• ★ ★北京の香港問題で一時的軟化の理由 2019年06月15日

    by  • June 15, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

     香港情勢は、 ついに緊張が緩和される動きがありました。 6月12、 13日の二日で、 中共は、 二つの「はしご」をかけて、 北京と香港政府のデスカレートを図っています。 

     ★北京と香港用の「デスカレートはしご」

     第一の「はしご」は、 中国の劉曉明駐英大使がかけました。 12日、 英国放送協会(BBC)の取材に答えてこうい言いました。 

    :「中央から香港に今回の『逃亡犯条例改正案』を指示したことはなく、 今回の改正は香港政府の自発的なものだ」。 

     近年、 何か大事件があると、 この劉大使が英国のメディアの取材に答える形で「個人の意見」を述べます。 

     例えば、 2018年のG20ブエノスアイレス・サミット(11月30日〜12月1日)の前夜もそうでした。 英国の雑誌に劉大使が署名付きで「米国が中距離核戦力全廃条約から脱退するのは間違った決定」なる一文を掲載したことなどです。 

     どこの国の外交官だって、 「私人」の資格で自分の見解を公表したりしないことは、 誰にでもわかります。 

     私は、 劉大使の文章を読む時は正論か否かではなく、 中国政府の風向きを見ることにしています。 今回の劉大使発言は、 重点が香港政府の擁護に置かれておらず、 「中央は香港に改正案を指示したことがない」という点にありました。 明らかに、 今回のトラブルは、 香港政府自身が招いたもので、 中央政府は無関係だ、 と言いたいのです。 

     第二の「はしご」は、 香港政府が自分でかけました。 香港特別行政区の張建宗(マシュー・チュン)政務司長(Chief Secretary 香港政府のナンバー2)は、 13日「Now新闻台」の単独取材に対してこう答えました。 

     ;「香港政府のトップレベルは立法議会の金鐘(アドミラルティ)におけるデモ隊の強制排除での暴動とゴム弾の発射には関係しておらず、 警察が現場の状況に応じて決めたこと」と言うのです。 

     この話は半分は本当で、 半分はうそです。 うそというのは、 林鄭月娥・香港特区行政長官が、 この衝突を明らかに「暴動」と位置づけているのに、 張建宗自身はノータッチだったと言い張る点です。 林鄭月娥・行政長官が「トップレベル」ではない、 とでも言うのでしょうか?

     半分の真実とは、 警察が誰の指揮で動いているのかがはっきりしないという点です。 香港駐在の中共の部隊は、 深圳に駐留して日常的に広東語を学んでいます。 香港警察の制服を着てしまえば、 判別がつきません。 ネット上では、 警察バッジの番号も偽物だったという情報があります。 「HK-妮珂(新号)@Hk60740379Hk」名のツイッターが、 多くの写真を掲載して報じています。 

     「はしご」がかかれば、 降りられます。 張建宗は「改正案を撤回するのか?」という質問に対して、 「評決の延期、 延長であって、 撤回ではないと」と答えました。 

     しかし、 「審議にかける時間は立法議会議長の梁君彦が決定し、 政府はそれを尊重すると」とも言いました。 梁君彦は当然、 近日中に再審議などできっこありません。 それに、 「中央からの指示ではない」と言われたわけです。 立法議会議長ですから、 その程度のことはわきまえています。 

     ★中共の親分としての習近平のそろばん勘定

     香港情勢に対して、 習近平国家主席は事の利害得失を計算したでしょう。 香港情勢に関しては、 台湾と米国の出方を考慮せざるを得ないからです。 

     世界では、 習近平の暴君ぶりを喜んで報じています。 ニューヨーク・タイムズ紙は「またしても横暴な横車を押す習近平」といった見出しの記事を載せています。 しかし、 20年以上の政治闘争を勝ち抜いてゴールし、 党内、 軍内部の政敵を倒してきた男が、 「横暴な横車」だけでやってこれたはずはありません。 

     話を本題に戻します。 劉駐英大使は、 香港が勝手にやったとしていますが、 政治を少しでもご存知の人なら、 香港、 台湾に関わるどんな動きだって、 中南海の支配者・習近平が関わっているぐらいは知ってます。 習近平が今回の香港騒動で採った措置は、 いかなる判断からかを考えてみましょう。 

     ⑴ 台湾の「望ましい情勢」をダメにできない

     蔡英文総統のここ数年の執政は、 確かに台湾の各方面の不満を引き起こしました。 2018年の台湾での最大の党派は「民主進歩(民進)党を懲らしめよう」という民意でした(訳注;2018年11月の統一地方選挙では国民党に大敗した)。 

     民進党の内部ですら、 蔡英文の総統2期目出馬には、 前行政院長(首相)の頼清徳のチャレンジを受けています。 まさにこの時に際し、 中共が歓迎する韓国瑜(野党・国民党、 高雄市長)が登場しました。 

     当然、 中共は韓国瑜を助けようとし、 韓国瑜もこれを受け入れました。 ちょっと前には40万人が応援する勢いがありました。 一見したところ、 中共にとって親北京派を台湾の政権につかせることが出来そうな情勢だったのでした。 

     台湾の親中国勢力以外の人々が心を痛めている、 まさにこの時期に、 香港政府は、 「逃亡犯条例改正案」に反対する人々を殺傷して鎮圧したのでした。 それは、 かっての「雨傘革命」と呼ばれたオキュパイ・セントラル運動(2014年香港反政府デモ)の時と同じ結果をもたらしました。 

