• 程暁農 ★米国に挑戦する中国軍事戦略の意図  2019年6月10日

    by  • June 11, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

     最近、  中共の宣伝部門メディアは、  「二十数年以内に米国に匹敵する航空母艦艦隊を建造する」と宣伝を始めた。  軍部は「軍事崛起(勃興)」を求め、  その背後にある中国当局の覇権への意図もハッキリと見えてきた。 

     しかし、  これは一種の時代遅れの軍事的進歩を追求することで、  古い海軍戦略の考え方に沿ったものだ。  「軍事崛起」の最大の障害は、  実は財政困難である。  この「軍事的崛起」のスローガンは、  最終的には中国国内の民族主義の政治的動員に”燃料”を供給するだけの話だろう。 

     ★三つの新観点

     米・中貿易交渉が物別れになった後の6月6日、  中共の米華字外部宣伝メディア「多維ニュースネット」傘下の国外発行メディア月刊「多維CN」に「中国の第三の航空母艦が登場。  北京の軍事的崛起が一層明確に」が掲載された。 

     米・中貿易戦争の是非を巡って、  米国非難の大合唱が起きている。  しかし、  この記事は明らかそれとは異なる新たな論調だ。  そこには三つの新たな観点がある。  どれもこの一年以上の間、  ほとんど見られなかったもので、  熟慮検討に値する。 

     観点① 「軍事崛起」

     以前、  中国が「崛起」という言葉を使ったのは主に経済分野だった。  そして米・中貿易交渉期間中には、  ムードを和らげるために、  基本的に「崛起」という言葉の使用は停止されてた。 

     今回、  また「崛起」が登場したのは、  過去の経済的スローガンではなく、  「軍事崛起」を誇示しようとする高姿勢だ。 

     一般に、  米・中防疫交渉が失敗したあと、  米国は関税を大幅に上げ、  中国経済にかなりの影響をもたらすと見られている。  李克强首相も中国国内に向けては、  「厳しい日々」になると言明。  こうした背景の下で、  官製メディアが「軍事崛起」を盛り上げるのは、  必ずしも「大げさな話で驚かせる」ためだけではないだろう。 

     観点② 六つ以上の航空母艦群。 

     記事には、  中国の空母建造計画によれば「21世紀中頃までに世界の軍事強国に肩を並べるように、  6から10の空母艦隊を編成する」とある。 

     空母戦闘群というのは、  空母を核心とした遠洋戦闘用艦隊群であって、  一つの空母群は、  航空母艦、  大型の護衛艦隊、  潜水艦、  燃料補給艦、  攻撃機や警戒機、  電子戦用航空機などを含む艦載機を含む。  このような多くの戦闘群を持つのは、  現在、  世界中で米国だけだ。  つまり、  中共は海軍を米軍と同規模まで拡張する計画なのだ。 
     
     観点③ 東南アジア諸国の「新整列」

     この記事は、  「南海諸国は近代の植民地戦争と2度の世界大戦を経て、  中国に安全を頼ることから完全に離脱して、  米国に向いている」。  しかし、  今、  「中国が力を示すこと」によって否応無しに、  現実に基づいて、  心理的に再適応せざるを得ない、  と書いている。  つまり、  東南アジア諸国に、  「立ち位置を改めよ」と警告しているのだ。 

     ★流行遅れの軍事の進歩と、  思想の古さ

     多くの航空母艦群の大規模な海と空の戦いは、  太平洋戦争に始まり、  日本の連合艦隊の消滅という形で終わった。  米国の空母戦闘群はそのまま、  今日まで運用されてきた。 

     しかし、  その間、  米国空母の軍事的役割は、  重大な変化を遂げた。  主に遠距離の外国地上軍事目標と、  空中の標的に対しての航空兵力の攻撃起点となったのだ。 

     この変化は、  世界中に空母の大艦隊を持って挑戦する国がないから、  というだけでなく、  現代兵器と電子戦によって、  航空母艦の大規模戦における効果と威力が大幅に低下したからだ。 

     空中の遠距離攻撃、  潜水艦の水中からの攻撃、  水上の艦隊からの多種にわたるミサイルの脅威の下で、  空母は容易に標的にされやすくなった。  もはや、  艦載戦闘爆撃機が空母を攻撃する時代ではない。  航空母艦の安全性は、  電子戦の能力に大きく依存している。 

     第2次世界大戦後、  米国は国際的安全維持の責任を引き受けてきた。  冷静時代からポスト冷戦時代の中東における数々の危機の脅威に対して、  米国は、  ずっと空母戦闘群とミサイル兵器の伝統を維持してきた。 

     米国がこの任務を受け持っていたから、  英国やフランス、  ロシアなどの海軍は、  大規模な空母戦闘群を持とうとせず、  限定的な小規模な空母部隊を持つだけとなった。 

     大規模な空母艦隊群の費用は、  当然大変なものだ。  英、  仏、  露が尻込みする理由だった。  国家の実力がどうあろうと、  もし常に遠距離の外地へ、  高度な海軍や航空兵力などを投入する必要がなければ、  小規模な象徴的な空母戦力で十分なのだ。 

     だから、  中国が今後20年に6〜10の空母戦闘群を建設するというのは、  まるで時代遅れの軍事的な進歩を求めているようなものだ。  大胆な考えのようだが、  古臭い海戦戦略思想にのっとったものだ。 

