• ★共産党資本主義VS福祉資本主義ー映画『アメリカンファクトリー』を見て(1) 2019年09月10日

    by  • September 17, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

    中両文収録「何清漣 2017中国」Amazonで発売。「2018」編集中;20152016Amazon改訳版を電子ブックで。Kindle Unlimited なら無料です
    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

    バラク・オバマ前米国大統領とミシェル・オバマ夫人設立の制作会社ハイヤー・グラウンドが手掛けたドキュメンタリー「アメリカン・ファクトリー(American Factory)」がネットフリックス(NETFLIX)を通じて配信開始され、多くの批評がなされています。

     西側では、ニューヨーク・タイムズ紙は、労働者の利益に、フィナンシャル・タイムズ紙はグローバリズム下の中国人とアメリカ人、そしてAIとの衝突に着目しました。中国の様々な反応は更に複雑ですが、しかしどれも、これは「共産党資本主義」と西側の福祉型資本主義の対決だという、最も本質的な問題には言及していません。

     中国共産党の資本主義には、二つの部分があります。一つは、国有企業が代表する国家資本主義で、もうひとつは民営企業が代表する非国家資本主義であり、後者は前者より利益追及への本能が更に強いということ。そしてこの二者の共通点は、党によって労働者の代表を抑え込むということです。

     ★多くの論評が避けているのは何か?

     この映画が優れているのは、大変、直感的にわかるように共産党資本主義と福祉型資本主義の衝突を描いている点です。共産主義は、誕生したその日から、資本主義の消滅を任務としており、プロレタリアート(労働者)は「資本主義の墓堀人」です。西側資本主義は世界各国で、派生的な資本主義、例えばアジアでは家族血縁資本主義と国家資本主義、ラテンアメリカではピンク色の波の後に、市場社会主義を生みましたが、西側国家内部で自分たちのモデルを堅持し、その一連の管理方式で自国労働者を押さえ込んだことはありません。

     中国のガラス製品メーカー、福耀玻璃工業集団(フーヤオ・グラス  曹徳旺会長)の管理方式は、中国モデル(共産党資本主義モデル)を代表しています。このモデルは、労働者に過酷な労働と、「低い人権意識」を特徴とし、西側からは「血と汗の工場」と批判され、21世紀の最初の10年間で工場許可審査で改変され、フーヤオ・グラス・アメリカも米国に工場を作るにあたっては「郷にいれば従え」で、多くの改善がなされました。しかし、この種の共産党氏品主義の管理方式と、福祉的資本主義に慣れきった資本主義国の米国労働者の間には、それでも多くの衝突が起こり、その一番強い訴えは「彼らは労働者を人間扱いしない」でした。

     私は、大変よくオバマ理念と経済政策を承知しています。特に、彼がヒラリー・クリントンに託そうとした「オバマの政治遺産」を研究したことがあります。ですから、この映画を見た後、オバマの心中の苦衷を察することが出来ます。公平に言えば、映画の投資家として、オバマはこの映画で、事実を紹介しており、思考判断は観衆にまかせています。この点では、オバマはジョー・バイデンよりはるかに現実的です。バイデンは今年8月のアイオワ州での講演で、なんと「我らは事実より真実(理想)を選ぶ」と言いましたからね。

     ★オバマの苦衷;TPPは米国製造業者の反対で挫折した

     この映画は、一部からは「オバマの米国製造業への死亡診断書」と呼ばれています。これは環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の挫折と直に関係します。オバマはホワイトハウス入りした際、対中国外交政策決定に際し、中国外交部の下部組織の国際政策研究所に丸投げしたほど、中国には前代未聞なほど好意的でした。しかし、中国側の不適切な対応によって、オバマ大統領の第2任期においては、中国に対する警戒心を持つようになって、「中国などの国にグローバルなルールを決めさせてはならない」という動機で、TPP構想を提案しました。中国を排除し、中国政府の経済的な関与を制限する努力をしたのです。(詳しくは、TPPはなぜ中国を仲間はずれに?2015年10月7日 /参照)

