• ★范冰冰事件など中国の課税強化は、財政危機防止のため 2018年10月08日

    by  • October 9, 2018 • 日文文章 • 0 Comments

     10月3日、中国政府は、スターの范冰冰(Fan Bingbing)の二重契約書による脱税額は2.55億人民元で、付随した罪によって総額8.8億元の罰金が科され、入牢は無しと発表しました。中国経済の現実を分かっている人には明らかなことですが、今年になって政府が、八方手を尽くして、税収増を図っています。范冰冰の脱税事件では、金持ちだらけの映画界を脅しつけたわけですが、他にも、各種の税収増を図っています。

     米国の大減税効果が全世界に波及しているこの時に、そのちょうど反対をやって税収増を図っているのはなぜでしょうか?それには当然、言葉に出せない困難があるのです。

    日中両文収録「何清漣 2017中国」Amazonで発売しました;20152016Amazon改訳版を電子ブックで。Kindle Unlimited なら無料です
    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

     ★米国減税、中国増税

     米国政府は、去年、「税制改革法」による減税で、米国企業と労働者の税負担を大幅に軽減しました。(訳注; 米連邦法人税率を35%から21%に引き下げることを柱とする大型減税で、2017年12月に成立)、米国の高額所得者から低額所得者はみな、この恩恵にあずかり、経済と輸入のどちらにも効果があり、米国の株式値上がりと資本流入の局面を迎え、雇用改善に強い影響を与えました。今年の米国経済の状態が証明するとおり、この方法は効果的でした。

     日本、英国もこれに続きました。日本政府は早くも、2018年の法人税減税を行いました。しかし、中国だけが「安易に追随しない」と主張しているのです。

     中国政府の新政策が証明している通り、中国は「安易に追随しない」だけでなく、反対に全面増税を行いました。以下、中国政府の最近の発表された財政収入リストを見てみましょう。

     国内付加価値税 33600億元 16.6%増。
     国内消費税    6869億元 17.4%増。
     個人所得税    8127億元 20.3%増。
     企業税と環境保護税 46億元

     2019年1月1日より、社会保障税(社保税)を従来の社会保険基金への徴収から、新たに「税金」として取り立てる。これは二つの面で大きな変化をもたらします。

     一つは、企業が職員労働者の人数をごまかして、社保税を逃れることが出来なくなります。中国の有名社保関連機関51社が今年8月に発表した「中国企業社保白書2018」データによると、中国企業の社保納付実績値の非法規準拠率は73%、つまり7割以上の企業では実際の収入に基ずかない納付を行っています。新たな制度の下では、こうした漏れ口は、厳しい税務当局の鬼の眼が光ることになって、脱税の可能性は大々的に減ります。

     二つには、企業税の負担増です。今までは、企業の社保負担比率は31%で、これは世界189国の13位でした。しかし、新制度では企業の社保負担比率は44%となり、全世界2位となります。福祉水準が低い国家の社会保険税が、多くの高福祉国家より遥かに高額というのは、世界税制上の奇観というべきでしょう。深刻なのは、企業はおそらく雇用を減らそうし、失業増加につながることです。こうした逆行の動きは、まさに「卵を取ろうとして、鶏を殺す」です。

     ★中国政府はなぜそんなことを?

     中国政府は課税強化の短所を知らないわけではありません。しかし、それでも実施する理由は、財政危機回避と国家の強力なコントロール能力維持です。

     中・米両国には、どちらもその繁栄の真っ最中にありながら、「必然的に没落する」と山ほど予言されているという相似点があります。ただ、その衰退の時期や程度は違います。米国は何度も、大国としての地位を中国に奪われるだろうと言われており、その時期は2025年から2050年まで諸説様々です。しかし、「中国崩壊」は、ほとんど中国勃興からずっと伴奏曲のようなもので、2001年の章家敦(Gordon G. Chang)の「中国はもうすぐ崩壊する」(中國即將崩潰)から、今日に至るまで、米国だけで3度、更に今年は、フォーリン・アフェアーズ誌の新たな予測まであります。

     こうした「中国崩壊論」のおかげで、中国政府の危機感は特別に強烈になったのです。米国のリーマンショックは、小さな企業が一社だけ危機を予言しただけで、誰も全く事前の備えなどしようとしませんでしたが、中国は違います。いかなる危機に対しても超強力な防衛措置を取ろうするのです。

     私は現代中国の研究者として、こうした「中国はいつ崩壊するか」といった疑問に常に直面し、研究してきましたので、ある政権、ある国家が崩壊するためには、以下の4つの危機が重ならないと考えるようになりました。

