• ★台湾2020総統選のチャイナファクター 2019年7月16日

    by  • July 24, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

     国民党の総統候補者が、  誰になるかはっきりしました。  台湾の2020年総統選挙は、  蔡英文・現総統と韓国瑜高雄市長(63)の対決です。  民主進歩党(民進党)は大喜びです。  親中派の色合いが明確な韓国瑜が中国国民党(国民党)の候補なら、  選挙の争点はおのずから2人の大陸政策の違いになり、  蔡英文の大きな弱点である政治業績ではなくなります。 

     これは、  2018年中華民国統一地方選挙(九合一選挙、  野党国民党が大勝した)の後の、  「民進党反対」ムードから大逆転です。  台湾で今後数カ月に何が起きようとも、  中国ファクターは、  台湾総統選挙の争いの中心軸となるでしょう。 

     ★韓国瑜は「北京代理人」のレッテルを剥がせない

     6月1日、  韓国瑜は総統府の前で、  大掛かりな政治宣伝を行い、  40万人が参加したと言われます。  英国放送協会(BBC)の現場取材によると、  運動に参加するため、  海外から台湾に帰国した台湾ビジネスマンがいたとのことです。 

     台湾ビジネスマンの多くは、  国民党陣営の支持者です。  総統選挙で大量の台湾企業職員が、  北京政府の命令でチャーター機で台湾に帰国して、  選挙に参加するのは秘密でもなんでもありません。 

     ましてや、  韓国瑜は、  中国政府の駐香港連絡弁公室幹部や、  香港、  マカオの両特別行政特区のトップに”謁見”し、  中国政府の堅い支持の裏書きをもらっています。  ただひたすら中共政府の命を受けた台湾ビジネスマンは、  当然、  帰国して応援し投票するわけです。 

     もう一つの秘密にされた大きな働きを持つサポーター、  正確に言えば、  韓国瑜も国民党もあまり言いたがらない韓国瑜応援部隊がいま

     今年、  6月28日に米国の外交・国際政治雑誌フォーリン・アフェアーズによって、  中国の騰訊(テンセント)の社員という表向きの身分で、  韓国瑜の勝利に貢献した人々の内幕が暴露されました。  見出しは「韓国瑜の勃興の背後に、  中国サイバー工作軍」(Chinese Cyber-Operatives Boosted Taiwan’s Insurgent Candidate)です。 

     記事には、  「本調査は、  多くのSNSグループと国家安全問題の専門家が調査した結果、  驚いたことに中国政府が組織した専門のサイバー工作員軍団が足跡をはっきりと残していたことだった。  専門家の見方が一致したのは、  3人の自称韓国瑜ファンのフェイスブック管理要員と、  LinkedInの249人のネット軍集団には、  明白な関連があった」と報道しました。  この情報によって、  台湾世論は「韓国瑜の支持者は中国大陸だったのか!」と騒然となりました。 

     7月15日、  中共の対外宣伝メディアの多維新聞(多次元ネットニュース)は「韓国瑜の初勝利。  誰が幕後の最大の功臣?」と題する記事で、  特に韓国瑜の6月1日の大選挙運動の背後の3大支持者として、  旺旺中集団の蔡衍明、  禅宗題5代宗師の妙天禅師、  元花蓮県長の傅崐萁の名をを挙げました。  その中で旺旺中(台湾メディアを参加に持つ「中時集団」の総合食品メーカー)は6・23反紅色浸透大デモ行進で、  数万人の参加者から「台湾から出て行け!」と罵られた紅色メディアです。 

     ★蔡英文の優勢は、  時の勢い

     今年5月、  私は台湾の出版社から、  自著「「紅色浸透;中共メディアの全世界拡大の真相」(日本語訳:「中国の大プロパガンダ」福島香織訳、  扶桑社)のプロモーションに招かれました。  台湾では、  民進党が2018年の統一地方選挙で敗北がまだ後を引いており、  台湾社会では、  蔡英文の業績に大いに不満を抱いていました。  特に中小企業主や労働者が一力一休政策、  軍人、  公務員、  教職関係者の「18拍改革」への反感が存在しました。 

     民進党は、  痛い財産を失っていたのです。  つまり、  民進党陣営の支持基盤でさえ揺らいでいるのに、  蔡英文が「ポリティカル・コレクトネス」の同性愛問題とか非現実的な環境保護政策にうつつをぬかし、  民進党内部では、  「民進党を懲らしめる」風潮が選挙戦に影響を与えかねないと心配していました。 

     民進党は内部で、  蔡英文と元行政院長の賴清德の争いが最高潮で、  その上、  韓国瑜の勢いもピークでした、  2020年総統選挙の行方はまったく不透明だったのです。  大衆は、  はっきりと台湾のメディア業界や政界が、  中共からの浸透工作を受けており、  中共が「台湾と戦争をするより買収したほうが得だ」という政策で成功を収めつつあるのを承知していました。  しかし、  どうやって戦うのか肝心な点がわかりませんでした。  私は、  帰米してから★中共の浸透に焦慮深める台湾  2019年5月28日http://yangl3.sg-host.com/2019/05/29/%e2%98%85%e4%b8%ad%e5%85%b1%e3%81%ae%e6%b5%b8%e9%80%8f%e3%81%ab%e7%84%a6%e6%85%ae%e6%b7%b1%e3%82%81%e3%82%8b%e5%8f%b0%e6%b9%be-%e3%80%802019%e5%b9%b45%e6%9c%8828%e6%97%a5/ を書きました。 

