• ★中国で現代版「上山下郷」(下放)のニュースが大騒ぎになったわけ⑵ 2019年4月16日

    by  • April 17, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

     偽りの都市化の逆襲⑵

     都市化が6割に満たないうちに、中国では各種の「農村に向かおう」という動員運動が行われました。これは、先進国と比べても、発展途上国と比べても、大変特殊なことでした。その原因は、つまるところ、2005年から始まった急速な都市化の過程で、就業先が増えないという、ある種の偽りの都市化にありました。

     ★「農村消滅運動」が偽りの都市化を推し進めた

     都市化の度合いを測るには二つの方法があります。第1には、都市化人口が総人口に占める割合ですが、都市化された地域の区分は各国でそれぞれ違いますので、基準は同じではありません。第2は、都市化の変動率で、一定期間内に予測された平均的都市化の変動率で、専門家の間で使われます。ここでは、第1の方法で見てみましょう。

     英国は最も早く工業革命が起こった国で、最も早く都市化が始まった国でもあります。英国では工業化が完成するにつれて、社会経済は高速発展の段階へ進み、世界で最も発展した国家となり、都市化の平均は9割を超えました。英国に続いて、欧州大陸のフランス、ドイツ、イタリア、米国、オーストラリア、カナダなどの国々が相次いで工業化し、都市化を推し進めました。現段階では、こうした先進国の都市化の水準は8割を超えます。

     大多数の発展途上国では、20世紀の半ばになってからやっと都市化が始まりました。現在、都市化の水準は大体が5〜6割の間です。中国は、世界第2の経済大国として、多くの発展途上国を超えています。しかし都市化の水準では、発展途上国より遥かに低く、2018年の都市化水準は59.58%で、発展途上国の真ん中ぐらいです。

     長年、学界では発展途上国の都市化の比較に対して、社会経済の発展水準と都市化の水準が一致しないと、二つの不合理な現象が出現することが指摘されています。都市化水準が社会経済の発展水準より低い現象を、「都市化の遅れ」と呼ばれ、都市化の水準が社会経済の発展より高い場合を「偽りの都市化」といいます。こうした現象の多くは、発展途上国で見られるものです。「偽りの都市化」は、大量の農民が都市に流入するが、就職先が無いために、スラム化が集中して進む現象で、ブラジルやアルゼンチンなどラテンアメリカで多くみられます。

     中国は、2005年から「偽りの都市化」段階に入りました。当時、中国はまさに「農村消滅運動」を通じて、急速に都市化を推進したのです。(訳注;滅村運動=都市の用途に必要な土地を確保するために農村の住宅などを打ち壊して土地を確保した)

     なぜそのような必要があったかといえば、当時、農業税が廃止され、地方財政は別の財源が必要だったからです。専門家の予測では、経済が1%成長するということは、1千万人が都市に流れ込むといういうことで、巨大な投資と消費の需要がありました。同時にある研究では、都市人口が1%増えると、最終消費が1.6%増えるといわれました。都市化推進のために、中国全国で政府によって、「農村消滅運動」が繰り広げられたのでした。

     ★農村消滅運動の結果は

     中国では常に様々な大事件が起きており、社会の注意力も次々に目移りしていき、多くの事態がさっさと忘れ去られてしまいます。2005年から習近平が中央権力を掌握するまでの間に起こったこの農村消滅運動もその一例です。

     最初にさかのぼれば、これは中央からの文書が引き起こした災いでした。中国国内の研究者によれば、2004年10月21日、国務院が出した「改革を深めるための厳格な土地管理規定に関する決定」は、「農村建設用地の整理を促進するために、都市建設用地の増加と、農村建設用地の減少をリンクさせよ」と提起し、農村と都市と用地の置換に関する基準を法的にリンクさせたのでした。

     2006年、国土省は、その第1期テストケース地点として、山東省、天津市、江蘇省、湖北省、四川省を指定。2008年6月には「都市と農村の建設用地の増減リンク管理方法」を発表し、その後、2008年2009年に、更に国土省は別に19省をテストケース地点に加えました。リーマン・ショック後の2008年末には、国家の4兆元の経済刺激策を打ち出し、国土省は一連の措置をリンクさせ、その最重要な政策は都市建設用地の「増減リンク措置」に関する指示でした。

     いわゆる「増減リンク措置」というのは、「耕地の利用を整理して農村用の区画を整理し(旧来の土地を整理して)、都市建設区画(建設用の新たな土地)とするなどして、都市建設プロジェクト地域として、その土地の面積のバランスを取った上で、最終的に耕地有効面積を増加させ、建設用地を集約して、都市と農村の用地の配置を更に合理的にする」です。

     もってまわった言い方をしていますが、肝心な点は、「新旧の区画を1組にして、古いものを壊して新しいものにするプロジェクト」であり、あからさまに言ってしまえば、国土省が土地不足の中で、地方政府の便宜(新たな財源探し)のために「土地探し」してやる、ということです。

     つまり建設用地の指標を苦心して融通を効かせた一種の便法です。多くの地方政府は僻地の農村を整理して、もともと食料など全然生産出来ない劣悪な荒地を「耕地を増やした」と称して、経済発展した都市や町にお金を出させて買わせ、不動産開発用地を拡大しました。政府部門間のこううした大ウソで固めた数字ゲームの実質は、つまり国土省の土地整理センター副主任の鄖文聚が言う通り、「各地からの用地に関する圧力と多くの予想し難いファクターに対応するための、指標を大掛かりにやりくりする国土省の策略」だったのです。

