• 程暁農氏★米中関係の危機は何を表すのか — 米中関係暗転の分析(2) 2019年8月27日

    by  • August 28, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

    程暁農氏★米中関係の危機は何を表すのか — 米中関係暗転の分析(2) 2019年8月27日

     (1)北京当局の3枚の「切り札」の危うさ

     この一年以上の期間、北京は、トランプ大統領が米・中貿易赤字の縮小と、知的財産権侵害の中止を求めを、大変不満に思って来た。それでも、西側民主主義は所詮、財閥が支配する政治だから、米国の中国に進出した「悠々たる米国大企業」が同盟軍となって、トランプ大統領の対中国政策を変えさせるだろうと踏んでいた。

     しかし、数日前に、中共が経済戦争を発動したことは(本編の米中関係暗転の分析(1)で書いた通りだ)、今や、そうした「同盟軍」の在中企業をあてにしているだけでは、トランプ大統領を阻止するには不十分だと考えるに至ったということだ。それどころか、こうした米国企業は、次々に、発注先を中国から他国に移し、中には工場を売りに出して、トランプ大統領の「同盟軍」になってしまうのもいる始末だ。こうして、中共は、自ら直接出陣し、米国産品に関税を、米国経済にプレッシャーをかけて、トランプ大統領に一層大きな打撃を与えようとしている。

     北京当局が、米国の在中国企業の動向を読み違えた理由は、自分たちが3枚の切り札を持っており、黙っていても米国企業が、トランプ大統領に圧力を加えるだろうと思ったからだ。この3枚の切り札とは、中国市場の無限の大きさ、中国だけが持っている完全無欠のサプライチェーン、外国の在中企業のたっぷり魅力的な利潤、ということだ。

     しかし、第一に、中国市場は、もう飽和状態だし、中国の国内企業への数々の保護措置は、外資企業が中国市場を開拓する余地を大いに狭めてしまっている。第二には、中国の整ったサプライチェーンは、確かに外国企業やその中国の代理人にとっては、魚と水のような関係ではあるが、しかし、別に「秘密の独擅場」という訳ではなかった。第三に、外国企業の利潤は、何十パーセントにもの関税を消化できるほどには高くはない。いったん、相互に高関税を掛け合えば、外国企業といえども、中国の利便性にいつまでも未練タラタラとまではいかないのだ。

     ただ米国の在中企業の動向を読み間違えただけなら、中共は、まだ対米政策を調整するだけでよかったかもしれない。しかし、中共は、グローバル経済に対して、より大きな三つの誤認をしてしまい、ますます当てが外れてしまった。

     現実が次第に分かってくると、経済のグローバル化が産んだ「長期の痛み」はもう、取り返しがつかず、今、一歩一歩、中共への圧力となって来ている。

     (2)グローバルかは、永遠に「脱中国」にならないか?

     北京当局の第一の認識違いは、経済のグローバル化は、いったん中国という「世界の工場」に根を下ろした以上は、不変だと思い込んだことだ。中国はグローバル経済の「牛耳をいつまでも取ったまま」構造的にグレードアップしていけるとおもったことだ。

     事実はこうだ。経済のグローバル化はもともと、資本と技術の普段の流動過程に他ならず、一箇所に根を下ろして不動だ、などといことはないのだ。去年、書いておいた★程農暁 ★第五波のグローバル製造業移転は中国から始まる★ 2018年9月24日
    ;「変化しないサプライチェーン」など存在しない。20世紀以来、世界では4回の大規模な製造業移転が起きている。20世紀初頭には、英国の一部過剰生産力が米国に向かった。1950年代には、米国の製鉄や繊維などの伝統産業が日本とドイツに移転した。60〜70年代には、紡績業、軽工業が先進国から、アジアの「小龍」や一部ラテンアメリカに移転した。80年代には、先進国と新興工業国の労働集約型産業と低技術高消費型産業が中国に移転した。そして、2000年から、中国は産業移転の最大の受益者となり、「世界の工場」になることが出来た。しかし、21世紀の初め以来、各国の製造業の競争力の驚くべき変化によって、既にグローバル製造業における第五波の大移転時代が始まったのだ。

