• 程暁農氏★米中関係の危機は何を表すのか — 米中関係暗転の分析(1) 2019年8月26日

    by  • August 27, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

    中両文収録「何清漣 2017中国」Amazonで発売。「2018」編集中;20152016Amazon改訳版を電子ブックで。Kindle Unlimited なら無料です
    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

     

     米・中貿易戦争での、攻守が突然入れ替わった。北京が主導的に攻撃に出たのだ。狙いは、米国経済に攻撃を与え、トランプ大統領の政治実績に影響を与え、来年の米国大統領選挙に打撃を与えようというものだ。世界の歴史上、これは初めて、ある経済大国が、経済的な手法を用いて別の大国の経済に打撃を与え、短期間にその国内政治の将来を変えようとする試みだ。こうして、中共が「自ら敵を作る」と公開したということは、戦略レベルで経済の戦いがエスカレートしたことを意味する。

     (1)中共の米国関税は米国経済への打撃が狙いだと、北京の中共対外宣伝メディア「多維ニュース」はこう報道している。

     ;中国財政部は、8月23日、約750億ドル分(約8兆円)のアメリカ製品に5〜10%の追加関税をかけることを決定し、9月1日と12月15日に発効すると宣言。去年12月から対米交渉に配慮して凍結していた米国車自動車と自動車部品に対する最高25%の追加関税を復活すると発表。これによって、9月から米国の追加関税は、大豆で30%、海鮮、果物、肉類は35%となり、12月中旬からは、米国の穀物と車両は35%となる。また、初めて米国の原油に対しても25%に5%の関税を上乗せするとした。数時間後、トランプ大統領はツィッター上で、10月1日から2500億ドルの中国商品に対する関税を25%カラ35%に値上げすし、9月1日から予定していた3000億ドルの中国商品関税を10%から15%にすると発表した。

     中国の官製メディアの以上の報道から、これは、北京が初めて米国商品関税で先制攻撃に出て、トランプ大統領が反撃したことがはっきり分かる。言い換えれば、北京が主導権をもって攻撃したということだ。

     しかし、一部の海外メディアはこうした事実を理解せず、順序を反対にとらえて、読者を誤った理解に導いている。読者は、米国が先に、課税し、中国が反撃したのだと誤解しかねない。これをはっきりさせておくことは問題だが、もっと重要なことは、中共が先に攻撃した動機は一体何かということだ。ましてや、中共は、今回の挙によって、数十年来の米国との関係を大暗転させた訳で、それなら、なおその原因と背景は分析に値しよう。

     米・中貿易戦における攻守が突然入れ替わったのは、北京が米国経済に打撃を与え、トランプの政治実績に影響を与えて、来年の大統領選挙を攻撃しようと、進撃を開始したからだ。世界の歴史上、これは初めて、経済大国が別の大国を経済的な方法でやっつけ、短期間のうちにその政治的な未来を変えてしまおうというものなのだ。疑いなく、米中間では、もはや貿易戦争ではなく、経済戦争にエスカレートしており、その目標は、経済の範囲を超えて、直接、ホワイトハウスのオーバルオフィスの主人を目指している。

     (2)米国の反撃は中国の想定内

     北京が自分から関税を上げたのは、あたかも関税分野での戦術のようだが、その目的は大変はっきりしている。米・中貿易交渉で、中国が一方的に「ちゃぶ台返し」をして以来、こうした戦術は、米国経済を狙う具体的な意味を持つ。

     中国がこの5月に「ちゃぶ台返し」で、去年9月からの交渉の内容を全てオジャンなった。これに対して、米国は、部分的に関税を上げる一方で、引き続き中国に交渉のテーブルに戻るようにとの意思を表明してきた。もし、中共が、ただ時間稼ぎであれこれ言うだけならば、米・中関係は、うまくはいかないとしても、今日のように大幅に悪化はしなかった。しかし、北京は明らかに、「忍耐力」無駄遣いする気はなく、二日前に自ら対米製品に関税を発動したのは、攻撃姿勢だ。

