• 程暁農 ★G20大阪サミットではっきりわかった中国の国際舞台の役割変化  2019年7月1日

    by  • July 30, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

     G20大阪サミット(2019年6月28日〜29日)の注目の焦点は米・中が再度、 交渉テーブルに着くことだった。 しかし、 その深い意義については、 参加各国の指導者たちの大半がわかっていない。 中国政府は、 そっと自分の国際舞台での役割を「規則を守る立場」から、 「規則を決める立場」へと変え、 中国の一方的な要求に合致する新秩序に国際経済秩序を変えてしまおうとしているのだ。 

     ★(1)G20大阪サミット;失望から希望へ?

     G20大阪サミットには、 いろいろなテーマがあったが、 注目の焦点は米・中対話だった。 米国と中国は共通認識に立って協議ができるのか? 関税戦争は終わるのか? 各国指導者はこの問題に関しては、 米・中間の問題だとして、 ほとんど意見を述べようとしなかったが、 サミットで米・中両国が握手してほしいというのは共通の気持ちだった。 

     G20サミット前に、 日本経済新聞のの記事「米・中問題に無策のG20の憂鬱」では、 会議の成り行きと成果に関して、 主催の日本だけではなく、 少なからぬ西側国家の悲観的なムードを反映していた。 

     米・中対立には、 G20のメンバー国家は何もできず、 G20はもうダメなのではないかという疑問も生まれていた。 日経は「G20は国際政治への働きで、 大阪から一条の光が差すことを期待している」と書いた。 

     結果から見ると、 この「一条の光」は、 米・中双方の指導者が交渉に復帰することを同意し、 米国は関税実施を停止して、 実現したかのようだ。 では、 今後どうなるのか? これまで話し合いが進められてきた基礎の上に、 一歩前進出来るのか? それとも中国が提出した「米国の一方的なやり方」という主張で、 世界経済の既存の秩序やルールが、 中国に有利に変わるのか?

     結果がどうあれ、 はっきりしていることは、 米・中交渉は、 既に単純な貿易をめぐる争いではなく、 世界経済の秩序とルールをめぐる重大な問題だということだ。 G20メンバー国家の指導者が、 果たして、 気がついているかどうか。 米・中交渉とそれらの国々の未来に密接な関係がある。 

     ★(2) 国際経済秩序が直面する中国からの3つの挑戦

     オーストラリアのスコット・モリソン首相は、 大阪サミット前に、 豪政府系シンクタンクのアジアリンクとブルムバーグ主催の講演で「米国は、 現在の形とルールによる貿易システムでは、 中国の経済構造と政策に対処できないと思っている」とした。 「米国が提起している、 強制的な技術移転だとか知的財産の窃盗や工業への国家補助問題などの多くは合理的で、 我々は米国と協力して世界貿易機関(WTO)を含む国際機関を改革し、 本当に目標を実現させるべきだ」と語っている。 

     さらにモリソン首相は、 現在の国際経済秩序が受けている三つの挑戦を挙げた。 一つは、 中国がグローバル経済に入って来ると同時に始まった強制的な技術移転、 知的財産権の窃盗行為と工業補助金政策。 二つは、 WTOなどの国際機関が、 中国の挑戦に無力なこと。 三つ目は、 WTOなどの国際機関は、 現在の新しい状況に対応するには、 改革が必要なことだと警告。 「世界の主要経済大国の競争の時代にあって、 我々は座して死を待つわけにはいかない」と述べた。 確かに、 モリソン首相の眼力は、 ドイツやフランスの指導者たちよりは、 深く物事を見ている。 

     ★(3) 中国の心の底は?
     
     一体、 今後の米・中交渉で、 中国の目的は何で、 どんな交渉戦略を使ってくるのか? 中国の対外宣伝メディアの多維ネット新聞(多次元ニュース)の6月28日づけ「中・米貿易戦争は攻撃の時代に向かう」の情報が、 目を引いた。 

     記事によると、 

    :「中・米交渉が行き詰まったのは、 北京が初めて、 米国側がサインするだろうと予期していたことに対して、 百を越す修正意見を述べたからだ。 これは北京側の意見を集中的に表明したもので、 北京側は口には出さないが、 貿易戦争で受け身から攻勢に転じたものだ」「1年以上、 中・米は相互に関税を掛け合い、 全世界の経済と供給チェーンに影響を与えた。 

