• 程暁農★冷戦からグローバリズム — 中国の4部作の歩み 2019年7月1日

    by  • July 28, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

     2001年に中国は、 世界貿易機関(WTO)に加入を果たし、 経済グローバル化のクルーズ船に乗りこみ、 経済繁栄の時代を迎えた。 この繁栄は既に挫折しているのだが、 中国は依然としてあの手この手で繁栄再建をもくろんでいる。 

     その最重要の手段は、 世界経済グローバリズムの軌道を改変させ、 全世界の経済を中国の繁栄と成長に奉仕させることだ。 

     この努力は成功するか? 中共が世界で生存を図る道は、 正義などには構わず謀略を最優先させることだ。 これが米・中衝突の真の原因なのだ。 

     ★1;中共建国以来の世界との四部作

     経済グローバル化に依存する今日の中国が、 グローバル化自体を改造しようとする意図を理解するには、 まず、 中共が建国以来、 世界との関わり方をどのように変えてきたかを見ておく必要がある。 

     第一作;ソ連頼りと対西側との冷戦

     1948年、 中国共産党中央と中国人民解放軍総本部は、 河北省石家庄市の西柏坡(シーバイポー)に指導部を置いていた。 ソ連共産党は特使ミコヤン副首相を特使として状況視察に派遣した。 この時以来、 中共のイデオロギーはソ連陣営加盟に傾いた。 ソ連陣営に加わって、 朝鮮戦争(1950年6月25日〜1953年7月27日休戦)では、 散々な代価を支払わされた。 だが、 同時に、 ソ連から広範な技術支援を得て、 全面的に重工業システムと国防産業を興すことができた。 

     ただ、 同時にソ連モデルは、 一種の「孫悟空の緊箍呪(きんこじ)」となって、 中国と世界の関係を縛るものとなり、 経済活動が東側世界に閉じ込められることにもなった。 ソ連(東側)陣営と西側国家間が冷戦状態だったので、 中国はソ連陣営の一員として、 それまでに存在した西側諸国家との経済、 文化の交流を断ち切るしかなかった。 

     西側世界との冷戦で東側陣営加わったことで、 外交の相手も東側国家に限られた。 別の面では、 全面的にソ連の経済体制をコピーする羽目になった。 

     後にソ連と仲違いしたが、 ソ連式の社会主義経済制度は依然として、 全中国を支配し、 中国民間の経済活力を押し潰した。 社会主義経済制度の失敗は、 避けがたい運命で、 コピー版ソ連式経済管理は、 ソ連モデルのあらゆる欠点を取り込むこととなり、 結果は芳しくなかった。 

     第二作;ソ連と冷戦状態で、 米国頼みへ

     スターリンの死(1953年3月5日)後、 毛沢東の世界共産主義陣営のリーダーになろうとする野心は、 次第に膨れ上がり、 ついに中・ソ対立に至った。 まず、 イデオロギーをめぐる論争が始まり、 それが国境の小部隊同士による現実の銃撃戦になった。 

     ソ連が北京に対して核兵器使用を策した時、 米国は、 もしそんなことをしたら世界大戦と見なし、 ソ連を攻撃すると警告した。 こうして、 米国は毛沢東の中国を救ったのだ。 

     米ソ(東西)冷戦が世界をリードしている時代にあって、 ソ連と命がけの対決する立場にあった毛沢東は、 米国側に鞍替えすべきだと理解した。 こうして、 中国は、 対ソ冷戦側のメンバーに加わって、 鄧小平もこの路線を引き継いだ。 

     中国が対ソ連冷戦に参加した典型的な例は、 1979年のベトナムとの戦争だ。 中国は自分の都合もあったが、 同時に、 米国にベトナム戦争敗北からの撤退を助けるという考えもあった。 

     この戦争前に、 鄧小平が新中国設立以来、 中国の指導者として初めて訪米(1979年1月)した時、 当時のジミー・カーター大統領 (任期;1977年1月20日 – 1981年1月20日)にその意思を伝えた。 ソ連が、 自分の子分のベトナムが攻撃されているのに、 中国に報復しなかったのは、 実は中国の背後にいた米国を恐れてのことだった。 