     北京の突然の「攻撃開始」に対して、トランプ大統領が、全面的に課税措置で応じることは予想できた。なぜなら、5月の中共側のちゃぶ台返しで、双方の友好的な協議、問題解決の余地は失われていたし、トランプ大統領はずっと双方の意思疎通や会見を口にしていたが、それは「しないよりはまし」程度だった。

     現在、北京は、逆に自分の方から米国にプレッシャーをかけ、全面的に米国の対中輸出を阻止しようとした。つまり、事実上、米国が対中貿易の長期にわたる数千億ドルの貿易赤字額を縮小する望みは潰えて、中国側が、貿易赤字や知的財産権の侵害問題で協力するという意向も、米国はもはや期待できなくなった。トランプ大統領に残された反撃措置といえば、対中貿易の差を縮小するにはただ中国製品に対する大幅関税アップしかなかったのだ。

     米・中貿易関係のそれ以後の全面悪化は、こうして決まった。事実上、これは北京が計画した通りだ。「環球時報」ははっきりと、米国とは持久戦になると書いている。中共の対外宣伝メディアの「多維ニュース」は、「一連の勝負が終わって、残ったのは血まみれのマーケットで、ゴールドが高騰したほかは、米国株式指数、オフショア人民元レート、原油価格、米国国債収益は皆、大幅下落」とし、「双方が敗者として傷を負う貿易戦争は、新たな高みに達し…米国経済の衰退の可能性は次第に明らかに」と書いている。これが中共が、現在行なっている対米経済戦争の将来図だ。

     (3)北京はなぜ「双方負傷」策を選んだのか?

     北京はこの一年以上の間に、米・中貿易と知的財産権を巡る交渉で、態度を180度大転換させた。交渉から、「ちゃぶ台返し」で、米国から関税を小刻みに上げられて受太刀だったのが、大幅な関税で米国を逆に刺激した。

     こうした態度の急変は、北京が米国が無力で衰微してくので「機に乗じて追い討ち」を掛けようとしたのか、はたまた、「痛みが長引くより短い方が良い」と追い詰められて反撃に出たのか、米国経済に手を出したのは、トランプ大統領を引きずりおろしたいからなのか?

     北京は、はっきりと「双方負傷」戦略に出ているが、なぜか? 米国経済は今のところ、依然として好調だが、中国経済は引き続き下り坂で、正常な米・中関係では、米国経済を深淵に引き摺り込むことなどできない。だから、北京が「機に乗じて追い討ち」は無理だ。

    ならば、北京は「ほどほどのところでやめる」つもりか? 常識的に考えれば、中共は、経済を救うためには、米国と対決して「共に傷つく」のではなく、もっと米国と協力してやっていかなければならない。しかし、明らかに中共はこの道を嫌った。それどころか、米国と戦略上対決する道を選んだのだ。

     そして、その経済戦略ははっきり、米国の大統領選挙に干渉するという政治目標を備えていた。こうして、米中関係は、過去長年にわたっての経済交流は、米国内政治に干渉するツールと化した。中共が「自ら敵を作る理、またその戦略をエスカレートさせたので、米・中友好の歴史は、北京側によって覆されることになった。

     (4)「双方負傷」の傷はどこに負うか

     北京がこうした戦略をとったのは、一体何が目的なのか? いわゆる「双方負傷」の傷は、どこに負うことになるのか?

     簡単に言えば、「短期の痛み」と「長期の痛み」だ。「短期の痛み」は、北京が「犠牲戦略」で、中国経済が傷を負うことだ。例えば、米国の廉価な農産物が輸入出来ず、中国向けの大豆やトウモロコシは別の道を探し求めることになる。最近、ブラジルから中国に輸出される大豆の値段が7割も高騰したが、その中には、ブラジルが米国から輸入した大豆がふくまれている。これは、ブラジルにとって、大儲けするチャンスであるばかりでなく、中国の今後の食用油と飼料価格が大々的に上がることになり、中国の現在、急激に値上がりしている肉類などの食品価格に、火に油をそそぐことになる。

