• ★米・中交渉の「硬いクルミ」は「残る10%」にある 2019年6月30日

    by  • June 30, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

     大阪G20サミット(第14回20か国・地域首脳会合、  2019年6月28日〜29日)では、  トランプ米大統領と習近平・中国国家主席の会談が、  五つの議題そのものより世界の関心を集めました。 

     最大の成果は、  「G20大阪サミットで米・中の”成果”は期待できるか?」(2019年6月25日)で予測したように、  米・中双方の交渉再開同意でした。  これで参加18カ国は、  ホッと胸をなでおろしました。 

     と言うのは、  少なくとも2020年11月3日の米国大統領選挙前の今後1年間、  米・中貿易戦争がこれ以上の波乱を起こすことはないからです。  米国が果たして目的を達成したか否かは、  交渉の残る10%にかかっていますが、  それはこれらの諸国家の問題ではないのです。 

     ★交渉再開も、  知的財産権は依然として超難問

     大阪サミットの開催される前々夜の6月26日、  ムニューシン米国財務長官は、  中国との貿易協議は90%は達成されていると述べました。  しかし、  今年になってムニューシンがこう言ったのは4度目です。  これまでに彼は、  4月3日、  5月7日、  6月9日に3度、  「90%合意達成」と言っています。 

     これを聞くと、  生徒に渡される予定の通知簿みたいな話に聞こえます、  しかし、  まさにその残る10%が問題なのです。  中国は、  この5月に交渉のテーブルを蹴って、  米国は中国商品に対する2千億ドルの追加課税を発表しました。  これが、  米・中貿易戦争を一層エスカレートさせ、  世界の経済構造を揺るがす脅威となり、  世界各国、  とりわけG20の大部分の国々を震え上がらました。 

     それがどれほど重要なのか? これは「一つの組織の中で、  キーとなる働きをするのは8割ではなく、  2割である」という「パレートの法則」(訳注1)を思い起こせばよろしい。  米・中貿易協議の難所は、  「達成された90%の協議」ではなく、  この残っている10%側にあるのです。 

     2018年の米・中貿易戦争開始以来、  米・中双方は六つの問題について協議達成の努力を続けてきました。  中国政府による技術移転の強制とネット犯罪、  知的財産権窃盗、  サービス分野の市場開放、  通貨、  農業と非関税貿易障壁撤廃です。  知的財産権窃盗問題以外の五つのテーマでは、  ムニューシンは何度も「90%達成」と表明してきています。 

     残る10%とは、  まさに米国が要求している中国側が約束を破った場合に、  米国が新たな関税を課すことも含む米・中双方の「適法事務組織」による実行状況と成果の監視です。  交渉の過程で米側は、  一貫してこの権利を要求してきましたが、  中国側は、  この点では妥協をしませんでした。 

     中国の指導者にしてみれば、  関税増税や経済圧力の強化、  企業破産、  労働者の失業などは、  どれも皆、  国家の宣伝機関を使って米国のせいにできます。  しかし、  もし執行監視事務組織の開設に同意しようものなら、  それは指導者の主権喪失、  国恥国辱ものの政治責任を朝野から問われることになるのです。 

     アジアには、  かつて西側諸国の植民地とされた歴史があります。  日本も中国も韓国なども、  そうした歴史を体験しています。  第2次大戦後の世界の民族解放運動の中で、  植民地からの独立は、  アジア、  アフリカ、  ラテンアメリカの国家の独立の象徴とされています。 

     1997年、  アジアに吹き荒れた金融危機の嵐が韓国経済を深刻な通貨危機に追い込みました。  当時、  韓国の外貨準備高は情けなくも39億米ドルだったのでした。  この難関を乗り越えるえるために、  政府は同年11月、  国際通貨基金(IMF)に550億ドルの緊急借款援助を求めました。 

     その代償は、  韓国の経済政策は、  IMFの厳しい監督と干渉の下に置かれ。  以後、  韓国はIMF時代となりました。  韓国人はこれを大きな国辱とし、  以後、  4年間に改革に努め、  民間では義援金活動まで行われて、  必死になって早期返済に励んだのでした。  2001年8月23日に、  韓国政府はIMFに最後の1.4億ドルの借款を返済し、  IMF時代に決別した時、  時の金大中大統領の声望は、  真昼の太陽のように高まったのでした。 

