• 程暁農★「米がダメなら、欧州があるさ」か? 2019年3月31日

    by  • April 1, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

    中国 何清漣
    中国 何清漣

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     米国は、中国から見れば東方に位置する。過去1年来、米・中間の経済貿易を巡る度重なる交渉では、既に双方とも受け入れられる限界ラインを交渉で完全に明らかにしている。中国も、もはやオバマ前大統領時代のような米国からの”好遇”は得られる望みはない。しかし、米・中関係が厳しい時代になっても、欧州国家とは「蜜月」を続けたい。「東がダメなら、西があるさ」とばかり、欧州連合(EU)市場を拡大し、縮小する米国からの貿易黒字の穴埋めにしようというわけだが、そう簡単ではなさそうだ。

     ★EUも「能天気時代」の終わり

     最近、マクロン仏大統領は、「欧州も気がついた!」と発言した。その意味を、同大統領は「中国との関係で、EUの能天気な時代は終わった」と説明した。。EU諸国の中国に対する「能天気」とは、中国が早晩、欧州との貿易関係で、自分たちを平等に扱うだろうと期待してきたことだ。EU国家はこれまで「能天気に」長い間待っていたが、今やついに「中国の姿勢は変化しない」し、待っていても無駄だと知った。だから、今年3月12日に、EU執行機関の欧州委員会(EC)とEU外務・安全保障政策上級代表は、対中関係を見直す「10項目の行動計画」を提案する共同コミュニケを発表。習近平訪欧直前のEU首脳会議で承認し、中国に対する警戒感を急速に高めている。

     この政策文書は、中国は、EUにとってのパートナーだが、ライバルでもあるので、一連の対中関係の監督機構を強化すべきだとしている。この「10項目の行動計画」の中で、EUは、対中国政策を再調整して、より強硬な姿勢に変えるべきだとしている。ハイテクの鍵となる技術分野では、初めて、「経済的ライバル」、政治上では「体制的ライバル」といった用語を使っており、また、不公平競争と人権問題については、中国側に対して、これまでより強い態度をとっている。つまりこれは、米国の対中貿易交渉の姿勢の一種のミニ版なのだ。

     2019年3月の習近平の欧州3カ国(伊、モナコ、仏)訪問は、本来、二つの欧州国家との、個別「単独ゲーム」の予定だった。イタリアとは「一帯一路」計画で覚書を交わし、更に欧州に一歩コマを進め、パリ訪問は、中国とフランス間の修好55周年を記念するためだ。しかし、マクロン仏大統領は、この機会をEUとの「協同ゲーム」に変えた。メルケル独首相とEU委員長のジャン=クロード・ユンケル(元ルクセンブルク首相)をわざわざパリに呼んで習近平と会談し、EUの足並みが揃っているところを見せつけた。

     会談後、ドイツとフランスのメディアは、人々を安心させるような「重要な進歩が見られた」といった楽観的な報道はしなかった。フランスのRFI(フランス国際ラジオ)ラジオ・フランスアンテルナショナル中国ウェブサイトは、習近平は記者会見で「我々は、いつも背後を気にして、疑心から出発してはならず、自分のパートナーが何か悪さをするのではないかと疑い、前進する中で傍観的であってはならない」と言ったと伝えた。これは、習近平が会談において、とりわけ「一帯一路」計画に関して、欧州が安心出来るような具体的措置を提案しなかったと見ている。

     2年前までは、西側国家は基本的に中国に対して門戸を大開放して、警戒防衛策は何も講じなかった。米国もEUもそうだった。しかし、中国側は、貿易では西側企業に対して数々の市場参入障壁を設けつつ、同時に西側企業の知的財産権を侵害し続けた。去年から、米国がまず中国に対する「能天気な時代」を終わらせ、政界エリートたちの間には、対中国政策では対中国貿易の関係での「対等化」すべきだ、という一種の共通認識が生まれた。西側が中国に門戸を開放するのと同じように、中国側も西側にそうすべきであって、もし中国が真の開放を拒否するなら、米国も中国の輸出に対して同じように縮小する、ということだ。

     これが目下の米・中貿易交渉の基本的な考え方だ。マクロン仏大統領の言う「欧州の能天気な時代は終わった」も、EUの指導層も対中貿易の「対等化」という考え方をし始めたことを表している。


    ★ イタリアは中国の欧州突破口になるか?

     マクロン仏大統領がEU国家の対中関係で「能天気な時代は終わり」と言うのは、少なからぬEU国家の見方を代表しているとしても、逆に「能天気」なままでいたい、というEU国家は存在するのか?

