという点は大して重要な話ではありません。中・米両国の消費者は、それによってどうこうすることはないでしょう。しかし、外資の撤退準備は、中国政府が必然的に直面する現実です。今年8月に米国が第二波の対中懲罰的関税措置の発表後、在中外資企業は、もう貿易戦争は不可避とみて、国外移転を考慮開始しました。

     9月13日、中国の米国商議所と上海米国商議所は、中国、米国双方がこの時までに実施していた500億ドルの関税の影響について、430社以上の在中米国企業にアンケートを行いました。63.6%の回答者が米国の関税の影響を、62.5%が中国の関税の影響を受けていると答えました。半分近い米国企業は、将来、米国が2000億ドルの関税措置を実施するなら、強いマイナスの影響を被るとも答えました。

     また、貿易戦争に対して35%の企業が、生産拠点を中国から東南アジアなどの他国に移転するか、移転を考慮中だとしました。31.1%は、現在、中国投資の取り消しか延期を考慮しており、30%は米国以外から部品を調達するか、あるいは組み立てなど、供給チェーンを調整中でとしました。その他、約3割の企業が、今後、中国以外からの部品購入や組み立てを考慮中としています。

     ここで注目に愛するのは、ウォール街と米国の業界団体は、これまでワシントン政界に対しずっと絶大な影響力を持ってきたのに、トランプ大統領との間では、連戦連敗だということです。トランプ大統領は、選挙期間中、「ワシントンの泥沼を干上がらせる」として、退職した政府高官がKストリートのロビイスト団体加入禁止するとしましたが、現在、彼は自分の約束を果しつつあります。

     ★在中国の外資は全て需給調整か国外移転

     疑いなく、中米貿易戦争は中国にある各国外資企業に極めて大きな影響を与えますし、なんとかやり過ごせる企業もあれば、そうでない企業もあります。

     日本企業は長年の海外投資経験から、早くに国際的に複雑な需給チェーンを作っていますが、それでも強烈な打撃を被っています。日本の経済産業省の海外法人が調査したところによると、日本企業の海外現地法人の2017年度の販売額の、現地と日本を除いた第三国での売り上げ額は2180億ドル。そのうち中国向けだけで260億ドルで、中国は日本企業のサプライチェーンを支えています。貿易戦争が短期では終わらないことを考えると、日本企業は生産拠点を変えるなどを考慮して、この影響を弱めようとするでしょう。

     台湾実業界は、中国大陸に10万もの企業、工場を持っています。中国の対米輸出のベスト10は全て外国企業です。そのうち8社は中国企業で、鸿富锦精密电子郑州、成都(富士康系)、达功计算机(クアンタ系)、昌硕科技(ASUS系)、名硕计算机(ASUS系)、仁宝信息技術などです。中国の対米輸出100大企業でも外資は7割を占め、4割が台湾資本で、中国資本は3割でしかありません。2017年、台湾の中国大陸と香港への輸出総額は1302億米ドルで、台湾の総輸出の41%で、その7割が部品と半製品で、さらに多くの部分が大陸で組み立てて最終商品にしてから、米国を含む各地に輸出されています。

     米中相互の関税合戦がどんどんエスカレートする中で、台湾実業家の中には、影響を心配して台湾に工場を戻す動きがあります。台湾の経済部長の沈栄津は最近、既に20社以上が台湾に戻って投資したがっていると発表しました。台湾回帰の流れは主に電子データ企業と、少数の紡績、自転車製造業です。多くの電子データ企業は台湾にも生産工場やビルを残していますから、再開したり拡張したりすればオッケーですが、中には新たに工場用地を取得せねばならないケースもあります。

     香港のビジネス界は日本や台湾のような力も、逃げ場所もないので被害は重大です。香港政庁の調査では、すでに53%が米国の買い手から、注文が減ったり、値下げ要求されています。香港の中小企業連合会では、もしこの貿易戦争が続けば、香港は珠光デルタにある20000社の半数が、来年の春節前に倒産するといいます。

     ★始まりはともかく結末は分からない経済戦争

    中・米貿易戦争は既に経済冷戦となっており、WTOは、中国がこれまでうまく利用してきたルールの改正も考えています。中国の影響は修正の結果を見て判定するとしていますが、中国商品への懲罰的関税の効果だけで、既に全世界的な産業チェーンの再構築へと動いています。

