• 「対外大宣伝」は中国グローバル化戦略の文化兵器 2019年03月05日

    by  • March 12, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

    中国の大プロパガンダ――恐るべき「大外宣」の実態
    「対外大宣伝」は中国グローバル化戦略の文化兵器

    2019年03月05日

     中国語メディア、中華系の団体、中国語学校の三つは、ずっと「海外統一戦線工作(訳注1)の「三つの宝」でした。中国政府の統計では、現在、世界に4500万人以上の中国系人がおり、2万を超える中国系団体があり、5千校以上の中国語学校、数百の中国語メディアがあります。こうしたメディアを利用し、管理し、中国系人に影響力を与え、中国を支持させるかが、中国共産党にとって大変重要な「海外統一戦線工作」です。

     2009年、中国は「西側メディアの発言権奪取闘争」として450億人民元の巨費を投じ、全世界の「対外大宣伝工作」に乗り出しました。以来、中国の対外大宣伝のニュースは、不断に登場しています。とりわけ注目を浴びたのは、中国国営通信社の新華社北米総支局が、ニューヨークのタイムズスクエアに進出したことと、ロイター通信やニューヨーク・タイムズと並んで、人民日報の「人民ネット」が、マンハッタンのエンパイア・ステートビル30階を借り受け、世界を驚かせました。更には、タイムズスクエアに高さ19m、幅12mの巨大な液晶スクリーンを立て、北京の「宣伝映画」を日夜放送し始めました。西側世界は、「一体、イメージづくりにそんなにお金を投入して、何をするつもりなんだ?」と驚きました。

     しかし、中国でいう「対外宣伝」は、今に始まったことではないのです。中共は、反対勢力の在野時から、とっくに効率的に「対外宣伝」を始めており、主に西側外国人記者に影響を与えてきました。

     西側社会が理解出来ていないのは、中共は政権を握って以来、70年以上にわたってその技を磨き、「対外宣伝」戦略は、とっくにパッケージされたフルセット戦略になっているのです。西側のウォッチャーたちが、北京が450億人民元を投入して「大宣伝」を開始すると耳にした時には、もう地球上の全ての中国語メディアの大部分は、既に北京の影響下にありました。アフリカに至っては、「大宣伝」の成果そのものです。

     こうした大量の資金投入は、中国の国家メディア、香港、台湾、その他、表面上は中国系資本が表に出て作ったことになっていますが、実は皆、中共の傘下の「忠義な集団」で、中共の宣伝機関の延長であり、自由なメディアなどではありません。これより前、中国政府は海外メディアに対しての紅色浸透ぶりをあまり宣伝していませんでした。しかし、2009年から突然それがハイピッチになったのでした。それは二つの原因がありました。

     一つは、2008年の北京オリンピック聖火リレーでした。世界中で、チベット独立支持者たちの抗議に遭遇し、北京は、「ニュース報道の世界でも主導権を持たないといけない」と深く理解しました。もう一つは中国の国内総生産(GDP)が、日本を抜いて世界第2位の経済大国になったことです。自信をつけた北京は、全世界的に、大々的に旗を掲げ太鼓を叩いて、米国などの西側諸国内でも、遠慮会釈ない「滲透」に乗り出したのでした。

     こうしたド派手な動きは、米国メディアに「中国人来襲」の脅威感を与えはしました。しかし、西側メディアのお手本の米国の伝統メディアは、この10年余り景気が厳冬期状態で、合併併合を繰り返し、「離婚率より高い」合併失敗率とも言われるほどで、この中国の猛烈攻勢に対して、匙を投げ諦め感が漂っていました。

     中国は、まさにチャンス到来とみて、安値でこうした企業を大々的に買収にかかりました。アジアソサエティー米中関係センターのオービル・シェル センター帳は、「我々のメディア王国が、ヒマラヤの氷河のように溶け去ろうとしている時、北京は逆に拡張している。彼らは世界中のまともな評判を得ているメディア業界に自分たちの席を作るべく、ニューヨークのタイムズスクエアという象徴的な場所に進出した。これは彼らの計画の一部分だ」と語っています。

