• ★米労働者はなぜ組合を拒否したかー映画『アメリカンファクトリー』を見て⑵  2019年09月17日

    by  • September 27, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

    中両文収録「何清漣 2017中国」Amazonで発売。「2018」編集中;20152016Amazon改訳版を電子ブックで。Kindle Unlimited なら無料です
    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

     中国の労働環境の劣悪さは世界でも良く知られています。内外の労働運動家は、政府の介入を受けない労働組合が、問題解決の方法に違いないと思っています。しかし映画「アメリカンファクトリー」(Netflixで見られる)を見た中国の観客は、目から鱗が落ちる思いでしょう。

     米国に初めてやってきた中国企業が、米国の長い歴史で、闘争経験も豊富な、全米自動車労働者連合(UAW)を打ち負かしてしまったのです。これは中国政府にも大いに意外だったに違いありません。2000〜2006年、中国企業は、米国へ1360億米ドルの直接投資を行い、中国の外貨備蓄が急速に減少してしまい、中国政府は怒っていたその最中に、中国のガラス製品メーカー、福耀玻璃工業集団(フーヤオ・グラス)の曹徳旺会長は、「米国の投資環境は中国より優れている」と語ったものです。新華ネットは2016年6月に「曹徳旺は米国の労使関係の壁をどう越える?」という記事で、米国の労働組合が、「曹徳旺の輩」をコテンパンにしてしまうだろうと期待していたのですから。

     ★映画の残した疑問 — 労働組合は労働者の利益を代表するか?

     「アメリカンファクトリー」の話のテーマは、労働者 — 工場 — 労働組合の三者の間のゲームです。少なからぬ米国の労働者は、フーヤオ・アメリカ社の労働者の待遇と労働環境に不満でした。UAW側は、フーヤオアメリカ社の工場に労組を作ろうとして、活動を行い、以前の労働組合メンバーが現在の組合のメンバーに対して、自らの経験を語り、利点を説きました。オハイオ州の政治家もこの討論に加わり、労組設立支持や反対意見を述べました。UAWは、地の利と「ポリティカル・コレクトネス」の有利さを持っていました。

     しかし、フーヤオは東洋流と西洋流の手段を併用して、スパイを相手陣営に送り込み、米国の反労働組合コンサルタントを読んで、労働者に組合がない有利さを説き、最後には米国労使関係監察委員会の監督の下で投票を行った結果、868票対444票でUAW側が敗北しました。

     ★映画は、労組の「米国病」を語らず

     「アメリカンファクトリー」は、米国の労働者が組合を拒否した重大問題を扱ってますが、米国の労働組合の「米国病」には触れていません。

     (1)米国労働組合の腐敗ぶり

     左翼諸氏は、現実を見ようとしません。労働者が組合に反対する原因の一つは労働組合の腐敗なのです。2017年11月9日、フーヤオ・アメリカ社は投票を行いました。しかし、これに先立つ11月2日に、デトロイト新聞は、UAWにまつわる汚職の最新ニュースを報道し、UAWの役員3名とフォード・クライスラーの職員との経済腐敗行為についての調査が、ゼネラル・モータースの重役メンバーに広がり、デトロイトの御三家の自動車会社が共同で、UAWのトレーニングセンターに出資していたと報道しました。これは、タイミング的にもフーヤオ・アメリカ社に大変有利に働きました。11月6日に、劉道川社長は、この報道を引用して労働者に対して、「UAWといかなる関係も持つべきではない。今週の選挙でUAWに強く反対する」と言いました。これは映画に出て来ます。 

     労組の腐敗はこれだけではありません。米国労組に関しての専門貴社のロバート・フィッチが2006年に出した「腐敗がいかに労組運動を傷つけたか」は、その中で、20世紀の初めからずっと労組活動にまつわる詐欺、反対派への虐待、賄賂、内輪揉め、就職機会の売り渡し、ギャングの跳梁、福祉基金の盗用などの多くの例を列挙して、痛烈に米国労組の腐敗を批判しています。

     フィッチは、米国の労組は大規模な闘争を組織する能力に欠け、労働者階級の中で役立つ働きを担えず、労組自体が、腐敗、分裂、軟弱という三大症状を呈しており、これが労働者活動分子のいう「米国病」だと述べています。その第三部では、「腐敗した労組の現状調査」でニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスなどの大都市の労組腐敗状況を描き出しています。例えば、シカゴではギャングが労組連合を牛耳り、1957年米国のトップ級のギャングのボスがニューヨークに会した際、そのうちの22人は労組のトップでした。

     Knights of Labor、「米労働総同盟・産別会議(World Confederation of Labour・AFL―CIO)」労連、Change to Winなどは、すべて労組の連合会で、その下に2万以上の相対的に独立した経費と活動を行う地方の労組があります。多くの地方の労組の前身は同業組合のようなもので、多かれ少なかれギャング世界とつなありがあり、会員が治める会費は、保護費の性格を持ちます。

     労働組合職員が職業化してからは、その給与は労組が出すようになり、企業経営者からではありません。労組専従の職員の腐敗問題は当たり前になっており、深刻です。労組腐敗は疑いもなく米国の労組の衰亡の主要原因でしたが、しかし、オバマ前大統領は労働組合の友でしたから、当然、この問題は深く追求されませんでした。

     (2)米国労組は、一体誰の利益を代表しているのか?

