• 2018年 — 中国は、なぜ米国を失った?(上) 2018年12月29日

    by  • December 29, 2018 • 日文文章 • 0 Comments

    日中両文収録「何清漣 2017中国」Amazonで発売しました;20152016Amazon改訳版を電子ブックで。Kindle Unlimited なら無料です
    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

    一年の終わりに当たって、今年起きた最大の国際的事件を振り返れば、中・米関係の急速な悪化でしょう。全体的に言えば、これは米国が、従来は中国に開いていた正面ゲートを少しずつ閉じようとしており、中国はこれに対して受け身な立場でしかないということです。この光景は、1940年から50年代初め頃、共産党が中国を制覇した後、米国議会が「我々に中国を失わしめたのは、一体誰なのか?」という大議論が交わされたことを想起させます。今や、中国はなぜ米国を失ったか?」を考えると頗る興味深いことです。

     ★中・米関係の戦略的反省

     2018年、中国の米国に対する全ての行動は、これまで通りで、「千人計画」(*訳注;米国内の中国系米人の科学技術系エリート学者らを、高給で中国に招く計画)は、相変わらず続いており、中共対外宣伝も依然として戦時態勢で、広く国策として宣伝された「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」のために、ハイテク技術を「拝借するか、かっぱらってくる」やり方を続けていました。しかし、これまでずっと寛容だった米国は、変わりました。新たな大統領の、国家の安全に対する考え方に沿って、中国外交では長いこと完全に干されていた「屠龍派(反中国派)」が、自由に飛び回り始めたのでした。中国があの手この手で米国内に、長年営々と築き上げた、いわゆる「統一戦線(*外国に味方を作る)工作」は、この一年ですっかり崩壊同様になってしまいました。

    2017年の知的財産権や学界スパイ問題の公聴会とは異なって、2018年には米・中戦略競争というレベルまでエスカレートしました。

     2月16日、米国議会下院軍事委員会は、米・中戦略競争について公聴会を開催しました。プリンストン大学の国際関係教授で、2003〜2005年にチェイニー副大統領の国家安全政策研究室のアドバイザーを務めたアーロン・フライドバーグは、「米国は冷戦の終結以来、中国に対して、安定した関係を通じて接触して、慣れさせ、最終的に中国を改造し、米国の主導する自由主義国際秩序の一部分とし、最終的に政治の民主化を実現する『接触とバランス』の両輪戦略を採ってきた。しかし、中国は米国の期待する道を歩まず、民主化へ向かわなかったばかりか、国内政治は、一層専制的になり、軍事上は一層民族主義的になり、外交上は更に強硬、居丈高になった」と指摘しました。

     フライドバーグの結論は、「米国の過去25年の対中国政策は失敗だった。中国は今、全面的で広範な戦略を以って、全力で米国になり代わって東南アジアと世界の新たなる指導的地位を求めている」。だから、中国のこの挑戦に対して米国は、新たな総合戦略を必要としており、もっと有効な方法を立案、駆使しなければならず、米国だけでなく同盟国のあらゆる手段と戦略を整合性を以って活用すべきだ、と述べました。

     会議出席の専門家の意見は、「中・米の戦略的競争は避けることが出来ない。米国は今ならまだチャンスがある。必ず機を逃さず決断すべきである」でした。

     この公聴会の一カ月ちょっと後になって、米国は対中貿易戦争を発動しました。中国側はそれに対応するために、訪中したビジネス界や政界、学界の人物と常に会っている知米派・王岐山が対応しましたが、さっぱり要領を得ませんでした。理由は簡単に言ってしまえば、王岐山が会った連中は皆、「パンダ派(親中国派)」で、彼らは皆、反トランプ陣営側で、ホワイトハウスが何を考えているか分かっておらず、意見が見当外れだったからです。

     ★2018年 米国への中国からの浸透に警告レポート

     クリントン大統領時期から3期24年間、中・米衝突は、毎年起こっており、「パンダ派」が活躍出来た時期でした。米中関係全国委員会の大物が顔を出すだけで、満天の黒雲は雲散霧消したものです。しかし、2018年はこれまでとは違いました。米国では、続々と出された幾つかのレポートと国会公聴会では、全ての主張が、米中友好を数十年にわたって担って来たパンダ派を干し上げろという方向だったのです。

    (1)学界のスパイ問題が公開された

     2018年2月、連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ局長は、米国議会上院の公聴会で、中国の「学術スパイ」が、全米の学術機関、とりわけ科学、数学などの学科に狙いをつけ、教授や科学者、学生といった「非伝統的な情報網」をどの学科にも浸透させており、米国の全社会的な脅威になっていると述べました。そして、米国学会の「自分たちの仲間に中国に情報をもらすような人物がいることを認めるのを拒絶する『無邪気さ』によって、この問題が一層深刻になっているとしました。

     レイ局長によると、中国のスパイは米国学会の開放性を利用しているが、この種の開放性は、米国社会がこれまで尊重してきたものだ。だから、中国の米国への脅威は、米国政府だけではなく、米国社会に対する脅威であり、これには全米国の社会が手を取り合って対応しなければならないと語りました。

     レイ局長は、孔子学院はFBIの重点監視目標であり、その理由は彼らが米国の大学と協力しているからだ、とも指摘。

     週刊ワシントン・オブザーバーがこの公聴会を報道し、米国の官僚の間ではあまねく、中国が学術間のスパイと教育プロジャクトを利用して、米国世論に影響を与え、これは中国の国力増強長期計画の一環であるとみなされていました。この計画的な外交政策は「100年マラソン」と呼ばれ、その最終ゴールは中国を今世紀中に米国に取って代わる超大国にすることだと。