     イギリスのデイリーテレグラフ紙の記事では、イタリアの既成政治に対抗する政治勢力として注目を集める政党「五つ星運動」の指導者は、中国を黄金をもたらす元と見なし、イタリアの底抜け財政を支えてくれると考えているようだ。そしてまた、中国側にも、対イタリア関係への評価は、なかなか能天気なところがみられる。

     ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道では、EU内部の対中関係問題には、大きな意見の違いがあると言う。ドイツ、フランスをはじめとする国家は、EUが力を合わせて、日増しに拡大する中国の政治・経済への影響力を抑制したいと願っている。しかし、イタリアをはじめとする一部の国々は、中国との関係強化によって利益を得たいと願っている。同紙のこの見方を一歩進めれば、欧州で比較的経済力の強い国々は「仏独派」に属するが、経済力の弱い国々は、「飢えたる者、食を選ばず」で、投資してくれるなら誰でも歓迎ということだ。例えばポルトガルやギリシャは、既に中国と「一帯一路」協議に署名している。

     イタリアやポルトガル、ギリシャといった「中国投資御一行様歓迎」の国家があることから、EU理事会は今月、EUとしては初めてとなる対内直接投資を審査する「スクリーニングに関わる法案」を承認した。その主要な内容は、中国投資に対する審査だ。EUメンバー国は、それぞれ自国の外国投資審査部門を持っているが、EUはその上、更に統一された審査基準を作った。この法案によれば、EU加盟国とEU委員会は、EUにとって戦略的に重要な産業分野に対する投資(買収)に関する外国投資について調査し、見解を発表する権利を持つ。この法律はこの4月に発効し、来年10月から実施される。(訳注1)

     EUの政策方向を決めるのは、自ずからEU内部でも経済政治大国であり、例えばドイツやフランスだ。イタリアはEUの中では大国であり、主要7カ国(G7)のメンバーで、その視点から見れば、イタリアと中国が署名した「一帯一路」覚書は、中国とポルトガルやギリシャの同様の協議より一層大きな意義を持ちそうだ。では、これは中国が、欧州の大国からEUとの関係を深化させる突破口を見つけた、ということになるか?

     実際は、イタリアはEU諸国の中でも、他国に対しての影響力は、あまり持っていない。なぜかと言うと、長期的な経済疲弊、一向に減らない財政赤字の下で、同国は不断にEUに対して財政赤字拡大の許可と、財政支出のために、欧州中央銀行にイタリア国債の購入を求めているからだ。だから、イタリアがEUの方向性を決める主導権を得るのは困難だし、ましてや中国のためにEU政策を変えるテコになどなり得ない。イタリアは中国との関係を利用して、EUに圧力をかけ、財政赤字を拡大して、経済の苦境を何とかしたいというのが目的なのだ。

     欧州委員会のアナリスト、フランソワ・ゴデメンは、「多くのヨーロッパ人は、米・中間の中での立ち位置について、ビクビクしている。米国に近づき過ぎてはまずいが、中国に近寄り過ぎることも出来ない」と言う。双方から恨まれない中立姿勢が、EU国家の求めるベストな立ち位置だ。何と言っても欧州は、軍事上の防衛戦略と国家の安全を米国の軍隊と財力に頼っており、EU諸国はこのおかげで毎年、巨額の軍事費を節約して、自国の福祉維持予算に回していけるのだ。

     しかし、米国を仮想敵国と考えるのは、EUの宿敵のロシアばかりではなく、軍事力を不断に増強させている中国もそうだ。その上、中国とロシアは軍備面で協力しており、ロシアと欧州国家間の不信感の影響が欧州と中国の間の関係にも尾を引く。だから、EU国家の指導者が、トランプ大統領を好きか嫌いかにかかわらず、欧米関係は、欧州と中国関係が深まったからといって、米欧の間が疎遠になったりしない。この点で、中国はいつも戦国時代の合従連衡がっしょうれんこう的ゲームになることを願って、欧州と結んで米国に対抗したいのだが、それは多分、永遠の夢物語だろう。

     ★ イタリアは「一帯一路」の欧州・アフリカ拠点?

     イタリアが「一帯一路」覚書に署名したことは、中国がここから、潜在的な新たな大市場としての欧州とアフリカのマーケットの門を大きく開く役割を果たすか? それにはまずイタリアの経済情勢を見なければならない。

     イタリアは欧州で最も経済がパッとしない大国の一つだ。2005年から2015年の間、国内総生産(GDP)は毎年0.5%づつ縮小しており、目下、その経済は20年前の2000年と同水準で、経済はギリシャより振るわない。イタリア南部の失業率は30%もあり、過去数年、増えた就職先といえば、6割がパートタイム仕事だ。貧困人口は、2006年の300万人から2016年の1800万人にまで増え、イタリア人口の3分の1を占める。

     そんなに多くの貧困人口が社会福祉に頼っているとなれば、就職人口と企業税負担は必然的に大変重くなり、イタリアの最高税率は、EUの他の国々の最高税率より更に高い39%だ。税収不足で社会福祉を、となれば、借金と債券発行による外国からの借金頼みになる。1993年に債務総額はGDPの104%だが、現在の債務高は、ギリシャに次いでGDPの135%にもなる。この比率は全世界の債務負担国リストで第3位だ。

