• 程暁農★世界の工場衰微の原因は「勃興」の中に有った   2018年10月10日

    by  • December 28, 2018 • 日文文章 • 0 Comments

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    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

     現在、中・米間がどんどん疎遠になっていく局面にある。その原因となった貿易戦争の発端は、中国が「世界の工場」となったことと密接な関係がある。この衰退現象は、短期的現象ではない。それは宿命であり、その原因はまさにその勃興の中にあった。

     10月4日、米国のペンス副大統領のハドソン研究所における演説は、世界各国と中国国内に大きな波紋となって、強烈な反応を引き起こした。中国の政府系メディアは、この演説は米国という太陽が既に日没を迎え、ホワイトハウスのリーダーたちは恐怖と不安と無力感に囚われ、中国を「身代わり羊」と見ているのだ、と語りました。現在のところ、米国の経済は世界で唯一好調なところを見ても、まだそう言うのは早すぎるが、ここではそれには触れない。しかし、中国が「世界の工場」が、外国企業の撤退によって衰退している現象は、確かに認められる。しかし、貿易戦争の原因と、貿易戦争と中国の「世界の工場」は密接な相関があり、「世界の工場」の衰微は、一時的な現象ではなく、宿命なのだ。なぜならば、「世界の工場」の衰退の原因はまさに、その勃興の中にあったのだから。

     1)「世界の工場」 — 世界も中国もその重さに耐えられない。

     中国は、2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟後、ずっと輝かしい歳月を送ってきた。2003年から2007年まで、中国の輸出は毎年連続で25%の成長率をマークし、時には35%にも達した。1990年、中国の製造業が世界に占める割合は3%だったのが、現在、グローバル市場の半分近くを占めている。1990年、中国の輸出は、全世界のたった2%だったが、2017年には14%にな理、グローバル輸出高は6倍になった。しかし、このものすごい勃興ぶりは、中国にグローバル貿易構造への理性的な考察を失わしめた。経済グローバル化は、中国をいつまでも唯一の勝利者にしてくれるのか? まさにこれが長年、北京当局が一種の戦略的な判断の誤りを犯し続けた理由です。なぜならば、グローバル貿易の構造と基本原理と変化する情勢を理解しなかったからです。

     国際貿易の構造は、常識で言えば、人口の少ない国は輸出額も少なく、国際市場での影響力もほとんどないが、しかし、長い間、黒字を保つこともある。しかし、中国のようなスーパー人口大国にとっては、グローバル市場だって小さ過ぎるのだ。もし仮に、中国が、今後20年間25%の輸出成長率をもったとするなら、中国の製造業は、現在の世界の半ばから、全世界の6割、7割、8割を占める事になります。そんな事になったら、経済のグローバル化は中国経済のグローバル化になってしまい、中国一国だけが良くても、他の国々は生存困難に陥いる。世界の多くの国々の製造業部門の工場は閉鎖となり、多くの国家経済は崩壊に瀕し、中国の輸出は遅かれ早かれ、十分な買い手がいなくなってしまう。中国の労働力が、全界の就業人口の26%を占めるなら、世界のあらゆる工業国家は皆、輸出停止となって、マーケットを全て中国に明け渡す事になるが、中国の輸出の黄金の日々も無限に続けられるわけではない。貿易は、かならずや相互の利益にならなければならないという国際経済のバランスという観点から見れば、そんなことは不可能だ。もし中国が世界の全てのお金を集め尽くして、売るだけでちっとも買わないで巨額の外貨準備高を積み上げるならば、以後、誰が中国から輸入する?

     だから、中国の「世界の工場」は、現実に対する一種の比喩的表現であり、もし、もし不可逆的な速度で膨張を続けるならば、世界はその重さに耐えられない。そして、この世界の工場は主、に輸出に頼っているから、その重さに世界が耐えられなくなったならば、同時に中国もその重さに耐えられなくなる。最初にあげた「アメリカの落日」という言い方は、もし米国製造業の空洞化だけを指すなら、全く検討外れではないかもしれない。確かに、中国が、輸出奨励金を与えて低価格産品を長年売り続けた圧力の下で、米国は耐え難い長期低迷の苦境にあった。しかし、これは中・米貿易戦争の唯一の原因というわけではない。

    2)「世界の工場グレードアップ」は米中摩擦の根源

     誰もが承知している事だが、中・米貿易戦争のもう一つの原因は知的財産権問題だ。中国の官製メディアは、双方が長期のにらみ合い状態、相互に罵声を浴びせ合う状態に入り、米国は中国を「イカサマをやるプレーヤー」だと非難し、中国は、米国を「貿易いじめ野郎」と呼ぶ。「イカサマ選手」とは主に、中国が「市場と技術の交換」という長期政策を用いてきたことを指す。

     中国の百度百科(中国版ウィキペディア)によると、1984年3月22日に、中国国務院は、国家経済員会の「技術と貿易の結合と旧設備選択購入の報告」のに対する指示で、「外国の商品貿易と技術を結合して、技術と貿易の結合を、我らの市場の一部もって外国の先進技術と交換するのが、我が国の技術を進歩させる重要な方針である」としていまる。1998年4月、中共中央と国務院は更に一歩、改革開放を進め、外国資本の進出を利用するレベルをあげたときに、意見を述べている。そこには二箇所ではっきりと言「市場と技術の交換」が言われていた。2000年に世界貿易機関(WTO)に参加するにあたっては、WTOは、はっきりと、強制的に外国資本に技術移転を強いることを禁止していたので、中国はルールを書き換え、字面の上では、「市場と技術の交換」とは言わなくなったが。加入してからこれまでの18年間、「市場と技術の交換」は、表面からは消えて裏で、各地方政府が、引き続き外資企業に設計図と技術を出すように要求したのだった。そして、最近の「メイド・イン・チャイナ2025」計画を代表とするハイテク製造業攻略計画で、数年のうちに「世界の工場」グレードアップという目標に向けて、「外国技術をかっぱらう」活動はますます盛んになっており、だから、知的財産権をめぐる中・米の確執の焦点となった。

