• ★米中貿易戦争 開戦は容易でも幕引きは難しい 2019年2月17日

    by  • February 17, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

     2月15日、米・中貿易戦争の交渉は一段落しましたが、限られた進展しかありませんでした。公開内容から見ると、必ずしも全て中国側に誠意が無かったのが原因ではなさそうです。国内政治情勢に足を引っ張られるので、米政府としては早く終わらせた方が有利なのですが、双方が多くの具体的な問題で一致をみるのは、確かに困難です。

     ★解決を急がれる3項目

     ホワイトハウスの声明では、「米国側は、技術の強制移転、知的財産権、ネット上の窃盗行為、農業、サービス業、非関税障壁と為替レートを含む構造上の問題に議題を絞った。米中両国は、中国の米国商品やサービスの購入、米中間の長い間存在する巨額の貿易赤字などを話し合った」です。

     技術の強制移転、知的財産権、ネット上の窃盗行為は知的財産権の問題の範疇です。為替レートは、金融市場の開放がテーマ。その他の中国がより多く米国製品を購入し、貿易赤字を減らすといったことなどは関税交渉になります。

     これらを逐一分析すれば、双方が協議で合意に達するのには、幾多の困難があることがすぐわかります。

     ★知的財産権交渉

     中国の米国知的財産権侵害は明らかな事実です。米国高官は、公然と「メイド・イン・チャイナ2025(中国製造2025)は、米国企業の技術をコピーし、そのあとで中国市場と世界市場で米国企業に取って代わる「米国企業の知的財産権を略奪する泥棒の指南書」と呼んでいます。米国の攻撃目標も大変はっきりしており、、2017年から少なからぬ中国の「海外ハイレベル人材招致千人計画」に参加した中国系科学者を逮捕し、多くの参加者は、こっそりと中国に帰国しているといわれます。

     中国側も「米国の最大の関心は、貿易赤字ではなく、国家の長期的な競争力の問題だ」とは、はっきりと知っています。しかし、数多くの知的財産権侵害が、国家の支持のもとに行われたとは決して認めようとはしません。ただちょっと修正を加えただけです。例えば、去年12月には、国務院事務庁が出した「中国製造2025に関する81号文書(2016年)の執行を停止」するとか、最高裁判所が知的財産権に関する法廷を設立し、6つの裁判部門を作って、主に特許や技術生の比較的強い7つの知的財産権の上訴事件を専門に審査し、統一裁判基準を作って、賠償制度を強化する、などです。

     協議がまとまるには、中国が今後、一切知的財産権の窃盗行為をやめるということですが、そんなことが出来るでしょうか? 当然無理です。「★米中知的財産権交渉 — 中国側の考え方の「心魔」 2019年2月2日」で指摘した通り、中国は、「知的財産権にで米国は発展途上国への援助をなすべきだ」という独自の見解を持っています。米国のロス商務長官は、「中国は『メイド・イン・チャイナ2025』を強調しなくなったが、だからと言って、彼らが諦めたわけではない」と明言しています。

     今後、両国の知的財産面での交渉は二つの内容に関わることになるでしょう。一つは、既に行われた侵犯行為に対する懲罰です。この方面では、米国はすでに様々な手段を講じており、中国側も反対出来る立場にありません。二つ目は、将来起こりえる権利侵害の予防です。もし、交渉がまとまるとしたら、中国側が米国の監督とチェック・アンド・バランスを受け入れるしかありません。

     もしそれが出来たなら、米中貿易戦争の最大の成果となるでしょう。

     ★米国の対中貿易の赤字減らしは大して期待出来ない。

     これは協議で一致することは簡単ですが、実施となるとテクニカルな問題が難しい。2018年5月に、★米中貿易戦争 — 米国は、なぜ高値をふっかけて安値で取引?★ 2018年5月27日で書いておきましたが、米国が中国に2000億米ドルもの赤字を減らせというのは、明らかに二つの理由から非現実的なのです。一つは両国の輸出入貿易構造は、両国の経済構造によって決定されます。2018年の中国の対米貿易額の黒字は3233.2億ドル、17.2%の拡大なのですが、これは中国側が望んだからではなく、両国の貿易構造が変わらないからなのです。第二には、米国は、国家の安全という観点からハイテク製品、とりわけ軍事技術に関するハイテク関連の対中輸出を制限しています。ですから、たかだか大豆などの農産品や、半導体、天然ガスを買ったって、この貿易赤字が減るというのは現実的ではありません。

     もし、その他の国々の不興を買ったとしても、中国が他の国から購入している全て、例えば、ロシアからの石油、天然ガスとかの輸入先を全部米国に変えて買うとしても、増やせるのは230億ドル程度です。日本や韓国からのICチップ輸入先を全部米国に振り替えても、最高に見積もっても、毎年400億〜500億ドルです。欧州のエアバス発注をやめて米国に振り替えても、毎年200億〜300億ドル程度です。ブラジルやアルゼンチンからの大豆を、全部米国から買うことにしたところで、やっぱり200億ドル増やせるだけです。
     
     以上を、全部足したところで2000億ドルの半分ぐらいにしかなりませんし、それもとても非現実的な前提の下での計算での数字です。つまり米国が間に合うように急速に生産を拡大し、中国が必要とする全ての商品をまかなえるとしての話ですから。

     ピーターソン国際経済研究所(Peterson Institute for International Economics)のチャッド・ボウエン上席研究員は、2018年5月に、取材に答えて、「中国に毎年2000億ドルの米国製品を買わせるーこれは、米国の対中貿易赤字の半分以上だが
    — 簡単に言えば、これは全く現実的な数字ではない」と大変率直に語っています。

     この分野の交渉では、米国が生産を拡大するのに一定の時間が必要だという現実をちゃんと考えて、5年以内にこの目標を達成するというのなら、まだまともな希望だと言えるでしょう。

     ★金融市場にまだどれほど開放の余地があるか?

