• 程暁農;米・中交渉の勝ち負けの判定は   2019年7月20日

    by  • July 23, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

     一年以上、米中間で繰り返されてきた交渉と力比べは、経済貿易分野に焦点が当てられてきた。一体、米・中両国の経済状態は、今どうなのか、どちらの経済状態が有利なのかについての判断は、今後の両国関係の動向を占う重要な根拠になる。中共は確かに、経済の下降圧力に直面しているが、独裁専制政権の「経済圧力耐久力」は、はるかに民主国家の政府を上回る。現在、中共は妥協しても抵抗しても似たような結果だと考えており、来年のトランプの大統領選挙での敗北に期待している。米国は、まだ全面的に関税を課してはいないが、既に、間接的な効果は勝ち得ている。米・中交渉で、トランプ大統領は中国の妥協を引き出せなかったが、米・中関係の調整の正当性は證明した。もし、来年再選されたならば、米・中関係の大調整は避けられない。

     (1)中国統計データの謎

     最近、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に掲載された記事ではこのように書かれている。

     「中国経済の成長速度予想は、経済学において最も簡単な仕事だ。なぜならば、その数字はいつも中国政府の目標と合致したものだから。アナリストの最も楽観的な見方は、中国経済の成長速度は、順調に同時平行として処理されるだろう、と言うものだ。最も悲観的な見方は、その数字はまるでデタラメだというものだ。もちろん、完全に反対の言い方も出来て、研究者たちは、中国経済の分析で一番しんどいのは、データが信用できず、本当の情報が完全に公開されていないことだと言っている。この二つの言い方は、同じことを言っている。つまり、中国経済のデータで、一部の数字は政府側が厳しくコントロールして、それが間違っているなどとは言えないのだ」。

     ウォール・ストリート・ジャーナル紙の言う経済成長率は、政府が決めた成長速度を基準とし、厳しくコントロールされたデータだ。政府の目標が常に順調に達成されていることを”証明”するために、発表されるGDP(国内総生産)の成長率は、必ず政府側の目標に合わせなければならない。

    もう一つ、厳しくコントロールされている数値は失業率だ。これは長年、ずっと”凍結”状態だったが、今年、李克强首相が政府工作方奥で失業率の指標を5.5%にアップしたので、政府発表の失業率も0・5%高められた。

    全てがコトロールされた数値というのは、信用度が大変低い。失業率を例にすれば、政府は農村労働力を、全て「有職」と見なしているので、都市で解雇された農民が郷里に戻っても、統計上は「農村で就職した」ことになる。

    また統計局が発表した各分野での総就業人数では、あらゆる業界と「その他」と合わせても、往往にして公表された総就業人数より大幅に低い。つまり、総就業人数の中には、数千万人の「どこでも働いていない」(working no where)人々がいる。政府側発表の総就業人口から、この人々を差し引いて、労働年齢人口を引くと、長年の本当の失業率は、ずっと10%を超えている。

     どうやって、中国経済のデータの信用度を識別するかは、いつも経済専門家の頭痛のタネなのだ。
     

     (2) 中国経済の景気動向

     景気動向の分析というのは、専門性の高い学問であって、そこいらの街角で何人かにインタビューしたり、SNS上で誰かが議論しているのを真に受けたりすると、簡単に判断を間違える。

     経済動態分析には、少なくとも4つの方面からの経験と能力が必要だ。まず経済の変化に内在するルールを理解し、観察対象をうまく選択すること。次に、いかに指標を分析すれば良いかを知っていること。指標を誤用してはならない。そして、各種統計のモデルや定量分析と、ソフトウェアを支えること。最後に、データ変動の背後にある理由を識別出来ること。

     指標の誤用では、過去の経済動態の指標を、将来の動向を解釈するのに使う可能性。経済景気の指標は、概ね3種類で、「先行指標」「一致指標」「遅行指標」がある。「先行指標」は将来の景気や企業業績を見通せる指標で、今後数カ月の経済活動の上下の幅や方向を予想。「一致指標」は景気と同じタイミングで変動することが多い経済指標で、その山と谷の出現時間と経済運営の山、谷の時間は一致。「遅行指標」は景気の変化のあとで、遅れて変化する経済統計を表すもので、過去の経済活動の変化の結果を表し、例えば消費者物価指数がそれだ。

     ここで、二つの先行指標で、米・中両国の現在の経済景気状況を対比させてみよう。まず、生産者価格指数(PPI)。今年6月の中国のPPIと前年同期を比べると、2016年9月以来、初めて停滞が現れている。今年の中国のエネルギーと一部の原料価格ははっきり値上がりしているが、しかし、工業原料と機械設備製品の価格指数は依然として横ばいだ。これは、工業品の市場の需給が衰え、価格が上られなかったことを示している。しかし、今年6月の米国のPPIは、前年同期比で1.7%値上がりしている。これは工業原料と機械設備関係に対する需給が依然として旺盛なことを示している。

