• 程暁農氏★人民元安の背後に — 中国の外貨備蓄の謎 2019年8月13日

    by  • August 14, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

     ここ数日、各国メディアはみな、人民元が1ドル=7元のラインを割り込んだことと、米国が中国を「為替レート操作国」に認定したという大ニュースに注目している。実は、人民元の下落は、別に不思議ではない。中国の外貨準備は、既に不足しており、為替レートを引き続き維持していくのは無理なのだ。為替レートの変動の波より、外貨準備高に注目すべきだ。しかし、中国の外貨準備にはずっと三つの大きな謎がある。国別の内容非公開、商業銀行窓口外貨の消失、疑わしい外貨準備高のデータだ。この三つの点を分析すれば、外貨準備の真相とレートの下降、外貨管制の今後が占えよう。

     (1)中国の外貨準備は警戒線スレスレ

     8月5日の中国人民元が、1ドル7元の心理的防衛ラインを超え、同日、トランプ大統領と米国財務長官は、中国が「為替レート操作国」だとした。いわゆる為替レートの下落というのは、中国中央銀行が、暫時、これまでの伝統的な、人民元で米ドルを購入したいというマーケットの要求に対して、外貨を大量放出して満足させるという方法を放棄し。外貨備蓄のお財布を守って、人民元の値下がりを許したことだ。この動きは、米国の関税値上げに対する回答だと見ることも可能だが、中国の外貨備蓄はもはや余裕がないという点に注目すべきだ。人民元が7元ラインを割り込んだことと、外貨準備が3兆ドル警戒ラインに貼り付いている間には直接の関係がある。

     中国の外貨準備はどうなっているのかは、全世界から見ても謎だ。金額が膨大で、欧州や日本などの先進国の国債発行額には限りがあるから、とても中国の外貨準備の需要を満たすだけの量はない。だから、中国の外貨準備は大半が米国の金融市場に投入された。しかし、中国がどれほど所持しているか、損得はどうかは、外部からはうかがい知れない。

     中国の国家外国為替管理局は、毎年年報を出してはいるが、外貨備蓄の国別状況は公表しておらず、中国がどれほど米国国債を購入したかは、米国財務省の情報で、やっとおおまかに分かるだけだ。だから、各国の専門家は、中国の外貨準備高の変化の原因を判断する術がないし、増減も、どのぐらい日常の外貨収支と関わっているか、外貨の投資先の損得も分からない。

     長い間、中国はずっと対米貿易の黒字で外貨収支のバランスを維持して来た。しかし、米・中貿易戦争がエスカレートして、中国の対米輸出が減少した。果たして中国の外貨準備が不足することになるかどうかは、国際金融界と中国の有産階級の関心の的になっている。国際金融界は、現在の中国の3兆ドルの外貨準備は、中国が国際収支のバランスをとれる警戒ラインで、もし、このラインを割り込むと、中国は外貨の資金ショートを起こすと見ている。
     
     多くの人は、3兆ドルの外貨準備という膨大な数字から、世界最大の外貨準備額じゃないか、中国の外貨準備には何の心配もいらない、と思っている。しかし、実はこの膨大な外貨準備のうち、6分の5は自由に使えない。別の持ち主がいるお金で、残る6分の1ではとても足りないのだ。

     中国の外貨切迫の主な原因は、巨額の外貨備蓄を持ってはいるが、同時に巨額の対外債務も負っているからだ。いわゆる自由に動かせない部分というのは、実際は債務返還に必要だということだ。中国の外債は、政府、銀行、企業の外国からの借款は、中国国家外為管理局のデータでは、2018年末に外国債務は19,652億米ドルでその3分の2は1〜2年の短期債務(国家外為管理局2018年報)で、期日が来たらすぐ償還しなければならない。

