• ★なぜボルティモアは突然「敏感問題」になったのか? 2019年7月30日

    by  • July 31, 2019 • Uncategorized, 日文文章 • 0 Comments

     7月27日、ツイッター上での「政府対議会の戦い」によって米国東部メリーランド州最大のボルティモア市は、全米一注目を集める都市になりました。トランプ政府と黒人のイライジャ・カミングス下院議員、ナンシー・ペロシ下院議長の民主党が多数派を占める下院との戦いです。

     そして、ボルティモア市民も2陣営に分かれてツイッター上で罵り合い、全米各地の人々も次々に参戦。民主党は、人種差別だとして17日、トランプ米大統領が同党の非白人議員4人を攻撃したことに端を発した弾劾決議(原注;棚上げ)に続いて、わずか10日後に再度の弾劾を提起しました。

     これは、演劇的要素に事欠かない話で、現在の米国政治を理解する格好の窓口ですから、当日の四つのツイートを分析してみましょう。

     ★ポリコレ的身分政治と事実の交戦

     7月27日、トランプ大統領は、三つのツイートをアップし、直接、西ボルティモア選出のカミングス下院議員を、「野蛮な悪ボスで、メキシコ国境問題でも国境建設に取り組む良き人々を罵っている。あいつの選挙区は最低で、危険。選挙区は米国最低だ」「国境は奇麗で、効率も良く管理もできている。ただ非常に混んでいる。カミングスの選挙区は吐き気を催すネズミが横行している。やつが、もしボルティモア市にもっと時間を注いでいたら、この危険で不潔な地域を奇麗にできたろうに」。3番目のツィートでは、トランプ大統領は、なぜカミングス下院議員が代表する地域にこんなに金がかかるのかとして、「米国で管理が最もダメなところで危険だ。誰もあそこで暮らしたいなどと思わない。じゃあ、その金はどこにいっちまったんだ?いくら盗まれた?すぐこの腐敗した汚い地域を調査すべきだ」と書きました。

     トランプ大統領の三つのツイートがアップされるや、@TwitterMoments氏が、また大統領がやらかしたと気がつき「トランプ大統領は、今、ホットポイントになったよ。今、カミングス下院議員を『残忍ないじめっ子』呼ばわりして、西ボルティモアはネズミだらけで酷いところだって」とツイート。

     そこから一日のうちに、ツイッターの「最近の流行」欄の第1位は「西ボルティモア」になり、10時間後には、#WeAreBaltimore,#TrumpIsARat,#WhitePeopleAgainstRacism,#BaltimoreStrong などのハッシュタグが登場しました。#TrumpIsARat というタグはちょっと説明が必要かもしれません。これはボルティモア・サン紙が、トランプが使った“rat and rodent”という言葉の、ratが単数形という文法的な誤りをからかったもので、同紙は“ rats’ Better to have a few rats than to be one”と厳しく社説でやっつけていました。

     読者諸賢にご注目を願いたいのは、こうしたタグは、ただカミングス下院議員を支持するだけではなく、論争がはっきり2陣営に分かれてしまっている点です。

     カミングス下院議員支持者の武器は、人種主義反対、ポリティカル・コレクトネスを大々的に掲げています。理由は、トランプ大統領のツイートに人種主義的な言葉があったからではなく、カミングス下院議員は、黒人で、しかも最貧民地区の代表ですから、「アイデンティティー政治」(訳注;社会的不公正への反対運動)
    的に完璧なのです。この二つの要素は、民主党内では初めから「ポリティカル・コレクトネス」を備えているのです。
     一方、大統領支持派は、主にボルティモアの有名な不潔さ、失業、犯罪などのファクトを指摘しています。

     ★肌の色ではない対立

     民主党の大物のナンシー・ペロシ下院議長は第一に、カミングス下院議員を強く支持するとし、2020年の民主党大統領予備選挙に名乗りを上げているマサチューセッツ州選出上院議員のエリザベス・ウォーレン(訳注:のち離脱)も、トランプ大統領を人種主義だと攻撃しました。ただ、以前と違うのは、今回の参戦者は、肌の色で分かれているのではありません。

     「#WeAreBaltimore」タグの論議では、ボルティモア市長と一部のアフリカ系SNSツイッタラーが、自分たちはボルティモア市民を代表しているとして、カミングス下院議員を支持し、トランプ大統領を非難しました。「人種主義を非難する以外に、どんな町にも良い居住地域とそうでない地域がある、トランプ大統領は悪い所だけ見ており、これは人種差別の表れだ」とし、ボルティモアを美しい都市で、自分たちは愛していると主張します。

