• ★中国経済の衰微は2015年から。中・米貿戦争は加速させただけ 2019年1月17日

    by  • January 17, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

     2018年の全世界の経済成長は鈍化し、各国は、皆、米・中貿易戦争のせいにしています。2019年の経済成長予想でも、依然として、米・中貿易戦争が早く終わって、中国経済の成長が復活し、世界経済のエンジンとして、資源保有国の最大のお得意さんとして、再び先進国商品の最大の買い手になってくれ、と世界は期待しています。

     ドイツが「欧州経済のエンジン」と言われるように、中国に期待しているのです。こうした方々は、これが希望的観測の生んだ幻想に過ぎないことを分かっていません。中国経済の衰微は、2015年からとっくに始まっており、米・中貿易戦争は、ただその進行を早めたにすぎません。

     ★中国人の爆買いブームの終焉

     過去15〜16年続いた中国人による海外での爆買い投資は、一部の国々の経済成長を牽引する重要な要素でした。この種の爆買いには、海外での大規模企業合併と私企業の海外投資を含む投資活動と、海外旅行客の奢侈品の爆買いとがあります。

     中国の海外投資は、表面上は依然として強力に見えます。2018年9月、中国商務部、国家統計局、国家外貨管理局が共同発表した「2017年度中国対外直接投資統計公報」のデータによると、2017年の中国の対外直接投資は1582.9億米ドルで、米国と日本に次いで世界第3位です。対外直接投資の累計額は1兆8090.4億米ドルで、世界第2位です。トムソン・ワン・インベストメント・バンキングのレポートのデータでは、2018年1〜9月の、中国海外企業買収総額は、1068.9億ドルで、前年比11.2%増です。

     しかし、同時に、ここ数年の海外での資産爆買いをしていた中国民間企業の海航集団、大連万達集団、安邦保険集団、復星集団などは、現在、安値で資産を売って、資産を中国に戻しています。彼らにそうさせたのは、政府からの巨大な圧力です。フィナンシャル・タイムズ紙の統計では、2015〜17年4月に、海航集団は、全世界で4百億ドルを使って企業買収しましたが、今や、不動産や株、オフィスビルを値下げしてまで切り売りしています。去年12月26日、2018年中国ブランドフォーラムの会議中、海航集団の陳峰理事長は、取材に答えて、2018年には3千億人民元以上(約440億ドル)の資産を処分して、世界記録を作ったと述べています。

     ここで言っておかなければならないのは、これらの中国の民営企業の負債比率は全て7割以上だということです。彼らが海外で買収に狂奔していた資金の源泉は、中国国内の銀行からの借金や、理財商品によるものです。こうした巨頭の資本が海外で爆買い投資したために、中国の外貨保有高は急速に下降し、2016年末には、外貨準備高が3兆ドルの底を破ってしまいました。

     李克强総理は、自分の鼻先から何千億元もの資金がキャピタルフライト(資本逃避)している遺憾な事実に直面しました。こうした状況の下で、中国銀行監査監督管理委員会は2017年6月7日に、万達、安邦、海航、復星、浙江ローソンなどを含む国内企業の企業買収と借金、国内の外貨保有状況を中心に、国外管理、取引状態と危険を分析した結果、外貨準備防衛戦を開始したのでした。

     中国の民営企業が資産を売却回収し、中国という買い手が減少したため、米国のニューヨークや豪州の不動産価格は下がりました。長年、中国の資金は全世界の不動産価格高騰の主要な原因だったのです。しかし、中国政府が資本の海外流出を厳しく規制したために、この勢いは逆流し始めました。世界的な不動産会社の米リアル・キャピタル・アナリティクス社のデータでは、2018年第3四半期の、中国企業集団とその他の投資家は、2.333億ドルの欧州のホテルやオフィスビル、不動産を売りに出し、購入はわずかに5,810万ドルでした。米国では10億ドルの不動産を売りに出し、購入は2.31億ドルでした。豪州では、中国という買い手を急に失いました。アナリストは、この傾向は2019年も変わらないと見ています。

     ★中国はとっくに投資適地ではなくなった

     ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「中国での夢破れ、米国起業家は帰国へ」(2018年12月14日)で、コストの暴騰、税負担の急増、政策的な引き締め、常にコロコロ変わる監督ルールの影響で、どの外国企業も、中国での良き日々は終わったと思っていると報じました。

     この記事の論じている問題は、実は昔ながらの中国の投資環境です。2005年2月17日、フィナンシャル・タイムズ紙でジェフ・ダイヤー前北京支局長が「中国 — 外資企業の天国か墓場か?」を書きました。

     記事では、土地価格と人件費の上昇以外に、外国企業が支払わねばならない企業管理コスト(原注;政策や法律の不透明さから生じる費用と損失)と、知的財産権の保護、ビジネスの信用の外部コストは、政府の行為と密接に関連する費用だとしています。特に「外部コスト」における知的財産権の問題は、米国とここ数年来、もめにもめて、米国が訴訟に大々的に力を入れている問題です。

     しかし、そうまでしても、中国企業が、常に知的財産権を侵害する行為を阻止するすべはありません。ドイツやフランスの企業も、この中国側のパートナーに技術を窃取されるのは日常茶飯事です。中国の知的財産権の窃取問題は、ずっと今日の米・中貿易戦争の焦点の一つになっています。

     
     1990年代から、中国市場は世界各国、とりわけ日本、米国、欧州連合(EU)などの資本を引きつけてきました。しかし、中国にやって来た全ての外資が成功したわけではありません。たくさんの企業が失敗しました。外資の中国撤退の第1波は1999年から2003年(主に産業資本)で、第2波は2008年から2013年(製造業、金融業も)、現段階の撤退は、2015年末から始まった撤退ブームの”尻尾”です。