     韓国の当時の国際的地位は、  台湾、  香港、  シンガポールと共に「4匹の竜」の一つに過ぎませんでしたが、  それでもIMFの監督に対しての恨みは、  それほど深いものがあったのです。  中国ならなおさらのことです。 

     中国人は、  自国が世界第二の大国で、  米国と雌雄を争う存在だと思っており、  中国政府(中共)は、  自分たちが世界のルールを決める指導的な存在になるべきだと考えています。 

     それなのに、  もし米国の監督下に置かれるとなったら、  まさに袁世凱(中華民国初代大総統)がかつて、  日本から対華21カ条要求を呑まされたと同様に、  国民の目に映るでしょう。  中国政治と中国人の気持ちが分かれば、  習近平がこの点では、  絶対徹底的に頑張るだろうと分かるでしょう。 

     ★米国はなぜ頑張る?

     一言で言えば、  知的財産権の保護は、  米国にとってそれほどまでに重要だからです。  米国企業の競争力と米国が、  国際社会で科学技術の面で指導的な地位に立っていることが、  米国の国力に関わるからです。 

     2016年10月4日に米国商務省は、  米国特許商標局と経済統計管理局の連合名で研究レポート「知的財産権と米国経済2016アップデート」を発表しました。  知的財産の集約型産業が、  米国に少なくとも4500万人の雇用を与え、  産業に6兆ドル以上の貢献をし、  米国GDPの38.2%を占めるという内容です。 

     このレポートでは、  ソフトウェアを含む出版、  録音産業、  ビデオ音響設備製造業、  有線テレビや他の定期購読プログラム、  映画・演劇・芸術企業、  テレビ産業などをふくむ特許権利、  著作権、  商標権などの保護対象となる知的集約型産業を81種類に分類しています。  こうした産業の直接、  間接の関連企業による雇用は、  米国の全産業の3割に当たるとしています。 

     このレポートは、  知的財産権保護が米国にとってどれほど重要かをはっきり示しています。  これがトランプ大統領就任前後に、  何度も繰り返し強調されてきた知的財産権保護の重要性です。  中共が米国の知的財産権を盗むことによってもらたす巨大損失を、  繰り返し非難してきた理由なのです。 

     2017年6月19日、  ピーター・ナバロ・ホワイトハウス通商製造業政策局長の報告で、  中国(中共)の六つの経済侵略戦略が列挙されています。  その第5章「米国国内の多国家による核心技術と知的財産権の獲得について」と、  第6章「未来の経済成長の新ハイテク産業技術および国防工業技術について」では、  詳細に中国の5種類27種の関連政策とやり口を指摘しています。 

     それには、  ① 技術および知的財産権の窃盗、  ネット経由のハッキング ② 脅迫や侵入、  政府統制による強制的技術移転や知的財産権の開示 ③ 経済圧力による技術や知的財産権の移転 ④ 情報収集 ⑤ 国家の資本援助や対外直接投資による技術獲得が書かれています。  このレポートは、  ソフトの偽物や偽ブランド商品によって、  米国は毎年6千億ドルの損失を被っており、  その大部分が中国によるものだとしています。 

     G20大阪サミット初日に、  米国軍事専門ニュースサイトのディフェンス・ワン社が討論会を開きました。  ジョン・デマーズ司法次官補(国家安全保障担当)は、  司法省が扱った開国政府によるネット窃盗事件の9割が中国政府関連の行為だとしています。  そして、  中国が組織的に十分な資金と設備を持って、  上からの命令で行動していることが伺えると指摘。  中国人たちは、  政府の情報機関を使い、  外国政府機関の機密に対するのと同様の技術を使ってビジネス上の秘密を盗み、  自分たちの能力向上に利用している、  と指摘。  参加した多くの米国政府の官僚は、  北京の主導しているネットや知的財産権の窃盗行為は、  ビジネス目的だけではない、  と証言しました。 

     ★知的財産権の争いに関するイデオロギー

     現在、  先進国、  とりわけ米国が技術革新の面で、  ずっと世界のトップを走ってきたことは、  疑う余地がありません。  ですから、  先進国が指導した知的財産権保護は、  企業や個人が、  脳内のアイデアから創造し、  有形の利益を生み出す法的な基礎となったのです。 