     民進党が6月13日に行った2020総統選の予備選の結果は、 蔡英文総統が、 民進党代表に向け、 8%の小差で頼清徳に勝利しました。 

     民進党主席(代表)の卓栄泰ですら、 「あるいは、 これは歴史的宿命なのかもしれない。 香港市民が自分たちの力と使命を勇敢に行使して、 次の世代に負担をかけまいとしているように。 民進党も長い曲折を経て候補者を生み出したのだ」と語っています。 

     ⑵米国の制裁を考慮

     今回、 米国の香港の情勢に対する非難は、 素早くはありませんでした。 西側のメディアは間接的に非難しています。 

     6月12日、 ホワイトハウスの記者会見で、 香港の大規模デモについて問われたトランプ米大統領は、 「本当に大規模な、 百万人のデモか…見たことがない。 」と言っただけ。 さらに聞かれると、 ただ「中国と香港が、 あらゆる事態を解決することを期待するし、 信じている」とだけ答えました。 

     多くの人が、 トランプ大統領が人権に関して関心を示さないことを非難しました。 でも、 私は、 トランプ大統領は賢かったと思います。 「百万人のデモ」に、 彼は習近平の苦境を見たでしょうし、 チャンスを見て、 中国に実質的な制裁を加えるだろうと思います。 

     米国はこれまで、 香港の特別関税地域の地位を取り消そうという論議をしてきました。 が、 香港側から少なからぬ反対を受けました。 しかし、 今回、 香港政府が「逃亡犯条例改正案」反対デモを鎮圧したことで、 ついにこの提案は、 自然と成立することになりました。 

     6月13日、 米国の上下院の両党議員が、 改めて、 「2019年香港の人権・民主主義法」を提出しました。 これは、 香港が十分な自治の基準を享受しているかを、 毎年米国政府が調査するというものです。 そして、 その結果、 香港への特殊な待遇を続けるべきかどうかを決定し、 権利を侵害した役人には制裁を加えるというものです。 

     これは1992年に米国議会を通過した「米国・香港政策法」に基づきます。 香港の主権が1997年に英国から中国に移行以後も、 香港の独立関税区の地位を承認するものです。 

     香港のこの地位は、 中国大陸の貿易輸出入に極めて大きな利便を提供してきました。 中国の生産物が品質上の問題や、 別の関税の障害に遭遇した時、 今回の米・中貿易戦の期間中も含めて、 香港が米国輸出迂回ルートとなっていたことは、 大声では言えない秘密でした。 

     もし、 今、 米・中貿易戦争が決着がつかないうちに、 米国がこの制裁措置をとれば、 北京にとっては泣きっ面に蜂です。 

     中国は、 香港問題は内政で、 外国は関与してはならないと言い続けてきました。 しかし、 香港問題は中国の内政ではないことは確かです。 

     まず、 香港の歴史がこの点を決定しています。 「中・英共同声明」(1985年5月27日に批准、 公文を交換、 国連事務局で登録)は今も有効です。 二つ目は、 米国の香港政策法は、 香港に関税面で特別優遇を与えています。 中国はこの待遇を受けている以上、 その監督を受けなければいけません。 

     これまで米国は、 監督をしていませんでしたが、 それはやる必要がないと思っていたからです。 今や状況が変化しました。 米国側がやると言ったら、 北京はどうしようもないのです。 

     ⑶ 香港政府の暴力がエスカレートしたら習近平の責任になる

     林鄭月娥・行政長官は、 今回骨身を惜しみませんでした。 デモを暴乱と呼び、 香港警察に暴力で鎮圧させました。 1日のうちに150発の催涙弾、 散弾銃からのビーンバッグ弾20発、 ゴム弾など殺傷力の低い武器を使いました。 しかし、 これはオキュパイ・セントラル運動時期よりエスカレートしています。 

     もし、 さらにエスカレートしたら本当に、 香港版の天安門虐殺事件になったでしょう、 しかし、 習近平はその責任を背負いきれません。 30年前の天安門虐殺は、 鄧小平が責任を負いましたが、 改革の功績で得た名声は吹っ飛び、 悪名をはせ、 「天安門の虐殺者」と言われるまでになりました。 

     習近平は、 中共党内で、 鄧小平のように中共建国時の功名手柄はありません。 改革の功績もなく、 更には鄧小平のような度胸も手腕もありません。 国際自由港の香港で、 「天安門事件」を起こして、 その上に今の内憂外患ときては、 実際、 持ちこたえるのは困難です。 

     香港の戦いは、 再び、 「自由は無料ではない」と世界に告げているのです。 

     台湾民進党は二度の危機に出合いました。 そして、 二度とも香港人が北京の暴政に反対したことによって、 台湾を北京の代理人の手に渡してはならないという警告を台湾人に与えてくれたのです。 

     危機はしばらく緩和し、 歴史は一度ならず二度までチャンスを民進党に与えました。 しかし、 三度目はないでしょう。 

     今回の香港の「逃亡犯条例改正案」が与えてくれた政治的転機を無駄にすることなく、 執政の間違いを認め、 今後、 真剣に民生を改善することを約束することこそ勝利への道なのです。 (終わり)

     原文は、 何清涟专栏:北京暂缓香港冲突的政治考量https://www.upmedia.mg/news_info.php?SerialNo=65324

     原文は、何清涟专栏:北京暂缓香港冲突的政治考量

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