• ★外為管理体制は中国最後の「防衛塹壕」 2018年10月24日

    by  • October 26, 2018 • 日文文章 • 0 Comments

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    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

     中・米双方は11月下旬のトランプ・習近平会談に向けて折衝を行っています。米国側が明らかにしたところによると、米国が突きつけた知的財産権を含む要求リストに対して、中国側はまだ回答していません。中国側には有効な切り札がなく、ただ頑なに抵抗しているだけだと世界では見られています。中国中央銀行トップの易綱・中国人民銀行総裁は2018年10月14日、G30国際銀行業界研究会で「我々の通貨政策ツールは、利率、準備金率、通貨条件にまだかなりの余裕があって、十分、不確定な事態に対応できる」と発言しました。これは「引かれ者の小唄」のようなセリフだと思われがちですが、私はそうではなく、これは冗談抜きに中国の非市場化外為管理体制の下での、中・米貿易戦争の「防衛ラインの塹壕」であると思います。

     ★中国はなぜ「為替操作国」に認定されなかったのか?

     2015年、中国人民元が国際通貨基金(IMF)のSDR(特別引出権)通貨バスケット構成通貨に認められた時、中国は金融開放と人民元の自由兌換を出来る限り迅速に実現すると約束しました。しかし、今に至っても、金融市場の外国為替市場は依然として、政府のコントロール下のフロート制をとっています。北京はこれを、「管理されたフロート体制」と呼びますが、「ダーティ・フロート」を聞こえ良く言っているだけで、本質は政府が為替レートを左右することです。

     中国世論は、米国は今年中国を為替操作国家に認定するだろうと見ていました。しかし、10月17日に米国財務省が発表した「米国主要貿易相手国外国為替政策レポート」では、中国は依然として、日本、韓国、インド、ドイツ、スイスなどと同様の待遇を受けており、依然として「監視リスト」上にあるだけで、中国では「中国は難を逃れた」という論評も見られました。

     なぜ、米政府が為替レートの上下を管理する国家(つまり、為替レート操作国家)を、そう言わないのかといえば、複雑な事情があります。

     この20年間の中・米関係を知っていれば分かりますが、2016年まで、米国議会はずっと中国が人民元レートを操作していると強く批判し、中国を為替レート操作国家に指定すべきだと要求してきたのですが、米国財務省はそうしませんでした。理由は二つあります。

     一つは、法律的な制限です。1988年の法律によれば、米国財務省は、主要な貿易相手国に定期評価を行うに際し3つの基準にのっとって、国際収支のバランス調整、あるいは不公平な貿易上の優位を保つために為替レートを操作しているかを見なければなりません。この三つとは、①米国側の貿易赤字が200億米ドルを超えて、②経常収支の黒字がGDPの少なくとも3%。③持続的に為替レートに干渉している、です。この三つの基準から、中国は1992年から1994年の間に、米国に5回、為替レート操作国家に認定されています。1994年7月以後は、米国はどの国も操作国家リストに載せたことはありません。トランプはずっと、中国を為替操作国家に認定させたがっていたのですが、中国は「為替操作国家の3項目」に完全に当てはまるというわけではなく、財務省はそうしませんでした。法律が改正されなければ、ホワイトハウスも、2項目だけでは為替操作国家に認定することはできないのです。

     二つ目には、国際経済状態への配慮からです。中国が為替レート操作が、全世界の通貨システムが安定するのに寄与していることです。例えば2016年10月14日に、財務省は、またしても中国を「非為替操作国家」したばかりか、議会に提出する主要貿易ライバルの為替レートに関する半期レポートにおいて、「中国政府が外為市場に干渉するのは、人民元が過度に減価して、中国と全世界にマイナスの影響をぼすのを防ぐためである」 あと、積極的にその働きを評価しました。同報告は、干渉しなければ、減価はもっとひどくなった。今年の新興経済国では、貧困国家で人口の多い国は、中・米貿易戦争と連邦準備制度理事会(FRB)の利上げの影響がとりわけ深刻で、投資家が危険度の高い資産を投げ売りしているために、インドから南アまで各国通貨の価格が暴落しており、トルコやアルゼンチンでの金融危機を引き起こしています。10月中旬にはIMF、世界銀行のインドネシア会議後発表されたG24生命では、新興マーケットは資本の過度に激しい動きで「不利な影響」を被っていると声明を出しました。

