• 程暁農氏 ★米中関係の暗転の原因と中国の抵抗 2019年5月30日

    by  • August 11, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

     米・中貿易交渉の決裂は、40年の長きにわたった米・中蜜月を終わらせ、米・中関係は180度近い大暗転。しかし、この重大な変化をメディアは十分には理解できず、華為(ファーウェイ)事件の方にばかり目を奪われている。米・中両国は完全な対立状態に入ってはいないし、「新冷戦」が本当に始まったわけでもない。しかし、ワシントンの行政当局は、どこもかしこも防衛体制である。意味するところは、国際社会での中国の運命は、もはや順風満帆とはいかず、この先、一歩一歩が困難になるなり、「中国崛起」も当然、お話にならない。

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    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

     ★(1) 米中関係大暗転

     今年は、米中国交回復40周年。しかし、もうそんなことは記念に値しない。と言うのは、まさにこの1年、米中関係は大暗転し、米国の中国への長年の信頼は雪崩のように崩壊してしまって、中国に対する防衛心理は、空前の高まりをみせている。

     1971年のニクソン訪中に始まって、米・中関係は次第に温もりを増し、以後40年、時には波風が立ったこともあるが、基本的には蜜月状態であった。そして、中国経済の繁栄は、この蜜月時期に生まれたものだ。一年前、誰も予想しないことに、この40年の蜜月は突然終わった。現在、米・中関係は既に暗転しているが、しかし人々はその先に待つものをほとんど理解しておらず、ましてその原因となると誤解が甚だしい。

     中国の政府メディアは当然、一切をトランプ大統領のせいにしている。しかし、海外情報に接することの出来る人々の中には、中国が、経済交渉の最終段階で突然、それまでに決定した全てをちゃぶ台返ししたと知っている人たちもいる。この予兆もなく、いきなりベロを出してアカンベーするようなやり方は、重要な交渉における北京の誠意と信用を深刻に傷つけた。しかし、ただ外交上の政府の誠実度の問題程度なら、もともと米・中関係の大暗転を生み出すほどのものではありえない。米中関係の暗転の原因は、やはり今回決裂した米中会談の実質的内容を見るべきだ。
     
     中国官製メディアがこぞって主張するのは、両国間の貿易摩擦に過ぎないものを、トランプ大統領が中国の崛起をくじこうとしたから中国は応戦せざるを得なかったというものだ。この説の最大の欠点は、貿易上の摩擦だけなら、なぜ両国の友好関係が暗転するほどのこだわりをみせているかだ。世界には貿易摩擦の類は山ほどある。しかし、ここまで徹底してちゃぶ台返しをした国はない。ましてや、習近平は、ちょっと前にトランプに、米中の関係をダメにしてはならない千もの理由があると話していたばかりだ。

     ★(2)米国の財産防衛戦争;防犯体制の全面起動

     米国政府の言い分は真っ向から反対だ。米・中交渉の主要内容は、関税ではなく、中国が知的財産を盗むのを阻止し、技術の脅迫的移転をやめさせ、米国の技術に対する各種の侵略をさせない(ピーター・ナヴァロ大統領補佐官)。明らかに、米中交渉の核心問題は、中国の大規模知的財産権窃盗に対する防衛戦なのだ。中国はこの問題を交渉では一貫して避けており、最後には、きっぱりとこれまでの論議をおシャカにしてまで、高関税を受け入れても、知的財産権侵害はやめたくないのだ。(参考;《美中为何而“战”?》,)。)

     多くのメディアの論評は、ずっと米中会談の過程で、米国の高関税に焦点が当てられてきた。そこから「米国は対中貿易赤字のせいで、中国に高関税を課そうとしている」という見方が生まれ、米・中両国はどっちが得か損かという議論になった。こうした偏った見方は、事実上、中国が長期にわたって米国の知的財産権を侵害してきた事実から目を背けることになる。実際は、高関税は、ただ米国が交渉戦術の補助手段にすぎず、双方が知的財産権侵害問題を解決するための深い議論には入れなければ、高関税が懲罰的措置となる。