     オバマがTPPを作る決心をしたのは、米国市場を開放することによって、TPP参加国メンバーに関税を低減し、仕事の機会を増やし、産業製品の競争力を強化し、そうした国々の経済を振興させ、中国への依存度を下げて、アジア太平洋の国々の米国の求心力を強化しようとしたのでした。

     しかし、公平に言えば、TPP参加国家に全面的に開放する米国側には、経済的なメリットがありませんでした。ですから、TPP計画が提案されて以後、米国国内では論争が起き、反対したのは主に米国の中小企業だったのです。フォードを代表とする米国自動車業界人士は、TPPは、米国自動車界を日本のような国に売り渡すものだと言いました。販売業績が振るわなくなれば、米国の製造企業には、生産を海外に移転するか、きっぱり廃業するかしか選択肢がありません。どちらにしたところで、傷つくのは、仕事しながら大学の学費や老後の年金を積み立てている米国家庭です。

     米国の労働組合の力は、欧州のように広く強力な存在ではありませんが、しかし、鉄鋼業と自動車産業は、まさにその中では最強の存在でした。そしてこの二大産業はグローバリズムの衝撃を最も受けており、失業者も最多でした。まさにそれが理由で、2016年の米国大統領選挙においては、共和党の候補者だったトランプだけではなく、オバマ政治の遺産を引き継ぐといった民主党候補だったヒラリー・クリントンも、当選後はTPP協議を廃止すると約束せざるを得なかったのです。

     米国労働組合のブルーカラー層は、米国民主党の何十年来の鉄板の支持層で、これは2016年まで続きました。民主党のクリントン大統領はグローバリズムの推進者で、彼が中国のWTO加入支持したあと、米国の製造業は没落の道を辿ったのです。2000年から2010年まで、米国の製造業のどの部分も、就業先を失いました。下降幅の最大だったのは、コンピューター部門と電子工業、運輸、設備工業です。このあと、製造業は就業は、米国の特定地域で、ずっと増え続け集中しました。

     中国はグローバル化の最大の受益国になりました。その10年間に、米国の労働組合と関連NGOは、社会的良心に基づいた企業の社会責任標準認証(SA8000)を、中国で推進するために、バイヤーが中国企業に工場審査を要求し、国際的、地域的、業界的な「社会責任」の標準の認証を受け、資格証書を得るようにし、それが購入の条件となるように、おもちゃ、電子、アパレル、靴、帽子、小売業界などを、審査の範囲に加えるようにしました。いわゆる「企業の社会責任」基準で、その中でも最重要とされた条項は、労働環境の安全面でした。(SA8000は、NGOソーシャル・アカウンタビリティー・インターナショナル SAI による、労働安全の国際規格)

     「アメリカン・ファクトリー」では、フーヤオ・グラス・アメリカ社の労働環境に安全が欠如しており、工場環境の不安全さから、容易に労災事故を招く様子を見せています。例えば、華氏400度から1.8m距離をおいて作業しなければならないとか、車の積載過重とか労働環境が労災を招くとか、ライン作業の労働者が疲労し過ぎるなどなど、米国の労働者からは、こうした労働環境に大変批判的で、不断に堂々組合がこうした問題を解決しようと介入を図りました。

     そこで曹徳旺会長は一案を思いつき、の管理職層を、中国の福耀ガラスの工場に参観させ、低効率、非効率な状態を変えさせようとしました。米国人管理職層が、中国の福耀ガラスの労働環境を見学した時、ガラス工場の労働者たちが、マスクや安全手袋も配給されないままに働き、ベルコンは永久に止らず、労働者は1日12時間労働で、週末の残業は当たり前、普通の労働者の華族は、皆、国許に返されている状態を見て、これが本当の「安全でない状態」なのだと納得せざるを得なかったのでした。

     米国が推し進めた「SA8000」は最近廃止されています。その「歴史」をとくと知った上で、フーヤオ・グラス・アメリカを再認識するならば、最近、西欧側がようやく認識に至った事実、つまり「グローバリズムは第三世界国家を先進国にするのではなく、先進国を第三世界化させるものだ」ということを認めざるを得ないのです。

