• ★郭台銘の米国投資の”路線変更”と米国大統領選挙  2019年2月7日

    by  • February 7, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

    日中両文収録「何清漣 2017中国」Amazonで発売しました;20152016Amazon改訳版を電子ブックで。Kindle Unlimited なら無料です
    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

     台湾の豪商・郭台銘が米国ウィスコンシン州に予定していた投資計画を一部変更し、元々は液晶ディスプレイ(LCD)を生産するとしていた計画を、医療とハイテク興行のための科学研究開発基地にするとしました。雇用の対象になるのは、もともと約束していた13000人の労働者ではなく、大部分が研究者やエンジニアになります。このニュースはトランプ大統領が約束していた製造業振興計画の失敗だとして、メディアは大喜びで、たちまち2020年の大統領選挙でトランプ大統領が敗れる要素だ言います。しかし、こうした見方は郭台銘の投資計画変更の背後にある複雑な要素を見逃しています。

     ★郭台銘の計画変更は、時の流れを見極めている

     米メディアの評価は、明らかにライター連の願望と無知を表しています。この2年間、米国の雇用状況は大変良いのです。米国労働省の最新報告では、米国の失業率は現在、49年間で最低水準にあります。サラリーは最近10年で最大に上昇しています。2019年の1月の政府機関閉鎖時点でも、米国の企業は31.2万人の新たな雇用を増やし、失業率は3.7%から3.9%に増えましたが、相対的にみてフォックスコン・テクノロジー・グループ(鴻海科技集団 / 富士康科技集団)がウィスコンシンの工場計画を変更したところで、米国全土への影響は大きくはなく、最悪の結果は、トランプ大統領が掲げる「旗印」がちょっと色落ちした程度のものです。

     私は、米国は、なぜ郭台銘が投資計画を変えたのかをよく考えた方がいいと思います。今年1月下旬、同社は現在、全世界的なマーケット環境の「新状況」に対応するために、LCDスクリーンの工程後半や高精密度金型製造工場、組み立てシステム工場その他のプロジェクトを含む計画の重点を調整していることを明らかにしました。この投資計画に多くな調整が起こりえます。というのは、この「新状況」には、ロボットが人間に代わっていくという、時代の流れがあるからです。

     ★人工知能が米国労働者の4分の1を失業させる

     2019年1月下旬、ワシントンのブルッキングス研究所が「4分の1の職業がオートメーション化の高リスクあり」という報告を発表しました。これは米国内の3600万の就業先の現状を調査し、やがてその4分の1が人工知能によって取って代わるだろうという内容です。

    取って代わられる職業としては、オフィスの事務仕事や行政管理、工場生産、運輸、食品調理などの分野で、こうした職業に従事する人々は失業の恐れがあり、自分の技能を新たに更新し、アップさせ、あるいは仕事を変えなければならないと言うのです。それはここ数年のうちに起こるか、あるいは20年ぐらい先かもしれない、と言います。

     米国中西部が受ける失業の影響は更に大きく、もっとも危険なのはインディアナ州とケンタッキー州で、この両州の人口の半分は製造業と運輸業に従事しています。その他にもウィスコンシン、オハイオ、アイダホの各州も巨大な失業圧力にさらされます。東北部の大都市も同様です。ワシントン、フィラデルフィア、ニューヨーク、ボストンの製造業も、大量のロボットが人間に取って代わる現象が出現します。若い人々や男性、教育が十分でない人々、スペイン語を母語とする労働者が、高い失業率にさらされるでしょう。

     郭台銘の工場は、まさにウィスコンシン州にあります。2年前、1.3万人の雇用を生み出す話は、同州にとって確かに大変重要でした。それが同州がフォックスコンに来てもらいたかった理由で、州政府はこのために巨額の費用、一人当たりの雇用チャンス創出に対して20万ドル(批判者は150万ドルとも)を投入しました。しかし、資本が進出するのは、別に慈善事業ではなく、利潤追求のためです。郭台銘が何度にもわたる駆け引きの末に、計画を変更したのは、彼の実業家としての賢明さを表しています。この種の賢さが、彼のビジネスにおける数々の勝利の原因でした。

     トランプは大統領になる以前に、「米国の赤錆地帯を蘇らせる」と、つまり、五大湖から中西部の不景気のどんぞこにある伝統的な工業地帯を復活させることを含む多くの選挙公約を掲げました。しかし、人間の考えは天のそれに及びません。人工知能の挑戦によって、伝統的な製造業の繁栄が不可能になったことは、この時世から知るべきでしょう。

     ★郭台銘を歓迎する前に彼の投資方法をよく知るべきでした

     郭台銘が投資の約束を守らなかったことを、英文の主流メディアはざまあみろと嘲っていますが、人工知能革命と言う事実を見ようとしないばかりか、郭台銘の投資手法についても、基本的に理解していません。

