• ★中国経済の衰えは米・中貿易戦争が原因ではない 2019年7月25日

    by  • July 26, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

     米・中貿易交渉は、最近になって多少、新たな進展がありました。中国共産党中央宣伝部直属の新華社通信が7月21日に伝えた二つのニュースがあります。一つは、米国が、中国からの輸入商品110項目を関税値上げ対象から外すという措置。二つ目は、新たな米国農産物の購入に中国企業から引き合いがあったことです。これに加えて、米・中双方は30日に、対面交渉を再開することが決まりました。いずれも、中国側の「防衛しつつ攻める」という戦略に軟化が見られます。軟化した原因は、中国が経済苦境に直面しており、突破口を探さねばならないからです。

     現在中国は、自分たちの経済苦境を米国の対中貿易戦争のせいにしています。しかし、長年のチャイナ・ウォッチングを続けてきた私の見るところでは、中国国内の経済の衰えは、根本的に自分自身にあり、米・中貿易戦争はただそれを加速しただけです。これは実際のデータから証明できるプロセスです。

     ★不動産市場の衰えと地方政府財政の行き詰まり

     不動産業は中国のトップ産業です。2009年には早くも、「共産党がなければ、新中国は生まれなかった」をもじって、「🎶不動産業がなければ、新中国も誕生せず。不動産こそ中国を救う。富豪たちには大金への道、政府はデラックスに、8年以上のバブルで官僚生活は改善され、出世の道が開き、税金はがっぽり…」という替え歌がありました。

     このトップ産業の衰えが、中国経済ウォッチの観察窓になります。2016年からは、中国の不動産価格はこれ以上、上がりようがなくなりました。これまで「永遠に下がらない」と言われた四つの一線都市である北京、上海、広州、深圳の不動産価格が、今では平均で15%下がっており、不動産投資の買い方は、今、投げ売りに走っています。

     売り方を見ましょう。中国4大ポータルサイトの騰訊(テンセント)は7月20日に、「不動産市場 — 最も残酷な時代が到来?」という記事を掲載し、7月18日までに、2019年には265社の不動産会社が破産申請したと報じました。2018年は約450社が破産しています。これらの原因は、主に資金ショートです。

     地方政府にとって、土地はずっとこれまで地方財政を支える「天下の半分」でした。その衰微は、必然的に土地販売収入に影響します。2012年に始まった地方財政の切迫情報は、常にメディア上に登場しました。「地方財政の行き詰まり」で検索すれば、2012年「地方財政の逼迫、経済牽引4兆元のため」との情報が引っかかります。

     2013年には中国共産党中央委員会の機関紙「人民日報」のインターネット部門の人民網に「地方財政はどこも切迫、収入倍増計画は実現が疑問」が出てきます。つまり、地方財政の行き詰まりは常に地方政府につきものでした。全国的に10年にわたって実施された「掘っ立て小屋改造プロジェクト」は、1億人を引っ越しさせましたが、地方政府の多くは、補償金を支払えませんでした。

     中国の金融システムがこれまで支えられてきたのは、不動産業者、個人の不動産賃貸、地方政府の債務の三者による不動産バブルでしたが、それが、だんだんやせ細ってきてしまったのです。これは中国経済の国内的な問題で、米・中貿易戦争とは完全に無関係です。

     ★米・中貿易戦争による外資撤退、世界的な産業チェーンの再構成

     土地価格と人件費コストの上昇、外資税の徴収と優遇措置取り消しなど、中国の投資環境の悪化は、早くから外資を次々に撤退させてきました。中国国家統計局のデータでも、2017年の外資の中国固定資産投資額は2146億元で、2011年の5087億元と比較すると、わずか6年間に57.8%も下がっています。多くの外資は、今様子を見ていますが、その理由は中国のような「投資の最適地」が他に見つからないからです。

     中でも、米国資本の動態は指標になります。貿易戦争開始後、米国の実業界はずっとワシントン政府に対してロビイングを続けてきましたが、1年以上様子見した後、国外移転を開始しました。

     ウォール・ストリート・ジャーナル紙(7月19日)によると、5月に多くの中国からの輸出品の関税が10%から25%に引き上げられて後、米国製造業は供給チェーンの海外移転を開始しました。例えば、靴のクロックス社、クーラーボックスのイェティ社、ルンバ掃除機のアイロボット社、アクションカメラのGoPro社などが、すでに2500億米ドルにのぼる中国からの輸入品課税を逃れるため、他の国で生産を始めています。

