• 米中貿易戦争 — 終盤の寄せ  2019年03月07日

    by  • March 9, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

     米・中両国の首脳は、3月27日、フロリダ州マー・ア・ラゴにあるトランプ氏の別荘で貿易協定のサミットを行うことにしたことが、ウォール・ストリート・ジャーナルなど米国のメディアで報道されています。

     中国側は、米国の農業、化学、自動車などに対する関税を値下げし、米国は、去年、対中国製品に課した制裁関税の大部分、または全部を取り消すことを考量するというものです。これに加えて、中国では現在、外国資本投資法草案が審議されており、それには行政的な強制手段によって外国企業の技術移転を強いることをしないことが含まれます。ちょうど、私が「★米中貿易戦争 開戦は容易でも幕引きは難しい 」(2019年2月17日)で分析した通り、米中両国はそれぞれに国内で難題を抱えており、出来るだけ早くこの問題の解決を迫られているのです。中国の難問は経済に、米国の難問は政治にあって、まさに米国の困難が中国に救いとなっています。

     ★中国の経済的な苦境

     米中貿易戦争が始まって以来、中国は去年の3月から9月まで実際には大損して、グローバル規模での生産チェーンの再配置の動きも始まって、失業者は増え、長年やってきた知的財産権泥棒の「千人計画」はほとんど破産し、物理学のスター研究者だった張首晟が自殺したほか、20名以上の人々が起訴され、計画に参加した学者はそっと帰国したり、米国にいても息を潜めています。華為(ファーウェイ)は、全世界で厳しい目を向けられて、首席財務責任者の猛晩舟はカナダで逮捕され、米国引き渡しに直面。とりわけ、米国で何十年もかけて養成してきた「パンダ派(親中国派)」が鳴りを潜めざるを得なくなって、もう、ワシントンでかつてのような大っぴらな活動ができなくなりました。

     こうした強い圧力の下で、中国政府はずっと、2018年の米国中間選挙で、民主党が勝利してトランプが苦境に陥って、この貿易戦争を、少ない損害だけでうまく終わらせることを期待してきました。そして、期待通り、サンダースら社会主義者がどっと民主党に加わって下院での多数派を奪還し、トランプは毎日、民主党の各種の批判や攻撃に足を引っ張られるようになって、各種のプレッシャーを受け、さらに2002年の大統領選挙向けの準備をせねばならず、米中貿易戦争も、早期解決が必要になっています。

     中国の首脳陣も経済が政権の生命線であることや、習近平のライバルたちが、例えば中国経済が絶望的状況になったりといったような間違いを犯すのを、今や、手ぐすね引いて待っていることを承知しています、ですからまた、トランプ大統領に、メンツを保った形で上手に舞台から降りるのを助けなければならないことを知っており、米国の要求する金融解放や強制技術移転といった問題では、相次いで政策や法律上の調整を行なっています。

     2018年4月には、中国銀行保険監督管理委員会は、外資銀行のマーケット参入の制限緩め、中国側の銀行やファンドの持株比率規定を緩和し、外国銀行が中国で代理株式発行業務を行い、手形支払いや、政府の再建販売業務を行うこともはっきり認めました。外資銀行が預金を預かる「最低限度」も、50万元に下げました。8月には、これまでの「外資3法」に代わる「外国ビジネス投資法草案」を作りましたが、そこでは、今後は「行政手段をもって技術移転を強制してはならない」に一章を設けています。それには税金徴収や保証、知的財産権の保護から、出資、利潤、資本収益などの自由な持ち出しルールも記されています。これによって、外資の信頼を取り戻し、今年度の外資の対中国投資は4割増えました。これまで大声で中国から米国へ、と公言していた台湾ビジネスマンの郭台銘も、最近、中国で雇用を拡大しています。

     以上の調整に加えて、より多くの米国商品を購入し、貿易赤字を減らすのは、すべて中国が、トランプ大統領のメンツを保ったまま矛を収めさせようという手段です。

     ★きな臭い限りのワシントン情勢

     米中貿易戦争が始まった時に、私は「トランプ大統領に掣肘を加えるのは中国ではなくて、米国内の各利益集団である」と書いておきましたが、この1年間の政局はまさにこの予測が当たっています。

     米国の政治献金を監視している団体「オープン・シークレット」のネットによると、ヒラリーへの1999〜2014年までの資金の寄付元の統計があって、最大の寄付者は、法曹界、金融界、不動産業界、女権団体をふくむ業界でした。2016年の寄付者リストの第一は、証券と投資会社で、金額は7800万米ドルにもなります。その中には、ヘッジファンドのソロス麾下のファンドが全て何千万ドルもの寄付をしています。
     