     伝統的な労働運動理論から言えば、労組は底辺の広大な労働者を代表して、資本家側と争う組織です。しかし、今の米国では、労組が、ただ自分たちはそうなんだと自称しているだけです。まず、労働組合んの組織率が、ますます低くなっています。

     1950年代中期が、米国労組の最盛期でした。1955年、二つの第労組が合併してAFL―CIOは1600万人の会員と、米国労働者の3分の1を労組員にしており、そのうち4割が私企業の労働者でした。これが頂点でした。1970年代から、労働者の組合員数と組織率はどちらも下降し始めました。米国労働省の「労働組合員2018」によると、2018年、米国労働組合の組織率は10.5%、2017年にくらべて0.2%減です。1983年の労組組織率の20.1%の半分。1945年の3分の1にもなりません。

     第二に、労組員の大多数が、納税者が養う公務員労働者です。米国労働省のデータでは、労組メンバーの33%が政府職員、教師、消防署員らを含む公務員で、私企業の組合員は6.7%。このデータは、ブルーカラー労働者の凋落とホワイトカラーが米国労組の主流になっていることを示しており、この特徴が米国労組の圧力の向かう方向を決定しています。

     今の米国の労組には、労働時間の延長や、労働条件の悪化、賃金の低下、資本の海外逃避などに逆らえる力はありません。飲食業やアパレル産業、雑貨、ホテル業界、食肉業界などの労働者の賃金は、法定最低賃金のボーダーライン上をさまよっています。これに対して、労組メンバーが集中している公共部門や大企業の労組員の給与と福祉は、大幅に米国の勤め人の平均水準を上回っています。しかし、労組はその力を使って更に好待遇を要求しており、社会世論から強く批判されています。

     近年来、米国の多くの政治評論家は、労組がワシントン利益集団クラブの重要なメンバーだと分析しています。「責任ある政治のためのセンター」(Center for Responsive Politics)は、プロのロビイストの議会への提案リストを毎年更新して、ロビイング費用の合計番付リストを公表しています。その「ランクリスト1998〜2019」によると、労働組合は12番目にランクインしています。「フォーチュン」誌のここ数年の、「25の最強ロビイスト」ではAFL―CIO、全国教育労組、米国州郡市政府職員労組、トラック運転手兄弟会がそこにランクインしています。このうち二つは公務員労組です。この20年来、米国の各級政府職員は、雪だるまのように膨れ上がって、政府支出は制御不能ですが、それには公務員労組が大きな働きをしたというそしりは免れません。

     米国労組が、メンバーの既得権擁護のために経済発展にマイナス効果を与えても、納税者に余計な負担を敷いても構わないということから、労組大貴族、資本大貴族と同様に、一般のイメージは極めて悪いのです。フーヤオ・アメリカ社でUAWが受け入れられなかったのは、その歴史的”業績”にも関わりがあります。2009年、ゼネラルモータズは、労組の求める高給与と高福祉(時給と福祉費用は70ドルに達した)ことで、競争力を失い、破産申請し、米国政府は、納税者のお金で緊急援助にのりださざるを得ず、UAWは国民的批判を浴びました。

     ★労組の米国病は、反労組コンサルタント業を生み出した

     多くの研究者は、労組の栄光が突然消えてしまったのは、米国特有の現象だとみています。そして、その重大な原因は、労組が政治分野やより広範な範囲で影響力を発揮できなかったことだとしています。これはやや偏った見方です。というのは、米国労組は早くから自分たちを民主党と一蓮托生で、毎度の選挙(地方から大統領選挙まで)、いつも民主党候補者に大量の献金をし、組合員は皆、民主党に投票しました。

     この状況は、2016年になってやっと変わり、労組の役員は依然として民主党に投票しましたが、少なからぬ労働者がトランプに投票し、オハイオ州もそうでした。労働者が労組のいいなりにオバマに投票していた時には、米メディアは、弱者の代表であり弱者の希望だ、などと書き立てました。しかし、2016年の大統領選挙では、米国メディアは労働者を「トランプ支持者のブルーカラーは、学歴のないグローバリズムの敗者」だといい、ヒラリーにいたっては「かわいそうな人たち」とさえ言ったものです。ある研究者は、とっくに、北欧各国の労組は、賢くも政府と協力していることを、指摘しています。

     労組の米国病は、「反労組コンサルタント」という職業まで生み出しました。労組の存在を望まない企業は、よくこうした会社を使って、労組員に対する講座を開き、労組がない方が良いケースを分析して、個人と労使の福祉や待遇改善を図れるようにします。

     「アメリカンファクトリー」では、フーヤオ・アメリカ社は、100万ドルを投じて、オクラホマ州のブロッケンアローにある「労組回避」で有名な労使関係研究所のLRIサービス社を招きました。新興のハイテク企業などでは、従業員はこうした個人と会社の交渉の方に慣れています。

     今の米国では、労働運動も集団交渉と集団労働関係法は一緒に没落したのは争えない事実です。米国の外部ウォッチャーは、ハイテクの進歩、経済構造モデル転換、グローバリズムの三大要素を、西側国家の労働組合の没落に結びつけるのがお好みです。しかし、実はそれは、本当の原因とはかけ離れています。

    ここでは「アメリカンファクトリー」の中ででてきた米国労組の「アメリカ病」に限ったお話をしました。米国の労働組合研究は、もっと大変深く、広い内容に関わっています。(終わり)

     原文は;何清涟专栏:美国工人为何拒绝工会——《美国工厂》观后感(2)
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