• ★習近平の「肉を切らせて骨を断つ」作戦がトランプを苦しめる  2019年8月30日

    by  • August 30, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

     まず、8月23日からの複雑な米・中双方のやりとりを簡単に振り返って整理してみましょう。

     ワシントンが言った9月初めの会談は、まだ影も形も見えません。8月23日以来の米・中間では、相変わらずパンチの応酬でした。中国側が、750億米ドルの米国商品に対する5─10%の追加関税を発表直後、トランプ大統領は頭にきて、関税の全面値上げ以外に、習近平を「友人」から「敵」と呼び変え、核弾頭級の波紋を論評を引き起こした、米国の在中国企業の撤退を呼びかける「国際緊急経済権限法」を発動する準備をすると述べました。(訳注;1977年に制定された法=IEEPA=中国を国家非常事態宣言の対象する)

     世界がこの「核爆弾」を心配しているとき、中国の劉鶴副総理が、重慶の会議で、貿易戦争をこれ以上、エスカレートさせたくないと語ったのは、世界を安心させ、先を争って報道されました。これに対して、米国側も積極的に反応し、トランプ大統領は26日、ツィッターで米国側の官僚の元へ、中国側2官僚から電話があって、交渉に復帰したいと連絡してきたと言い、再び、習近平は「敵」から「偉大な指導者」に戻りました。しかし、中国外務省のスポークス・パーソンの耿爽は「そのような電話は知らない」と言いました。

     中国政府側は、態度を明らかにしませんし、米側は電話の詳しい内容の公表は拒否したので、世界は憶測を逞しくするしかありませんが、唯一はっきりしているのいるのは、中国側は、米国農産物の購入を拒否することによって、来年の大統領選挙に影響を与えようとしていることです。

     ★トランプ大統領の「後悔」とは?

     8月25日の主要7カ国(G7)首脳会議が開かれているフランスのビアリッツで、5%の関税上乗せについて後悔はあるかとの記者団の質問に「いつも再考慮しており、考えを変えることもある」と答えたので、世界は、トランプ大統領が軟化の兆しを見せたと思いました。しかし、そのすぐ後に、ホワイトハウスのグリシャム報道官は「トランプ大統領が後悔しているといったのは貿易戦争を発動したことではなく、中共にもっと強く出なかったことだ」と声明を発表しました。

     2018年3月に、対中貿易戦争のメモで、その理由を巨額の貿易赤字と、「中国製造2025」が、米国の知的財産権を侵害し、米国の競争力を傷つけているとしています。そしてその一年以上前に、ホワイトハウスは、中米関係の「パンダ派(親中国派)」に対して、政治的打撃を与えています。こうしたことから、トランプ大統領の対中貿易戦争は、深く考え抜かれた上で発動されていることが分かります。

     米・中貿易戦争開戦時には、大統領選挙までは、まだ2年以上の時間がありました。トランプ派としては、中国はプレッシャーと、道義的な(各種の知的財産権侵害)で劣勢で、経済的な実力も大きな差があって、一年ぐらいで勝利を収めて、戦争終結出来ると踏んでいたのでしょう。

     大豆、とうもろこし、豚肉、石油などの製品につても、ホワイトハウスは、こうした品々は生産に周期があって、他国が一度に提供することはできないから、中国が武器にしようとしても、必然的に自国民を食糧不足に陥れるだけだ、と。ですから、一年ちょっとの貿易戦争で、大統領が選挙公約を守った姿は、2020年の大統領選挙の力になる、と。

     上記のような要素を考えると、「後悔」というのは、おそらく、一つには、大統領任期の第1期に、危険度の極めて高い、コントロールできない対中貿易戦争を始めたこと。(普通、大統領は第2任期に初めて、自分がやりたいことに手をつける)次に、習近平のプレッシャーに耐える力を過小評価していたこと。中国人が強権圧政の痛みに耐える力は、米国人に比べてはるかに強いのです。

     この間、チャンスは常にあるように見えましたが、遠慮なしに中共に対して切れるカードはありませんでした。例えば、香港の「反送中」の大デモが怒って、香港の特別関税区の地位が、カードになったとしても、しかし、邪魔な要素が多すぎました。一つには、香港には1300もの米国企業がベースを置いていますし、二つには、香港との貿易黒字です。2018年の香港貿易の黒字は340億米ドルです。本当に、香港の特別関税区の扱いを取り消したりすれば、米国内の大企業が、先を切って大反対するでしょう。ですから、8月13日の記者会見では「中国が貿易協議を達成することを期待するが、中国の指導者は香港に人道的に対処すべきだ」と発言しましたが、これはただちょっと言って見ただけの話でした。

     第3の後悔は、盟友国の対中国に対する態度でしょう。米国はずっと、各国は、皆、中国の知的財産権侵害の日外国であり、中国が国際ルールを長いこと破っているのに不満をつのらせていたから、貿易戦争には、当然、盟友やその他の国々も、自分を支持するだろうと思っていました。しかし、案に相違して、半年も経つと、最初は喜んでいた国々も、自分たちの利益も波をかぶりかねないと知って、ただただ米国がさっさと終わらせてくれるようにと思うだけになってしまいました。盟友国家の不満ぶりは、米国の主流メディアが、毎日のように報道しています。

     ★習近平の「肉を切らせて骨を断つ」

    貿易戦争では、中国はもともとは守勢でしたが、今年の5月以後には、大変はっきりと戦略を明らかにしました。米国に反撃し「10本の指を傷つけても、一本の指を断つ」とばかりに全てをトランプ大統領の票田を攻撃し、再戦阻止にしぼりました。農産物を絶対買わないことにしたのです。8月23日に課税増額を宣言した産物のうち、大豆、豚肉、原油などは、もともと関税を上げていたものです。

