• 程農暁 ★第五波のグローバル製造業移転は中国から始まる★ 2018年9月24日

    by  • September 24, 2018 • 日文文章 • 0 Comments

    日中両文収録「何清漣 2017中国」Amazonで発売しました;20152016Amazon改訳版を電子ブックで。Kindle Unlimited なら無料です
    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

     18年前、先進国と新興工業国は、労働集約型産業と低技術高消費型産業を中国に移転し、中国は「世界の工場」になりました。現在、各国の製造業総合競争力の大きな変化の中で、中国は相対的な優位性を失い、更に中・米貿易戦争のせいで、大量の外国企業が中国離れを起こし、「世界の工場」の繁栄はもうありません。「世界の工場」の南へ移転の動きは、オーストラリアにチャンスをもたらすでしょう。

     ★中・米貿易戦争に対応する4つのステップ

    中・米貿易戦争は、交渉、対決、相互関税などのステップを経て、現在、すでに全面戦争となっており、おそらく相当な長期間、途中で止むことはないでしょう。中国にある各国の外国企業は、今年の春から、「雨のひどくならないうちに」とばかり、緊急避難へと行動を転換しつつあります。中国からモノを買っていた米国企業は、期せずして一致して次の4ステップを採っています。

     第一に、在庫を増やす。関税が発動される前にできるだけ在庫を拡大する。
     第二に、コスト圧縮を図る。材料、部品供給者に対して、関税上昇分をできるだけ吸収させる。もし注文を失いたくない供給者が、それを呑めば短期的には注文を失わないですみます。
     第三に発注先を変える。部品、原材料の供給側が、薄利で圧力に耐えられなければ、または、将来の値上がりが必至で、供給側や受給側の負担能力を超えるとなれば、発注先を中国以外に変えるでしょう。世界最大の小売業社であるウォルマートの化粧品購入部門は、今年8月7日に、中国以外の国から購入を決定しました。
     第四に、供給チェーンの再配置です。供給側企業に生産ラインを中国から他の国に移転させて、関税上昇のコストをなくそうとします。最近、米国の産業コンサルタント企業は、空前の大繁盛で、多くの企業が、産業チェーン移転の具体的戦略の検討に入っています。

     以上の4ステップから明らかに分かるのは、基本的に国外の買い手の動向によって、中国の売り手(供給側)の命運が決まる、ということです。中国からの輸出品が含む「無形資産」(intangible assets;物的な実態の存在しない資産)の価値が大きくなればなるほど、買い方の地位が高くなり、売り方の交渉余地が少なくなります。いわゆる無形資産とは、主に委託加工品に対して、買い方が自分で持っている商品デザイン力、ブランド力、研究コスト、ソフト、アフターサービス等です。多くの低価値の消耗品ならば、大した無形価値はありません。例えばベッド用品とか金属工具などで菅、製造工程の技術力はさほどいらず、供給側は、生産ラインを中国からどこかに移してもちゃんと経営を続けられます。しかし、無形資産が大きいブランド商品だと、それを作る側は、その生産ラインをいつ、どこへ移転させるかは、往々にして買手側と相談し、了解を得なければなりません。双方が中国での生産ラインを維持したいかしたくないかに関わらず、自分たちの商品の利益率が、まず今後予想される25%の関税より低い訳ですから、生産ラインの移転は、遅かれ早かれ避けられません。

     ★世界の工場の地位は揺るがない?

     実は、外国ビジネスの中国からの撤退の動きはとっくに始まっており、中・米貿易戦争はその進展を大々的に加速しただけの話です。中国が「世界の工場」の栄誉を担うようになってから、中国の学者も民衆も、ある種の「頑迷固陋」心理になってしまい、「世界の工場」の地位はヒマラヤ山脈のような不動のもので、ビクともしない存在だと思ってしまったようです。「世界の工場」を支える数万の外国企業は、「中国に根を下ろして動けない」というわけです。

     世界の産業の歴史を理解しない限り、グローバル化のなかで商品の供給の変遷の歴史を理解することができません。実際には、「変化しないサプライチェーン」など存在しないのです。20世紀以来、世界は4回の大規模な製造業移転を行いました。20世紀初頭には、英国の一部過剰生産力が米国に向かいました。20世紀の50年代には、米国の製鉄、貿易などの伝統産業が日本、ドイツに移転しました。1960〜70年代には先進国から、アジアの「4匹の小龍」と、一部ラテンアメリカに軽工業、紡績業が移転しました。1980年代には先進国と新興工業国の労働集約型産業と程技術高消費型産業が中国に移転しました。そして、2000年から、中国は産業移転の最大の受益者となり、「世界の工場」となれたのでした。例えば、中国がWTOに加盟した後は、服飾産業から自動車産業まで大量の米国・メキシコ共同経営の工場が、皆中国に移転したのでした。

     しかし、21世紀の初め以来、各国の製造業うの競争力の驚くべき変化によって、すでにグローバル製造業を第五波の大移転時代が始まっているのです。

     各国の製造業の総合競争力というのは、賃金コストだけのことではありません。税収、エネルギー、為替レート、労働生産率などの要素があります。過去十数年間、中国の生産率調整後の製造業平均賃金コストは3倍以上に、税収(社会保障費を含む)も猛烈に増え、エネルギーコストも急速に上がり、為替レートも上がりました。