     ★中国は外為市場の市場化を準備したことなし

     次に、IMFが自分たちのルールを枉げてまで人民元をSDR通貨バスケット構成通貨にいれたのに、中国は遅々として人民元自由交換(つまり、外為管制中止)を一向にやろうとしませんが、IMFはなぜそれを黙って許しておいたのでしょうか?

     まず、以前のことから振り返ってみましょう。2015年11月、中国人民元がSDRバスケット入りを果たしたときには、IMFの原則に合致していませんでした。IMFも米国も、一種の政治的考慮を重んじたのでした。2015年4月、IMF第一副総裁のリプトンはロイターの取材に対して、将来はルールを変更して人民元のSDRバスケット入りを援助するかもしれないと答えました。拒否権を持っていたオバマ大統領も、SDRバスケット入りを支持したために、中国人民元のバスケット入りが決まりました。バスケット入りの重要な条件が「自由に交換できる」だったのを、IMFはもっぱら中国のために「人民元は国際貿易で広範に使用されている」に変えたのでした。もちろん、中国も、出来るだけ早く金融開放と人民元の自由交換をすすめる、と協議中は約束しました。しかし、これは批准に都合の良い理由を与えるという目的であって、短期間にこうした約束を果たそうという気は中国には全くありませんでした。

     私は、「人民元SDR入りー春風は堅い氷を溶かせないー 2015年12月5日 http://yangl3.sg-host.com/2015/12/08/yuan-sdr-2/ で、こう指摘しました。

     ;中央銀行トップの周小川は人民元のSDR通貨入りの前日、人民日報上に長文の「金融体制改革の深化ー党の18節5中全会精神を貫徹することを学べ」を発表し、「国家金融の安全体制を建設し、金融危機のシステム的な発生を防止し、極端な状況下で国外からの我が国への金融攻撃、金融制裁に有効に対応せよ」と書きました。

     メディアは、「周小川;海外の金融攻撃に対応できる有効な措置を完全に実施せよ」といった見出しをつけ、それはバカでないかぎりわかるでよう、周氏の「金融攻撃」への心配を十分に報道しました。人民元の「SDR入り」の条件は金融開放の実現と人民元の自由交換であり、こうしたことを実現する約束というのは中国金融市場が閉鎖されていたときには直面することがなかった危険、例えば外国勢力の「金融攻撃」の類だということです。

    ;「発展途上国は1997年から1998年のアジア金融危機の期間、英国は1993年、日本は20世紀の90年代にすべてこうした攻撃を受けた。米国も20世紀の60年代から70年代には免れなかった」。このような「金融攻撃」は一国の金融が国際的開放に向かう必然的な代償である。

     中央銀行の副頭取で、外為管理局長の易綱は人民元バスケット入り交渉の責任者ですが、帰国後の内部発表談話では、「中央銀行のSDR入り時のブリーフィング(実録)」は、財新ネット上に公開されています。そのいくつかをみても明らかなのですが、例えば「SDR入りについては、我々は確かに、IMFの必要とする金融改革に必要な一連の技術的操作と一定レベルでの改革、あるいは”対応策”をとった」とあります。

     更に、明らかに外部(主としてIMF)に対して自分たちの将来への考えを知らせるべくこう書いています。「我々は現在、外為フロートシステムをとっているが、将来的にはクリーン・フロートが目標だ。そこまでのプロセスは漸進的で穏やかなものであるべきである」と。易綱はあまつさえこういい切ります。「SDRが該当する通貨が条件に合致するかどうかを5年ごとに審査するが、条件が合致しないときは退出することもできるのを忘れてはならない」と。

