• ★ペンス談話…米国の「屠竜派」の観点は「冷戦」ではない。  2018年10月11日

    by  • October 11, 2018 • 日文文章 • 0 Comments

     ペンス米国副大統領は、10月4日、ワシントンのハドソン研究所で公開講演を行い、中国を名指しして、侵略的軍事主義、ビジネス知的財産権の窃盗行為や人権の侵害、そして米国中間選挙への干渉の試みを非難し、国際社会に強烈なインパクトを与えました。中には、米中決裂による「新たな冷戦の始まり」という論評まで登場しました。こうした意見の方は、多分ワシントンのシンクタンクの派閥とその観点の変化をよくご存知ないのです。

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     ★米中関係には「晴天用」と「曇天用」がある

     2006年に、私は「米中関係の晴天版と曇天版の戦い」という文章を書いて、米中関係には、「パンダ派」(Hug panda)と「屠竜派」(Dragon Slayer)があることを紹介しました。

    何年も前に、ジャーナリストで政治学者のハロルド・アイザックスは、米国人の中国人認識における極端な矛盾を指摘しています。彼は、「西側と中国との接触の長い歴史の中で、中国には高度な文明と野蛮な残虐さという二つの顔があり、それが絶えず入れ替わっている。この二つの顔は、時に応じて人々の頭に浮かんだり消えたりする。しかし、それは互いに異なったものではなく、互いに補い合う関係で、情勢に応じて変化し入れ替わり、対中国感情を、時に同情、時にもうたくさんだ、うんざりだ、という気持にさせ、好意となったり敵意や恐怖、時には憎悪にもなる」と言いました。

     「晴天用」と「曇天用」という言葉を用いて、これを説明したのがインディアナ大学の歴史家ジェフリー・N・ワッサーストロームです。1989年の天安門事件以後、米国社会には「邪悪な中国政府と、善良な中国国民」という見方が生まれました。1999年4月に時の朱鎔基総理がクリントン大統領と会談して、特に中国が核兵器情報を盗んでいるというコックス報告の後、中国問題に対するメディア報道と世論はホットなものになり、「中国」が何度もニュース面や社説、論説面を飾りる一方で、「中国」の形容詞は「核スパイの」だったり、また別のメディアは「中国は(”穏健派”指導者を含む)善良な人民に充ち満ちており、しっかりと正しい道を歩んでいる」という報道もあり、メディアには中国に関しては相反する二つの極端な報道が目立つようになりました。人権侵害問題を起こす独裁的な政府の記事がある一方で、中国指導者を美化する記事です。なんとも美化しようのないこれまでの指導者の場合は、新しい次世代の指導者を美化する努力が払われました。習近平が権力を握ったころまで、このやり方は続けられて、習近平夫人の彭麗媛がそうした役割を担いました。(2013年3月25日にニューヨーク・タイムズ紙は「彭麗媛が中国イメージアップに一役」という記事を書いています。)

     総じて言えば、パンダ派が政権を握っていれば、中・米関係は「晴れ」で、屠竜派が政権に着くと「曇天」です。クリントン以来、米国の3代大統領続いた24年間は、天安門事件語の数年を除けば、大体、「晴天」でした。

     ★ペンス発言は「屠竜派」の観点の集約

     この両派とも、別に突然登場したわけではなく、それぞれ昔から続いてきたものです。

     冷戦が終結して以来、中・米関係の変化は、米国の対中国政策の考え方の中で、「接触派」と「阻止派」がありました。米国政界やメディアでは、接触派を「赤組」、阻止派を「青組」と呼んできました。米国の軍事演習では、「青」は米国を、「赤」は敵方を表します。(冷戦中破ソ連赤軍、冷戦終結後は中国人民解放軍が「赤」です)

     赤組には、接触政策を唱える政界とビジネス界、それに、思想界、マスコミ、政策研究者、コンサルタント、および、政府の外交、情報などの中国問題にかかわる「中国通」たちがいました。彼らは共産党が政権を握る社会主義中国は米国の敵だとはおもっていませんで、「平和的変化」によって、中国のイデオロギーや価値観、社会制度などを米国に近づけることが可能で、それによって中国が勃興してからも米国の敵になる可能性を減らせると思ってきました。後になると彼らは、はっきりと対中友好を唱えるようになって「パンダ派」と呼ばれるようになったのです。

    ブッシュ政権以来、「青組」の人士も政府高官を努めたこともあったんですが、接触派とお金をしこたまもった「中国ロビイスト集団」(チャイナロビー)が長年、主流を占め、米国の朝野にしっかり根をおろしましたし、米中関係全国委員会のメンバーの多くもパンダ派が主流でしたから、ブッシュも「パンダ派のご機嫌を損じないように」するしかなかったのです。

     「屠竜派」の主力は1990年代に力をつけた新保守主義の「foreign policy community」です。最初は、7,8人の志の似通った友人たちが私的に集まっていたのですが、やがて40数人のエリートの集まりになりました。「青組」は正式な組織形態をもってはいませんし、規約もないし正式メンバーもいませんし、公的機関も指導者もいませんが、大変はっきりした綱領と影響力を持っています。その綱領は冷戦後に「方向を見失った米国外交を元の正しい軌道に戻す」です。特に、米国の対中国政策の偏りに重点を置いています。これが後に「屠竜派」と呼ばれるようになりましたが、これは「竜」をシンボルとする中国にすると余りに穏やかならざる呼称なので、一度は「反パンダ派」と呼ばれたこともあります。

