• ★債務爆弾処理 —今回の 国有企業「混合所有制改革」の正体  2018年9月25日

    by  • September 25, 2018 • 日文文章 • 1 Comment

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    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

     これまでに中国政府は三度、50社の国有企業の「混合所有制改革」をテストケースとして行っており、第二次公私合営とも呼ばれています。第一、第二の19のパイロットテストは中央政府が直接、指導しました(訳注;2016年以来、すでに2回にわたって、電力、石油、天然ガス、鉄道、航空、通信、軍需産業という七つの産業を中心に、計19社の国有企業がパイロットテストの対象として選定されている)が、第三波の「混合所有制改革」はこれとは異なり、地方の国有企業を主としており、民営企業が寄ってくるのを、国有企業がもろ手をあげて歓迎する形です。しかし、双方の動機を考えると、これは絶対に政府が宣伝しているような「企業ガバナンスの改善と管理レベルの改善」などではなく、二重の債務圧力によるものです。

     ★国有企業の債務圧力はどこから?

     中国政府が「混合所有制改革」を行うのは、実は借金に迫られてのことです。

     企業の債務の隠された悩みは、リーマンショック後の2009年に早くも現れていました。中央政府は4兆元(約60兆円)の景気対策費用を投入しましたが、その他に地方融資プラットフォームに、20兆元以上の借金がインフラ建設と不動産分野に投入されましたが、期待したような利益は得られませんでした。(訳注;当時、4兆元のうち3兆元は地方が負担。で、地方の起債を禁じた「予算法」の規制回避のために地方政府融資平台公司=中国の地方政府傘下にある、資金調達とデベロッパーの機能を兼ね備えた投資会社=が各省に設立され、これが後に、GDP引き上げ競争となって、不良債権となり、野放しの債務規模になった。その規模は明らかにされておらず一説には30兆元=約480兆円説まである)

     政府が選んだ解決法は、紙幣を印刷しまくって、企業投資を増やすことでした。もし紙幣を刷りまくらなかったら、企業は資金ショート起こし、国営銀行からの借金を返済出来ず、企業破産は必至となり、同時に巨額の銀行の不良債権となって、ただでさえ深刻な失業問題いっそう悪化させてしまったでしょう。企業破産と金融破綻回避のために、政府は不動産と株式市場を「通貨の貯水池」(訳注;だぶつくお金は投機マネーとなって不動産バブルになった)として、民衆のインフレによる資産目減りへの恐怖感を利用して、途方もない金額のお金をこの「貯水池」に引き入れました。

     データによると、2007年末の中国の家計債務合計は5.07兆元だったのが、2017年末には50.5兆元と7倍近く増えています。政府の努力で、一部の債務は企業と政府部門から、人民につけ回しされたわけです。ゴールドマン・サックスのアナリストは、2016年に比較して、2017年の企業債務がGDPに占める比重は181%から178%になって、政府債務総額のそれは62%から67%になりましたが、家計債務は34%から39%にもなっています。

     これと同時に、債務返済不履行事件が頻発し、その金額は毎年増え続け、2015年には126億元、2016年には237億元、2017年には392億元となっています。今年の前半の4カ月で130億元で、2015年の総額を超えています。

     国際社会と中国国内の専門家は、誰もが様々な指標から、中国の金融システムの危険性は、米国のリーマンショック前の水準を超えていると見ています。

     ★金融爆弾の処理 — 「混合所有制改革」で国有企業の負債減らし

     中国銀行業監督管理委員会の郭樹清首席は6月中旬の陸家嘴金融工作会議の席上での談話は中国金融システムの危険に言及し、それには、巨額の焦げ付き(不動産産業の借金と国有企業の借金が最大の危険)、巨額の地方債務(メディアは今年、22兆元の負債が満期を迎え爆発の可能性と報道)、シャドーバンクシステムの各種プラットフォームの爆弾が含まれます。解決方法は、12文字「金融拆弹,定向爆破,压力测试」(金融爆弾処理、方向性を定めて爆破し、ストレステスト=影響を見ながら)です。「混合所有制改革」の目的はまさに国有企業の負債率を減らし、銀行の不良債権を減らす重要な手段なのです。

    1990年代半ばから、国有企業の負債率を減らす方法は三つ。一つは、不良資産処理、二つ目は人員削減。三つ目が資本市場を通じて、債務を株券の形で、各種の資本を導入し、「混合制改革」を実行して、株主を多元化して、市場化方式で企業資本を増やす。現在、不良資産を処理することはもうできませんし、人員削減は社会の安定を損ないますから、第三の方法が危険が最も少ないのです。