     つまり、この報告は「中国は相当長い期間にわたって、政府管理下の外為フロートをやめるつもりはない」といっているのです。

     2016年10月1日、IMFは正式に人民元SDRバスケット入りを認めました。その3カ月前に、中国政府は「外貨準備防衛戦」を初め、為替レートをコントロールしたばかりか、更に、外国為替流出の総量規制まで行い、多くの外資系銀行が長年、年末に本社に利益を送ることすら制限し、中国資本市場は「入ってくるのは良いが、出ちゃいかん」の一方通行資本市場になってしまいました。

     この”防衛戦”の成果は、3兆ドル外貨準備という政府にとっての「絶対正しい繁栄生命線」を維持したことです。人民元の自由交換はますます遠ざかりましたが、しかしIMFは批判しませんでしたし、米国財務省はそれどころか、世界経済の安定に貢献したと褒めさえしたのです。

     こうした経過と、今起きている事を分析すれば、中国が外為管理制度上では「国際ルールと軌を一にする」ことは、放棄しており、自分勝手に行動するぞという事であり、また国際組織や米国が、大変「ゆるゆるで寛大に」済ませていたことの理由を説明できます。この「寛大さ」というのは、別に全て中国経済のためにというわけではなかったのです。

     ★易網の「通貨の条件」とは何か?

     国際社会は、中国の数々の違反行為も多めに見てきたこともふくめて開発途上国に対してこれまで太っ腹でした。しかし、世界は変化します。かつて一番、中国に太っ腹だった米国も、もうこれ以上損をしてたまるかと、WTOのルール改定を求めています。今年10月24日にカナダでの会議での目標はルール改定でした。それには少なからぬ対中国向けの特別な改定が含まれていました。例えば、国家の補助金の通報体制や、国営企業の明確な定義などです。もしルールが改正されれば、米国が発動した貿易戦争の一部の目的である、中共の不公平貿易を締め上げ、国営企業に対する補助金や、知的財産権の窃盗行為、強制的な技術移転、国債市場秩序の歪曲などをやめさせることができましょう。

      では、IMFはWTOに続いてルールを改定するでしょうか? 例えば、いつの日か米国が怒り、またしても退会という脅しで持って、IMFに対して人民元をSDRバスケットから追放せよ、などと言い出すでしょうか? 私が思うに、それが現実になる可能性は将来にはあるかもしれませんが、少なくともこの2、3年の間には、現実にはならないと思います。その理由は、中国が頑張るからとか、2018年の第二・四半期で中国人民元が全世界の外貨準備で1.84%に上がって、豪州ドルと並んだからとかではありません。以下の条件によるものです。

     IMFが先月発表した新データによると、今年6月末までに全世界の外為準備総額は11.48兆米ドルで、中国の外貨準備高は6月で3兆1,121億ドルで、全世界トップ、全世界の外貨準備総額の27%を占めました。国際経済では、一国が持っている外貨準備高は、その国の全世界の金融安定面の力を決定ずけます。

     易網がいう「通貨の条件」とは、主にこの中共が手にしている巨額の外貨準備高をさします。中国が現在の外為管理体制を維持する限り、このカードは中国が通貨安定と国内経済に対して極めて大きな作用を持つのです。1998年、この体制は、ソロスが生み出した東南アジア金融危機の衝撃から中国を守りました。今後2年以内に、これは中国が米国の対中貿易戦争に対する、最後の防衛ラインとなるでしょう。

     中国の非市場体制は最初から最後までずっと禍福両面のあるものなのです。中国は非市場経済体系のまま、うまく世界経済体制に入り込み、かつてはその点を利用して、旨い汁を吸うことができました。これが中国が放したがらない”中国的特色”であり、国際ルールと軌を一つにすることができない原因であり、当然ながら中・米貿易戦争が起きた原因でもあります。今後、中国経済が高度に外国に依存し、市場化を迫られる分野はますます増えるでしょう。しかし、外為管理体制の非市場化は、それでもまだ相当な時期、依然として続くのです。(終わり)

    原文は;外汇管理体制:中国最后一道防护壕 http://www.epochtimes.com/gb/18/10/24/n10806124.htm
    2018-10-24

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