     もう一つの先行指標は株価指数。上海指数は過去半年、ずっと低迷。去年末にはここ数年で最低の2,504ポイントで、今年4月19日が最高で3,271ポイント、7月19日が2,924ポイントで今年の最高より10.6%低くなっており、株価の低落は経済が引き続き下降することを示している。しかし米国のダウジョーンズ株価指数は過去2年半、ずっと上昇しており、去年末が23,327ポイントで、今年の7月18日は27,226ポイントと、去年末より16.7%上昇。この上昇の勢いは全世界でも米国だけだ。

     これらの先行指標は、米国経済は今後半年にわたって、依然として良好な状態にあり、中国経済は下降するだろうということを示している。

     (3)中国経済の何が悪いのか?

     いかなる国家も、消費、輸出、投資が経済を引っ張る3頭の馬で、もしこの3頭がつまずけば、経済の下降は必然となる。中共は常に西側諸国に対して、中国は世界の人口大国であり、その購買力は類のない巨大マーケットで、もし外国企業がこのマーケットを軽視するなら、巨大な損失を招くと宣伝している。では、なぜ、中国のこの巨大消費市場は経済の高成長を牽引出来ないのか?

     中国政府の発表した情報だと、2018年の中国消費支出が経済成長に対しての貢献率は76.2%で、今年の第一四半期の貢献率は65.1%、しかし今年上半期のそれは60.1%。つまり、今年の第2四半期の貢献率は55%前後しかなかったということ。わずか半年のうちに、76%から55%に下がった。2割だ。これは、民衆が将来の経済が悪くなると、支出を引き締めたことを十分に説明するもの。この傾向は、今後経済が一層下降することを決定づけている。

     消費の収縮と同時に、今年上半期のは、対米輸出の下降(中国の公表データでは、米国への輸出は2.6%減だが、米国商務省のデータだと、今年1月から5月の米国からの中国輸出金額は12%減だ)、輸出も中国経済を牽引する能力を失っている。

     かくて、中国経済に残されたのは投資だけだ。6月の中国中央銀行の統計による債務と株式有志規模の増加は10.9%で、投じられた資金量は相当なものだ。しかし、上半期の企業の中長期借金は、昨年より2400億元減っている。投資意欲が明らかに不足している。消費の縮小に代わって、投資が実体経済を牽引する期待は、現実的ではない。原因は、企業の現在の借金は、その大半が設備投資ではなく、古い借金を新しい借金で返そうとしているからで、中央銀行の投入した資金は、最後には全て金融圏内で空回りしている。目下、銀行の新たな資金貸し出しの3分の1は、住民の住宅抵当ローンだが、すでに不動産業は目一杯膨らんでおり、大都市の不動産は高過ぎ、2、3線級の年住宅は過剰で、もはやこれ以上拡大出来ない。だから、政府系メディアも、中国経済は、現在「脱実向虚」の軌道上にあるとしているのだ。

     (4)経済下降の圧力が大きくなれば、中共は妥協するか?

     中国経済がパッとしないのは、トランプ大統領が米・中交渉で勝利を収めるチャンスか? この点では、ホワイトハウスは楽観的過ぎる。明らかにトランプは、専制国家の経済政治の特徴を理解していない。彼は、民主国家の政策決定過程で、中共を理解しているから、当然、誤差が生じる。

     独裁政権として、中共の「経済圧力抵抗力」は、はるかに民主国家の政府より強力だ。まず、当局はニュースと出版の自由を奪っており、中国の民衆は十分、国内や国際社会の中国経済の実態に関わる情報を得ていない。そして、官製メディアは常に、悪いことでも良いことのように報道し、民衆を誤導し、彼らの考えや認識をコントロールする。「連中は、中央テレビのニュースの中で生きていたいんだよ。だって、永遠に中国の状況は素晴らしい、米国はいつも災難だらけで、犯罪ばっかりで、大衆は不満、政治は暗黒。それにこのニュースを見るのには、自分の懐は一切痛まないんだから」という冗談がある。

     次に、当局は政治的弾圧で、SNS上であえて真相を伝えようとする人々を弾圧。直接、面と向かって威嚇したり、高校の教師に教室で監視・密告させたり、それに”違反”する教師は教職から追われ、真実を話すことは、中国では「大変危険な行動」となる。これが「模範的な効果」となって、大部分の民衆は社会経済の現実を討論しようとしなくなる。民衆は経済的な苦しさどんどん増えはするが、仲間で交流したり討論したりするパイプがない。

     そして、民衆には政治上の選択がない。中共の下では真実の選挙などないから、投票は役立たずで、不満を公表するすべはなく、当局の政策を変えさせる方法もない。当然、台湾のように、「じゃあ、人を変えてやらせてみるか」とはならないのだ。

     経済圧力を黙って耐え忍ばなければならない民衆には、当局の方針を変えさせる術はない。これが中国の「経済圧力への抵抗力」の根源であり、中共が政治的高姿勢を固く守って揺るぎない理由だ。あらゆる独裁国家は、これまでもそうだった。

     ★ 米・中の勝ち負けをどう見るか?