     これに対して、トランプ大統領を支持するボルティモア市民もいます。Kimberly Klacikというアフリカ系の女性は、やはりボルティモア市民のミッチェル女史(非アフリカ系)をインタビューしました。彼女は、はっきりと大統領は真実を話しており、カミングス下院議員は自分たちに何もしてくれなかった。彼の興味は自分たちではなく、国境を越えてくる違法移民なのだ、と言いました。「トランプは人種主義者じゃない。彼がカミングス下院議員をやっつけてくれて嬉しい」とも。Klacik女史は、自らカミングス下院議員の選挙区を取材して、ビデオで荒廃した町の様子や貧困、不潔な様子をアップしました。

     こうしたビデオは、まだまだたくさんあります。この人種主義のレッテルがはられた論争を詳しく知りたければ、7月27日のツイートをキーワードで検索すればよろしい。

     こうしたビデオでは、ボルティモアの実情は分からないのと言うのであれば、FBIが発表した全米の最危険都市リストもあります。メリーランド州のボルティモアは1万人あたり98.6人の犯罪者を出しており、リストのトップです。つまり、ここでは100人に1人が犯罪者なのです。

     しかし、民主党の人々はこうした事実には注意を向けません。ただ批判者と批判される側の肌の色にこだわるのです。以前、私は、オバマ前大統領時代に大々的に強められた米国の新たな「アイデンティティー政治」は「肌の色による政治」だと言いました。今回、下院民主党はまたしても、ボルティモア事件は、人種主義だとトランプ弾劾決議をしようとしています。

    ★ボルティモア事件は、来年の大統領選挙を予見

     民主党が2017年以来、トランプ大統領は同党の極左派と伝統派の仇敵です。7月25日に私はツイッターでこう書きました。

     「ロバート・モラー元特別検察官が24日に行った公聴会での証言では、民主党は期待した結果を得られなかった。ある民主党員はCNNに、下院司法委員会委員長のジェラルド・ナドラーは、国会の6委員会の力を結集してトランプ大統領に対する調査結果をもとに弾劾決議を行う、と言った。予想される二つの大きな打つ手は、2020年の民主党は、社会主義政策で票を集め、民主党議員は引き続き弾劾の理由探しを行うことだろう」。
     2日後の、ボルティモアの論争は、私のこの予測を裏付けました。来年の大統領選挙はこうした極端な状態を露呈することでしょう。

     「アイデンティティー政治」は、2020年の民主党の大統領選挙における看板プロジェクトです。「アイデンティティー政治」の特徴は、事実や事柄の是非ではなく、論争する2人のアイデンティティーと党派の利益によって争われ、ボルティモア論争がこの特徴を体現しています。

     ボルティモアの状態がひどいことは、米国では衆知の事実で、民主党員も当然分かっています。民主党やCNNなどメディアが、トランプ大統領に「人種主義者」のレッテルを貼って批判した後、誰かがバーニー・サンダース上院議員が2015年に述べた話を見つけ出してきました。当時、サンダースは西ボルティモアを訪れ、そこを世界最貧国の北朝鮮と比較してこう言いました。

     ;「ここを見た人は、誰もがこれは第三世界のどこかだろうとおもうだろう」「今日私が訪れた地区では、半数の人々が仕事がないのだ。何百もの建物にも住むことは出来ない」。5月5日には、さらにツイッターで、「ボルティモアの最貧地域の居住民の寿命は、北朝鮮の独裁統治下の人々より更に短い。これは恥だ」という言葉もありました。

     トランプ大統領の7月27日のツィートは、サンダース議員の数年前の見方と同じことを言っただけなのです。

     民主党の眼中には、自分たちの仲間のサンダース議員の批評であれば、底辺層の苦しみに対する同情ですが、トランプ大統領が言えば人種差別です。滑稽なのは、サンダース自身、自分の数年前のこの話を忘れて、カミングス下院議員を極力支持し、「カミングス下院議員は、ずっとトランプ政府の失敗やトランプと薬品業界の友人の癒着などを追及してきたが、人種主義者の大統領は、彼が嫌いらしい」と述べていることです。