     2015年に中国政府が出した「国有企業改革方案」は、民営企業に国有企業の株式を持たせて、企業債務率を減らし、国有企業を大きく、強くしようというものでした。その第一回目のパイロットテストに選ばれた中国聯通を例にとると、2017年8月に「混合所有制改革」を終え、聯通は14の投資方を得て780億人民元の投資を呼び込みました。投資側には、騰訊、百度、京東、アリババの四大ネット企業の巨頭(すべて民営)と同時に、中国人寿、中国中車、中国国有企業構造調整基金有限公司等の国有企業を引き入れ、依然として国有企業が資本の主導的地位を占めて、民営企業に発言権はありません。経営状態には明らかな改善は見られませんでしたが、しかし負債率は確かに減りました。資産負債率は2017年6月の62.6%から2018年6月には46.5%になっています。もう一つの「混合所有制改革」のテスト地点の東方航空は、第三者割当増資の結果、2016年の74.08%から70%前後になりました。他の「混合所有制改革」企業の状況も似たり寄ったりです。

     ★地方国有企業が「混合所有制改革」を熱望するわけ

     この二つのパイロットテストの経験から、中国政府はこの7月に第三波の「混合所有制改革」を推し出したのですが、地方国有企業の「混合所有制改革」のパワー不足を恐れて、9月中旬に、中共中央弁公室、国務院は「国有企業負債の制約強化に関する指導意見」を発表し、国有企業に2020年末までに国有企業の平均資産負債率を2017年末から2ポイント下げよ、という強い指示を与えました。

     地方国有企業には中央国有企業のようなしっかりしたバックはありませんから、民営企業の大物を引っ張り込んで株主にするというわけにはいきません。しかし、彼らもお金を引っ張り込む新たな手練手管をもっていました。上場資格を持つ民営企業の経営を譲り受け、ヤドカリの殻のようにして上場を果たし、新たな資金を集めて、負債率を下げるのです。

     では、民営企業が、次々に自分から進んで国有企業の腕の中に飛び込んでいくのはなぜでしょうか?それは銀行からレバレッジ(他人資本を使うことで自己資本に対する利益率を高める。つまり、借入金や社債などを利用して投資で利益率を上げる方法)をやめるようにという貸し出し面での圧力が強まって、上場企業は次々に資金的に困難に陥っているからです。

     多くの民営企業は債務危機にあり、また株価も値下がりして、担保も破綻し、業績悪化の重圧の中で、自分から進んで国有企業に「株主になってくれ〜」というのです。同花顺ネット金融データの統計によると、今年の8月10日までに、A株会社331社の上場企業で株券取引がおこなわれ、そのうち国営資本のバックのある企業や機関が占める割合は35.34%になりました。券商中国(証券時報の子会社)の統計によると、わずか9月の前半だけで、6社もの上場企業が国営資本に株式譲渡、経営権を譲り渡しています。豫金刚石、英唐智控、环能科技、怡亚通、梦网集团、华英农业といった企業です。

     注目に値するのは、国有企業が受け取り手になったうちの58.06%が、無償か、行政口座移転方式で株を譲り受けていることです。北京金一発展株式有限公司の広告によると、たった1株1元で大株主が誕生しました。企業の実際の支配者は、北京海淀区の国有資産監督管理委員会(国有企業の所有者)です。

    こうした企業がなぜ、株式1株1元で譲渡するのかというと、レバレッジが出来なくなった上に、銀行が貸し渋りしたために、企業の流動性危機(信用不安から取引が収縮)が起きたからです。(訳注;銀行から借りた資金をまた貸しして、不動産投資で利益をあげ、また銀行から借りて…という日本のバブル時のような循環を、どの企業もやっていたのが、「レバレッジ禁止」で、禁じられて、銀行から金を貸りれなくなるとギブアップするしかない。)

     たとえば、北京金一文化公司(*貴金属店)は、上半期に大量の融資の返済期間が来たために、30億元の資金ショートがおこり、経営危機に陥りました。梦网集团が、自ら「混合所有制改革」を望んだのは、ここ数年の経営不振で、、株価の持続的下落によって警戒ラインに達しており、短時間のうちに企業の業績下降を挽回できない現状では、破綻の危機にありました。

     ★中央政府の両面圧力で進む地方国有企業の「混合経営」

     この一連の地方国有企業の「混合所有制改革」について、中国国内の人士は、「これが激烈なプレッシャーの中で、民間企業がおこなう”自救措置”」であり、市場化システムが働いているのだ」などという論評があります。これは、政府の政策の挟み撃ちにあって、政策的に民営企業を自分から国有企業混合所有制改革に助けを求めるようにしているという面を無視した言い方です。まず、レバレッジをやめさせ民間企業への融資を締め上げておいて、苦境に追い込み、国有企業に有利な財税政策を採って、国有企業に「素手で貴重な白い狼を捕える」(濡れ手に粟で民営企業をいただける)ようにしているのです。