    「都市農村建設用地の増減バランス管理方法」が開いた政策的なルートを通じて、全国各地では土地財政が原動力となって、大々的な「農村消滅運動」が展開され、20省以上で、1千年以上続いてきた無数の村落が、数年の間に、あの広大な中国から次々に消え失せてしまいました。各地方政府は一つの共同目標がありました。それは「農民の宅地を再生調査し、耕地を増やしたことにして、都市建設用地にしてしまう」でした。

     この「村を壊して集団居住区にする」大波の席巻する中、無数の農民が「無理やり集団居住地域に入居」させられました。この時期、全国のメディアは次々に各地で大規模に村が集団居住化させられる「農村消滅運動」において、農民がその運動の中で、数々の政府からの暴行を受けたことを暴露しました。

     一体どれほどの農村が消滅させられたか、ネットで調べてみましたが、詳しいデータは得られませんでした。「百度」サイトには「農村消滅運動」では二つの項目がありましたが、通り一遍で意味よくわからないものでした。広範に引用されているのは山東省の一地域のデータで、行政村が全部廃止されて、数千の自然村落、1249の行政村が208に統一されて、70万人の農民が、これまで代々住んできた土地を追われ、団地に入れられたことでした。

     2008年5月末、国土省は9の調査グループが24の「増減リンク」させた省を、緊急調査したところ、少なからぬ問題が見つかりました。1996年、中国の耕地面積は、19.51億ムーだったのが、11年間で1.25億ムー減っていたのでした。これは河南省のすべての耕地面積以上で、全国の一人当たり耕地面積は1.59ムーから1.39ムーに減りました。こんなにすごい減り方では、中国の耕地は中国人を食わせていけるのか? という懸念が広がり、2008年以後、当局は土地整理、開発、再開発、新耕地面積の増加はそれぞれ単独更新してはならない、ということにした途端に、土地総面積は突然、増加しました。しかし、こうした数字ゲームには、ここでは付き合っていられません。

     ★偽りの都市化の結果、不動産バブルは農民を遊民に変えた

     地方財政の必要上から、農民を無理やり「都市化」させたのは、ラテンアメリカで出現した「偽りの都市化」です。この種の事実がもたらす結果は以下のようなものです。

     ① 安定した就職先と収入は、本来世界各国の農村人口が都市に向かう前提条件です。しかし、中国の偽りの都市化はこの条件がありませんから、大量の農村人口が新たに建設された都市居住区に来ても、就職先が無く、余剰労働力になってしまい、生活はお先真っ暗です。不動産ブームの時には、農村の余剰生産力は、大量に不動産業、特に建設業に流れ込み、(2007年には3133万人、2009年には3900万人で、当時の農民工の17.3%)、この問題は大したことないように見えますが、不動産ブームが去ると、農民工は大量失業します。

     ② 不動産の高度なバブル化。2018年12月、西南財経大学の中国家庭記入調査と研究センターが出した「2017年中国とし住宅空き家分析」によると、中国の2、3線級都市の空き家率は22.2%と21.8%で、1線級都市の16.8%を超えていました。あらゆる住宅のうちで、貸しアパートの空き家率がトップで、増加傾向にあり26.6%に達しました。江蘇省、貴州省、四川省、遼寧省、山東省などの一部の省や市では補助金を出して、農民に住宅を購入させようとしましたが、成果は上がりませんでした。

     ③ 現在、農村戸籍には重要な福祉措置が付いており、8割の農民は農村戸籍を放棄したがりません。その福祉措置とは、耕地の請負工作権利、宅地の権利、住宅建設の権利です。こうした福祉の権利は、都市や近郊の農民の土地と引き換えの巨大な利益となり得るのです。沿海地方の発展した地域や大小の都市や郊外の農村戸籍の持つ潜在的な利益は、はるかに都市戸籍を超えるものがあるのです。

     これは、今回の新たな「下方運動」が上手くいかない理由の一つです。都市の青年が農村に赴いたところで、こうした利益は何一つ得られないのですから。(原著者の日本人向け説明;中国では土地は国家所有で、農民は耕作権を持つだけだが、期限は無い。農民は自宅を建てる土地を無料で得る権利がある。建てた住宅も無期限に使用できる。都市住民の都市使用権は70年)

     今、中国の都市化率がまだ59.58%ですが、もう「農村に行こう」(主に農民工を元の居住地に戻す、という意味)で、逆都市化が起こっているのは、かっての偽の都市化の逆襲と言えます。もし、中国経済が引き続き下降していくと習えば、製造業が短期間に繁栄を取り戻すことはないでしょうし、そうした状況がかなりの間続くでしょう。

     共青団中央が「農村振興戦略」」で提起した「文化、科学、衛生」を重んじる「三つの課題を農村へ」という方針が、「新たな下放運動」だと大騒ぎになったのは、つまりは国民が下放運動に対して、痛苦に満ちた集団記憶を持っているからであり、都市の失業現象が深刻で、農民工を村に戻す政策や、習近平の毛沢東崇拝への民衆の気持ちを利用した政策名など、各種の政治、社会的要素の入り混じったことなのです。(終わり)

     原文は;何清涟:“到农村去”与农民拒绝进城——虚假城市化的反噬(2)2019-04-16 

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    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

     

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