• ★中国政府は、お金持ちの羊毛をクリクリに — 始まる海外徴税 — 2018年11月16日

    by  • November 16, 2018 • 日文文章 • 0 Comments

    日中両文収録「何清漣 2017中国」Amazonで発売しました;20152016Amazon改訳版を電子ブックで。Kindle Unlimited なら無料です
    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

     中国では最近、「タオバオに出店していた女店主が服飾品の輸入代行脱税、実刑10年、罰金550万元」のニュースが話題となりました。これより遥かに大事件だったスター・范冰冰の巨額脱税が最終的に罰金だけで済まされたのに比べると、司法のひどい不公平さを、人々は嘆きました。しかし、皆さん、この2ヶ月間に徴税の新たな動向には注目していません。それは、企業税率を減じ、特定の金持ちに対する個人徴税強化です。

     ★企業に「羊を失ってから檻の修繕」

     9月中旬、中国国務院は「大衆創業、大衆創新」(双新)の強化についての一万字近い意見書を発表。企業減税の6大目標8大措置を列挙しました。そのうち最も重要なポイントは企業負担軽減のための全企業に対する減税と、社会保障費の低減です。その他は起業の奨励や、新技術開発の研究開発費の控除率を75%にするなどです。

     社会保険税の提言は、中国国内でこの間ずっと重すぎるという批判の声に向けたもので、その結果、多くの企業が人員削減を行い、失業増につながることから、企業税減税をせざるを得なくなったのです。起業や投資奨励は、中国企業が出来るだけ積極的に研究開発に投資することによって、次第に自主技術を開発し、知的財産権泥棒の「偽物王国」の汚名をそそぎたいからです。

     こうした税制措置は一見、大変結構に思えます。とりわけ中・小企業の技術開発研究に手厚い配慮がなされているように見えます。しかし、中国の企業税の状況を知っていて、企業の創造奨励制度がいかに乏しいものかを知っていれば、とても間に合うはずがないと分かるでしょう。

     ★「企業死亡税率」が減税を迫った

     数年前、天津大学経済学部の李煒光教授が、中国の民営企業の税負担率が上昇を続け、2015年に51.43%になったのは、「死亡税率」だといい、蜂の巣を突いたような騒ぎになり、結局、政府に無理やり沈黙させらされました。しかし、企業税率が重過ぎやっていけないのは事実で、確かに企業減税が必要でしたが、政府税収も減らせませんから、とにかく新たな税源を探し出さなければなりませんでした。中国政府、半政府系の専門家たちが色々頭をひねりました。2017年になって、中国海通証券アナリストたちの研究プロジェクトでは、新たに徴税する方向性で調整しているとしましたが、それには3つの論点がありました。

     ① 中国の企業税負担は先進国だけでなく、新興経済国より高い。

    中国の企業部門は広義の意味で、GDPの3割も負担し、マクロ的な意味での税金負担は9割に達し、その絶大な非税金政府収入は企業が負担しています。中国企業税は、商業利潤のうちの68%を占め、世界190以上の経済体の12位です。これは、米国の44%、英国の31%、シンガポールの19%などの先進国より高く、インドの61%、メキシコの52%、ロシアの47%、インドネシアの31%などの新興経済体より高い。

     ② 中国の税収構造は、間接税が主導で、企業税より多い
    2016年の中国の税収では、間接税が6割を占め、直接税は4割です。しかし、先進国では直接税の比重は一般に5割から6割で、米国、カナダでは7割を超えます。中国の直接税比率は、はるかに先進国に及ばないばかりか、新興経済国と比べても多くありません。

     ③ 中国企業の納税は税収の85%以上で、個人の直接納税比率は11.5%
    この研究の結論は、不動産税の増税です。遺産税など金持課税でこの不足を補おうと言うものです。類似研究は他にもあります。これは、この文章のはじまりで、結論づけた今年の税収調整の方向がでてきた由来です。企業税負担を減らすと同時に、金持ちから徴税しようと言うものです。

     ★個人の海外資産に対する徴税

     今年8月31日、中国全国人民大会常務委員会は「個人所得税法修正案」を通過させました。これは1980年の個人税立法以来、7年ぶり7度目の改定です。改正点は二つで、一つは個人所得税の最低額を月額3500元から5000元にして、中・低所得者層の税負担を軽減しました。二つ目は徴税範囲の拡大で、「中国国内に住所があるか、住所がなくても納税年度内に国内に183日以上いた場合」としていたのを、「中国の国内国外で所得を得た国民を、本規定によって個人所得税を徴収する」に変えました。

     「中国国内に住所を有する個人」とは「戸籍、家庭、経済利益関係にあり、国内に習慣的に居住する者」を指し、国家税務総局の「中国税収居住民身分認定規則」の詳細な規定に合致すれば、国内国外を問わず所得税が課せられます。

     中国国内に183日も住み、外国にも居住するのは当然、毎年10数日の休暇を海外で楽しむサラリーマン階級ではなく、中国国内でビジネスを営む各種の企業関係者や、海外に移民した役人と大金持ちの家族でし。投資の世界では「High Net Worth Individual」(ハイネットワース)とカッコよく呼ばれていますが、つまりは「対金持ち増税」です。
     
     彼らは、自分たちの世界各国に分散した資産が、米国や中国に捕捉されないことを期待してるかもしれませんが、私が思うに、今後はそうした可能性はどんどん減るでしょう。米国は2013年に「海外口座徴税法(FATCA法)」を実施して以来、中国、香港、台湾、マカオ、日本、韓国、スイスに至るまでの世界100カ国以上の国々がこれに参加し、中には台湾のように自国版のFACTA法を持っている国もあります。各国の実施段階が異なり、条約の細目も違っており、通報システムも差がありますので、モデル1、モデル2があります。しかし、総じて言えば、2014年からFACTAは世界中で次々に発効しており、グローバルな協力国は2年ごとに米国税務局に、顧客のデータを送っています。

     中国が、これまでのびのびになっていた海外と中国の両方に居住する者への徴税を今、開始したのはやっとその準備が整ったからです。今年9月1日に中国は正式にCRS(common reporting standard)に加入しました。つまり、中国の定義する「居住する個人」に合致すれば、その人物が国外のCRS参加国のどこに持っている口座情報も、みなCRSを通じて自動的に交換され、中国の税務当局に伝わります。交換される情報には、海外の口座、資産情報が含まれるのです。

     全世界で金に困ってない政府などひとつも存在しませんし、中国政府は膨大な官僚機構、膨大な軍隊などの治安維持装置を維持しなければならないので、こうした「民から税を取り、政府がこれを使う」という政府徴税モデルは、なおさら慢性的な財政飢餓状態にあります。過去には、企業から重税を取り立ててきましたが、「鶏を殺して卵を取る」で、企業は卵を産む意欲をなくしますから、長くは続けられません。かといって中・低収入層からはもう税をこれ以上取り立てる余地はありませんし、恨みを買いやすいのです。そこで目をつけたのが「ずるい逃げ道を三つは持っているウサギ」である金持ちたちです。范冰冰のケースのような脱税追徴のほかに、徴税の対象を海外の「はいネットワース」達に広げるのも一つのやり方です。残された最後の「税の金鉱」である不動産税は、もう徴税するか否かではなく、いつから徴税するかだけの問題なのです。(終わり)

     原文は;中国终于开剪富人的羊毛

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