     中国内外の多くの人は、中共は民生のために「双方負傷」の道は選ばないだろうと思い込んでいた。しかし、現在、事実が証明しているのは、中国の民衆の、米中関係悪化への懸念などは、全く当局の決心には影響しないということだ。その理由は、すでに私が★程暁農;米・中交渉の勝ち負けの判定は   2019年7月20日★で書いた通り、「黙々と経済のプレッシャーに耐える民衆には当局の政策を変えるすべはなく、これが中共の経済圧力に耐える力の源泉なのだ」ということだ。

     しかし、米国の国民が、中国からの輸入品への課税や、それによる物価の上昇、市場の動揺、米国企業のパニックなどに対して、どうするかは、まだしばらく見て見ないとわからない。大幅に、米・中の貿易関係を変えたなら、米国は間違いなく「短期の痛み」を味わうことになる。

     常識から判断するなら、民主国家の民衆は、中国人の言う「大局」だの「全局」という観念はない。生活が影響を受ければ、来年の大統領選挙で、自分たちの意思を表明するだろう。北京が米国と「短期の痛み」我慢比べをやるのは、は中国の専制独裁指導者が受けるプレッシャーに比べて、米国側の「経済圧力抵抗力」が弱いと見ているからだ。経済戦争で米国の民心を動揺させ、ホワイトハウスを震撼させると言うのが、北京の米・中経済戦争に対する希望なのだ。

     米・中双方の「長期的な痛み」については、問題が多岐にわたるので、別に「続編」で書くつもりだ。

     (5)北京は「変化待ち」から「打って出て変化させる」に

     まさに、中共は、米・中両国の「短期的に痛みに耐える力」の差をもって、対米戦略を「変化を待つ」作戦から「打って出て変化させる」に変えたのだ。中共は、はっきりと、自分の「痛みに耐える力」は、専制体制によるものであって、米国より大幅に強いと知っている。この力は、「短期的な痛み」を「無痛」にさえ出来るのだ。

    で、短期的には「何者も怖くない」ことから、中共の主な注意は「長期的な痛み」に向けられる。まさにこちらの方が、現在の外資企業の撤退や、中国への発注が減少していること大きな「長期的な痛み」が中共の無力感、打つ手がないと感じさせているのだ。

     はっきり分かることがある。もし、トランプ政権が、小幅の関税値上げだけで、中共がそれに歩調をあわせて行ったならば、中共の「引き伸ばし策」は、中共を「長い痛み」で苦しめ、トランプ大統領は無傷で、選挙でもより強固になったかもしれない。

     しかし、一旦、中共が「打って出て変化させる」となって、米国にある程度の「短期的な苦痛」を与える戦略をとったとなれば、少なくともトランプ大統領の経済面の政治的実績を傷つけ、選挙区を揺るがせ、米政局を中共に有利に傾かせる方に誘導出来る。

     当然、北京の選んだこの「双方が傷つく」道は、後戻りできない道だ。米国への敵意は、もう丸出しとなった。今後、「米・中友好」はただの空文句に過ぎなくなる。トランプ大統領は、ツィッター上で、「中共は敵なのか?」とまだ疑問符をつけているが、北京は既に、行動で自らの決心を「自ら敵を作って、余計なことは考えない」で、「いろいろあっても、トランプを倒すことが大事だ」と決めたのだ。

     こうした状況にあって、米国民がどう反応するか、多くの選挙民はトランプ大統領への不満を高めるか、それともそれより多くの人々がトランプ大統領の対中国政策を支持するかについては、尚、ウォッチングを続ける必要がある。(終わり)

    原文は;程晓农:美中关系转安为危说明了什么?——中美关系大逆转解析之一 
    程暁農氏★米中関係の危機は何を表すのか — 米中関係暗転の分析(2) 2019年8月27日

    Print Friendly, PDF & Email

    Leave a Reply

    Your email address will not be published. Required fields are marked *