     次は外資企業の中国における資産で、いつでも外貨に交換して持ち出せるものだ。外貨準備の大体5分の1は外国資本の投資で、6千億ドル以上。外資が一斉に引き上げたりしなくとも、当局がずっと阻止ししようとして来たわけだが、それでも、国際金融の信用が破産したりしないようにするためには、外国企業の資本・利潤の引き上げに必要な外国通貨は必ず準備しておいたほうがよろしい。

     この二つを差し引くと、外貨準備は、たった数千億ドルしか自由には使えない。それもしかし、既に用途は決まっている。石油の輸入、食料の輸入、製造業の部品など経済の日常運転に欠かせない外貨支出として毎年必要な支出や、民間航空、船舶、国際保険、海外旅行者の必要な外貨などだ。

     以前は、中国は毎年、対米貿易で3千億ドルから4千億ドルを稼いでいたから、外貨準備は安定していた。これからは、対米輸出は下降し、この収入源はあてにならなくなる。この数千億ドルが減ると、毎年の輸入に必要な外貨は、備蓄を取り崩すしかない。現在中国は対米輸出が困難になっているが、世界中で米国のように、毎年数千億ドルも稼がせてくれる豊かなマーケットはないのだ。

     (2)中央銀行が市中銀行の外貨を飲み込む?

     事実上、中国の外貨準備は、警戒ラインに近づいている。このラインはまだ大丈夫だというイメージを作るために、中郷銀行の外貨準備の数字ゲームは、2016年から始まっていた。

     中国の外貨売買は厳しい制度だ。中央銀行(中国人民銀行)の規定では、全国の4571ある商業銀行は、必ず日常の外貨売買で得た外貨を中央銀行に売らなければならず、それえが中国銀行の外貨準備になる。各商業銀行は、日常の外貨交換業務を維持するためにだけ、限られた額の外貨を持てるにすぎない。

     中央銀行の外貨準備と、全ての商業銀行の業務用の外貨が、合計されて国家の外貨準備になる。全商業銀行の外貨を合計すると、穏やかな池のようなもので、総量は大体3000億ドル前後で、上下の波の幅も普段は3%程度だ。この商業銀行の外貨量を観察すると、外貨の大規模な集中流出や流入が分かる。例えば、2015年の夏から始まった資本の外国逃避による外貨の大量消耗は、商業銀行の窓口用の外貨を急速に減らし、その年の12月の国家の外貨準備は1千億ドル減った。

     中国の国家外国為替管理局は、外貨備蓄の合計額しか発表せず、そのうちの中央銀行分と商業銀行の窓口用の外貨の区別はしていない。しかし、中央銀行の公表する二つのリストから、この変化を読み取ることは可能だ。「通貨当局資産負債表」の外貨準備増加に伴う自国通貨の放出額は、人民元で測った外貨放出額を反映しており、また全国の「金融機関人民元預金貸金収支表」の中の外貨準備増加に伴う人民元の放出額は、中央銀行の数字と商業銀行の数字を包括しており、ここから先の数字を引けば、商業銀行の外貨販売による人民元収入がでる。そこで中央銀行の外貨準備と、その他の外貨購入のための人民元レートを計算すると、商業銀行の窓口用外貨額が割り出せるのだ。

     2015年下半期に始まった大規模なキャピタルフライトが国家の外貨準備をはっきりと減らした。これが外から分からないようにするために、中央銀行は外貨準備の数字をごまかすゲームを始めた。

     2015年末の国家の外貨準備高は、33,304億ドルで、そのうち、商業銀行の窓口用の外貨は2,170億ドル、中央銀行の外貨備蓄は3兆1,134億ドルだった。2016年1月、外貨準備高は減り続け、中央銀行の外貨準備高は、警戒ラインの3兆ドルに近づいた。この問題に蓋をするために、中央銀行は商業銀行の窓口用外貨を、全て自己の名義にして、やっと3兆2,309億ドルという数字にした。