     米国は、「冷戦」の終結後、確かに一時期『昏睡状態」にあったといえます。典型的な例では、2009年、オバマ政権が誕生した頃、元国家安全保障問題担当大統領補佐官のズビグネフ・カジミエシュ・ブレジンスキー(政治学者)、元世界銀行総裁・国務副長官ロバート・ブルース・ゼーリック(銀行家)、元世界銀行上級副総裁・主任エコノミスト の林毅夫リン・イーフー、英国の歴史学者のニーアル・ファーガソンといった面々が、オバマに「中国とのG2関係を米中間の特殊な関係の大黒柱にすべきである」と進言したことがあります。

     このいわゆる「G2」とは、米・中両国に世界の指導者たる責任を分担させよ、ということです。しかし、中国政府も、かなりあからさま「世界の発言権の配分は大いにバランスを欠いており、8割方が西側メディアに独占されている」と発言していましたから、米国のメディア人は、中国が巨額の資金を惜しみなくつぎ込む、ものすごい外国宣伝攻勢の目的は、世界的な「発言権」奪取が目的だと感じ取っていました。

     この大宣伝は、専ら中国の外交政策に沿ったものでした。中国政府と民間が連携して広報や文化交流を通じて外国の国民や世論に働きかけるパブリック・ディプロマシーの急所は、文化PRで、その目標は五つあることも承知していました。その五つとは、①外国に中国の主張を宣伝し、②良い国家イメージの創出、③海外における対中国報道の”歪曲”に反論すること、④中国周辺の国際環境の改善、⑤外国の政策決定に影響を与える — ことでした。

     西側メディアは当然、新華社がこの数年、急速に拡大し、記者6千人以上を全世界に派遣していることをウォッチしていました。これは、AP通信社やAFP通信社、ロイターといった世界の老舗通信社を超えています。

     ある明敏な西側の記者は、この変化から、昔の同業者が一人また一人と高い給料と待遇に引かれて、中国の対外大宣伝部隊に参加するのを見て、残念そうに「過去10年(つまり、この大宣伝攻勢が始まった2009年以降)、中国は巧みに主導権を握って、日増しに国際的な観客向けの策略を練ってきた今、巨額の資金を投じてグローバルな情報データ調査環境を改変しようとしている。映画やドラマにこっそり仕込まれる論評から、真正面から中国を褒め称えるニュース報道まで、何一つ欠けるところはない。そして、中国国内でのメディア統制は、日増しに厳しく管理している。海外では、”報道の自由”の弱点を利用して、利益を拡大しているのだ」と話しています。

     しかし、西側は、中国の「対外宣伝」とは、今に始まったことではないことを知らないのです。中共は、昔、在野の反対党時代から、効率良く広報戦術を開始しました。その役割を効果的に荷なってきたのは西側の「左派記者」たちです。西側社会が分かっていないのは、これは、中共が政権をとって以来、70年にわたって磨き上げてきた「外国での大宣伝」は熟達の域に達した完全な戦略なのだということです。

     私が今回書いた「红色渗透:中国媒体全球扩张的真相」(=日本語版・福島香織訳;中国の大プロパガンダ――恐るべき「大外宣」の実態)は、中共の対外宣伝の歴史から始まって、中国が自ら、今世紀初頭以来、築いてきた対外宣伝メディアの「地元化」戦略、その作戦の下で海外で行われている「大宣伝」の配置を分析しています。

     本書は、北京が現在、いかに自分の価値観を、押し広げているかを理解する一助になると思います。北京と関係ある資本は、今、全世界で数多くのメディアを手中に収めており、米国の百年以上の歴史を持つ、ロサンゼルス・タイムズ紙も北京の華人財団によって買収されました。

     「アメリカ独立宣言」(1776年)の主要起草者だったトーマス・ジェファーソンは、1787年に「もし、新聞のない政府か、政府なき新聞かを選ぶとすれば、私は、いささかも躊躇することなく後者を選ぶだろう」と述べました。

     しかし、本書は、米国の先駆者たるジェファーソンの言葉とは正反対の現象をお見せします。中国は、米国を含む全世界で、政府資本によってコントロールされる対外大宣伝ネットワークを作ろうとしているのです。多種多様な言語によるメディアによって構成される紅色メディアファミリー。目的はただ一つ、中共独裁の世界戦略に奉仕するためなのです。

     原文は;《红色渗透:中国媒体全球扩张的真相》https://www.books.com.tw/products/0010814805

    (この記事は、「红色渗透 中國媒體全球擴張的真相」=日本語訳;中国の大プロパガンダ――恐るべき「大外宣」の実態 (扶桑社)の前文)

    (訳注1;海外で中共の影響力を広げる戦略をこう呼ぶ)

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