• ★米国政府を米国で訴え出た華為ー2匹目のドジョウはいるか?  2019-03-12

    by  • March 15, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

    中国 何清漣
    中国 何清漣

    中国2018 中国2017 中国2016 中国2015

     3月7日、ファーウェイ・テクノロジーズ(華為科技)は、テキサス州プレイノ(訳注1)の合衆国連邦裁地方裁判所で、正式に米国政府を提訴したと発表しました。報道によると、同連邦地裁は、既に米政府を起訴した旨を米政府、米司法省長官、米教育省長官、米労働省長官、米保健福祉省長官、米農業省長官など、多くの政府機関のトップに通達し、政府関係機関からの60日以内の回答を求めており、回答がない場合は敗訴となります。

     インターネット時代の情報の洪水は、情報を得るのは簡単至極ですが、忘却もまた簡単です。華為が米国政府を訴えるというアイデアは、実は2014年、中国の「三一重工股份有限公司」(訳注2)が米国政府に勝訴した経験からです。

     ★三一重工の米政府訴訟の経験とは

     2012年、三一重工は、2人の重役名義で自社傘下のRalls Corp社が、Terna Energy社の4基の風力発電所を買収しましたが、それは、オレゴン州の海軍基地付近にありました。そして両社とも、米国の企業や事業への外国の直接投資の国家安全保障への影響を検討する対米外国投資委員会(CFIUS)に申請しないまま、2012年3月に売買交渉が成立しました。

     CFIUSは、この売買が米国の国家の安全に影響するとして、合衆国国家情報長官事務局からの分析レポートを基礎に、オバマ大統領に意見書を提出。オバマ大統領は9月に、信ずべき証拠からRalls Corp社の買収は、米国の国家安全に脅威となるとして、Ralls Corp社に対して、関連プロジェクトから自社設備を撤去せよという命令書にサインしました。

     これに対して、Ralls Corp社はCFIUSを相手取り、オバマ大統領を共同被告とする訴訟を起こしました。理由は、大統領命令は行政手続法に違反しており、正当な手続き無くして私有財産を奪う違法な行為で、行き過ぎた制限は大統領権限を逸脱しており、この決定に至る具体的証拠と理由が示されていないというものでした。Ralls Corp社は、CFIUSの命令は無効で、執行すべきでないと要求しました。

     この訴訟は2年近くかかって、2014年7月15日、コロンビア特区巡回上訴裁判所で、三一重工側の勝訴となりました。判決は以下のような内容でした。

     ⑴ 三一重工の米国関連会社Ralls Corp社の投資プロジェクトは、憲法の財産権擁護の対象になる。
     ⑵ オバマ大統領によるオレゴン州のRalls Corp社の投資プロジェクトに対する禁止令は、手続き上の正義に反する。同社のプロジェクトが受けるべき憲法に保障された財産権の保護を奪ったものだ。米国政府は、同社に対して相当すべき手続き上の正義を満たさなければならない。それには、CFIUSと大統領が、決断を下した根拠となる秘密には相当しない情報も含まれ、関連情報を理解し、それに答えるチャンスを与えることも含まれる。
     ⑶ このプロジェクトについて、オバマ大統領が大統領命令を下したからといって、CFIUSは、自動的に裁判所の審査を免れるものではない。裁判所は、同社のCFUISの各プロジェクトに対する異議申し立てに対して実質的な審査をする。
     
     47ページの裁決書で、裁判所は、ホワイトハウスに対して、なぜ同社が風力発電所を建設するのを禁止したかについての非機密文献を提出することを命じました。中国側は、これはCFUISの審査過程に対する最初の挑戦であり、中国企業が米国で初めて「民間がお上を訴える」ケースでの勝利だとみなしました。
     
     この経験は、中国にとって大変貴重な経験を残しました。まず、プロセス上の正義を重んじる米国では、立法者、司法省も厳しいプロセスを通じてしか決議、決定、裁判の正しさを最大限に出来ないのだということです。もし手続き上に瑕疵があれば、米国の司法機関は、往往にして、正当な裁決より、プロセスの正当性を重んじるということです。次に、Ralls Corp社は民間企業であり、米国は、(中国の)国有企業には警戒心を持っているだけだ、ということです。

     今回の華為の米国政府に対する訴訟では、基本的に憲法違反と企業の性格という2点を論点にしています。一つは、米国の「2019財政年度の国防権利法(NDAA)」の889条の合憲性で、米国連邦裁判所に訴訟を起こし、華為に対する販売制限は憲法違反であるという点。そして、その制限条項の実施を永久に禁止すべきであるということ。第2点は、華為は私営企業であって、国有企業ではない、という点です。

     ★米国は既に中国に防衛意識を高めている

     三一重工が米国政府に勝訴したことは、「CFIUSが初めて厳しい訴訟に直面して、米国政府が史上初の敗訴となった」とみなされてきました。では、今回の華為が米国政府を訴えたても、勝利出来るでしょうか? それにはCFIUSの機能とその変化を見なければなりません。

     CFIUSは米国の11の政府機関の行政の長と5つの監視員組織による連邦政府の委員会で、米国財務省長官がトップを務め、国防省、国家安全省、国務長官、商務省長官、エネルギー長官、司法長官、貿易代表、ホワイトハウス科学技術制作局 (OSTP) 局長らによって構成されます。同時に、ホワイトハウス国家安全保障会議、同経済顧問委員会、同国家経済委員会、行政管理予算局などがオブザーバー資格で審査に参加し、国家情報長官、労働省長官は、「評決権のない委員」です。