     言い換えれば、2016年1月からの中央銀行発表の外貨準備高は、全てが自己のものではなく、商業銀行の窓口用外貨を含んだものなのだ。帳簿上、これが穴とならないように、中央銀行は、2016年1月に、全国の「金融機関人民元貸借表」の外貨の概念を改正し、「全国の外貨準備増加に伴う自国通貨の放出額」から、「中央銀行外貨準備増加に伴う自国通貨の放出額」に変えた。商業銀行の窓口用外貨は、統計上で、中央銀行に飲み込まれたのだ。現実には、各商業銀行の窓口には一定量の外貨が保有されている。ただ発表される金融統計資料の中でだけ、こうした窓口の外貨は「隠れた存在」なのだ

     (3)外貨備蓄学の真実の数字にも疑問

     しかし、こうした数字いじりは、結局どこかに痕跡を残す。「金融機関人民元貸借表」の、商業銀行窓口外貨の外貨準備増加に伴う自国通貨の放出額の数字が消え失せ、中央銀行の下駄をはかせた外貨準備高のなかに組み込まれても、その結果、外貨準備増加に伴う人民元の放出額と外貨準備高の間に、異常な跳ね上がりが出てくるのだ。

     2015年12月の為替レートは7.98だったのが、2016年1月には7.49になっており、これは突然、統計が6%も跳ね上がったに等しい。しかし、政府の発表した1月の為替レートはマイナス1.1%。これで分かるのは、外貨準備増加に伴う人民元の放出額とドル外貨準備高のレートを計算すればよい。一旦、このレートに異常が出現したら、外貨準備増加に伴う人民元の放出額は、水増しされているということだ。だから、この為替レートの動きは、中央銀行が外貨準備高を水増ししたという標識になる。

     外国為替管理局が発表する外貨準備の米ドルのデータは孤立した数字で、外貨準備の国別構成は発表されていない。だから、外部からは、外貨準備の総数の増減がどこから来たのか、本当はどの程度なのかを判断するすべがない。

     最近、ロイターがある試算をした。2019年7月のユーロ、日本円、イギリスポンドの対米ドルレートが、それぞれ2.59%、0.79%、4.22%値下がりし、同月の米ドルの指数が2.48%上がった。もし、中国の外貨準備通貨が、世界の外貨準備と似ているなら、7月の外国為替レートの変動は、中国の外貨準備推定値を、ざっと240億ドル減らしたはずだ、となる。この計算方法は、主要外貨備蓄通貨のそれぞれの為替レートの変化と外貨準備高の価格変化は、外貨備蓄に自然な増減を生み出すことを示している。

     中国は、外貨準備高が安定していることを見せつけたいので、国際収支統計バランスシートにある外貨準備増加に伴う人民元の放出額は、あまり勝手に変えようとはしない。さもないとバランスシートの他の項目に異常な変化が出てしまい、容易にバレてしまうからだ。

     だから、中央銀行が米ドルの外貨準備高を水増しするにあたっても、完全に外貨準備増加に伴う自国通貨の放出額は誤魔化しきれない。だから、外貨準備増加に伴う自国通貨の放出額と米ドルの外貨備蓄の表の上でのレートには、最新の実際の為替レートとは相反する異常な変動が見られる。

     例えば、2018年8月から2019年6月まで、政府が発表した外貨準備増加に伴う自国通貨の放出額には、大きな変化は見られない。(6.81〜6.87)である。しかし、外貨準備増加に伴う人民元の放出額では21万5千億から21万2千億で、およそ3千億少ない。こうした状況で、もし外貨準備増加に伴う自国通貨の放出額と、米ドル外貨準備のリスト上の為替レートが、2018年末の水準(6.918)から変わっていないのであれば、2019年6月末の外貨準備の米ドルは約3兆0,710億(3兆710億)となり、公表された中央銀行の外貨備蓄学より480億ドル少ない。それに、商業銀行窓口の約2千億ドルの外貨を「飲み込んで」いることを考えれば、中央銀行の真実の外貨準備学は、明らかに3兆ドルの警戒ラインより低い可能性が大変強いのだ。