     中国企業にSA8000認証を受けさせようとした背後には、実際、米国の労働組合がありました。米国の労働組合は、工場がこの審査を受け、企業コストが増えることによって、中国企業の低コストという優位性を弱め、製造業を米国に回帰させようとしたのでした。

     しかし、これはオバマ大統領が2008年に当選した結果、おしまいになりました。オバマ大統領とハイテク多国籍企業の親密な関係、こうした企業からの政治献金によって、オバマ大統領のあらゆる経済政策はすべてハイテク産業中心になりました。オバマ大統領は、ネットの中立法案で、断然、’ネット企業を支持した他、facebookやYahoo!、Microsoft社に有利な移民改革を支持して、労働組合を批判しました。さらにGoogleやApple社の特許権改革を支持しました。2012年初め、オバマ大統領は、ハイテク企業を支持して、ハリウッドの民主党に反対し、著作権法案に反対しました。こうした数々の行為でオバマは、正真正銘の米国ハイテクナンバーワンの大統領になりました。

     米国の企業研究所のジェフリー・アイゼナッハは、「ある意味で、オバマ大統領はネットの中立を積極的に支持し、独立監督機関に干渉したのは公平な気持ちから出たものではなく、友人を支持するためだった。疑いもなく、シリコンバレーと大統領は大変親しい関係にあり、それは小ブッシュと石油業界の親密さと同様、彼は後者の代言人になったのだ」と述べています。

     民主党の支持基盤である製造業労働者は、グローバリズムから利益を得られないばかりか、損害を被っています。オハイオ州は、米国の重要な鉄鋼と自動車業界の集まっているところで、労働者は十年一日、民主党を支持していましたが、オバマ政府に捨てられました。左派メディアは、容赦なく彼らを嘲笑い、グローバリズムの落伍者の遅れた連中だと書き立て、2016年、大多数はトランプ支持に変わりました。それは、トランプが「仕事と製造業を米国に戻し。再び米国を偉大にする」と言ったからです。いわゆる「動揺する州」では、フーヤオ・グラス・アメリカのあるアイオワは、トランプに傾き、2016年の米国大統領選挙の重要な風向計でした。
     

     トランプ大統領は、公約の「製造業をアメリカに復帰させる」を実現しました。3年来、米国製造業の就業機会は増え続けており、フーヤオ・グラス・アメリカのあるアイオワ州でもそうです。ただ、サラリーは以前のフォード社よりも低く、フーヤオ・グラス・アメリカの労働者たちは、フォード時代の時給29ドルの日々を懐かしんでいます。しかし、今や12.84ドルで我慢するしかないのです。

     映画「アメリカン・ファクトリー」にオバマが投資したのは、突然、彼が米国の製造業に関心を持ったからではありません。映画は、米国氏製造業の「水は流れ、花落ち、春は去りいく」事実を映し出しますが、その解釈は観客に任せています。それぞれが自分の経験と、米国と中国に対する理解に基づいて、様々なレベルで解釈出来ます。現在、米・中どちらの国の観衆も、口に出せない苦渋の思いはこうです。
     中国モデル(共産党資本主義)の血と汗の工場で人権も守られない状態は、東西から批判されており、中国の労働者は西側の福祉的資本主義の下で働く労働者に憧れています。しかし、その憧れの対象は、米国製造業の労働者ももはや取り戻せない過去の話なのです。

     西側の左派論客諸氏は、自分たちの国の高い福祉の資本主義が苦境に落ち込み、欧米の青年たちは、福祉が足りないとして社会主義に向かっています。米国民主党の20人の大統領候補者は、選挙民によりたくさんの福祉を先を争って約束しており、それが「真理」だとしています。米国メディアの関連論評は、出来るだけこの問題には触れないようにしています。その理由は、自分たちが堅持してきた「ポリティカル・コレクトネス」(政治的正義)を否定するわけにはいかないからです。(続く)

    原文は;何清涟专栏:共产党资本主义VS福利资本主义——《美国工厂》观后感(1)

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