     アップル社も現在、一部の設備の組み立て工程を中国から移すことを考慮しています。ある米国企業は、はっきりと「いったん移転したら、もう戻ってくることはない」と明言しています。中国国内の米国資本の動きは、全世界の製造業の供給チェーンに影響を及ぼすのです。

     中国の輸出産業のトップ20社のうち、台湾の企業が15社を占めます。中華民国(台湾)中央銀行総裁の楊金竜は「台湾のグローバルチェーンの参加度合いは67.6%にも達し、もし中国大陸が報復措置をとれば、台湾の輸出額の低下は、GDPの1.8%に影響する」と言います。こうした圧力を考慮して、台湾資本は、大量に中国大陸から撤退を始めており、現在、93社が中国から台湾に投資を戻し、その金額は4520億台湾元、台湾に4万2100人分の就職口をもたらすといわれます。

     外資の中国撤退の最大の受益者は、生産コストの比較的低いベトナムやインド、台湾、マレーシアといった他のアジアの国々です。そのうちの多くの国々の輸出は、どれも大幅に増えています。これはある程度は、関税回避狙いの中国企業による回避策も入っているという説もありますが、そうした企業の数は多くはないでしょう。

     外資は中国経済で相当重要な地位を占めます。関連データでは、外国企業が全国企業に占める割合は3%未満にすぎません。それでも対外貿易の半ばを占めており、一定規模以上の工業利潤の25%、税収の20%を占めています。米・中貿易戦争が引き起こしたグローバル・バリュー・チェーンの再構成は、すでに逆転不可能ですし、中国経済への損失は長く将来に響きます。就職、税収、輸出入、外貨備蓄などどれも影響を受けます。

     ★外資撤退による失業は「泣きっ面に蜂」

     中国の本当の失業率を調べるのは至難の業で、政府発表の都市部(城鎮)登記失業率は毎年4%前後ですが、誰も信じません。都市部調査失業率に変わっても、2%ほど増えただけで、とても真実の数字とはいえません。中国の失業率は、関連データを分析するしかないのです。

     (1)中国政府の失業への注目度は、失業が深刻な標識的なものかどうかをみれば分かります。2018年8月、中共中央政治局会議は、「六つの安定」を決めており、その「6穏(安定)」とは、雇用、金融、貿易、外資、投資、成長期待です。「雇用」はそのトップです。今年は、この「6穏」が従来通り強調されたばかりか、何度も「雇用優先」が強調されています。国務院事務局は5月22日に「国務院就業工作指導小組」を設置して、「大規模な失業が発生しないように防衛する」と誓いました。

     (2)関連情報。ブルームバーグは6月初め、中国最大の検索エンジンを提供する百度のデータを報道しました。2019年1月から2月に「仕事探し」というキーワードでの検索量が、爆発的に増え、1日あたり27万回以上になって、これはこれまでの10倍だと報じました。

     4月になると、「仕事探し」は史上最高をマーク。もう一つの就職圧力のデータとしては、5月に政府側が「購買担当者景気指数」(PMI=パーチェンシング・マネジャーズ・インデックス)が49.4と50を割り、4月より0.7ポイント下がりました。(訳注;一般に景気の改善と悪化の分岐点となるのが指数が50、50を下回ると景気減速を示すといわれる)

     中国政府は、よく外資撤退のニュースはデマだと言いますが、実は大変、気にしています。数年前、中国メディアに「外資が握る中国の命脈、影響は億単位の就職に影響」という記事があります。それによると、直接外国企業に就職している人はたった4500万人なのですが、外資に頼る供給側、上下流の産業は、何億人もが関係しています。 

     政府側のデータでは、外資撤退に伴って、2013年から2016年、外資(香港、マカオを含む)企業の従業員は2963万人から2666万人に、297万人減りました。2018年米・中貿易戦争の後は、外資撤退が加速したので、失業者はさらに増えるでしょう。

     以上が、ここ数年の中国経済の幾つかの主な特徴です。大国柱の不動産業界、外資企業と投資と国内就職状況の分析です。

     これを書いた目的は、中国当局と西側メディアも共に誤っている点、米・中貿易戦争が中国経済の苦境の原因だという見方が誤っているといいたいからです。

     結論は、中国経済の下降は、自国経済に内在する構造的問題によってであって、貿易戦争は、「弱り目に祟り目」だったということです。中国当局は、自分の病原をはっきりさせ、罪のなすりつけ遊びをやめたほうがよろしい、ということです。(終わり)

     原文は、何清涟: 中国经济衰败并非缘于中美贸易战

    これまでの何清漣さんの論評の、翻訳はこちら

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