     2018年3月以来、屠竜派の重要メンバーは、グローバル化反対の理論を唱える前米国国連大使のジョン・ボルトンがトランプ政権の国家安全顧問に任命され、タカ派のマイク・ポンペオが国務長官に任命されて、外交関係では屠竜派がついに圧倒的な優勢となり、パンダ派への批判がおおっぴらになされるようになりました。

     米国政府の高官が退職後に続々と中国のロビイストになって、米国における中国の利益代表となるという長年の問題が、この6月にThe Daily Beastなどのメディアで次々に暴露されて、ついに、8月24日、米国国会の米中経済安全審査委員会(USCC)が正式に「中国の海外統一戦線工作の背景と米国への影響」というレポートを提出。トランプ大統領はゲティスバーグの演説で、「この問題は徹底的にやる」と、外国の代理人による防諜工作防止措置を政府の政策日程に組み込んだことで、ようやくパンダ派の声も、静かになったのでした。そして、パンダ派によって指示されてきた中国出資の孔子学院や、大学の中国研究(情報)講座センターなども次々に閉鎖されています。

     米国の対中国政策を熟知していれば、ペンスの講演内容は、近年続々とワシントンの屠竜派シンクタンクの研究から出ていることがわかるでしょう。談話で言及されたマイケル・ピルズベリー
    (アメリカ国防政策顧問)は屠竜派の代表的な人物で、2015年に「百年マラソン — 中国のグローバル戦略」(The Hundred-Year Marathon CHINA’S SECRET STRATEGY TO REPLACE AMERICA AS THE GLOBAL SUPERPOWER.)は良く読まれました。テーマは米中関係における米国の対中判断の誤りと外交政策の失敗です。

     ★ペンス談話の意義

     ペンスは屠竜派の観点を系統立てて一つにまとめて公開講演の形で発表し、従来のクリントン、ブッシュ、オバマの三代の大統領の様々な友好的な言葉、たとえばこれまでの「経済協力の相方」「戦略的パートナー」「重要な戦略協力パートナー」を否定したのです。トランプの「競争関係」を更に一歩進めて、中国が米国に浸透を図り、米国の政治などに悪意をもって干渉しており、世界各地で戦略的利益のために何種類ものやり方を進めている、と事実上、中国にある種のはっきりした警告を発したのでした。

     しかし、これをもって新たな冷戦宣言だと言うのはいささか大げさすぎます。その理由は以下の点です。

     ⑴ トランプは、かつて「我々は自分たちが理解できない国家の政権を転覆させてはならない」と強調しました。これは米国が湾岸戦争やイラク戦争、「アラブの春」以来、外部勢力が関与して実現した「民主}は、本来の願望とは反対の結果に終わるという、中東や北アフリカ地域から学んできた教訓なのです。トランプが海外の民主勢力を援助する予算を撤回させたのはこのためでした。今年9月25日にトランプは、73回国連大会で演説した際も、主として中国の国際貿易システムの乱用とベネズエラのマドゥロ政権を、社会主義的な制度で、自国人民に苦痛をもたらしたことを批判し、各国に社会主義に対して連携して抵抗しようと呼びかけました。しかし、彼が言う「抵抗」とはどちらかというと防御的色あいが強く、「冷戦」とはかなりの差がありました。

     ⑵ ペンスの談話の主たる内容もやはり防衛的です。トランプの2017年12月の「国家安全戦略」に言及し、「大国競争の新時代」であり、外国が再び自分たちのグローバルな影響力を拡大すべく、米国の地政学的な政治的優位性に対して挑戦し、国際秩序を連中に有利なように変えようとしているとして、「この戦略の中でトランプ大統領は、はっきりと中国に対して既に新政策をとっている。我々は公平、対等、そして相互に主権を尊重する関係を求めている」と述べました。この話は、つまり中国に、米国に対する浸透と干渉を止めるようにと警告はしていますが、しかし、その最低線は「相互に主権を尊重」です。メディアは無視しましたが、「米国は過去25年間、中国を助けてきたが、今日では北京は依然として、口先では”改革開放”と言いながら、実際には鄧小平のこの政策は骨抜きにされてしまった」としています。これは中国に対する敵意ではなく、期待を表しています。

     ⑶ 米国の国内政治は外交政策に対して制限を設けています。一国の外交と軍事行動は、実際には国際社会における国内政治の一種の延長ですから、ペンスが副大統領としてシンクタンクで発言したのは、政府色を薄めるもので、米国政府を代表する立場かどうかは、かなり解釈の余地が広いのです。こうしたやり方で態度を表明したということは、屠竜派も別に、中共政権を倒そうという目標で協力な干渉をしようという主張ではなく、中国を押さえ込みたい、ということなのです。というのも、イラク戦争や「アラブの春」の前車の轍を踏まないために、米国社会の多くの構成メンバーは、自国政府が、他国の余計なことにまた首を突っ込んだりしないでほしいと願っているからです。

     また、米国国内の共和党、民主党の政争は、かつてないほど激しいものとなっており、カバノー最高裁判事指名承認問題でも、きわめて難しい情勢の下でやっと認められたほどでした。ヒラリー・クリントンは、9日のCNNの取材に対して、選挙民に「手段を選ばずホワイトハウスと国会の多数を獲得するために、遠慮するな」とゲキを飛ばしました。

     中・米関係は短期間に「晴天」になることはありません。晴天になるかどうかは、かなりの程度、北京がどのような対応をするかによって決まります。どうしても強硬な態度をとり、中間選挙で民主党の勝利に賭け、トランプが2020年に選挙で負ける方に賭けるのは、あまり賢い手段ではありません。(終)

     原文は;【观点】彭斯讲话:美国屠龙派观点大放送 

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