• ★韓国映画「国家が破産する日」 — 中国の偉い人は見るべきです  2019年1月6日

    by  • January 6, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

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    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

      この1月4日、中国中央銀行は、またしても預金準備率を下げることによって、新たに8千億人民元を生み出しました。これは、去年から5回目の、信用拡大策です。中央銀行は既に4度、銀行の預金準備率を下げ、数千万米ドルを銀行の借款としました。中国国内の実体経済は、とっくに悲鳴を上げているので、この新たな信用は、必然的に実業ではなく、昔ながらの虚業、つまり不動産市場、株式市場に流れ込むでしょう。

     「リーマン・ショック」の話を指摘しても、中国人は、あれは西側で起きた話だと思っていて、あまりよく知られていません。しかし、韓国では、1997年のアジア通貨危機から20周年を記念して、「国家が破産する日」(以下「破産の日」)という映画を作り、破産直前の一週間の光景を映し出しました。これなら、中国人が見れば、なんだか似たような光景を知ってるような気がするでしょう。中国の指導者たちの参考にすると、あるいは大変現実的な意義があるかもしれません。

     ★「国家が破産する日」は中国の現実の簡易版

     「破産の日」の最初のシーンは、韓国が「4匹の竜」として成功し、国民が「漢江の奇跡」の繁栄、経済協力開発機構(OECD)加盟、冬期平昌オリンピック誘致成功、国民所得の1万ドル超えを祝っているところから始まります。この一切が、韓国が歴史上始まって以来の豊かで満ち足りた状態にある象徴的な出来事でした。人々は誇りに満ちて、未来を信じて、懐のお金は全て債券など各種の金融派生商品につぎ込んでいました。これは、この10年の中国の情勢と変わりません。ただ韓国の「4匹の竜」の繁栄期間は、はるかに中国の繁栄の年月より短いものでした。

     繁栄の頭上に黒雲が集まって来たのは、タイ国から始まったアジア通貨危機が韓国にまで及んだからでした。まず、外資が撤退し、韓国銀行の外貨準備高が急速に減少し、米ドルと韓国通貨ウォンの交換レートが1;800を突破しました。政府は外資とドル交換延期措置を交渉しましたが失敗。為替レートが維持出来なくなり、金融恐慌が拡大、銀行の資金ショートが起こり、まず、中小企業が破綻し、のちに大企業にまで及びました。中小企業のサプライヤーの資本がぶっ飛び、企業の門前には、群衆が押し掛け説明を要求しました。中小企業経営者は資金繰りがつかず、工場を倒産させまいと、次々に自宅を売りに出しましたが、誰も買おうとはしませんでした。こうしたことは中国では、この数年常態となっています。

     唯一の違いといえば、両国の外国為替管理体制の違いで、韓国の外為市場は開放型で、為替レートが市場によって決定され、政府が外貨流出を心配しても為替決済を停止出来ないのに対して、中国は政府管理下の為替管理フロート制度をとっており、各種の強制的、半強制的なやり方で、外貨流出をコントロールし、外貨不足の事態にはならない点です。

     同じアジアの国同士という点でも、韓国と中国は大変似たような社会現象があります。政府が人民に不利な情報を隠蔽し、民衆が政府には危機に対応力があって、国家破産などさせないと盲目的に信じています。今、中国人は、皆、政府を恨んでいますが、それでも、政府には危機をコントロールする能力があると信じています。

     ★韓国政府はどうやって政府破綻を免れた?

    「破産の日」は主に四つの層から、韓国金融危機の1週間を描きます。

     第一のレベルは、名女優のキム・ヘス演じる韓国銀行通貨政策担当グループの長である韓詩賢を代表とする金融官僚です。映画の中で、彼女は、国家を破産させ、債務を延期させ、日本などと通貨を互換させて中小企業を救おうと提案します。願望は麗しい理想なのですが、事実上、根底的に不可能です。というのは、国家が破産したら、韓国経済を支えている大企業の輸出は失われます。消費者相手の中小企業に韓国経済を支える役割は期待出来ません。映画でこうした状況を入れたのは、韓国人の反米民族主義的な気分を表明させたかっただけでしょう。

     第二のレベルは、政府の中の財閥の利益を代表する官僚で、彼らは今回の危機を、冷たくかつ現実的に見つめています。冷たくという意味は、危機爆発の原因を広大な国民の過度の消費だと見なし、、危機を口実に社会経済構造の再編成をたくらんでいるからです。