     1970年から20世紀の終わりまで、イタリアは経済を維持する「奥の手」があった。それは不断に貨幣価値を切り下げて、輸出商品の国際競争力を維持することだった。しかし、EUに加盟後は、EUの「大鍋ご飯」を食べるようになったので、ドイツやフランスの主導するEUの管理を受けることになり、この「独自の奥の手」は使えなくなった。ここ数年、イタリアはずっとEUに、財政赤字の拡大を許可するように要請したが、成功しなかった。そこで、今度は「ユーロ脱退」の脅しをかけ、昔の通貨単位「リラ」に戻ると言い出した。つまり、イタリアは事実上、EUの多くの国家が実行しているような財政通貨政策を軌道に乗せられないで、いまだに、昔のように価値の切り下げの道を懐かしがっている。

     イタリアの経済は、昔ながらの問題を抱えてきた。一つは、家族型の中小企業が多数を占めて、伝統的な経営モデルを保持していることだ(原注;この点はEUの中でも唯一、中国に似ている)。もう一つは、多くの中小企業に技術革新の能力がないことだ。イタリア政府が「ユーロ脱退」をチラつかせてEUを脅すのは、通貨価値を下げて、輸出品の価格を下げ、同時に輸入品の価格を上げて、イタリアの遅れた中小企業を保護したいがためだ。

     もし、本当にある日、イタリアがユーロから離脱したら、中国の輸出に有利か? 正反対だ。通貨が下落すれば、安い中国商品はイタリアでは為替レートのせいで高くなり、そのマーケットは縮小してしまう。

     イタリアの貿易輸出先は、欧州国家が主で、全貿易の約6割がそうだ。これらの商品の多くは北上ルートで陸路で運ばれる。残りの海外貿易が海運だが、同国の海運による中国からの輸入は、たった2%しかない。つまり、中国商品のイタリアでのシェアは小さい。イタリアの港が能力不足だからではない。イタリアの外国貿易の大部分が北方の欧州市場だからだ。だから中国が「一帯一路」計画でイタリアの港湾施設を改善しても、必ずしも中国からの輸出が伸びたりはしない。

     中国の「一帯一路」計画の理由は、アジア — 欧州間の鉄道による貨物輸送の開発だ。中国西部の都市、例えば重慶から港まで運んで、更に輸送船で運ぶとなると、中国国内での陸路の輸送費が高くつき過ぎるからだ。中国のイタリアにおけるインフラ投資が、中国の輸出に有利になるかどうかは、こうした観点から考えるべきだ。今回、中国とイタリアが署名した港湾建設協力協議は、イタリアの四つの港に関わるものだ。

     イタリアの北方の工業地帯に近いジェノバ港と、ローマに近いラヴェンナ港は、比較的後背地が大きくイタリアの重点経済地帯に近い。しかし、他の二つの港は辺地にあって、後背地なく、製造業の中心からも外れている。そのうちの一つは、経済的に遅れたシチリア島のパレルモ港で、他の一つは東北の田舎のトリエステ港で、どちらも将来の発展はきわめて限られたものだ。

     今回の中国・イタリアの覚書合意関連の報道で、最も強調されているのは、スロベニアの国境に位置するトリエステ港だが、同港の開発は、イタリア経済を促進するというよりは、スロベニアがそのおかげを被ると言える。

     こうした港が、中国のアフリカ市場進出に有利という説は、更に眉唾ものだ。中国のアフリカ輸出には、何も高くつく陸送でイタリアまで輸送し、更に海運を使うだろうか? 現代は、もはやシルクロードの隊商の時代ではない。中国から直接、アフリカの港に運んで何が不都合なのか?

      今回の中国代表団のイタリア訪問は、国家発展改革委員会の何立峰主任とイタリアの経済発展大臣が29の協力協定に署名した。しかし、更に20余の協議の合意が棚上げになったことはあまり知られていない。

     その理由は、それらが「デリケートな問題」に触れるからだった。「デリケートな問題」というのは、中国、イタリアとも口を噤んでいるが、恐らく欧州委員会がしっかり注目しているハイテクに関するプロジェクトだろう。

     イタリア経済は引き続き谷間をさまよっており、その重要性とは、名ばかりのものだ。中国にとっては、この経済協力は宣伝価値であって、多分、それが経済上の現実の利益を上回るのだろう。

     (終わり)

    訳注1;エネルギー、運輸、通信、データ、航空・宇宙、金融、半導体、人工知能、ロボティクス、水資源、医療・健康、防衛、メディア、バイオテクノロジー、食品安全などが対象となる。参考https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/02/ff8e6d068d1b4a62.html)

     元記事は、http://www.epochtimes.com/gb/19/3/30/n11151378.htm”>程晓农:东方不亮西方亮?
     

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