     現在、 貿易戦に関して、 北京は結束を固め力を集中して重大事件として取り組んでいる。 貿易戦争は中国にとって悪いことでは全くない。 中国が国際的な局面を変えるポイントとなる…中国にとっては、 大いに実力を示せる協議となるか、 協議が成立しないかだ。 この協議は各国がまねるべき模範となり、 中国が国際構造を変えるというマイルストーン的な事件である。 

     だから、 北京は必ずや日増しに強硬な態度でとことんやる…北京の現段階の新たな仕事は、 いかにして米国を説得し、 米国に変革を迫るかで、 貿易戦争は自ずから攻撃の段階に入った。 いかにして米国に、 この情勢変化を受け入れさせ、 百年間なかった大変化を受け入れさせるかが問題なのだ」としている。 

     4年前、 カナダのウォータールー大学の王紅英教授が、 この可能性を指摘した。 (China’s Transition from Communism—New Perspectives)。 今、 中国は既に、 世界の舞台でチャンスと立場を獲得し、 世界の経済秩序を守る側から、 作る側への野心満々だ。 明らかに、 G20のメンバーのうちの多くの指導者はこれに気がついておらず、 もし中国がルールを作る側になったとなれば、 ルールを守るのか、 壊すのかという点に深く思い至っていない、 というのだ。 

     ★(4)現在の国際経済秩序はこれまでなぜ有効だったか

     現行の国際経済秩序が形成されたのは、 大体三つの段階を経てきた。 第一に、 国際法の形成段階で、 西側民主国家が集まって協議し、 共通認識に至って、 関連ルールを形成し、 国際法規の形で公布した。 第二に、 各主要国家は、 国際法規を守ることにサインして、 法治国家の原則に基づいて、 自覚的に国際法規を遵守した。 第三に、 もし某国が違反した場合、 規則違反者としてグループが説得し、 あるいは関連法規に基づいて国際協調機関が調停し、 その国が自主的に法規を守るようにさせた。 こうした調停が主であったから、 違反国家への懲罰といっても象徴的なもので済んだ。 

     このような国際経済秩序は、 実は三つの前提に立っていた。 一つには、 サインした国々は皆、 民主国家だった。 民主国家の法治の原則が、 各国政府が自覚的に自分が約束した国際法規を守ること。 二つには、 故意に国際法規を破ろうとしなかった。 第三に違反した場合の違反した側が自主的に正したので懲罰は軽くて良かった。 

     ルールを決めたのが西側の先進国だったので、 いずれもが法治社会であって、 共通の価値観を持ち、 また一面では冷戦時代のソ連陣営からのプレッシャーも有り、 基本的に西側諸国の歩調は一致していた。 だから、 国際経済秩序のルールでも共同で当たれたし、 多くの状況のものでは自覚的に進んでルールを守った。 だから、 違反状態があってもグループ間で説得がなされ、 通常、 その国による有効な修正が可能だった。 

     1990年代初期に冷戦が終結し、 国際経済秩序はこうやって維持され、 かなりの成功を収めた。 そこには三つの客観条件が存在した。 

     一つには、 冷戦中、 ソ連陣営はこうした国際ルールの受け入れは拒絶したが、 彼らはグローバリズムに参与しなかったので、 直接破壊者になることはなかった。 

     二つ目は、 ソ連陣営に参加した中国は、 1970年代の初頭から、 米国や西側国家との関係を改善したが、 国力が弱かったので、 国際経済への影響力はわずかなものだったし、 西側先進国の決めた国際ルールを受け入れ、 ルールブレイカーにはならなかった。 

     第三に、 その他の中小国家は単独で国際経済秩序に挑戦する立場も能力もなく、 気に入ろうと気に入るまいと、 国際ルールは守らねばならなかった。 

     ★5 「仲裁役」らはどこで失敗したか?

     客観的に言っても、 中国は、 20年前にWTO加入した時点での約束や、 20世紀末の知的財産権に関係する一連の国際条約の義務に違反してきた。 中国は世界の貿易ルールに対して、 いい加減な約束をして守らず、 ルール破壊をやってきたことは、 皆知っていた。 

     では、 なぜ、 米国だけが立ち上がって、 中国と交渉を行い、 他のG20の国々は、 傍らで「仲裁役」のような振る舞いをしているのか?