     中国のこのやり方は「肉を切らせて骨を断つ」ものです。中国は、農産物の輸入大国で、各種の農産物は、値段が変わっても需要は変わりません。米国からの農産物を買わないとなってから、中国の農産物の価格は値上がりし、豚肉の場合、ロシアがとって変わりましたが、アフリカ・ブタコレラというとんでもないものを引き入れてしまい、一層、豚肉の供給がきつくなりました。

     「新京報」8月25日の報道によると、豚肉は500グラム88元にもなり、消費者は受け入れがたいと感じています。絶対に必要な需要分は、どこか別の国から購入しなければなりません。フランスの対中国豚肉輸出は、以前の年間10万とんから11万トン、今年は15万トンにもなりました。輸出量が増えると同時に、価格も上がって、フランスの輸出豚肉は7ヶ月間に35%も値上がりしました。中国はブラジルから大豆を輸入していますが、実は多くのブラジルの商人は、米国の大豆農家から低価格で買い取って、高値で中国に売っています。日本の安倍首相は米国から、トウモロコシを買い付ける意向を示し、誰かが「中国に売るつもりでは」などと勘ぐっています。
     
     ★今後の交渉のポイントは何か?

     両国の最終的な交渉は、米国の次期大統領選挙が終わるまで達成されることはないでしょう。ただ、農業生産品購入についてはちょっと進展がありました。

     米国の農民は、米・中貿易戦争によって苦境にあります。最近、イリノイ州の大豆協会マーケット部長のマーク・アルバートソンは、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に対して、在庫が積み上がっていると述べ、「米国の大豆農場主と、彼らの債権者たちは貿易戦にピリピリしている。この角度から見れば、唯一の勝ち組は我々の南米のライバルたち(アルゼンチンとブラジル)だ」。米国政府は1エーカーあたり15ドルの補助金を計画していますが、全然足りません。農業州はトランプ大統領の選挙基盤です。大豆農家の損害は、★「米国産大豆」が中国側の必殺の武器? 2019年7月15日 に書きました。

     中国は、全国29省に合計で20億元の、臨時補助金を民心慰撫のために出しています。例えば、福建省のあるところでは、地元消費者は身分証をみせて1人1kg制限で、80元を支給するとか。豚肉1キロにくらべると微々たるものですが、政府が人民の暮らしを気にかけているポーズでしょう。こんなわけで、中国はちょっとは米国の農産物を購入して、自国の不足を補い、中国の怒りをなだめるかもしれませんが、決して、ホワイトハウスが満足する量は買わないでしょう。

     中国の劉鶴副総理から、米国の高級官僚への電話というのは、内容が公開されませんが、明らかになった話からすると、多分、私はトランプが「国際緊急経済権限法」を発動をなだめるためで、今、中国から離れるべきかどうかを考慮している米国企業を落ち着かせるためかとおもいます。

     トランプ大統領が、習近平を「敵」としたツィートをいくつかアップしてから、トランプ政権のクドロー国家経済会議(NEC)委員長は、CNNの番組「State Of The Union」で、トランプは本気で命令するつもりはなく、米国企業に、ビジネスとサプライチェーンを考慮して中国を出て、米国に戻るべきだと提案したのだ、と言いました。

     ホワイトハウスも、とっくに中国がトランプの票田を狙って打撃を加えている「陰謀」を承知していますが、どうしようもないのです。というのは、別に国際ルールに違反しているわけではありませんから責められません。ましてや、米国内には、政界からメディアに至るまで、多くの勢力が中国のトランプ攻撃を喜んでいて、ただ口には出さないだけだからです。しかし、最近の会合は、中南海よりトランプ大統領の方が、貿易協議の合意を切望していることが、現れています。

     資源を深く対外依存している大国である中国が、「肉を切らせて、骨を断つ」自傷方式で米国と戦うのは、これが初めてではありません。かつて毛沢東時代の中ソ対立でも、ソ連を世界革命の領収にさせまいというだけでやりました。しかし、米国人が痛みに耐える力は、はるかに中国人に及びません。米国のいくつかの主流メディアの中で、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、トランプの姿勢に、ずっと中立を保とうと努力してきましたが、ついにたまりかねて、8月27日付で、「トランプ大統領は来年の大統領選挙で優位に立とうとして、対中貿易戦争で無理やり優勢を誇示している。しかし、去年のアンケートでは、中国は唯一、米国人が不公平貿易関係にある国家だと認識しているが、こうしたトランプ大統領の居丈高な姿勢は、逆効果で、もし貿易戦争がエスカレートしたら、関税の痛みはますますはっきりして、経済もさらなるプレッシャーを受けるだろう」書いている。

     トランプ大統領にとってみれば、はっきり、相手側が自分の弱みを掴んでいることがわかっているわけで、もっと良い戦術を考えるべきでしょう。暫時、妥協をしても、2期目続投を危険に晒すよりは、ずっとよろしいかと。(終わり)

     原文は;华盛顿与北京:谁更想要贸易协议?
    2019年8月30日

    中両文収録「何清漣 2017中国」Amazonで発売。「2018」編集中;20152016Amazon改訳版を電子ブックで。Kindle Unlimited なら無料です
    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

    Print Friendly, PDF & Email

    Leave a Reply

    Your email address will not be published. Required fields are marked *