     中国は、 この鞍替えによって、 たちまち米国からの援助を受けられるようになった。 それまでソ連陣営にいたため遅れていた工業や科学技術を、 西側の技術で改善出来るようになった。 ソ連との冷戦状態で、 科学技術方面では、 米国の気前のよい援助に依存することになったのだ。 

     当時、 中国の現代民間用の科学技術分野は、 あまりにも遅れていた。 だから、 中国が技術獲得を意図しても、 米国は何ら防衛しようなどという必要性は感じておらず、 両手を広げて歓迎した。 この姿勢はずっと最近まで続いたのだ。 米国の学界で、 中国からの留学生が、 こうしてオープンに迎えられることは当たり前だった。 

     ではなぜ、 誰も冷戦が終結して、 とっくに”民主化”したロシアに対しては、 米国はこうした態度を取らなかったのか? 実は、 米国の中国には開放的、 ロシアには防衛的な姿勢は、 一種のそれまでの慣性的な認識で習慣化しており、 何にも考えていなかったのだ。 

     最近になって、 米国が中国に技術輸出の門戸を閉ざし始めても、 依然として「なんで昔の米・中友好時代に戻れないのだろう?」などと、 時代遅れの質問をする人がいる。 

     「1970年代に米・中が連携してソ連に対抗した時、 米・中は盟友に見えた。 しかし、 冷戦が終結しソ連が解体した後、 反ソ基盤の上に立った盟友関係は、 続いて行けるのか?」と問う人はいなかったのだ。 実際、 米国は、 この方面では愚かだった。 中国は、 とっくに新たな考え方を胸に抱いていたのだ。 

     第三作 ;対外開放、 ”グローバル頼み”に

     中国に、 グローバリズムの世界の門をくぐらせたのは、 香港と台湾の実業家たちだ。 1980年代後期には、 早くも香港の実業家は労働集約型産業の大陸移転を始めていた。 先進国からの受注、 国外からの原料と部品を中国で加工して輸出した。 

     当時の中共総書記だった趙紫陽は、 この新しい対外開放モデルを「大いに入れて、 大いに出す。 頭は外にある」(発注と原材料は国外、 販売先も国外)と言った。 これが中国の対外開放の原型だった。 

     1990年代には台湾実業家も進出し、 続いて日本、 韓国もそれに倣った。 最後に西側国家の外資企業が、 大挙して中国大陸に工場を建て、 中国の輸出は爆発的に増え、 10年にわたる「輸出景気」をもたらした。 

     中国の制度面からの「グローバル頼み」発展戦略の、 メルクマールは、 WTO加入だと言える。 そのために、 国務院総理(首相)だった朱鎔基は全国数十万の国営企業の看板を、 ”私営企業”に塗り替えて、 WTOの私有化と市場経済体制が求める形に変えた。 さらに、 一連のWTOの求める制度的な変革を、 数年のうちに実行すると約束した。 

     表面的には、 中国はWTO加入前、 確かに世界経済秩序の規則を遵守する姿勢を見せていた。 しかし、 今や、 はっきりと、 それはただ一時しのぎの策略に過ぎず、 信用のおけるものではなかったことが明らかになった。 中共は、 その実、 ずっと政府が経済をコントロールする数々の手段を放棄するなど、 考えもしなかったのだ。 

     しかし、 WTOに加入する時は、 やりたくないことでも、 当局は「胸をドンと叩いて」請け負ってみせた。 当時の中共が、 いかに経済のグローバル化がもたらす長所を重く見ていたことかが分かる。 

     しかし、 胸を叩いてみせたのは、 当然、 本心からではなかったから、 WTO加入時の約束はずるずると引き伸ばされるばかりだった。 今日になっても、 依然として実現していない。 だから当面の米・中交渉の重要な議題の一つになっており、 西側国家は、 WTOは無用で役立たずだと不満に思っているのだ。 

     第4作;国際ルールに対抗して、 グローバル化を改造へ

     中国がグローバリズムのチャンスを借りて、 ますます大きな経済的実力をつけると、 中共の中国と世界との関係に対する意図は変わった。 まず、 「爪を隠してごまかす」(韜光養晦ーとうこうようかい)方法で、 長年、 自分たちの覇権への意欲を隠し通してきた。 