     中国が、ハイテク製造業攻略の決心をしたのは、世界の工場がまさに今、総合的な競争力を失ったからなのだ。中・米貿易戦争が勃発する以前に、中国の世界の工場には、部分的に衰退現象が見られた。アパレル関係や寝具関係では、大量に東南アジア、南アフリカに移転した。その理由は、中国の労働コスト、エネルギーコスト、納税(社会保険を含む)コストが急速に上昇し、為替レートが高止まりしたままだったからだ。ボストンのコンサルタント企業が2014年に行った調査では、当時の中国の製造業における平均コストは、米国に比べて5%しか低くなかった。数年前、労働密集型のアパレル、寝具関係の産業は真っ先に中国から撤退した。こうした状況に対応するために、広東省は真っ先に、外国企業の「籠の中の鳥を取り替える」産業政策に切り替え、「世界の工場アップグレード」を実現したのでした。

     もし、「世界の工場アップグレード」が、自主的な研究開発によるものであれば、誰もとやかく言えない。しかし、中国製造業のハイテク攻略には、大量の民間技術が必要であり、それを全て、政府出資に頼った自主研究開発で賄うことは不可能だった。コストも時間もかかり過ぎるし、軍用研究の技術は軍用分野に適合するようにはなっているが、民用品分野では、商業的な競争価値がない。だから、外国から技術を「ゴッチャンする」方法を考え出し、それが「世界の工場」の技術アップの重要な手段と早道としたのだ。この点に関しては「ハイテク分野で「中国が米国をコーナーで追い抜く」の”三つの神話”  」(2018年8月20日)に書いておいたのでここでは述べない。

    3)「世界の工場」の宿命

     研究コストの莫大な先進技術というのは、そこらの野辺に咲いている雑草の花のように勝手に手折って良いものではない。技術をかっぱらわれた外国企業は、将来には同様の中国産品に国際市場で、陣地を奪われる事になる。その知的財産権の価値は、中国企業にとってはボーナス利益になるが、そうした外国企業にとっては長期に大変な損害になる。だから知的財産権侵害が米・中貿易戦争の肝心要の問題になる。しかし、「世界の工場の技術アップグレード」にはこの「かっぱらい技術」と切っても切れない関係にあるので、互いにディスり合う羽目になる。米国が関税を上げることは、中国側が言う通り「自分の撃った弾で、米国の消費者を撃ってしまう」というのはどうか? 短期間では影響がありうる。けれども米国の輸入業者は次第に、自分たちの供給チェーン網を作りつつある。東南アジアや南アフリカ各国に工場を建設し、米国内にさえ工場を作っている。台湾の郭台銘が、新たにiPhone用に組み立て工場を作っているのがいい例だ。供給チェーンの移転は数年はかかるだろう。そして、中国の外国企業は、主に中国や欧州、中東市場向けの企業は、中国の「世界の工場」を堅持し、米国を主な市場とする外資企業は、次第に中国から撤退していくだろう。この間、中国の「世界の工場」は峠を過ぎて、次第に下り坂になっていくだろう。

     私が中国の「世界の工場の宿命」という意味は三つのレベルがある。第一に、中国が世界の工場になれたのは低コストのおかげだ。しかし、最後にはエネルギーを独占する国営企業の高価格と、地方政府が普段に増やしてきた税金、そして人民元の高止まりがこの「世界の工場」のコストを不断に増加させ、ついには国際競争での優位を失わしめた。

     第二には、「世界の工場」で技術面でのグレードアップがなければどうにもならない。しかし、短期間で素早くそれをやるには、政府の資金援助による自主的研究開発ではなく、中・米貿易戦の原因である「かっぱらい主義」でやるしかないが、その結果は貿易戦争であり、すなわち「世界の工場」の衰亡である。

     第三に、中国の経済は、成功したのも「世界の工場」のおかげ、衰亡するのも「世界の工場」のせいなのだ。それがなければ、中国は過去二十数年の経済的繁栄はなかったし、この世界の工場を維持する活力もなかった。そして、中国はその代価を「貿易戦争」とう形で払うしかなく、米市場の一部を失ったが、それでも失われた経済繁栄を取り戻す道はない。

     もし中国が、専制独裁国家でなければ、政府は全面的な市場開放を恐れずに、外国資本の撤退が心配で頑固に人民元交換率を死守する必要もなく、米国を仮想敵国として争う決心をすることもなければ、中国の「世界の工場」にはまだ道が残されていた。それは、外国企業に中国で独立した経営を行わせ、無理やり合資を押し付けず、外国輸出の割合を強制せず、政府も外貨獲得のために中国の製品輸出に多額の奨励金を払ったりせずに済んだ。しかし、この道は通れない。結局のところ、「世界の工場」の宿命は、現行制度の宿命なのだ。(終わり)

     原文は;中国“世界工厂”的宿命

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