     映画は大量のシーンを使って生き生きと、この金融官僚内部の力と力の対決を描きます。芸術作品という角度から見れば、韓詩賢は一種の弱い民衆の精神を体現しています。しかし、この人物とその主張は、虚構でしょう。というのは韓詩賢の主張は、根本的に危機の対応策になっていないのです。そして、中国にこれは絶対にないと確信します。中国の体制の下では、国家を破産させるなどいう構想は不可能ですし、そんなことになるとすれば、もう国中が破産した後の話でしょう。

     危機が露わになって以後、韓国政府は、中小企業の犠牲の上に、大企業保護を選択し、平民を危機の深淵に陥るままにします。映画の第三のレベルは、社会の情景を描きます。つまり、中小企業経営者の甲秀が代表する金融危機の被害者です。他にも、命を軽んじ、海に身を投げたり、自宅で首吊り自殺する鄭社長ら民衆の被害者が登場します。統計によれば、1997年の韓国の自殺率は、前年より42%増加しました。ここ数年、中国の中小企業の社長が資金繰りに困って破産し、P2P金融の100万人近い中小投資家が、元手を無くし金融難民になりましたが、その中に、きっと自殺者がいることでしょう。

     第四のレベルのシーンは、この危機を利用して儲けようという投資家(投機家)で、国家破産の臭いを嗅ぎつけた尹正学です。危機到来のまさにその時、鋭くもこの運命の転機を逃さず、階層を上がるチャンスと捉え、証券会社を辞めて独立して投資家になります。その結果、まさに予想通り、政府は国際通貨基金(IMF)に救援を求め、大財閥の利益はいささかも損なわれることはなく、かつ本当に大財閥が韓国経済を独占する経済モデルとなり、この危機を安全に乗り切っります。逆境を大胆な賭けによって、尹正学は富豪になります。中国の体制ではこの尹正学のような「国難を利用してのし上る」存在は許されません。株式市場で問題が起きれば、プライベートファンドのスターだった徐翔は牢屋入りさせられます。外貨が流出したら、資本の大ワニだった蕭建華や呉小暉も牢屋入り。海外の資産も残らず売り払って、銀行の借金を返済させられています。

     P2Pで騙し取った金を持って逃げらおおせたのは、ほんの少数に過ぎません。金は集めたものの、逃げ損なった連中は、しっかり政府に監視されています。P2P爆弾が破裂した後、深圳や上海など、かつてネット金融の幹部だった連中は、裁判所や検察によって「教育」を受けさせられ、監獄を見学させられているといいます。しかし、こうした状況は、金融難民に被害金を取り戻す交渉の余地を与えはしても、災難自体を軽くすることは、全く出来ません。

     ★中国にそっくり、韓国危機前の銀行体制

     中国と韓国の政治体制は異なりますが、しかし、経済体制のコントロールという面では多くの共通点があります。

     1960年代、韓国政府は、商業銀行に対して、大規模な国有化を行いました。あらゆる銀行のトップは政府が任命し、政府と企業間の水面下の協議で、銀行貸し付け規模と方向性を決めました。1970年代から、韓国政府は、大量の政策的な借款を重化学工業を主とする大型企業集団に投入し援助。30社規模の巨大な企業グループに、韓国の8割の国内市場を独占させました。

     こうした国有銀行の重要な任務は、国有企業に低コストの融資を行い、低利で大型企業集団に政策的な借款を与えることでした。政策的な借款の占有率が占める韓国銀行の借款における比重は、1970年の47.5%から、1978年の59.1%になっています。こうした低利率政策と政策的借款は、商業銀行へのインセンティブとルールを捻じ曲げてしまいました。政府の保護政策の下で、韓国企業は高負債経営の道を選びました。彼らは、まず銀行からの借金で資産を買って、その資産を抵当にいれて、もっと大きな借金をして、「あべこべ」の与信管理構造を広げて行ったのでした。

     上述のような特徴は、中国にもまず大半が当てはまります。商業銀行は、ほとんどが全て国有ですし、少数の国有ではない銀行の株主も国有銀行か国有企業です。国有銀行の任務は、主に国有企業に有利なように政策的借款を与えることです。(中国財科院の報告では、国営銀行の貸金利率は民間企業のそれより1.5%も低い)。

     こうした低利の資金を得られるからこそ、中国の国有企業は全て、高負債経営、低利子で得た借金で、日頃から民営企業に貸し出して株や不動産バブルに転用しているのです。特に2008年のリーマンショック後の世界的な経済危機に際して、中国政府が4兆ドルのマーケット救援資金を出してから、国有企業に甘く緩い貸し出しを行うことによって、中国経済の繁栄を推進する借款の緩さときたら、全く止め度がありません。

