• ★香港のデモは台湾への警鐘  2019年06月12日

    by  • June 12, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

    6月9日に起きた香港の「逃亡犯条例改正案」に反対する大規模デモ(主催者発表103万人、 警察発表24万人)は、 2003年7月1日の50万人規模とも言われる香港特別行政長官及び立法会議員の選挙方法の民主化要求デモ(訳注1)以来、 最大の民意の表明となりました。 

     米国、 カナダ、 オーストラリアなど12カ国29都市がデモ支持を表明しました。 ところが、 今や中共の浸透危機下にある台湾では、 台北でわずか400人の人々の集会があっただけで、 がっかりさせられました。 

     ★香港人は何が心配なのか

     香港社会各界や欧米の政府が心配しているのは、 この「逃亡犯条例改正案」がいったん通過すると、 香港にいるどんな人でも、 中国大陸に連行される危険があるからです。 

     香港政府がいかに、 連行には法廷という関門がある、 死刑や政治関係の罪状では容疑者が連行されることはない、 と言ったところで、 香港各界の懸念を解消することはできません。 

     この懸念は、 もともと香港人の北京政府に対する深い不信から生まれています。 不信が育った原因は、 まさに中国政府が長年やってきた結果がしからしめたところです。 

     香港の中国復帰後、 鄧小平がかつて述べた「一国二制度」、 「50年間制度不変」の約束は、 どんどん破られ、 香港人の北京に対する不信は日増しに強くなってきました。 

     北京政府にとってみれば、 今回の「逃亡犯条例改正案反対デモ」とこれまでのデモとの最大の違いは、 参加者の中に少なからぬ実業界、 法曹界人士がいることです。 

     彼らは既成の体制保守派と密接な関係を持ち、 香港の安定の基礎だった人たちです。 それが、 今回は反対しています。 この条例の中に危険な臭いを嗅ぎつけたからです。 

     修正後の「逃亡犯条例改正案」では、 多くのビジネス犯罪の引き渡しは取り消しになりました。 しかし、 汚職や密輸、 詐欺などの罪名は依然として引き渡しの条件となっています。 

     余継標・香港中小企業連合会会長は、 BBCの取材に、 香港ビジネス界の懸念は主としてこうだと言いました。 

     :「香港人が大陸に投資して、 中国の『隠れたルール』に従って役人の子女を海外留学に送り出すといったことも含めて『お礼』をすることも罪になる危険がある。 また、 現在、 香港ビジネスマンが投資して購入した不動産が大幅に値上がりしている。 もし中国国内で政治的つながりのある不動産開発業者に目をつけて、 安く購入したいと思えば、 関係する検察や裁判所と組んでやる事もある。 それが、 我々にとっては、 拘束されて大陸に連行される腐敗罪といった名目に簡単になってしまう」と。 

     メディア業界が心配しているのは、 白色テロル(訳注2)です。 この種のテロはとっくに存在しています。 江沢民時期から、 政治罪を非政治的な(刑法罪)の罪名にして弾圧しています。 

     香港の出版社に被せられる罪名は常に「違法経営」でした。 
    多くの大陸では禁書となっている出版物を出していた香港の晨鐘出版の姚文田は、 深圳で「密輸罪」の名前で懲役10年の刑を言い渡されました。 2012年1月に米国に亡命した作家・余傑の「中国のゴッドファーザー・習近平」の出版を準備していたからです。 

     香港の政治雑誌の創設者で香港市民でもある王健民は「違法出版物経営」「贈賄」「入札共謀」の容疑で2016年、 懲役5年3カ月を言い渡されました。 その拘禁期間中、 雑誌への寄稿者と情報源を明らかにするように強要されました。 

     香港の英国政府が残した最大の政治遺産は法治でした。 一国二制度の主要な違いも法治です。 香港は復帰後、 22回の春秋を経ましたが、 香港人は皆、 一国二制度の境界は次第にあいまいにされてきたと感じており、 法治制度は最後の防衛ラインだと見なされています。 

     しかし、 法曹界ではとっくに、 法治は大陸の政治によって侵食されたという心配があります。 中国側の人民代表大会組織が法を解釈する権限や、 両国による国境検査が、 香港の法治を破壊していることは、 とっくに香港法曹界では批判の焦点となってきました。 

     2014年に始まった一連の社会運動の衝突が引き起こした、 香港の青年リーダー黄之峰らの政府本部との衝突や、 反新界東北発展デモ隊の立法議会への衝突。 モンコック(旺角)騒乱で青年新政議員による議会突入などで、 社会運動家が数十人逮捕されたこと。 香港独立社会運動のリーダー、 梁天琦らオキュパイ・セントラル運動(訳注3)の運動家9人が判決を受けた事件(佔中九子案)などは、 すべて香港の法治を踏みにじるものだと見られています。 

     ですから、 香港人は法律そのものに憂慮しているというより、 むしろ法の執行過程における勝手な解釈と執行を懸念しているのです。 これはまさに中国の法の執行における特徴です。 香港人は身にしみています。 