     太平洋戦争前に、  日本は米国海軍の空母戦闘群を超えた時期があった。  その目的は米軍の太平洋艦隊をやっつけ、  太平洋の制海権を奪い取るためだった。 

     しかし、  第2次世界大戦から70年以上たっている。  ソロモン沖海戦、  マリアナ沖海戦といった空母の戦いは、  すでに歴史の中に過ぎ去った。  現在の武器や電子戦によって否定されてしまったのだ。 

     太平洋戦争に日本海軍が米軍に敗れた原因は、  国力の差だったとすれば、  今後、  もし空母戦闘群の戦いがあるとすれば、  ハイテク面でリードした側が勝利するだろう。 

     中国の空母群の運用、  空母戦に関連する技術は、  米国やウクライナからではなく、  日本の太平洋戦争期間の軍事的研究から得たもの。  ただの机上の知識であって、  現実離れしている。  明らかに、  米国海軍の方が、  中国の空母戦闘群より、  大きく優位に立っている。 

     ★ 中共の軍事戦略の意図は何処に?

     中国の空母建設計画は、  その実、  一種の遠い未来予想のようなもので、  現実離れしている。 

     現在、  中国の空母は依然として、  基本訓練の段階だし、  設備、  条件も遠洋長距離の運行能力を持っていない。 

     マレーシア向けに発行されている香港紙「亜洲時報」の6月5日報道によれば、  中共の初の国産空母「001A型」の、  最大燃料積載量は1万3千トンで、  巡航速度20海里(時速37km)で航海すると、  毎日1100トンの燃料を消費する。  もし臨戦態勢なら、  さらに1日当たり400トン必要となる。 

     臨戦態勢とは、  空中訓練や作戦、  艦載機の離着陸で、  この時、  空母は十分な向かい風を得るために全速力が必要だという。  この他、  艦載機や護衛駆逐艦などへの燃料も必要となる。 

     だから、  この燃料が極めて限られた状況で、  空母戦闘群を運用するとなると、  4日で必ず補給に戻らねばならない。  となると現実的な活動空間は、  南海海域であって、  東太平洋やインド洋ではない。 

     もし、  中共が国内支出を圧縮し、  国を傾けるほどの金をつぎ込んで空母戦闘群を建造し、  艦船の乗務員やパイロットらを訓練できたとしても、  海軍の遠洋航海戦略には、  まだ肝心な弱点が存在する。 

     そんなものすごい空母戦闘群と兵力を、  何処に派遣するのか?である。  明らかに、  南海海域だけなら、  そんな馬鹿でかい空母艦隊はいらない。 

     では、  インド洋? 地中海? 太平洋? なのか? その戦略目標は一体何か? タンカーの輸送安全確保、  などという理由だけでは意味をなさない。  なぜなら、  中東から太平洋沿岸には、  商船を脅かすような東南アジアの国家もなく、  中東国家も空母戦闘群など持ってはいないのだから。 

     唯一、  想像できるのは、  中共は空母戦闘群を米国海軍と同規模にして、  米国空母戦闘群と対戦するというのが中長期の戦略目標だった場合だ。  この目標があってこそ、  このような膨大な空母戦闘群が必要なのだ。 

     この空母建造計画は明らかに、  今年の5月に米・中会談が決裂してから作られたものではなく、  数年前から開始されていたものだ。 

     であるならば、  オバマ前大統領時代の、  米・中関係がパンダ派(親中国派)の主導下にあった時代に、  中共は、  将来、  米国海軍との決戦を画策していたということになる。  つまり、  米国政府が中国にどのような態度をとろうとも、  米国との決戦は中共の長期的な既定方針だったということだ。 

     こうした方針は、  真珠湾攻撃前の日本の連合艦隊が、  対米戦に備えていたことを想起させずにいられない。  米国は、  太平洋戦争の初期に、  受け身に立たされたことがあり、  かつ日本軍に勝つのは容易ではなかった。  こうした戦争体験の記憶は、  似たような挑戦の意図に対しては、  十分警戒せざるを得なくさせるだろう。 

     空母戦闘群が戦争時でも、  戦術面でも時代遅れであることを考えれば、  また中国が新たに空母戦闘群を建造しても、  優勢になりえないことを考えれば、  膨大な費用を使って空母戦闘群を建造する計画には、  一体どんな現実的な意味があるのか? 

     歴史を顧みれば、  そのヒントがある。  つまり、  海軍の指導者たちは、  軍事費を増やし、  編成を拡大し、  昇進のチャンスを増やすために、  常に敵を作り出し、  非現実的な戦略目標を立てたがるものなのだ。  日本がまさにこうして戦争への道を歩み、  最後には敗戦を喫した。 

     「軍事崛起」というのは、  中国軍人世界の夢想だ。  戦略上、  できようができまいが、  適切だろうが不適切だろうが、  どうでもいいのだ。  そして、  「軍事崛起」の背景には、  当局の支配権掌握への意図があからさまに示されている。 

     しかしながら、  中国経済が下降状態にあり、  繁栄回復が大変難しい時期に、  「軍事崛起」の最大の障害は、  実は財政の苦境なのだ。 

     最後に、  「軍事崛起」のスローガンができることといえば、  ただ国内の民族主義を煽り、  政治的動員に燃料を供給することであり、  同時に、  周辺各国の注目と警戒心をかき立てることだ。 

     果たして本当に「崛起」が可能かについては、  民族主義的宣伝が大好きな連中とっては、  結果にも、  その結果が招く事態にも、  大した関心は無いのである。 

     原文は;程晓农:挑战美国——中国的军事战略意图

    中国 何清漣
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