     大変多くの人々が、今回の米・中交渉の勝ち負けを、トランプが果たして中国商品に全面的に25%の関税をかけるかどうかの一点で見ようとする。あたかもトランプがこの税を課さなければ、中共の勝ち、という感じだ。

     実は、いつこの課税を行おうと、本当の勝負の決め手にはならない。ピーター・ナバロ大統領補佐官(通商担当)が言う通り、米国は2500億ドルの中国商品に25%の関税を課すのは、「交渉を軌道上に保持する保険だり、中国が略奪を続けるのに対する防御で…我々は彼らが知的財産権窃盗を行い、技術移転を強制し、自分たちのマーケットに我々の生産物を入れないようにしているのを知っている。これは、我らが問題としている構造的な問題で、米国だけのためではなく、世界のためであもらう。我らは中国が国際貿易ルールに一致することを望んでいる」だ。

     さらに一歩進めれば、この課税による現実的な目的は、一つには中国の対米輸出を減らすこと。二つには、外国企業を中国から移転させることだ。もしこうした手段を見せるだけで実行せずに、この二つの目標を実現できるなら、それは課税を実際にするよりベターだ。関税引き上げというのは本来直接、間接に二つの効果をもたらす。前者は、実際に課税してはじめて効果を生むが、後者は課税しなくても効果が得られるのだ。

     現在、米国は全面課税を実施しておらず、その直接効果は発生していない。しかし、間接効果は相当にはっきりしている。少なからぬ米国小売企業は大急ぎで中国からの輸入を急いでいるが、中国の対米輸出総額は、すでに減少している。同時に、多くの多国籍企業が危険を避けるために、次々に一部の生産能力の移転を開始している。これはグローバル・チェーンの部分転移であり、中国の輸出をさらに一歩減少させる。

     言葉を変えれば、25%関税の全面実施は「ダモクレスの剣」で、ぶら下がっているだけで、落ちて人を傷つけるのと大して違わない効果を持つのだ。そして、「ぶら下がっている状態」は、多国籍企業にと、全ての生産工場を中国に移転してしまっている米国企業に、一定の時間を与え、彼らが生産チェーンと発注先を、少なくともある程度準備する時間を与えて、損害を少なくさせるという意味を持っている。

     このほか、トランプ大統領は再三、中国に交渉テーブルに戻るように頼んでいるのは、大変低姿勢に北京にお願いしているように見える。実は、この姿勢そのものが、一種の政治的策略だと見なければならない。前回の交渉は、9割がた合意が出来上がっていたのに、中共側が突然、ちゃぶ台返しをしてのけたのは、中共が、これまでの役割を変えたことのメルクマールだ。これについては、「大紀元時報」7月1日に「中国は正式に過去20年間演じてきた国際経済秩序のルール擁護者からルール破り屋に変化」に書いておいた。(未訳、みつけしだい翻訳します)

     でも、国際社会、とりわけ欧州のようにいつも米国に”タダ乗り”しようとしている国々や、米・中両方にいい顔をして旨味をいただこうという国々に、この変化をはっきり認識させようとするなら、中国が国際経済ルールを遵守することを拒絶する姿をはっきりと見せつけなければならない。

     トランプが再三にわたって、中共に交渉のチャンスを与え、言い分を聞く姿勢を見せているのは、米国国内や国際社会に何度も、交渉での誠意を見せているのだ。そして、中共が完全に、自分たちが20年間ずっとWTOに加入するときにした約束に違反し、長年、世界の知的財産権の諸公約に故意に違反して活動してきたことを認めるのを拒絶し、米国代表との面談すら拒絶し、ただ電話で水掛け論争をくりかせすのは、まさにはっきりと中共の本当の態度はどういうものかを、見せつけるのにちょうど良いわけだ。

     米国の行政当局が米中関係に重大な調整を求めるには、こうした過程を必要とし、それによってはっきりした正当性を得る必要性がある。中共は、経済下降のプレッシャーの下でも、依然として妥協を拒絶する理由は、実は妥協しようと堅く抵抗しようと結果は似たようなものだと思っているから、現在は、来年の選挙でのトランプ大統領敗北に期待をつないでいる。だから、トランプが25%関税を全面実施して、その政治基盤が揺らぐことすら願っている。この点では、民主党のバイデンも、北京と似たような言葉でトランプを非難している。

     ならば、トランプは勝てるのか? こういう判断はできよう。米・中交渉で、中共の妥協は得られない。しかし、来年の大統領選挙で勝つならば、米中関係を再調整するチャンスを得る。その場合は、中共の一人負け、ということになる。

     原文は、程晓农:美中谈判 输赢真假辨
    2019-07-20
    【大纪元2019年07月20日讯】

     
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