     疑いなく、 G20メンバーの中では、 米国は中国の国際経済ルール違反、 国際秩序破壊の最大の被害国だ。 また中国との交渉力を備えている。 しかし、 米国はただ単に自国の利益を擁護しているだけではなく、 本来の国際経済のルールの有効性を守り、 国際経済秩序のために行動している点を、 他の西側国家は全く知らんふりをするわけにはいかないはずだ。 

     実は、 こうした「仲裁人」たちがどこで間違えているのかを知るのは、 そう難しいことではない。 

     これまでの国際経済秩序には、 上述のように三つの客観条件と三つの前提が内在していた。 だから、 冷静後に国際経済秩序が継続していけるかどうかは、 この三つの客観条件が引き続き存在するかによって決まると言える。 あるいは、 この三つの客観条件のうち、 一つでもなくなって仕舞えば、 三つの前提も動揺する。 

     こんな風に考えてみると、 現在の一部のG20国家と考え方を同じくする世界各国のメディアが判断を間違えている根源に思い当たる。 

     つまり、 これまでの国際経済秩序が維持してきた三つの条件のうち一つが欠けたのだ。 それは中国が経済の実力を強め、 自分の戦略と目標、 国際的役割を、 国際法規を守る立場から、 事実上のルール破壊者に変わったことだ。 そして、 国際経済大国の中国がこうした立場に立てば、 長年、 西側国家が維持してきた国際経済秩序が必要とする三つの前提が崩壊するのだ。 

     長年、 西側諸国が維持してきた国際経済秩序の三つの前提の一つはメンバーの「自覚的にルールを守る」だ。 もう一つの約束は、 「違反者にはゆるい罰則で十分効果がある」だ。 

     中国がルールの破壊者を演じれば、 「自覚的にルールを守る」との前提も、 「ゆるい罰則で十分」も崩れてしまう。 トランプ大統領の貿易戦争や完全に不満を持つ西側国家の政府やメディアは、 どちらもこうした事実を見ていないで、 依然として、 もう消えてしまった古い国際経済秩序の追憶に浸っているのだ。 そればかりか、 彼らの視野の狭さから、 現有の国際経済秩序が有名無実のものになっている本当の原因を、 逆にトランプ大統領のせいにしている。 

     ★6 ただ乗り根性と「多国間主義」の終幕

     中国は、 既に世界経済の規模では米国に次ぐ超級経済体であり、 同時に深く経済グローバリズムに関わっており、 大部分の国は中国と経済交流しているから、 中国の不興を買いたくない。 

     おまけに中国は、 利益をテコとして誘惑したり懲罰したりして、 多くの西側国家を操るのだ。 利益の梃子(てこ)とは、 中国から発注や投資がきて甘い汁をなめさせてもらえる。 

     イタリーやギリシャは、 中国のインフラ投資を大歓迎しているから、 中国の違反行為を批判などできない。 中国の違反を批判した国々には、 発注取り消しや、 その国からの輸入品に高い関税をかけたりする。 今、 米国に対してやっているように。 

     多くの西側国家は、 自分の国の利益の算盤(そろばん)を弾き、 国際経済秩序が破壊されている現実には知らん顔で、 タダ乗りしようとしている。 米国が唯一、 中国に対応できる国になってしまった。 しかし、 オバマ前大統領時代には、 何もしようとしなかった。 

     トランプ大統領のやり方は、 事実上米国の経済的な実力を後ろ盾にして、 挑戦したものだ。 しかし、 米国はこのために、 ある程度の代償を差し出している。 

     この代償は実は、 「ただ乗り」国家のためにもなっているのだが、 しかしそうした国々は、 ありがたいなどとは思っていない。 こうした状況の下で、 引き続き国際経済秩序の多国間主義維持を唱えるのは、 実際には馬鹿みたいな話なのだ。 

     もし、 米国が単独でそんな代価を払ってはいられないとなれば、 そして、 「タダ乗り国家」が「多国間主義」を唱え続けるならば、 最後には、 ルール破りの中国が、 国際経済秩序のルールを変えてしまい、 中国の利益を中軸にした「新国際経済秩序」が次第にでき上がっていくだろう。 

     そうなれば、 WTOはめでたくご臨終となり、 経済グローバリズムは中国版のジャングルの掟(おきて)となる。 中国がリードする経済外交となって、 比較的公正だった経済秩序は、 歴史の中の過去の1頁になってしまうことだろう。 

     原文は;程暁農【观点】大阪G20显示中国在国际舞台上角色的悄悄转变 https://www.sbs.com.au/yourlanguage/mandarin/zh-hans/article/2019/07/01/guan-dian-da-ban-g20xian-shi-zhong-guo-zai-guo-ji-wu-tai-shang-jiao-se-de-qiao?language=zh-hans

     

     

     原文は;程暁農【观点】大阪G20显示中国在国际舞台上角色的悄悄转变 
     

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