     しかし、  まったく古人の言にある通りで「人間の計算は天の計算に及ばない」(先のことは分からない)です。  香港で6月に起こった「逃亡犯条例改正案」に抗議する大規模デモによって、  こうした形勢は、  天地がひっくり返るように変わりました。 

     台湾の選挙のテーマは、  もう蔡英文の執政業績などではなく、  「紅色浸透反対」と「台湾の民主政治の安全」になりました。  北京と密接な関係を持つ国民党は、  あっという間に政治的な支点を失い、  中共の海外宣伝メディアまで、  「蔡英文は台湾史上稀に見る幸運児だ」と言わざるを得ませんでした。 

     ★台湾総統選挙の天秤を動かす諸要素

     来年1月の総統選挙の結果には幾つかの要素が予見出来ます。 

     第一は、  香港の反面教師としての存在です。 

     香港の「逃亡犯条例改正案」に抗議するデモは、  すでに普通選挙権を目指す長期闘争になっており、  衝突が激化しています。  台湾社会では、  決して香港のような「一国両制度」になってはならない、  という共通認識が生まれています。 

     国民党が、  蔡英文の政治実績のなさを焦点としようと、  韓国瑜の「経済100点、  政治0点」という政治抜きのスローガンを掲げようと、  「金持ちになろう」という呼び掛けも、  効果がありません。 

     台湾人は中国大陸の政治に比較的疎くても、  このスローガンが相当インチキだとは知っています。  北京政権の直接統治下にある中国人だって、  9割までが「金持ち」になどなっていません。  その上、  韓国瑜が親中共だということは誰もが知っています。 

     彼の「中華民国地区」という発言が、  ただの「失言」でないことを知っています。  (訳注1)韓国瑜がいかに言い訳しようとも、  彼が中共のお墨付きをもらって、  普段に各種の密室の陰謀(テンセント/騰訊集団との関わり)などが、  皆、  彼が中共の政治代理人だということを明らかにしています。 

     国民党に投票すれば、  たちまち台湾が香港になるという真っ暗な未来を思えば、  台湾人が投票前に考えることは、  台湾の政治的安全でしょう。 

     第二には、  国民党内の分裂です。  韓国瑜が国民党総統候補に選出された後、  「初戦が終わったら国民党の内戦が始まった」という文章が出ました。  作者は、  歴史の経験と現場から国民党内の派閥争いという昔からの病気について語り、  民進党が国民党よりは相対的に団結という点ではマシだとしています。 

     例えば、  今回、  頼清徳は総裁候補選挙で敗れた後、  すぐに舞台から消えて、  蔡英文の足をひっぱったりはしませんでした。  そして、  6月13日には、  フェイスブックで、  「台湾は我らの共同の母親」という一文を発表し、  深く台湾を愛し、  皆が蔡英文を支持するように呼びかけた後、  公衆の前から消えました。  作者は、  民進党は現在、  いかに立法委員(国会議員)選挙で、  頼清徳を政界に復帰させるか考えていることを伝えています。 

     これに比べると、  国民党は戦闘開始にあっても、  内戦を忘れません。  初戦が終わるや、  内戦が始まり、  この分裂は国民党のDNAで例外はありません。  例えば、  今回、  党を抜けて総統選挙に出ようという動きも1人ならずあります。  韓国瑜も国民党の不団結に対して「民進党は天性の融合力があり、  今日手が取れても、  明日には生えてくる、  頭が切られても、  すぐ別の頭が生えてくる」と言っています。 

     第三には、  韓国瑜には、  総裁候補として二つの大きな欠点があります。  一つには、  中国(中共)の代理人というレッテルです。  今年の流れでは、  中国がいくら応援しても加点は無理で、  このレッテルは民進党から攻撃される重大な点です。 

     もうひとつ、  韓国瑜本人が各方面で準備不足なことです。  彼の幕僚たちは特に政治経験のある人たちではありません。  才腕の政治ウォッチャーは、  彼らでは苦しい選挙を戦うには力不足だとみています。  また韓国瑜本人も、  しよっちゅう失言して失点を重ねており、  その上、  高雄市長になって半年にもならないのに、  別の選挙に出ようというのですから、  高雄市民もこの「逃亡市長」に不満です。  一つ間違えば、  韓国瑜は自分の裏庭の政治基盤も失いかねません。 

     第四に、  米国の蔡英文支持が有利に働きます。  未だに決着のつかない米・中貿易戦争で、  米・中関係は引き続き悪化しています。  米国は、  中国のように深く選挙干渉はできませんが、  肝心な時に蔡英文政府へ支持を表明することは、  蔡英文に有利です。 

     台湾の総統選挙は、  統一地方選挙とは違います。  後者は経済への考慮が重要でしたが、  前者は、  台湾の前途に関わり、  統一か独立かというテーマを避けては通れません。  北京は現在、  国際社会からあまりにも多くのボイコット問題を抱えていますから、  2020年に台湾の政治代理人を当選させようという算盤を弾いても、  虚しい結果になるだけでしょう。 

    訳注1;2019年6月12日、  韓国瑜は、  香港デモの感想を聞かれて、  自分から台湾を「中華民国地区としては受け入れがたい」と言ってしまったこと。  「地区」は中共側からの言い方。  台湾なら当然「中華民国」というべきだった(終わり)

     原文は;台湾2020大选的中国因素  中国 何清漣

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