     知的生産権保護は、  経済的な影響に対しては、  終始一貫、  発明と創造について奨励し、  新たな創造者の許可なきコピーを禁止しました。  技術マーケットでのストレートな専業化を促進し、  新たな金融投資のプラットフォームを生み出し、  企業合併や買収、  株式新上場によって創業と成長をサポートし、  パテント(特許)によるビジネスモデルを可能にしてきたのです。 

     中国の世界貿易機関(WTO)加入前までは、  世界は、  この知的財産権保護の法律体系を認めていました。  中国だって関連諸条約に署名しているのです。 

     しかし、  世界経済のカードゲームに、  中国という参加者が登場し、  その地位が年を追って向上するにつれて、  このルールはゴムひものように伸びてしまいました。 

     また、  知的財産権保護に対する挑戦には、  もう一つ、  発展途上国の立場にあったグローバリズム左派の大勢力もあります。  彼らは、  発展途上国は、  知的財産権にただ乗りする権利があると考えています。 

     例えば、  一部の反知的財産権保護の立場をとる人々は、  過剰な知的財産権保護は、  創造に悪影響を与え、  競争を阻む存在だと考えます。  彼らは、  知的財産権は、  特許を多く持つ国家が、  貧乏な国家を締め出すためのものであるとしています。  例えばインド(薬品のコピー大国)などがこうした要求を持っています。 

     貿易戦争が始まった頃には、  先進国は、  米国が中国にWTOの条約を守らせることを迫るのを期待していたのです。  しかし、  米国の仕掛けたガラガラポンは、  自国の利益に悪影響を与えると、  最近になって分かってきました。 

     例えば米・メキシコ関係、  米・英関係、  米・ロシア関係などでは、  こうした国々にも皆、  好ましからざる影響が出たのでした。  そこで、  彼らは、  クリントン元大統領時代のように、  米国が全グローバル構造に責任をもって主導するというやりかたに戻ることを熱烈に望んでいるのです。 

     ですから、  中国の知的財産権侵害については、  多くの国々は大して気にもしていません。  オーストラリアのスコット・モリソン首相が、  6月26日シドニーでの公演で、  中国は経済改革を実施し、  現在、  グローバル経済全体を破壊している米・中貿易戦争を終結させ、  不公平な技術移転強制と知的財産研の窃盗は不正だと批判したぐらいでした。 

     トランプ大統領の6月29日の記者会見で、  ある記者が「米・中関係は、  戦略的パートナーかライバルか、  敵か?」と聞きました。  トランプ大統領は、  米・中はお互いに助け合える戦略的パートナーであるべきだと答えました。 

     多くのメディアは、  この「戦略的パートナー」という言葉を大々的に取り上げました。  しかし、  トランプ大統領のこの言葉の前には幾つかの前提となる大事な条件の「もしも」がついていたことは、  無視しました。  「もしも我々が、  最終的に正しい協議をおこなえるなら」「もしも、  北京が開かれた態度をとるなら」とかです。 

     トランプ大統領にとって正しい協議とは、  北京が知的財産権の構造的な窃盗行為をやめることを承諾すること。  つまり、  「米・中交渉の残り10%」です。  この10%は協議では達成できず、  トランプ大統領の第2の任期があれば、  あるいは、  なんとか達成される可能性があるかもしれません。  (終わり)

    訳注1:イタリアの経済学者ビルフレド・パレート(1848〜1923)が唱えた「経済の全体の数値の大部分は、  全体を構成するうちの一部の要素が生み出している」という理論。  80:20の法則、  ばらつきの法則とも言われる。 

    原文は;何清涟:中美谈判桌上的硬核桃:未完成的10%

    中国 何清漣

    中国2018 中国2017 中国2016 中国2015

    これまでの何清漣さんの論評の、翻訳はこちら。過去のものはウィンドウズやMacのサファリでは、句読点が中央配置になります。Macのchromeがおすすめです。なお、「拙速」でやってますので誤字、脱字ご勘弁。(電子本の方は校閲して直してあります。多分w) なお、お気付きの点がございましたらお知らせください。ツイッター → @Minya_J。

    中国 何清漣
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