     (4)外貨管制の強化の動き

     以上の分析は、中国中央銀行の外貨準備高はますます厳しいものになっており、外貨準備高の数字いじりでは、隠しおおせることが出来なくなっていることを表している。

     外貨準備の3兆ドル警戒ラインを維持するために、2018年1月から2019年3月に、中国政府、企業、金融機関は総計で国外から、2600億ドルを新たに借りて、外貨を借りることによって外貨備蓄に当て、なんとか中央銀行の外貨準備高を、「安定」させたのだが、この外貨準備のなかにも、相当の「水増し」がある。しかし、短期外債が外貨準備に増えて、それが外債返済に当てられるとなると、今後の外貨準備はますますきつくなる。

     明らかに、中国の外貨準備高には隠された悩みのタネがあるし、政府はとっくに、それに対して「雨の降らないうちに修繕」を始めている。その対策とは、新たな水源を見つけて、流れを制限することだ。例えば、西側国家の金融投資を呼び込み、同時に次第に外貨コントロールを強化することだ。

     今年、7月20日、中国国務院金融安定発展委員会事務局が公表した金融業の海外開放リストでは、11条の金融業の対外開放措置を打ち出した。中国の保険業と金融業の理財商品に大量の資金を流し込めようにと、外国の投資機関が中国銀行の債券市場に投資出来るようにした。しかし、海外の主要国メディアは冷ややかな反応しか示さなかった。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「中国は新市場を解放したが、投資家はご用心」と、米校区の投資家に警戒心を持つように呼びかけた。

     実のところ、人民元の値下がりは外貨準備高が厳しくなったために起きた必然的な結果であり、もう一つの必然的な結果が外貨管制の強化だ。近年、中国政府は確実に、段階的に外貨流出を厳しくコントロールしてきた。数年前には、既に民間企業の対外投資資産を売却し、外貨を戻すように要求し、同時に党の政治幹部にパスポートを上納するように要求した。こうした動きは、反腐敗キャンペーンと関連すると言われるが、外貨流出も考慮のうちにあった。最近では、外貨管制は、一般民衆にまで及び、反腐敗キャンペーンとは無関係だ。

     新たな管制措置の中には、正常な外貨交換の制限。個人には5万ドルの限度額があるが、窓口の外貨不足の銀行では、つねに妨害を受ける。

    1;例えば、前中央銀行通貨政策委員会の委員だった余永定が銀行で、米国に行くために2万ドルを交換しようとしたら、年齢が70歳を超えているというへんてこりんな理由で阻止された。
    2;旅行制限。多くの省や市では、学校の教師にパスポートを出す時に、教育局の批准を求める。
    3;外貨の持ち出しの検査を厳格化。
    4;国外での買い物の制限、頼まれて買い物することへの審査強化。旅行時の買い物への課税強化など。

     今後、民間が外貨を使おうとするのは、ますます困難になるだろうし、国外へも出にくくなるかもしれない。あるいは外貨に替えられないとか、行かせないとか。子供の留学や、学費、生活費で外貨が必要だが、もしもっと厳しくなれば、家長は悩むことになる。

     現在、多くの民衆の関心は、人民元の対ドルレート値下がり後、どの国へ旅行したらお得だろうかとか、国内の物価はどんな影響を受けるか? ぐらいだろう。しかし、もっと注目に値するのは、今後、対米貿易の黒字が次第に減ると、外貨準備が長期的に厳しくなっていき、それは国内の民間でのドルへの各種のルートが、どんどん閉ざされていくことだ。

     原文は;人民币贬值的背后:中国的外汇储备之谜

    中両文収録「何清漣 2017中国」Amazonで発売。「2018」編集中;20152016Amazon改訳版を電子ブックで。Kindle Unlimited なら無料です
    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

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