     中国が「崛起」(くっき)しようとすれば、 今のご時世では当然、 米国に挑戦することになる。 だから、 米国は、 とっくに「盟友」ではなく、 仮想敵ナンバーワンなのだ。 

     次に、 ローエンド(低性能、 低価格)の「世界の工場」は、 もう長いこと続けらないし、 これでは「世界に覇を唱える」のに満足出来なくなった。 だから、 産業のグレードアップが必要だが、 通常の研究をやっていたのでは間に合わない。 科学技術の厚い研究基盤も欠けている。 ならば、 米国から”いただいて持ってくる”によってこそ、 「コーナリングで前車を追い越す」ことが可能になる。 

     最後に、 WTOなどの国際ルールだが、 中国に対する制限が多過ぎる。 今や、 遵守できないばかりか、 反対に、 何とかそれを変えてしまって、 中共の言いなりになる新たな国際経済ルールを制定したいのだ。 

     このためには、 現行の国際経済ルールを交渉の席上でゆっくり骨抜きにし、 同時に、 米国国内の各種利益団体をテコとして動かしていく。 「引き延ばして、 変化を待つ」作戦については、 5月30日に「米・中関係はなぜ逆転したか?」で書いておいた(《中美关系因何逆转?》未訳)。 中共に言わせれば、 米・中の交渉は手段であって、 全世界のグローバル経済ルールを書き換えることこそが、 真の目的なのだ。 

     ★2;米・中間は、 関税戦争? 貿易戦争?それともルール戦争?

     G20大阪サミット(2019年6月28日〜29日)後、 米・中は交渉のテーブルに復帰した。 大多数のウォッチャーや国際メディアの目は、 関税問題に注がれた。 どちらが勝利するのかの基準は、 米国が関税値上げを放棄するかどうかだと思ったからだ。 

     だが、 実は双方の真の争いは、 国際経済ルールの拘束力の問題なのだ。 すなわち国際経済ルールを、 ある国が自国の理由で調整したり、 変更したりして良いのかということだ。 

     双方の交渉が開始されるや、 米国が提起したのは、 中国が20年前にWTO加入時に約束した変革の実行をいまだに拒絶し、 中国が何年も以前に加入した世界知的財産権に関する諸公約や、 国際法的な義務などの核心問題に違反していることだった。 

     中国のやり方は、 利益をテコにして輸入を拡大し、 国際条約の法的義務の約束を延期し、 こうした核心的な問題を真面目に素早くやろうとしないことだ。 米国にとってみれば、 中共に圧力をかける手段は関税しかない。 だから、 関税問題が国際的な注目を集めるのだ。 

     中国は自分の必要に応じて事を進めたい。 今あるWTOのルールや世界知的財産権に関する公約などの国際ルールなどは、 中国の活動の邪魔になる。 ならば、 中国はそうしたものを実行しないだけでなく、 事実上、 国際法規に譲歩させようとする。 

     米国は、 自らの国の力で、 中国の行為を阻止し、 こうした国際ルールの有効性を擁護したい。 こうした対立が、 経済貿易分野で起こった時には、 表面的には貿易戦争と誤解される。 

     また中国も、 何度も輸入拡大をテコにして、 交渉の中心点をずらそうとしてきた。 多くの人々が、 米・中貿易交渉を、 双方の輸出入の多寡の問題を争う米・中戦争だと誤解してしまうのは、 これが理由だ。 

     多くの国家の政府、 例えば今回のG20大阪サミットに参加した欧州国家の政府や、 彼らと見方を同じくする世界各国のメディアは、 米・中両国が休戦してくれるように願っている。 米国のウォール街もまた然りだ。 

     しかし、 彼らは同じ判断の過ちを犯している。 それは米・中両国が休戦したなら、 世界経済秩序は正常に維持されていくのか?という問題だ。 つまり、 ただ現状復帰さえすれば、 世界は大喜びで、 問題はなくなるのか?ということだ。 