     交渉の初期に、米国は「もし交渉が進まなければ、1月1日から高関税を課す」として、その後、双方が知的財産権侵害問題で進展を得たので、課税の話は棚上げになった。明らかに、米国は最終的に知的財産権侵害で競技がまとまることを期待し、高関税という懲罰措置を使わないことを望んでいたのだ。しかし、中国は交渉が百歩のうち九十九歩まできたところで、突然、ちゃぶ台返しをやって、徹底的にこれまでの交渉成果を否定したので、高関税が決まったのだ。

     交渉が中断し、米中関係は本当に暗転し始めた。米国は全面的に窃盗行為防止のシステムを立ち上げた。米国の学術研究機関の中国系学者と「千人計画」の関係を調査し、中国人学生、学者の米国ビザ審査を厳しくし、ハイテク企業の中国系従業員雇用審査も厳格化し、FBIによる中国ハイテクスパイ事件の調査も加速させた。こうした数々の措置は、全てひとつの方向、米国の知的財産の「大きな門」を引き締め、中国の知的財産権侵害によってもたらされた数千億米ドルの悲惨な損失を減らそうというものだ。

     ★(3)ホワイトハウス報告 中国の経済侵略

     2018年6月18日、ホワイトハウスは「貿易と製造業政策事務所」の「中国の経済侵略がいかに米国と世界の技術と知的財産権に脅威となっているか」(How China’s Economic Aggression Threatens the Technologies and Intellectual Property of the United States and the Worldを公表。米中交渉は、この報告の議題を基にして進められている。

     この報告は詳細に中国による米国の知的財産権侵害活動が列挙されている。
     ❶ 実物の窃盗とネット窃盗;主に、電子技術、通信、ロボット、データサービス、製薬、携帯電話、衛星通信、映像、商業ソフト

      中国の国家安全部は海外で4万人の情報人員を擁し、国内には更に5万人の情報人員を持つ。さらに軍隊と科学者の協力を得ている。

     ❷ 米国の輸出管理法に違反し、大量の軍民両用技術が中国にもたらされている。
     ❸ 米国商品のコピー、財産権及び特許の侵害。
     ❹ 製品の構造を分析し、製造方法や構成部品、動作やソースコードなどの技術情報を調査し明らかにするリバース・エンジニアリング
     このほか、多くの中国人は、職業的スパイではないが、情報技術の収集にあたっている。

     この報告書が触れていないのは、こうした広範な活動の背後に、長年にわたって、政府と産業、学界の協力する戦略と、政府からの巨額の資金投入があるということだ。これは国家的な行為であって、単純な企業の行動ではないということ。官、産業、学界の三者のうちの「官」とは、単に情報機関だというだけではなく、もっと重要なことは、政府が工業の発展、科学技術開発、資金支援などの分野で、米国の知的財産権を侵害するための大量の配置を行なっており、企業と科学研究部門もそこに参加しており、「千人計画」と「中国製造2025」は、そのうちの一側面にすぎないということだ。

     ★北京は、「変化をじっと待つ」のか「抵抗して損害を減らす」のか?

     米・中交渉の経過を見ると、米側の意図は、最初から明らかだ。一方中国側は、知的財産権という核心となる問題をできるだけ避けて、外交交渉をなるべく貿易格差の縮小に持って行こうとした。後者は、はっきりと、もし協議がまとまらなければ高額の懲罰的関税を受けるのは分かっていた。こうした状況下で、北京当局はどんな交渉戦略を選ぶか?