     雑誌ワイアードは今年3月の記事で、iPhoneの誕生は、世界を丸ごとスマホの構造を変えたと書きました。ジョブズが2007年に第一世代iPhoneを世に送り出してから、販売量は12億台にのぼります。それは同時に、開発者と部品製造業社に巨大な商機を生み出し、同時に私たちの生活方式まで新たに変えました。

     今や数百万の顧客を持つiPhoneは、計算装置であり、カメラであり、GPSであり、音楽マシンであり、通信設備であり、ウォークやデートの必需品でもあります。つまり、それは世界を私たちのポケットにいれたのでした。iPhoneとそのアプリ開発者たちが生み出したソフトウェアは、世界をまるごとiPhoneを中心に「組み換え」、全くあらたなインターネット時代を作り出しました。そしてiPhoneをめぐって、世界各地には関連部品の黄金のチェーンが作られ、中国はその中で重要な位置を占めました。

     コスト削減という観点から見れば、iPhoneの供給チェーンは極めて緻密に設計されており、「黄金比」だといわれます。この黄金比率が今や、中米貿易戦争によって脅かされています。米カリフォルニア大学の調査では、iPhoneの価格中、中国で組み立てられる人件費は2%以下で、日本と台湾などで生産される電子部品と材料のコストは20%前後です。ですから、供給チェーンの変動は日本企業に与える影響の方が、中国へのそれをはるかに超えるかもしれません。

     日本も、中国が供給する最良の「黄金比」が、政治状況というファクターによって影響を受け変化するとみています。中・米摩擦の一大原因は、米国の対中国貿易の赤字が米国の赤字の半分を占めることで(もう半分は中国の知的財産権侵害)で、米国の赤字の最大の原因となっているのは「コンピュータと機械」です。この分野の数千億円の貿易摩擦の中には、中国で最終的に組み立てられるiPhoneなどがあるわけです。

     まだスマホは制裁関税の対象にはなっていませんが、トランプ政府は既に中国の全ての米国向け輸出商品に関税を課そうととしています。9月にもトランプ大統領は、アップル社に米国回帰を求めています。アップル側はトランプに、2000億ドルの中国からの輸入商品に25%の関税を課すなら、その影響はアップルウォッチ、エアポッド、Beatsイヤホン、ホームポッド、マックミニおよびその他のパーツに影響を与え、米国の企業競争力に重大な打撃となり、消費商品価格も値上がりすると答えています。関税措置が本当になれば、アップルもまたホワイトハウスロビイングの行列に加わりながら、変化に対応する準備もすることでしょう。

     東京大学とトヨタ自動車は現在、「交通渋滞のない高速道路」のIT技術を研究しています。その責任者の西成活裕東大教授は高速道路で渋滞を起こさせない「3対7比率の供給管理」によれば、意識的に「中央コントロール」は3割前後が望ましく、日本が直接管理する生産物とパーツは全体の3割にして、残りの7割の管理は販売商品と現地生産を行う海外会社にすると、災害の発生と突発事故の際のグローバル供給チェーンが中断状況は大幅に減ると述べています。

     グローバル産業のチェーンが受ける影響は、当然iPhoneだけにとどまらず、グローバルな生産部品は全て影響を受けます。

     米国は世界第一位の経済強国で、各国は望むと望まざるに関わらず、ホワイトハウスの政策は全球規模の資本の流れに影響を与えます。2017年末に、トランプ大統領が署名した「減税と雇用法案」は、国際的な直接投資に重大な影響を与えました。国際連合貿易開発会議(UNCTAD)の計算では、全世界の直接投資の半分が、米国の税制改革の影響を受け、この法案によって米国の多国籍企業の2兆ドルの資金が海外から米国に回流し、グローバルな外国資本の直接投資残高は大幅に減少しました。今や、中・米貿易戦争は、更に全世界の産業チェーンに影響をあたえようとしています。

     今回の経済冷戦は、世界は既にストーリーの始まりを見たのですが、しかし、米国国内の政治闘争が激烈で、各種の国際要素の変化も予想し難く、この結末には、まだまだ時間がかかりましょう。(終)

     原文は;UPメディア:中美贸易战的深远影响-全球产业链重置
    2018年09月22日

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