     中国の広東省は郭台銘の発祥の地ですが、そこで行った投資方法が、その後世界各地での彼の投資のモデルケースです。このモデルの特徴は、労働者を長時間働かせ、労働組合をお飾りにしてしまうほかに、地元政府との関係を特に重視して、政府の援助をうまく引き出し、自分の工場における労働者の権利に対しては、政府に目をつぶらせると言うこともあります。が、それが郭台銘と政府の関係の全てではありません。

     フォックスコン工場で飛び降り自殺が頻発した事件がありましたが、その取材を通じて、メディアは初めて深圳政府が同社に対して極めて不満であることを知りました。

     と言うのは、40万人を雇用するフォックスコンが深圳市に納める税金ときたら、たった4万人しか雇用していないファーウェイ(華為)のそれにはるかに及ばなかったからです。深圳市の税務部門の公開データでは、フォックスコンの中心となった鴻富錦精密工業が、2009年に納めた税金は5.99億元で、深圳の828億元のうちのたった0.7%でした。これに対してファーウェイは、22.7億元を納めていました。

     なぜこんなことになったのかといえば、郭台銘が合法的な節税に極めてたけていたからです。郭台銘の会社は原料の輸入と生産品の輸出の愛大置ける各種の仕入税額相殺控除のからくりの他に、中国の外資向けの「五減三免」(1年目と2年目は外国企業所得税を全額免除、3年目から5年目は半額免除)といった税優遇政策を目一杯利用しました。外資企業への税制優遇期限が来ると、郭台銘はしょっちゅう新たな企業を登記し、フォッックスコンが常に各種の税控除優遇措置を受けられるようにしました。

     深圳税務局の統計によると、1988年に深圳地区に投資して工場を設立して以来、2009年に至るまで、フォックスコンは合計22の独立法人資格を持つ傘下の企業を持ち、そのうち「免税優遇資格」の対象になったのは11社ありました。2007年度のこれらの企業の申請した輸出税還付額は10億元で、調整還付税額は30億元、納めた税金は1億元でした。これほど巨大な企業で、これっぽっちしか税金を納めないのに、地方当局がずっと歯を食いしばって我慢していたのは、役人の成績査定にかかわるGDPと輸出収入という指標のせいです。フォックスコンで連続飛び降り自殺事件が起きてから、深圳もフォックスコンがどこかへ移転するのを引き止めようとはしなくなったのでした。

     中国政府は、交渉相手としてやりにくい相手であることは、資本の世界では公然の秘密です。その中国政府と長い間やりあって、うまい汁を吸える金持ちビジネスマンともなれば、どんな国に投資して、交渉したって損なんかするわけがありません。トランプ大統領と米国の各地の州政府が、経済振興に気を取られて、郭台銘の約束を軽々しく信用してしまっても、全く意外でも何でもないのです。

     ★郭台銘の投資変更は2020大統領選に影響するか?

     郭台銘の米国投資プロジェクトの変化は、西側国家のどこにでもある苦境を濃縮したようなものです。この苦境とは、世界経済フォーラムが1月15日に発表した「グローバルリスク報告書2019」で、とうとう正面から向き合うことになりました。このレポートは、グローバル化が、多くの欧米人に失業の脅威感を与えていることを認め、失業や安全感を失った人々が、自国の貧富の差や不公平さ、移民との競争のプレッシャーを受け、グローバル化が深刻な挫折を受けていることを認めたのです。

     米国の民主党は一向に、経済分野での生産、つまり「ケーキをつくること」には関心を向けず、ただ「ケーキの分け方」とグローバリズムを強く主張してきました。今年の同党の2020大統領選挙の参加者は10数人もいますが、その活動ぶりは、「自分はインドやラテンアメリカ、アフリカ系である」とかいう身分的な優位さを示したり、LGBT的な、性別や政治の理想の優位を示し、違法移民を歓迎するとか全国民に医療保障を与えるとか、言うばかりで、同党の有権者をがっかりさせています。

    NBCが2月4日に伝えたニュースでは、民主党の最新世論調査では、56%の民主党有権者が、トランプに勝てる人物を選ぶと答え、価値観で選ぶと答えた人は2番目でした。33%の民主党支持者だけが、価値観は候補者の一番先に考えると答えました。

     先進諸国が国内の様々な矛盾の対応に追われて疲弊している時に、人工知能の問題がひっそりと降って湧いたように登場しています。フランスのマクロン大統領は就業の確保のためにロボットに徴税する方法を提案しています。いかにして外国資本を米国に引き寄せ、就業先を増やすかは、もともと民主党の得意とするところではありません。郭台銘の投資プロジェクトが変化したとしても、民主党はトランプ大統領の不幸を喜んでいるばかりで、問題解決するすべは持ちません。ですから、2020年の大統領選挙で大統領の玉座を誰がモノするかに関しては、郭台銘のプロジェクトの如何は関わりがないのです。(終わり)

    原文は;何清涟专栏:郭台铭在美投资变局的背后

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