     確かに、経済のグローバル化は、中国を「世界の工場」にした。しかし、中国の賃金コスト、税金、エネルギー価格、為替レート、労働さえ遺産効率などの要素の影響で、一部の「世界の工場」は、とっくに「脱中国」の過程にある。大体10年前には、「世界の工場」が南に移る動きが見え、そこからアパレル、製靴、玩具製造などの作業のサプライチェーン再配置が引き起こされた。その頃から、中国の「世界の工場」の下り坂への勢いは止められなくなっており、米・中貿易戦争は、その過程を加速したに過ぎない。

     (3)トランプと正面対決するより

     北京当局のグローバリズムへの第二の認識違いは、「自分たちの世界の構造システムは、既に完成しており、このシステムに動揺を与えるいかなる変化も、全て中共の利益に対する脅威である」と信じたこと。トランプ大統領になってからの対中貿易政策の転換は、「世界の工場」を下り坂に追いやる最大の悪玉であるから、いかなる代価を支払ってもやっつけねばならない、という考え方だ。トランプ大統領の対中国政策さえやっつければ、「世界の工場」の繁栄と栄華が戻ってくる、と考え方が背景に潜んでいる。
     
     しかし、中国にいる外資企業にしてみれば、引き続き中国で生産を続けられたら、それは便利で結構、だが、米・中両国が経済面で対決しており、実際に企業経営上の不確定な危険が生まれている。多くの外国企業は、中国での経営で実際に損害を被ったからではなく、中国で経営することの危険性を把握するのが難しいから、危険を避けるために、やむをえず発注先や工場を中国以外に移すのだ。中共と米国の対決は、こうした外国企業の撤退行動をより加速した。

     日本経済新聞は今年の7月18日にこう指摘している。

    ;現在の世界的なサプライチェーンの分化は、中国と非中国の二つの部分になった。いつ終わるか見当もつかない米・中貿易戦争は、まさに外資企業の経営戦略を揺るがせている。生産を中国大陸以外の地に移転させる主要グローバル企業が増えており、インドやベトナムなど中国周辺の国家への投資が、今や1〜3割増え、外資企業の資金投入先ははっきり変化している。台湾のハイテク企業も、東南アジアと米国に生産設備を移している。新竹工業技術研究院の統計だと、台湾の900以上の上場企業で、既に投資として191の工場が東南アジア、インドに建設されており、そのうちインドはことに新興市場として、多くの台湾企業のお気に入りで、ベトナムも最も人気のある投資先だ。

     いわゆるグローバル供給チェーンの分化を、中国と非中国の二つの部分に話変えるには、二つのレベルがある。一つは、多くの産業の供給チェーンが、もはや中国に依存しなくなったこと。グローバル産業チェンが先進国に輸入する商品の原料と中間産品の比率は、1995年の26%から、2010年には31%の最高を記録した。それがこの2年間にまた30%に低下している。これは、グローバル供給チェーンに停滞、あるいは縮小の形跡が見られるということで、製造業の自動化にも関連しており、全てが米・中経済戦争の結果ではない。

     二つには、中国の「世界の工場」の表看板は、次第に「世界」の運命から乖離しつつある。現在はまだ、中国は「世界の工場」としての実態を保ってはいるのだが、先進国市場からの発注は、日増しに流出している。まず最終製品への発注が下降し、次に部品生産の発注が変化する。米国市場からの発注が減り、東南アジアの企業からの発注に変わる。こうして、「世界の工場」は次第に「先進国」から離れて、東南アジアや南アジアの企業に、部品を提供することが生き残る道になっていく。

     (4)売り手が王様か?