     こうした光景は、中国の文革時期を思い出させます。毛沢東時代、「建国(1949年)前の暮らしは、中共になってからより良かった。もっと自由だったし、いつも飢えることもなかった」という人がいました。これは事実ですが、「社会主義制度を敵視している」と言われ、軽ければ反革命の三角帽子をかぶせられて批判を浴び、重ければ労働改造所に送られました。

     毛沢東は、「胡風の反革命集団に対する第二の批判材料」の注釈(1955年5月24日)で、はっきりと「人民内部に先進分子と遅れた分子の間が問題を論争するのは許すべきであるが、人民と反革命の間の矛盾に対しては、労働者階級と共産党指導の下での反革命に対する専制独裁で対応する。民主的方法を使うのではなく、専制、すなわち独裁的方法をとるべきだ。彼らに勝手なことを許さず、お行儀よくさせなければならない」と言いました。

     レッテルを貼り、ポリティカル・コレクトネスを守らせようとする民主党のやり方は、毛沢東のやり方と基本的には同じものです。「反革命分子」がここでは「人種主義者」です。間違いであっても、レッテルは貼られてしまうのです。こう考えてくると、民主主義の灯台と言われたアメリカの現状は嘆かわしい限りです。

     ★米国優先論、違法移民制限はいけないのか?

     トランプ大統領の米国優先論は、ずっと米英の主流メディアから「米国独行」と解釈されてきました。違法移民を制限は、他国人民の苦難を無視し、人権に関心がないとされました。

     米国の有権者は、他国の有権者と同じで、まず、自分たちと自分たちの階級の利益を考え、次に国家の利益を考えます。指導者も、その政策が役に立つか否かを考えます。これは民主制度の本来の意義です。自分に条件があれば、米国人は国際的な義務を果たそうしますし、ずっとそうしてきました。

     しかし、民主党は、自分たちは世界の人民に責任を持つべきで、米国の有権者にではないように思っています。ヒラリー・クリントンは、2016年の大統領選挙に際して、「私が大統領になったら、まず大統領令で国境を開放し、全世界の移民を歓迎する」と約束していました。

     2020年の民主党の大統領候補選定の第1回予備選後、反トランプを任務とするニューヨーク・タイムズ紙の専属コラムニストのブレット・スティーブンスは「民主党人の悲惨な始まり」と題し、「民主党候補者の主張は、有権者の利益を無視しながら、米国有権者以外のあらゆる人々を助けることに興味を持っている」と書きました。これは、先に書いたボルティモア市民のミッチェル女史の言葉と同じです。

     カミングス下院議員の大統領の移民政策とメキシコ国境の違法移民問題に対する強烈な批判に対して、トランプ大統領は、彼に自分の選挙区の選挙民に関心を持てと反撃したことから、今回の討論は、当然、この問題を含むことになります。

     トランプ大統領が7月28日に、カミングス下院議員が自分の選挙民の利益を無視していると批判した後、こうした現状を恥じた@ScottPreslerという女性が
     ;「大統領殿。米国には5万人の帰る家のない退役軍人がおり、360万人の貧困にあある非アフリカ系の子供たちがおり、400万人の貧困にあるラテンアメリカ系の子供たちがいます。420万人の白人の子供達も貧困の中に置かれてます。それなのに、なぜ、民主党は違法移民を一番心配するのでしょう?」と問題提起をしていました。

     トランプ大統領の、ボルティモア市の現状批判が、大統領府と議会の戦いになったのは偶然ではありません。ボルティモア市の現状は、民主党が大ボラ話をする以外、別に自国民衆の暮らしには無関心なことを示しています。

     民主党は、どうやら米国人票を集めるのは限界があると知っているようで、以前から大統領選挙に、680万人の重罪犯に投票権を拡大しようとしていました。一部の民主党が政権を握っている州では、違法移民に運転免許証を与え、投票可能にすべきだと主張しています。

     そして、選挙人自己申告登録制度(訳注;大統領選挙の選挙権は、米国籍者に限られ、永住権者には選挙権が無い。加えて18歳以上であることと、通常選挙人登録を行っていることが要件となる)を廃止する議案を通そうとしています。こうした情勢の下で、ボルティモア市は必然的に、米国政治における、高度な「敏感問題」になったのです。

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     原文は;巴尔的摩为何成了美国政治的高敏感点?

     原文は;巴尔的摩为何成了美国政治的高敏感点?

    これまでの何清漣さんの論評の、翻訳はこちら

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