     ① 統治集団内部の矛盾の先鋭化。

    ;習近平が2012年に政権を掌握して以来、内部矛盾を安定、慰撫するために何年も多大な力を費やして、基本的には、党・軍・政の三系統を掌握しています。

     ② 人民と政府の間の矛盾の極端な激化。

    ;中国の一部の反体制人士は確かに、強烈な現政権反対の願いを持ってはいますが、こうした人々は、全中国では1000分の1か、1万分の1で、自分たちでも分かりません。海外の中国語ネット上の勇ましい言葉以外、彼らはこれまでに自分たちを組織できたことはありません。

     ③ 財政危機 

    ;一般の人々には経済危機と財政危機の区別すらつきません。簡単に言えば、⑴ 経済危機は必ずしも政権倒壊には至りません。ジンバブエ、ベネズエラがその例です。⑵ 経済危機が政治危機に至るまでには、まだかなりの距離があります。中国では現在、確かに様々な経済危機が発生する要素がありますが、しかし、それは直ちに財政危機になるということと同じではありません。財政危機の主なメルクマールは、中国政府が軍隊と警察などの治安維持装置を維持できなくなっているか、どうかです。

     ④ 外部からのプレッシャー

    ;少なからぬ政治的反対派の人士は、中・米貿易戦争は米国が中国相手に行う戦争だと言いますが、これは明らかに自分たちの想像力を過剰に投影して見ています。貿易戦争は本来、イデオロギーとは無関係で、関係あるのは経済的利益です。さもなければ、米国と欧州連合や日本、カナダ等の盟友の間で普段に大小様々な貿易戦争が起きている理由の説明がつきません。簡単に言えば、貿易戦争が戦争と違うのは、その目標が相手側の消滅ではなく、「羊の毛を刈り取る」(利益を得る)ことなのです。トランプはかつて、「我々は、自分たちが全然理解できない国家の政権を転覆するようなことは必要ない」と言ってます。現在、「中国とビジネスをしない」がトランプの最もキツイ言い方です。10月4日のマイク・ペンス副大統領のハドソン研究所での講演内容を、中国の反政府人士連は、「これは中・米関係の全面開戦だ」と過大評価して誤解しています。「この戦略で、我々は公平、対等、そして相互の主権尊重の関係を求めている」という「主権の尊重」とは、軍事的な干渉ではない、という言葉を無視しています。これはマイク・ポンペオ国務長官の訪中を前に、一種の心理攻勢でしょう。

     ★「崩壊論」は中共政権の危機意識を育てた

     繰り返し繰り返し登場する「中国崩壊論」は、現実の中国を崩壊させたりはしませんが、逆に、中共政権の危機意識と危機対応能力を大いに鍛えました。中国の指導層は、最初から暴力的鎮圧が政権維持の最後の手段だと承知しており、国家の鎮圧装置を維持することは、政府の財政能力如何だと分かっています。ここ数年、中国政府の危機対応の中心の変化は、彼らの危機対応が相当に鋭敏であることを示しています。

     ;2016年8月、「外国為替準備防衛戦」で、通貨安定維持を実行。
     ;2017年初め、「金融危機防止」が第一番目の目標となり、劉鶴が「ブラックスワンと灰色サイ(不意の出来事と危険の高い事案)に対処せよ」と、大量の資本流出に対して「金融クーデター防止」を提起。
     そして、今年の年初には、財政危機防止を、党内の専門家たちによって、二つの面から危険防止に当たらせました。一つは、グローバルな財政危険の広がりで、2018年、全世界の統計のとれる191の経済体のうち、158が財政赤字に陥るとして、金融危機の初期的段階にあるのは119だと指摘。二つには、中国の地方財政自給率の下降で、中央財政が地方財政の実情暴露するように圧力をかけたことでした。

     財政赤字率に対しては、中国政府は、事項区財政赤字率は呼応臭い平均水準を上回っていることをはっきり承知しています。国際的な通常のマーストリヒト条約の基準では、赤字率は3%が一般に安全ラインとされます。2016年と2017年、中国の財政赤字率は、連続して3%で、2018年にはそれが約2.6%に下がりましたが、当局は、本当は3%どころではないと承知しています。

     地方政府の財政自給率は、この3年間ずっと下がり続けています。2017年の地方財政経済運営調査研究レポートによると、一部の地方の収支の矛盾は大変なもので、2015年から2017年第三4半期までで、財政自給率の平均は5割以上で、依然として下降傾向にあり、2015年の54.1%から50.8%になっています。一部の資源依存の大きな省では、「石炭財政」や「石油財政」はもう持たなくなっています。

     中国財政が直面する赤字率の上昇さえはっきりわかれば、地方財政自給率の連続下降の背景が理解できるでしょう。なぜ中国政府が、米国が減税し、先進国がそれに続いているという現況の下で、逆に増税を行うか? 中共の計算では、政権を維持して、財政危機を防止するのが主要な任務であり、企業の活力維持や、経済発展は二の次の話なのです。(終)

     原文は;中国全面加税 只因力防财政风险 

    Print Friendly, PDF & Email

    Leave a Reply

    Your email address will not be published. Required fields are marked *