     香港が復帰して以来、 一国二制度の枠組みの下で、 香港人は民主のために努力し戦ってきましたが、 全く成果がなかったばかりか、 元々あった出版や言論の自由も次第に失われてきました。 

     それは香港人が頑張らなかったからではありません。 実際、 香港人は長年、 ずっと戦い、 努力してきたのです。 しかし、 一国二制度では中央政府に香港に対する管制権を与えてしまったために、 何かできる余地がどんどん少なくなってきたのです。 

     しかし、 今、 一国二制度の脅威を正面から受けている台湾は、 香港とは違います。 

     ★香港は台湾への教訓

     台北では、 現地の香港支援者集会には400人しか参加しなかったと言われますが、 台湾政界の、 とりわけ来年、 総統選挙に出馬しようという人々は次々に香港の反対運動に対する見解を表明しました。 

     蔡英文総統は、 二度にわたって、 香港は一国二制度の下にあるのだから、 自由であることは当然のこと。 台湾も深くこれを警戒して見つめなければならないと述べました。 行政院長(首相)の頼清徳は、 取材に対して台湾人は、 決して中共にいかなる幻想も持ってはならない、 としました。 

     一方、 高雄市の韓国瑜市長は、 メディアに「はっきりしないし、 知らない」と答えて、 批判を浴びました。 翌々日には、 韓国瑜は別に声明を発表し、 「台湾の民主と人民は自信に満ちており、 大多数の台湾民衆は、 皆香港の一国二制度が成功しようが失敗しようが、 台湾には適用されないと思っている」と言い直しました。 

     5月に訪台した時、 私は何度も、 香港の今日は、 台湾の明日である、 と話しました。 

     しかし、 香港が台湾と違うのは、 香港人は現在まだ剥奪されていない集会の自由、 言論の自由を使って自分たちの怒り、 訴えを表明しても、 香港政府から返答を得られないことです。 それは、 香港政府の権力の由来が民選ではなく、 北京から指名されているからです。 

     権力はただ権力の源に対してしか責任を負いません。 香港特区の政府は、 香港を守る責任を持ちようがないのです。 

     台湾の状況は違います。 

     台湾は独立した政治の実態を持ち、 総統と市長、 立法委員は全て選挙によって選ばれます。 自分たちの外交、 軍事システムを持ち、 中共が武力で台湾侵攻をしない限り、 台湾人は、 様々な方法で民主主義制度を守ることができます。 

     例えば、 来年の総統選挙で、 台湾人民は、 自分たちの一票を使って、 台湾の政治的安全を守ろうとする総統を選ぶことができます。 

     こうして選ばれた総統は、 必ずや北京に平伏せずに、 心から台湾を熱愛し、 台湾の安全を心にかけるでしょう。 

     香港人は、 選挙権がなかったために、 今日のような状況になったのです。 香港人民の責任ではありません。 世界は、 香港人の長年にわたる努力と戦いの証人です。 

     しかし、 もし台湾人が目先の利益、 例えば観光客種運輸だとか農産物の購入だとか、 大陸の台湾投資がもたらす就職先の増加などに釣られて、 北京シンパの候補を選ぶようなことになれば、 台湾が第二の香港になることは免れないでしょう。 

     その人物の心が、 北京にあるかどうかの基準は大変簡単です。 聖書にあるように、 その財産がどこにあるかが、 その心の在りかを示します。 政治上、 北京に頼って生きているか、 財産が北京のお世話になったものか、 そのような人は北京と向き合って、 台湾の安全を守る交渉などできないでしょう。 

     なぜそんなに台湾に関心があるのか? と聞かれますが、 それは、 今の北京の全体主義政権を、 私は心から憎むからです。 

     今日の行政の干渉下にある市場経済の中国モデルの全体主義は、 つまり私が「中國:潰而不崩」(程曉農共著,八旗文化,2017年、 邦訳「中国 —膿み潰れても崩壊せず」)の中で書いた共産党資本主義です。 すでに14億の中国人の暮らしは、 極めて不自由な状態のまま、 基本的人権の保障もありません。 

     民主国家の三要素の自由、 民主、 法治は、 世界の4つの中国人が主体となる国家と地域のうちではこうです。 

     香港は自由、 法治はありますが民主はありません。 シンガポールは民主(選挙)、 法治がありますが、 自由はありません。 中国本土は民主も無ければ、 法治も、 自由もありません。 ただ台湾だけが、 民主、 自由、 法治を持っています。 

     台湾は、 中国系の人々が中心になっている国家です。 唯一、 自由、 民主、 法治を享受する台湾がダメになるようなことになって欲しくないのです。 (終わり)

    訳注1;返還後6年目に起きた国家安全条例反対デモ。 最終的に香港政府は白紙撤回
    訳注2;政府、 権力側によるテロ=政治弾圧
    訳注3;2014香港反政府デモ。 雨傘革命とも呼ばれる。 2014年9月。 米国の「ウォール街を占拠せよ」にならって「和平佔中」(『セントラルを平和的に占拠せよ』、 Occupy Central)の意味。 

    原文は;香港反送中大游行对台湾的警示 

    中国 何清漣

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