     北京当局のグローバリズムに対する錯覚の三つ目は、自分たちが社会主義経済制度の「供給が一切を決定する」といった感覚を持っているで、グローバリズムを見ることから来る。自分が「世界の工場」なら、全世界経済の命脈を左右出来るものと誤解し、自分たちの供給チェーンを使えば、簡単に買い手側の命脈を握って、なんだってやれるんだ、と考えるのだ。

     実際は、グローバリズムの基本的な背景は、売り手市場などではない。買い手が力を持つ買い手市場なのだ。発注が一切を決定する。売り方は、オーダーに従わねばならないのであって、買い方は、売り方が1人しかいない場合に成立する「売り手市場」ではない。そして、中国の「世界の工場」の供給チェーンは、元々は、外国企業がもたらしたものだ。中国の独創でもなければ、中国が技術や生産設備のシステムを独占しているわけでもない。外国企業の援助の下で、こうした供給チェーンは、次第に整ってきたのだ。だから外国企業が、どうやって供給チェーンを作っていいか知らないというわけではない。ただ、別の国にまた作るとか、要請した技術要員を、また養成しなければいけないとなると、これまでの投資が惜しいだけだ。

      それでも、今、米・中経済対決の構造がいったん出来てしまうと、中国の外資企業や、長年中国に発注してきた多国籍企業は、危険分散のために発注の一部を中国から移さざるをえない。だから、他の国に新たな供給チェーンを作り始めている。これには当然、一定のプロセスと時間が必要だ。とりわけ、長い供給チェーンを必要とする業界では、その下流にあたる組み立て工場は他国に移せても、部品は依然として中国からの輸入品に頼ることになる。しかし、中国部品への依存度を下げるために(中国部品に依存しすぎると、米国への輸出で高額の関税を支払わねばならない)、西側の企業は、相対的に簡単に部品を入手可能な中国以外の国家に、別のチェーンを作りるだろう。中国の部品を完全に必要としなくなるまで。

     中国は、先進国からのオーダーに安住出来ないとなると、その結果は「いったん去った顧客は戻ってこない」になる。米国企業が、いったん移転して根を下ろしたら、当然、「元の草を食べに」戻ることはない。「世界の工場」はこうして次第に減少し、今後は主に、欧州とアフリカに向かうだろう。過去20数年にわたって、米国に依存し、毎年何兆ドルもの純利を得て、外貨準備高を補充してこれた情勢には、もうもどらない。

     (5)米中経済戦の成否の兆しが見える

     現在、米国ビジネス界は、米・中経済関係の悪化を大いに懸念して、次々に発言し、トランプ大統領に自重を求めている。あるいは、トランプ大統領も、今後一定の期間、一部の商品を関税リストから外したり、値下げしたりするかもしれない。しかし、実業界が、高いリスクに直面しているのは、もう既成事実。経営者たちが、「中国死守」に運命を賭けるだろうと期待するのは無理だ。企業には「備えあれば憂いなし」だ。だから、トランプ大統領が、関税問題で譲歩しようがしまいが、米国企業の再編成への歩みは変わらない。中共にとっては、これが「長い痛み」が更に長引くことになる。

     「遠き慮り無ければ近きに憂いあり」というが、今の北京が直面しているのは「短い痛みは耐えられるが、長期の痛みは消せはしない」だ。中国経済の衰微は加速し、厳しい日が来ることはますます明らかだし、これまでに想像もしなかった緊急対応措置が次々に出される可能性がある。例えば、外資撤退に際しての企業譲渡のお金を外貨に交換させないとか、外国企業の撤退を何がなんでも阻止にかかるとか。つまり外貨流出を防ごうとするわけだが、そんなことをしたら、中共の国際金融面でいかに脆弱化を暴露してしまう。

    言えることは、米・中経済戦争がどうなろうと、中国の対外開放の約束は、いつもいつも西側国家の期待を裏切ってきた。それが一歩進んで、懸念、撤退、中共側からの撤退阻止、など在中国の外資企業の危機感を加速し、ますます懸念を深めさせるという悪循環になってしまうということだ。

     米・中関係における中共の強硬姿勢は、ひとつの賭けではあるが、中国経済の未来について言えば、「短い痛み」も「長い痛み」もどちらも傷になるなのだ。一方、米国にとってみれば、中国市場への依存度は一定の限界があり、金融市場には動揺が走るだろうが、経済全体から言えば、依然として相当程度、自力で支えることができ、「長期的な痛み」は大したことにはならない。これから見ても、米・中経済戦争は、始まったばかりだが、その実、成否は既に、垣間見えるのである。(終わり)

     原文は;程晓农:中美贸易战因何升级为经济战?——中美关系大逆转解析之二

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    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

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