     CFIUSの権限は、あらゆる外国企業が米国企業を買収する案件は、自発的にCFIUSに通知しなければならないが、CFIUSは自発的に情報が提供されない場合でも審査することが可能です。CFIUSは多くの審査の重点は、米国企業が外国に買収されることによって、米国企業の技術や資金が、米国の制裁対象国に流れる可能性をチェックすることです。この点で、中国は当然CFIUSの重点注目対象になります。CFIUSの法的な規定は、1950国防生産法案の第721節にあります。

     三一重工の勝訴以後、米国は、中国は共に協力して利益を得られるチャンスをもたらしてくれる相手でもあるが、米国の安全を脅かす恐れもあるやっかいな経済パートナーなのだと気がつきました。そこで、2017年11月上旬、テキサス州の共和党上院議員のJohn Cornynとカリフォルニア州の民主党上院議員のDianne Feinsteinが、数千社にも上る外国との往来のある企業は、毎年、すべてCFIUSの審査企業リストに掲載すべきだする法案を提出しました。これは一部の中国企業が、米国企業と合弁によって、関連技術の権利を得るのに際し、CFIUSの審査逃れが出来るのを防ごうというものでした。この立法によって穴を塞いで、外国資本の所有が一定の率を超えた合資企業は、自動的にチェックを受け、中国などが、米国の新技術を追い越すといったことへの審査を強化する狙いがありました。

     2018年、米国財務省は二つの暫定新ルールを批准しました。一つは、2018年の「外国投資危機評価現代化法案」で、CFIUSの現行規定の関連を更新し、二つには前述の法案のテストケースとして、外国の米国のキー技術企業への投資プロジェクトに対しての独立条項です。2018年11月10日から、テストケースとなるプロジェクト対しての投資には、強制的にCFIUSに簡単な申請を行うということです。これは「米国連邦法」の第31条第800項で、2018年10月11日から発効し、テストケースプロジェクトは、米国連邦法第31の801項として、2018年11月10日に発効しました。

     この修正は、主として中国資本企業に対してのものです。これまでCFIUSへの申告は「自発的」だったので、中国企業は申告しない方を選んできたからです。

     華為は米国の「2019年国防権利法」(NDAA)の889条の合憲性をもって、連邦裁判所に提訴しています。これは頭の良い米国弁護士が、華為にここが弱点になるから攻めよと提案したのでしょう。

     ★華為は訴訟を通じて何を狙う?

     三一重工がかつてオバマ政府に勝訴したことは、確かに、今回、華為が米国政府を相手取った訴訟を起こす経験になっています。しかし、この二つの事件の間には7年間の年月が流れています。米中関係はもちろん、米国内の政治にも大きな変化が起こっています。

     ⑴ 両国は「戦略的パートナー」から「戦略的ライバル」になり、米国は、対中国にはっきり国家安全の意識を持っています。

     ⑵ CFIUSの権限は、2018年の法修正によって、より整えられている。

     ⑶ 三一重工と華為の事件の安全性という点では、完全に同一のレベルではない。三一重工は、ただ海軍基地の近くの工場に投資しようとしただけだったが、華為は世界のインターネットの安全に対する隠れた危険性があって、すでに大多数の西側国家の心配のタネになっている。公開資料から見ても、米国の華為に対する調査は6年前から始まっており、2014年始め、孟晩舟がニューヨークのケネディ空港から米国に入国した時、入国管理局員が彼女のパソコンから、孟が天通科学技術会社と関連する証拠を得ている。

     米国の政府や民間の両事件の性質を見る目も完全に違っています。ワシントンポスト紙は、相変わらず2014年の三一重工の対米国政府勝訴の件を蒸し返して、華為が、米国政府と米国議会が米国憲法に違反していると訴えたのは、いつの間にか米・中間の政治と経済体制の基本的な違いが表れたのだなどと報道していますが、ワシントンのシンクタンクの多くはそうは見ていません。

     3月8日、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の「華為と米国の法廷審問は逆情報戦になるか」という記事では、多くの米国の安全問題の専門家や情報技術者の話として、華為は米国での裁判真理を通じて、いかにして、米国が華為情報を獲得したかを知りたがっている可能性を指摘しています。

     米の官僚たちが秘密会議で出した中国企業の通信技術設備を信用しないという結論を、米国政府が果たして法廷で、関連証拠として開示するかどうかは未知数です。2014年の三一重工が得た最大の収穫は、実はホワイトハウスが法廷に提出した事件関係の、すべての非機密文献を見ることができたことにあったのですが。しかし、時は移り、環境も今は違います。

     古代ギリシャの哲学者は、「人は2度、同じ川の流れに入ることはできない」と言いましたが、三一重工が、かつて勝訴したからといって、華為が今後、勝利するとは限らず、裁判を通じて非公開情報を得られるかどうかも未知数です。

    (終わり)

     原文は;华为起诉美国政府 缘于“三一重工经验” http://www.epochtimes.com/gb/19/3/11/n11105835.htm

    訳注1;Plano ダラスの北、人口約27万人、トヨタの北米本社も2017年に移転した
    訳注2;以下「三一重工」、中国建設機械製造メーカー・ビッグ3の一つ

    (終わり)

     原文は;华为起诉美国政府 缘于“三一重工经验” 

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