     ずっと中国の外資を研究して来ましたが、第3波の撤退理由は、大同小異で、全て、コスト(土地価格、給料)、税負担、投資制度環境の変化に関係するものでした。

     「早逃げ三文の徳」を成功させたと言えるのは香港の大金持ちの李嘉誠で、中国大陸は彼の投資天国でしたが、その最高潮のタイミングで撤退準備を始め、総退却したのです。李嘉誠の長江実業集団系企業は、2008年から中国で、休むことなく資産を売却し続け、同時に欧州に資本展開し始めたのでした。2017年末、李嘉誠は10年間に、中国で現金化した資産は1千5百億元です。そして、今、欧州売上高は4割、中華圏の営業利益はわずかに3割です。台湾の実業家で富士康(フォックスコン)の郭台銘は大陸で大成長しましたが、2015年以後、いささかも迷うことなく中国を離れ、投資先を変えています。

     というわけで、中国はとっくの昔に多国籍企業にとっての「投資適地」ではなくなったのです。米・中貿易戦争は外資撤退の意思を固めさせ、中国の苦境を加速しただけです。

     ★中国の消費者需要は、家賃の重圧にあえぐ

     メディアは、Apple社の中国市場での不振をあれこれ取り上げて騒いでいます。しかし、Apple社が中国市場で不振に陥ったのは、ただ1、2年繰り上がっただけの話です。中国の個人消費力が落ちて来たのは、今始まったことではありません。多くの外国のアナリストが軽視して来たのは、中国人の消費能力が下降したのは、米・中貿易戦争のせいではなく、中国経済の構造と収入分配のせいだということです。貿易戦争の影響は大して大きくは無いのです。

     1;収入配分の差の拡大。政府発表のデータで、中国の収入配分の差は、現在、拡大しており、2015年以来、3年連続で上がっています。2017年のジニ係数は、0.467で、国連の決めた社会騒乱多発警戒ライン0.4を超えています。

     経済学理論では昔から、高収入者の限界消費性向(所得の増加分に対する消費の増加分の割合)は中、低所得者より低いとされています。中低所得者の消費が増えてこそ、国内消費の増加が推進されるのです。コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーの「2017中国奢侈品報告」は、中国消費者が全世界の奢侈品消費の三分の一を支えており、そのうちの大きな部分が国外での購入であるとされ、国内消費の増加には限界があります。

     2;中国の消費者の負債比率は高止まりしたままで、消費の長期成長への潜在力の足かせとなっています。中国社会科学院の計算だと、中国人の民間部門の負債比率(市民の債務がGDPに占める割合)は、2011年の28%から、2017年の49%に、急速に上昇しています。2018年1月のある予測では、1人当たり平均の負債率は60%を超えます。個人の住宅ローンが住民部門の債務増加の主な原因で、あらゆる業界が、皆、この住宅費によって足を引っ張られます。理屈は簡単で、居住費負担の重さは必然的に、それ以外の消費に影響を与えるからです。中国の住宅購入者は住宅ローン以外に、消費する余力が無いのです。

     ★中国が世界経済を救う幻想より、自国経済構造の転換を

     外国のアナリストが、中国経済の好転、全世界の経済を牽引力の回復を期待しているにもかかわらず、中国の経済成長の道は、もうどん詰まりに来ているのです。中国政府は、世界中で最も経済コントロール能力の強力な政府ではあります。しかし、現在、国内経済には手も足も出ないのです。唯一の方法は、引き続きお札を印刷して、政府投資を増やすことだけです。

     中国中央銀行は、今年1月に、銀行預金準備率を1%引き下げると宣言し、銀行の貸し出しを増やそうとしています。これは1.5兆人民元を市場に提供するということで、この1年間に行った5度目の引き下げです。同時に、中国国家発展改革委員会は、1.2兆元の都市交通プロジェクトを批准しました。これは政府の「控えめの投資」の鍵となります。

     ただ、長年、中国金融は実業より虚業に向かっており、新たに投入された資金も、実体経済に向かわず、不動産、株式市場に流れ込み、バブル化するでしょう。ちょっと前に国際通貨基金(IMF)の報告では、こうした信用による刺激では、中国は既に「収穫逓減ポイント」(生産増加効率が悪くなる分岐点)を超えてしまっており、新たな債務は旧債務の返済に使われている。これまで同様の成長を続けようとすれば、新債務は過去の3倍になるとし、中国最大の問題は、借金が再びバブルにならないようにすることだ、としています。

     グローバリズムがまさに逆流となり、各種の摩擦や動揺を生み出しています。トランプ大統領になってから、現存の全世界の貿易体制は、別に破壊されたわけではなく、ただ二つの異なるシステムが調整されようとしているのです。一つは米国と伝統的な貿易パートナー国家の間の自由貿易システムであり、もう一つは、まだその貿易システムに組み入れられていない中国などの国家です。

     現在、この二つのシステムは、どちらも完全な形をなしていません。しかし、中国経済は、世界経済のエンジンになり得ないというのは、すでに現実なのです。各国は、中国経済の復活が自国経済を救うなどとは期待せず、この機会に自国経済の構造を調整し、中国という買い手や、中国の投資がない状態に適応するようにした方がよろしいのです。(終わり)

    原文は中国经济衰落在2015年就已经开始,中美贸易战只是加快了衰落的进程而已。 

    中国 何清漣

    中国2018 中国2017 中国2016 中国2015

    これまでの何清漣さんの論評の、翻訳はこちら。「拙速」でやってますので誤字、脱字ご勘弁。(電子本の方は校閲して直してあります。多分w) なお、お気付きの点がございましたらお知らせください。ツイッター → @Minya_J。

    中国 何清漣
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