     これらの全てが、中国の「世界の工場」という相対的な優位性を、大々的に変化させたのです。ボストン・コンサルティング・グループの3年前の研究では、2004年の中国の平均直接生産コストは、メキシコより6%少なかったのですが、2014年には、メキシコの方が中国より4%やすくなりました。現在、中国の製造業の平均コストは、米国より5%前後低いだけです。

     製造業の相対的なコストのこの変化は、多国籍企業にあらたな選択を迫りました。そして、それがグローバルな供給チェーンの巨大な移転につながったのです。ボストン調査は、現在のグローバルな総合競争力の新たなスターは、インド、インドネシア、オランダ、英国で、中国はもう昔の競争力は持っていません。そしてメキシコは再び、相対的な優位性を回復し、米国消費者のために各種の生産を行うようになってきました。米国の現在の競争力もかなり強いのです。

     いわゆるBRICsでは、インドだけが依然として競争力では指導的な地位を保っていますが、中国、ロシア、ブラジルは優位性を失いました。これが外資企業の中国撤退の大きな背景です。スタンダードチャータード銀行研究センターのジョン・カルバリーは、2015年の華南の製造業センターの調査で、当時11%の工場が東南アジア諸国連合(ASEAN・アセアン)、インド、バングラデシュに移転を計画していましたが、現在、不断のコスト上昇を避けるために、こうした行動は加速しています。

     中国の外資企業のサプライチェーンの再配置は、単純に中・米貿易戦争の産物ではありませんで、事実上、とっくに始まっていたのであり、その主な理由はコスト上昇です。そして、貿易戦争が全面的に始まってからは、サプライチェーンの再配置は、単純な非関税コストの問題から、それに関税コストの問題が加わって、後押ししているのです。

     ★「世界の工場」から撤退して、企業はどこへ。

     中国の「世界の工場」にはもともと、二つの優位性がありました。競走能力と産業サプライチェーンです。競争力については述べましたので、産業サプライチェーンについてみてみましょう。

     サプライチェーンの優位性というのは、中国の工業システムがグローバルな経済に加わってからさらに一歩進んだものになり、各業界に対して比較的完備した上流・下流の原材料から部品の供給を行い、それに加えて、外国企業の販売ルートの緊密な組み合わせもあって、完全にそろった生態システムができあがりました。中国の多くの学者は口をそろえて、他の発展途上国にはこうした条件はないので、外資企業が中国から撤退しても、ちゃんとした運営には困難をきたすだろうと主張しています。

     本当にそうでしょうか?すでに各国企業が撤退していること自体が、技術レベルの低い、サプライチェーンの短くてすむ、部品数も少ない、工員の熟練度もさしていらない企業なら別に、再配置は難しくないことを物語っています。それがまさに、大量の企業がこんなに早く撤退できている理由でもあるのです。本当に、サプライチェーンが問題となるのは、ハイテク製品製造業で、自動化の程度などが問題になります。それを見てみましょう。

    一般的には、企業のコスト削減戦略としては、工業の自動化ですが、しかし技術集約度の比較的低い産業では、往々にしてかなりの程度、熟練工に依存したり、または製品の特徴から、自動化できないケースがあります。(服飾産業など)。

     で、別の戦略としては、産業のサプライチェーンを国内の別の場所か、別の国に移すことです。中国の内陸省では、沿海地方の外国企業を自分たちの省に誘致することで、経済発展を遂げようという希望を持っています。確かに内地に移転すれば短期的にはコストを下げられます。しかし、製品を沿岸まで運ぶコストがかかりますし、長期的に見れば、内地の労働コストが上がるにつれて、こうした国内移転の長所は消えてしまいます。そして、中・米貿易戦争が始まって、関税のコストが大きくなってしまい、この国内移転の長所も、次第に消えうせてしまいましょう。ですから、中国国内で移転先を探すというのはもう選択肢にないのです。となれば、残るは別の国に引っ越すしかありません。

     日本の共同通信社の統計によると、目下、6割の日本企業が中国から他の国々への移転を謀っています。残る4割も今、資本撤退をどうするか考えています。米国の中国商議所の調査では調査対象のうち35%がすでに生産基地を中国から東南アジアその他の国へ移転したか、することを考えています。台湾企業にいたっては、日本経済新聞によれば、Nike、adidas、Under Armourなどの、靴産業、衣服産業の工場が生産ラインを東南アジアかインドに移しています。

     米国の関税を回避をしようとするのは、何も外資企業だけではなく、中国企業も自転車、タイヤ、プラスチック、紡績など、工場のラインを国外へ移転しようとしています。マレーシアの中華系企業家の郭鶴年の嘉里物流はアジア最大の海運物流会社ですが、現在、各国の顧客から生産ライン移転の運送依頼で大忙しで、中国からマレーシア、ベトナム、ビルマへ、中にはラオスへというのもあります。

     以上述べたのは、現在グローバル製造業の総合競争力の新たな4つの新星はインドネシアで、フィリピン、マレーシアも現在有力地です。この三国は二つの共通点がありまして、一つはオーストラリアから近いこと。二つは、その工業システムは完璧ではないことです。

     こうした東南アジア国家があらたに製造工業を迎えるには、必要なさまざまな部品供給と、各設備の製造、メンテ、工場設計センターなどが必要ですが、オーストラリアに協力を求める可能性があります。ですから、中国の「世界の工場」が南遷することで形成される、新たな「新アジア世界工場」には、オーストラリアがその地理的な独自の地位を生かして参加するチャンスがあるのです。(終わり)

     原文は第五波全球制造业迁移:从中国开始?By Xiaonong Cheng
    24 SEP 2018

     
     

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