     トランプ大統領の米中貿易戦争に対して、ウォール街の金融、投資業界、多国籍企業といった代表的勢力は、基本的に反対姿勢でしたが、民主党はずっとトランプ大統領の姿勢に同意してきました。その理由の一つは、一旦、開戦すれば、まず損害を一番最初に被るのは、トランプ大統領の票田である、対中輸出の農業州だからでした。これがトランプ大統領の地盤で、ここでの支持を失ったことは、2018年の中間選挙でも、不利な影響を与えています。もし2020年の大統領選挙まで、この農業州の恨みが消えなければ、民主党にはもっと有利になります。これが、民主党がずっと「中国に譲歩するな」と言い続けてきた理由です。

     同時に、民主党はずっとトランプ大統領に攻勢をかけ、ブレット・カバノーを最高裁判事に任命した際にも、裏付ける証拠もないセクハラ問題では、最後にFBIがその疑いはないと発表するまで騒ぎが続きました。オバマ前大統領が残した「ロシアゲート」事件は、ずっとトランプ大統領弾劾すべきだという、民主党にとっての攻撃道具となってきました。3500万ドルもの納税者の金をつかった調査では、最後には、民主党にとっては、それが無駄にならず、トランプ大統領と金正恩の会談の前日に、民主党は、突然、翌日にロシアゲートの国会公聴会を開くと宣言し、マスコミもこのとりとめのない話を持って、脱税などの罪で禁錮3年の有罪判決を受けたトランプ大統領の元顧問弁護士だったマイケル・コーエンが、大量の「爆弾」を明らかにして、トランプ大統領弾劾と辞職を喧伝したものでした。

     自国の大統領が重要な外交会談に臨む、その同日に開かれた公聴会というのは、注意深く計画されたものでした。ロシアゲート事件には。2年以上、3500万ドルの税金を使って捜査が続けられてきました。これを立件するため、特別検察官の

     ロシア疑惑を捜査しているロバート・ミュラー特別検察官のグループ(訳注;スタッフ100人以上という)は、事件解明の複数の突破口としてロジャー・ストーン(66)とその協力者、保守系の作家ジェローム・カーシーに、司法取引を持ちかけましたが、「入獄することになっても嘘はつかない」と署名を拒絶されました。しかし、コーエンは脱税や選挙資金法違反の罪で8月に連邦捜査局(FBI)と司法取引しており、国会の公聴会でトランプを非難することを望みました。ミュラー特別検察官は、明らかにコーエンが「トランプがロシアと共謀していた証拠」など持っていないのを知っていました。しかし、トランプの評判に泥を塗るためには役にたったわけです。こうした「泥塗り」を特に、金正恩会談との前日に行ったのは、つまりは「トランプ大統領は足元が危ない弱い大統領で、いつでも退陣しかねない。だから、彼との約束にサインしても意味がない」という印象を、北朝鮮と中国に与えることでした。

     トランプ・金会談が成果なく終わったことで、上院民主党のリーダーのチャック・シューマーと民主党下院議長のナンシー・ペロスは至極ご満悦で、シューマーは「トランプ大統領が交渉から退いたのは正しい、大衆ウケを狙って北朝鮮とダメダメな協定を結ぶのではないかと、ずっと心配だった。今、大統領へのプレッシャーはこんなに大きいのだから、無理に会談をまとめればロクでもない結果になりかねなかった」と述べ、ペロスも「大統領はもともと北朝鮮に、何もよい提案を持っていなかったのだから、これは正しい結果だ」と述べました。

     外交は内政の延長ですから、国内の政争が白熱化しているときに、外交的な成果が上がったなどという例はありません。現在、トランプ大統領が直面しているのは、通常の政争ではなく、彼と、ますます左翼化し、社会主義化している民主党との戦いであり、米国が今後、資本主義の道を歩むか、社会主義路線をとるかにかかわるイデオロギー闘争です。トランプ個人としても、共和党、さらに米国の長期的な利益という観点からも、彼は対外的な争いを全て収束させ、2020年の大統領選挙に集中しなければならない時期なのです。

     これがチャンスとばかり民主党やニューヨーク・タイムズ紙などのメディアは、米国が利益を得られなかったと批判している他にも、世界各国も、どっちか一方に加担するかという姿勢を問われる米中貿易戦争の終結を望んでいます。米・中両国にとっても、この戦いをやめることが、賢い選択なのです。(終わり)

     原文は;中美各有难题 贸易战行将收官

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