     もし譲歩する気が最初からなければ、比較的まともなやり方としては、最初は知的財産権侵害問題の上で、妥協を拒否し、ボトムラインをはっきりさせることで、これなら交渉を延々とやる必要はない。しかし、最後になってそれまでの交渉成果を「ちゃぶ台返し」するというのは、「詭計」の類で、政府の信用もガタ落ちで、両国関係の暗転の程度も深刻になる。これは北京も当然分かっていたことで、その方を選んだということは、中国がすでに米中関係の大暗転の結果を受け入れる準備が出来ていたことを表している。

     北京当局が交渉に同意したのは、「時間稼ぎで変化待ち」を最初から考えていた可能性がある。つまり、話し合いをしながら時間を稼いで変化、つまり米国左派政党がトランプ大統領に取って代わるのを期待してのことだ。例えば、民主党伝統派の押す次期大統領選候補者のバイデンは、中国は盟友であってライバルではないとか言った。ならばトランプ大統領が中国に加えている圧力は自然に跡形もなく消え失せる。

     中共が引き伸ばし作戦に出たのは、もちろん、まず中国が輸入を拡大することによって、中国の知的財産権侵害に対する追及を弱めることだった。またその期待が虚しくなったとしても、民主党がトランプ大統領弾劾を行えば、中共は大助かりで、交渉の圧力が減るだろうという望みもあった。トランプ弾劾の可能性が弱まると、北京は、対中高関税のもろ刃の剣の働きに注目し、米国消費者にとって不利になり、トランプ大統領に不満を持つかもしれないという期待感があった。同時に、米国の対中国輸出に対する報復性の関税をかけることによって、米国の農業州のトランプ支持層動揺を期待した。

     つまり、北京当局の今回の交渉で表面上だけ調子を合わせて、密かに「費用を惜しまず戦う」気で、経済上いくらか損しても、なんとかトランプ大統領を辞任させれば、「パンダ派」(親中国派)を勇気づけて、また米国の知的財産の宝庫を中国に対して開かせることができると踏んでいたのだ。

     この「じっと我慢で変を待つ」策略は、貿易、経済面では短期的な痛みを我慢しても、長期的な利益を期待しているのだ。ただ、その弱点は計算が狂うと、「短期の痛み」が「長期の痛み」それも、過去40年間にかつてなかった長い痛みになってしまう。

     知的財産権侵害問題に、北京当局の対応はもう一つあるようだ。いわば「長期的な痛みが避けがたいなら、目先の利益を確保しよう」だ。「目先の利益」は、今のうち手に入れられる財産。「長期的痛み」は、今後、米国が知的財産の盗難防止のために反撃し、盗めるルートを閉ざすことを指す。もし、交渉中に、米国が求める「有効な共同監視機関」を受け入れれば、このルートは、自ずと死ぬし、自分の「手」も嫌でもこのルートを塞ぐ努力に駆り出され、チャンスはなくなる。

     しかし、交渉が中断すれば、米国は同様に一連の防止措置を取るだろうが、それでも「抜け穴」は存在し、長年にわたってつくってきたネットワークから、まだ重要なハイテク技術をいただいてくることが出来よう。これは「抵抗して損害を減らす」策で、知的財産権問題で、米国に抵抗し、これ以上ごっそりいただくチャンスはかなり減るにしても、それでもなんとか「ないよりましで、助けにはなる」だ。

     この策は、米・中関係の暗転が不可避になることになるが、北京当局の高望みに対し、米国はもう中国を信用しなくなる。しかし、「我慢して、変を待つ」がうまく行くかどうかは、すべて来年の11月の大統領選挙によって決まる。民主党の選挙情勢からみると、それほど楽観出来ないし、トランプ大統領の支持率は依然として上向きだ。

     今回の、米・中交渉中、北京当局は選択の余地がないまま、自分に有利になるように対応しているが、その代価は当然、悲惨なものになる。

     米・中40年の蜜月後、双方の関係は暗転し、完全な対決状態でもないし、「新冷戦」でもない。しかし、ワシントン当局は、これまでより防衛措置を高める。その意味は、国際社会で、中国の運命は、もはや「追手に風を受けて前に進む」ことは出来ず、一歩一歩が厳しいものになる。「崛起」はいうまでもない。米中関係の大逆転は、どうなるか? 現在はうかがい知れない結果を、あるいは10年後に思い知るかもしれない。(終わり)

     原文;程晓农:中美关系因何逆转?

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