     実際は、 中国は経済のグローバル化の過程に深く関与しており、 世界経済の秩序は既に完全に変わった。 過去数年来、 中国の役割は大っぴらにも、 内々にも変わった。 この変化とは、 中国は、 もはや国際経済秩序を「遵守する者」ではなく、 新たな役割、 つまり「ルールを変革する者」になっているのだ。 

     そればかりではない、 中国が要求する改変とは、 元々あった国際経済秩序のルールを、 より完全なものにしようというのではなく、 現行ルールの有効性を否定するものなのだ。 その新たな役割はルールの破壊者なのである。 

     中国のこの役割は何も別に隠されておらず、 大っぴらにされている。 と同時に、 この変化は、 こっそり行われてもいる。 大部分の国々、 大部分のメディアはこの新たな役割の出現に注意を払わず、 トランプ大統領が、 有る事無い事を言い立てているのだと思っているのだ。 

     ★3;中国生存の道;謀略主義は世界を「ジャングル」にする

    以上の「4部作」から見て取れるように、 中共は建国以来、 現在にいたるまで自己が世界で生きていく上の道筋は、 道義は顧みず、 謀略をもっぱらとしてきた。 この種の謀略は、 国内においては政権の生存のためで、 社会主義経済制度を放棄することも平気でやってのけた。 (原注;例えば、 国営企業の全面私有化)

     しかし、 イデオロギーの正当性にのためには、 自己を依然として「社会主義国家」だと称している。 大国との関係は、 イデオロギー的に親和性があるとなればソ連と結ぶし、 それがうまくいかなければ正反対の米国とも結ぶ。 覇権を唱えられるようになると、 再び、 米国を仮想敵にする。 

     既存の国際ルールは、 利用できるならばしっかり利用するが、 できなければ従うふりをして違反を続ける。 追求をかわしきれないとなれば、 利益で釣って相手側を分裂させる。 今回の対米交渉での策略もかくのごとしだ。 

     そして、 さらに長期的視野に立てば、 もし機会があれば国際経済ルールを自分に都合の良いように変えようと狙う。 つまり、 一切は自分のためであって、 国際法規であろうと盟友関係であろうと、 利益があれば頂戴するが、 それがなければ捨て去る。 これが国際舞台における中国共産党陣営の一貫した手法と立場だった。 ただし、 以前のソ連と違って、 中共はやり過ぎることはあっても、 なさざる所なしである。 
     
     まとめて言えば、 中共の処世術とは、 「利益が最高、 道に外れてもオッケー、 ルールの裏をかけ」なのだ。 

     西側国家が作ってきた世界経済秩序のルールは、 単に一国の利益を考えたものではなく、 公正、 公平を重んじる。 この度の米・中貿易交渉では、 双方とも「公平」の2文字を使って相手を非難した。 

     米国の「公平」は、 中国が長期にわたって、 故意にWTOと世界各国への約束を破り、 他国には、 中国のために市場と技術分野を開放せよと迫り、 中国は他の国家に対して、 市場を閉じるか、 一部閉鎖していることだ。 

     これは中国が長年にわたって、 国際経済秩序の公正、 公平の原則に違反してきたことを指している。 しかし、 中国の「公平」とは、 自分たちが国際経済ルール、 知的財産権ルールに反したことは、 避けて通るためのものだ。 当然、 そうした行為が罰せられるべきだなどという考えは、 さらに受け入れず、 中国に関税課税するという米国の懲罰手段に悩む程度でしかない。 

     事実上、 中国は世界の経済大国として、 長期に国際経済と知的財産権のルールに違反を続け、 既に国際経済秩序を改変してしまった。 中国が制度改革を約束しようが、 中国が世界の知的財産権ルール体系に参加しようが、 中国が自分に不利だと思えば、 そんなものは無きがごとしになるなのだ。 

     こうして、 国際ルールは中国の行為によって二つに分かれた。 中国に有利で、 中国が利用できるルールと、 中国が遵守を拒絶し、 事実上、 中国には無効なルールにだ。 言い換えれば、 このままで行けば、 国際ルールはおしまいなのだ。 (終わり)

     原文は;程晓农;从冷战到全球化:中国走向世界的四步曲 2019-07-01

     
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