     以前、民間企業がまだ力を持っていたときには、どの会社も皆、国有企業との「混合所有制改革」への参加を拒絶しました。2015年の「国有企業改革方案」の発表前に、一年間、意見を公募したことがありますが、ほとんど全ての企業家が国有企業が経営権を握ったままでの、民間企業が出資して国有企業の株式を持つことには反対しました。王健林(大連万達グループ)、郭広昌(復星グループ)、萧建華(明天公司)宗慶后(娃哈哈グループ)らは、公開でそうした意見を述べていました。

     しかし、2017年の上半期には、これらのうち宗慶后を除く全てが、大量の海外投資を資本の外国逃避とみられて、金融安定政策にたてついたとして、郭と萧は自由さえ奪われ、海外資産の売却と回収を迫られました。こうした連中を片づけ、とりわけ鄧小平の孫娘の呉小暉(安邦保険集団元会長。2018年05月、詐欺と職権乱用の罪で懲役18年の実刑判決。個人資産105億元=約1800億円没収)以後、2017年下半期から始まった第一波、第二波の「混合所有制改革」は順調に進みました。こうした中央企業が今年の7月に株式市場から得た資金は618.78億元です。

    民間も国営も負債率が高いという点では同じですが、2017年末の民間企業全体の平均負債率は52%なのに対して、国有企業の負債率は65.6%になり、民間企業は国営よりは遥かに低いのです。しかし今回の、レバレッジを構造的に無くすという方針では、「レバレッジ全体を把握して、部門別に、分類して取り除く」ということでした。

     つまり、部門というのは、中央と地方の政府、国営と民営の企業、そして国民家計という三大部門のレバレッジの善し悪し、優劣を区別して対応するというのでした。ですから、国有企業がレバレッジ中止で傷口がひらいて負債率の高い国有企業が新たに借金をするのが難しくなったと同時に、民間企業の借金もまた必然的に、より厳しい規制がかかりました。とりわけ、負債率の高い民間企業は、そう簡単には銀行融資が受けられなくなってしまったのです。負債率が7割を超える民間企業はすべてものすごい圧力を受けました。企業経営が継続できなるほどの状況の下では、二つ野道しかありません。夜逃げするか、国営起用の傘下に入って庇護を受けるか。両者を比べれば、後の方がまだマシとなります。

     9月中旬の「国有企業負債の制約強化に関する指導意見」によると、はっきりと国有企業の「混合所有制改革」に対して5つの条項で財税上の支援政策が記されています。

     ;税法の規定条件に合致した企業は、株(資産)買収、合併、分社、債務組み換え、債権の株化等の行為において、企業税の延納、税優遇政策の対象になる。
     ;債権の損害は、規定の計算で企業所得税納付額で控除を受けられる。
     ;企業の再編過程で、商品、不動産、土地使用権の移転行為で増税されない。
     ;企業の再編で土地の価値増税、契約税、印紙税などで優遇される。

     以上が、今回の市場化促進の「混合所有制改革」政策の背景です。

     ★50年代の「公私合営」とどこが違う?

     中国の経済改革の最大の成果の一つは、一群の民営企業を育成したことでした。しかし、今回の「混合所有制改革」では、民営企業は「零落して泥に戻る」です。私は「中国:溃而不崩」(邦訳;中国——とっくにクライシス、なのに崩壊しない“紅い帝国”のカラクリ – 在米中国人経済学者の精緻な分析で浮かび上がる – (ワニブックスPLUS新書) で分析しておいた通りです。つまり

     ;中国は遅かれ早かれ、制度的な構造に縛られて、経済では頑なに公有制を主体とする。だから今回の「混合所有制改革」案は、胡錦濤・温家宝の第二期から決まっていたことで、習近平は第一期から、やってみたくてうずうずしていた。今それを金融面の爆弾処理の重大な措置として、やすやすと「国進民退」の目的を達成したのです。

     1950年代の公私合営と違う点は、あの時の「資本主義工商業に対する私有制を社会主義的な公有制改造」は共産政府が暴力をバックにして、力づくで私企業の財産を奪い取ったのですが、今回は、金融のレバレッジ排除を通じて強引に民営企業を苦境に陥れてから、「自主的に」国有企業参加に入ってくるように仕向けたわけです。うまくやった、というべきでしょう。

     ということで、今回の「混合所有制改革」の重点は「混合」にあって、「改革」にあるのではないのです。国有企業の経営体制には何の変化もありません。資源を浪費し、効率が良くないのはそのままですから、何年か後には、必ずやまた苦境に陥ることになるでしょう。(終)

     原文は、何清涟:债务拆弹——国企混改的驱动力——第二轮公私合营成功推动的祕诀 

     中国——とっくにクライシス、なのに崩壊しない“紅い帝国

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    国営企業改革ー30年前に逆戻りする中国 2016年8月3日

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    One Response to ★債務爆弾処理 —今回の 国有企業「混合所有制改革」の正体  2018年9月25日

    1. 杰克
      September 25, 2018 at 20:06

      日文版,看不懂,谷歌不能翻译

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