     4月11日、米国議会下院の科学技術委員会は、米国の学術機構が外国情報機関によって浸透を受けているかについての公聴会を開催。その席上、多くの証人が、中国が「学術スパイ」を使って全米の高校で科学技術分野に浸透し、米国の国家の安全と経済の安全に脅威を与えていると指摘しました。「スパイ学院 中央情報局とFBIと外国情報機関が、いかに裏で米大学を利用しているか」の著者ダニエル・ゴールデンもこれに参加し、中国は孔子学院を拡大して、自分たちのソフトパワーと長期的影響力を拡大し、米国の次代の指導者たちに影響を与えようとしている。同時に、中国は米国の高校に資金提供することによって、情報収集と政治過程に影響を及ぼす足場にしようとしている、としました。

     (2)シンクタンクとK街ロビイスト集団と中国の利益の連携がバレた。

     「学術スパイ」の指弾が米国の中国研究学界に与えたプレッシャーはかなりのものです。米校区のシンクタンクは、公正と客観性で有名だったので、政府やメディアから多くの研究依頼を受けてきましたし、それによって政府と世論に影響を与えることとなり、一種の重要な間接的権力となりました。しかし、近年、シンクタンクが外国政府のロビイングのための資金援助を受けているという非難が起きています。

     ニューヨーク・タイムズ紙は2014年9月7日に調査結果を発表しましたが、過去数年間に、10数のワシントンにあるシンクタンクは外国政府からの大量の資金を得て、米国官僚に、寄付をした国家に対して有利になるようにするロビイングを行なっていたと発表しました。一部の学者は当時、自分たちがプレッシャーの下で、寄付金を出した国家に有利になるような結論を出したことを認めました。

     ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、買収されたシンクタンクの大部分は、欧州、中東、アジアの一部地域からの資金によるものでした。その中には、アラブ首長国連邦、カタールをトップとして、中国の名前もあり、買収のやり方も色々でした。

     こうした甚だ芳しくない事情は、民主党のシンクタンクや政界人が設立したK街ロビイング企業に関わりを持つもので、誰もその調査結果の真実性を疑いませんでしたが、オバマ政府は、これを見て見ぬ振りをしてしまいました。この後、こうした批判は更に続き、比較的有名な報告と国会の公聴会も以下のようにありました。

     ;2016年7月30日 International Conference on Information Technology(ICIT)はワシントンで「China’s Espionage Dynasty: Economic Death by a Thousand Cuts」(中国のスパイ王朝、経済は1000の傷を受け、次第に死んでいく)報告を発表。中国はビジネスの秘密を盗むだけではなく、米国を含む西側国家の経済上の破壊、打倒を考えている。

     ; 2017年12月13日、米国国会と政府の中国委員会(CECC)が「中共の長い腕 全世界に輸出される中国独裁強権主義」と題する公聴会が開かれ、中国の海外浸透が民主国家の核心的な価値に脅威となっていると指摘され、委員会は反撃のための新たな立法をどうするか考慮中である。

     以上のような2年間にわたって作られた基礎の上に、2018年6月に、米国政府高官は離職後、中国の在米利益の代言人としてロビー行為を行う件、この一年以上続いてきた問題で、次々にThe Daily Beastなどのメディアを通じて、名指しで批判されてから、米国議会の下部機関である米中経済安全審査委員会(USCC)は、8月24日に39ページに及ぶ「中国の海外統一戦線工作 — 背景と米国への影響」(China’s Overseas United Front Work: Background and Implications for the United States)を発表。

     全面的に中国の統一戦線工作の歴史的背景、目的、組織構造、中共の対米、対豪州、対台湾への統一戦線工作の手法と影響を分析、暴露しました。報告は、孔子学院について大量のページをさき、中共教育部による孔子学院は、2017年、全世界で140以上の国々で500カ所を超え、中共のイメージを”漂白”している、と指摘。孔子学院は、中国語学習は勧めるが、学生には天安門事件や台湾、新疆、法輪功などの問題を論ずることは許さないと述べました。また、孔子学院と統一戦線部門が協力する独立組織の「中国学生学者聯誼会」なるものは、天安門事件後に世界に150以上の支部を持っており、中共大使館と密接な連携を取りつつ、海外の留学生を監視し、現地の学校活動に介入していると。

     ★ペンス副大統領の演説は、「屠龍派」意見の集大成

     2018年10月4日。ペンス副大統領がハドソン研究所で行った講演では、公開で中国の軍事侵略、商業窃盗、人権侵害よ呼び、11月6日の米国中間選挙に干渉しようとしたことを非難し、その中ではっきりと、中共が米国で全く自由に「大対外宣伝」を行っていることを指摘し、「今や、中共政府は米国の工業、商業界、映画制作会社、大学、シンクタンク、学者、記者、地方、州、連邦政府役人を脅かしたり、褒め上げたりしている。疑いもなく、中国は米国の民主主義の運営に干渉している」と非難しました。

     国際社会の反応は強烈なもので、中には「冷戦の幕開け」とする論評さえありました。しかし、米国の対中政策を熟知していれば分かるのですが、ペンス講演の内容は、近年、ずっと続いてきたワシントンの屠龍派シンクタンクの研究の中で出ていたことです。ペンスの講演で名前の上がったマイケル・ピルズベリーは、その代表的人物です。彼が2015年に出版した「China 2049 100年マラソン — 中国が世界に覇を唱える秘密 」(邦訳;「China 2049」日経BP社 (2015/9/3)は、大変よく売れました。この本の主題がつまり、中・米関係と米国の対中国判断の失敗と外国政策の失敗についての反省なのです。(続く)★2018年 — 中国は、なぜ米国を失った?(中)

    原題は、2018年-中国缘何失去了美国?(上)https://www.upmedia.mg/news_info.php?SerialNo=54907

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