     国際決済銀行(BIS)のデータによると、2008〜2016年の間、非金融会社への信用供与は、国内総生産(GDP)の95%から150%にまでなりました。長期にわたる健全な発展と金融の健康を保つためには、本来ならば国内企業の債務を減らし、とりわけ、債務の膨大な国営企業の債務を減らさなければならなかったのですが、中国政府はその逆の道を歩み、基準をどんどん下げて、バブルをますます膨らませ、韓国より更に劣悪な、あべこべの信用拡張構造を強制してしまったのでした。

     ★IMFは韓国を救えたが、中国は救えない

     「破産の日」は、こんな光景を描き出します。

     1997年、アジア金融通貨危機は、韓国経済を深刻な危機に陥れ、当時、韓国の外貨準備高はたった39億ドルぽっちになってしまいました。この難関を乗り切るために、政府はやむを得ずその年の11月にIMFに対して、550億ドルの緊急援助借款を申し込み、その代償として、韓国の経済政策は、IMFの関与と厳しい監督下に置かれることになりました。以来、韓国は「IMF時代」に突入し、通貨のインフレ、企業の破産、企業のリストラ、失業者が130万人に増え、自殺率が42%増えるといったことになりました。これら全てを、韓国人はIMF体制のせいにしています。

     1998年始め、金大中が大統領となってから、ずっと、うまずたゆまず金融、企業、公共機関と労使関係の4大改革を行い、経済の全面的な復興の鍵となる働きを推進しました。2001年8月23日午前、韓国中央銀行総裁の全哲焕が特別な文書に署名し、IMFに対する最後の1.4億ドルの返済を終えたと宣言し、韓国はようやく「IMF時代」に別れを告げたのでした。IMFはそれ以後、韓国への経済政策に干渉することが出来なくなったのです。

     韓国人は、IMF体制は、韓国に経済自主権を喪失させ、金融業の開放を迫ったと考え、国の恥だと思っています。韓国国民はかつて「義援金で銀行を助けよう」という運動を行い、22億ドルを集めました。こうした、難関を共に歩もうという精神は世界を感動させましたが、こうしたことは、中国政府には望むべくもありません。

     2018年に米・中貿易戦争が始まり、中国の官製メディアは、「全国民がこの困難、雨にも風にも負けないで避け難い挑戦に耐えよう」と呼びかけましたが、ネットでは様々な罵声と嘲弄を浴び、中共の惨敗を期待する声までありました。

    こう言うのは、別に中国人に愛国心がないと責めるつもりではなく、中共という盗賊型略奪政権が、国民の人権をすべて剥奪しておいて、「国民が共に国難に耐えよう」などというのは笑い話だからです。

     IMFの救援には大変厳しい拘束条件が付きます。被援助国は、これに対しては大いに不満があります。しかし、IMFに助けられるなら、まだ幸運なのです。1994年12月、メキシコ通貨危機に際しては、クリントン米大統領が政府から大統領基金の全財産をはたいて200億ドル、IMFが177億ドルなど、総計500億ドル以上を出して共同で救済に当たり、やっとメキシコの地獄と、世界の金融市場を救ったのでした。1997年のアジア通貨危機では、IMFは、韓国分を除いて、フィリピン、タイ、インドネシアに、それぞれ11億、172億、400億ドルの緊急援助借款を与えました。

     中国でもし通貨危機が起きたら、どこかの国際組織が助けてくれるでしょうか? 答えはノーです。2016年11月に、2008年のノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンはワシントンでの研究会で、米政府系海外向け放送VOAの記者の「中国経済が更に厳しい状態になったら、世界のその他の経済体は、マーケットを救えるか?」との質問に「出来ない。あれほど大規模だからといって、潰れないとは言えない。しかし、規模が大き過ぎてとても助けられない」と答えました。実はこの答えは分かりきったことで、中国の現有外貨備蓄総額は3兆ドルで、それでも危機が救えないなら、世界のどの国が、どの機関が、中国政府より多くの巨額資金能力があるはずもありません。

     「破産の日」の最後は、20年を経て、韓国が再び不動産バブルの苦境に落ち込んだことを描いています。これに比べて、中国の不動産は、世界で空前絶後のスーパーバブルです。「破産の日」は韓国のお話ですが、至る所に中国経済の影を見ることが出来ます。中国政府は、決して映画界に病的な経済をテーマにした映画など作ることを許しません。しかし、この「破産の日」は、中国の政策決定レベルの役に立つでしょう。分かりやすい内容で、映画に簡単に引き込まれます。

    大事なことは、この映画の英語名は「Default」です。つまり、直訳すると債務不履行、中国語では「結構鎖定」(構造的固着)です。(終わり)

     原文は;《国家破产之日》:中国决策层应看的参考片 http://www.epochtimes.com/gb/19/1/5/n10955832.htm

     原文は;《国家破产之日》:中国决策层应看的参考片 

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