     中国は、世界貿易機関(WTO)加入(2001年末)、する際に受諾した「5年以内に金融市場を開放」という約束をしました。しかし、その約束を守らなかったので国際的に非難を浴びていましたが、2006年以後、次第に金融市場を開放しました。

    ⑴ 株式市場では、外資参入に段階的に制限を緩和し、QFII,RQFIIと呼ばれる、外国の投資機関に国内で投資を認める資格認定制度を実施し、2003年7月に最初のQFIIを行い、スイス銀行が4社の優良株を購入。2018年末までにQFII資産は数千億元に達し、主にA株に集中している。

    RQFIIは「人民元国外投資合格者)で、外国のファンド会社などが、一定の人民元限度額内で、国内の株式市場や債券市場に参加できるもので、2011年にスタート。現在RQFIIの香港、シンガポール、ロンドンなど13国・地域で行われている。

     2018年には、3000億の外資が中国A株市場に流入したが、市場の景気は大変悪かった。WIND統計データでは、12月21日までに、287の普通株のファンドで、プラスになったのはたった二種類だけで、それぞれ2.26%和0.68%だった。残る285の金融商品は赤字で、2割以上も損を出した金融商品が209もある。

     株式市場がこの有様で、おまけに中国に進出するのは自由だが、退出するのはそうではありません。また、現在の中国株式市場は、極めて不況なので、、米国金融開放リストには入っていないと思われます。

    ⑵ 外国銀行の中国での営業

     この分野でも、余地は限られています。「39社外資法人銀行総覧」(2018年7月)によると、2006年末から、中国は外国銀行の参入を許可し、外資銀行の支店を中国国内法人として扱うようになりました。中国銀行保険監督管理委員会のデータでは、2018年までに、外国法人の銀行は39社で、外国銀行の支店や代表事務所の数は更に多いのです。銀行間での商売や、債券引き受け資格、債券市場参加資格など、各種の業務が可能です。

     インターネット金融では、外資銀行は、一般金融でもネット銀行でも、モバイル決済でも、中国資本の銀行より消極的ですから、米中間でインターネットバンキングが「爆弾」になることはありません。

     米中貿易戦争が始まった直後の4月28日、中国銀行保険監督管理委員会は、更に外資銀行のマーケット参入に関連する通知を出して、中国資本の銀行と金融資産管理会社の外資持ち株比率の制限を撤廃し、外資銀行が中国で代理発行、代理手形支払い、政府債券販売などを、行うことを許可しました。同時に外資の生命保険会社の持ち株比率も51%に広げ、3年後には制限撤廃するとしました。外国銀行の許可に必要な金額も50万元に値下げしました。

     ですから、残るは外国為替市場の開放に関してです。これは、すでに★韓国映画「国家が破産した日」 — 中国の偉い人は見るべきです  2019年1月6日 で分析済みでが、中国の現段階は既に、韓国金融危機当時の一切の要素を兼ね備えており、それでも危機が起きない唯一の理由は、政府が外国為替市場をコントロールしているからです。中国金融市場はもうボロボロなのです。債務の超過、不動産市場のバブル化、銀行の不良債権の山など、どれもみな中国の巨大な「灰色のサイ」です。一旦、サイが暴れ出したら手がつけられません。そして、中国で金融危機が発生したら、世界的な災難となるばかりか、いかなる国家だろうが国際組織だろうが、助けることは出来ないのです。IMFはまさにそれが分かっているから、これまで中国に対して、外為コントロールを緩め、人民元の交換レートを自由にしろ、などと要求したことはありません。引き続き外為市場をコントロールすることを黙認しているのです。米国は当然その利害得失を知っていますから、中国にすぐに外国為替管制をやめよなどとは言いませんし、北京も当然、そんなことを言われても応じるはずがありません。ですから、為替市場の議題は交渉の余地はありません。

     最後に、最初に述べた米国が、いつまでもこの話を引き伸ばしたくないという点に立ち戻りましょう。米国から言えば、現在、国内の共和党、民主党の争いは大変激烈で、トランプ大統領はいかなる事情があっても、民主党が過半数を占める下院の激烈な反対を受けます。

     民主党はとっくに、トランプ大統領に米中貿易交渉で譲歩することを許さないと明らかにしています。実際、トランプ大統領が笑い者になれば、それだけ打撃を与えられるわけです。中国側は、時間稼ぎに出て、米国政治に変化が起きるのを期待し、例えば、民主党が唱える大統領弾劾が本当になったり、トランプ大統領が2020年を待たずに、自ら辞職することなどです。

     言葉を換えれば、こうした様々な情勢が、米中貿易戦争でホワイトハウスに、期待を下回る成果では許されないので、この「戦争」がいつまでも終われない原因なのです。(終わり)

     原文は;中美贸易战 宣战容易收官难 

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    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

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