• 程暁農★米・中交渉再起動の意味するところとは?★ 2019年10月15日

    by  • October 15, 2019 • Uncategorized, 日文文章 • 0 Comments

    中両文収録「何清漣 2017中国」Amazonで発売。「2018」編集中;20152016Amazon改訳版を電子ブックで。Kindle Unlimited なら無料です
    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

     米・中経済貿易交渉は10月11日に終わった。今回の協議再開と「第1段階の通商合意」とは何を意味するか? なぜ、中国は交渉のテーブルに戻ったのか?両国間のこの二年間の摩擦の大波と衝突は一段落したのか? この三つの問題の分析から、両国関係の未来を占う。

     (1)米・中交渉の「第一段階通称合意」

     10月11日、米・中経済貿易交渉が終わって、中国の劉鶴副総理はトランプ大統領との会見で、習近平の親書を手渡した。習近平はその中で、「双方が互いに一致した原則と方向で行動することを希望し、共に中国とアメリカの関係を前向きに発展させたい」と述べた。トランプ大統領は、劉鶴に「長い時間を費してやっとこの一歩まで来た。これは中国と米国にとっていいことだ。大変感激しており、習近平主席に大変感謝している」と述べた。

     米国側によれば、この交渉で双方が達成した「第一段階」協議は、本文が数週間以内に同意してサインされた後、次の交渉が始まるという。これは、この5月に中国側が交渉を中断させて以来、双方が初めて達成した初歩的な協議だ。

     この協議では、中国が400億〜500億米ドルの米国農産物を購入し、同時に、中国側は、米国企業に対しての数々の制限を廃止し、最大に金融業による投資を解放する。この他、中国が外為市場の透明度と人民元レート操作への干渉をやめると約束。双方は、強制的技術移転についての交渉を行い、すみやかな進展を期待する。米国側は、10月15日に予定していた中国商品に対する関税値上げを、暫時取りやめる、だった。

     この「第一段階」協議の最重要内容は、中国側が、米国の農産物の購入量を倍にする用意があるとしたことだ。交渉後の記者会見で質問された劉鶴代表は、はっきりと、中国は数週間以内に2000万トンの米国大豆の購入を発注すると述べた。これは購入の前約束だ。

     2017年、中国の購入した米国農産物は242億米ドルで、6割が大豆などの油類、その他は肉類、綿花、穀物(とうもろこしと穀物粕)だった。2018年には米・中貿易摩擦によって、中国の購入は3分の1に減って、わずか160億ドルになった。2017年の中国の大豆の総輸入量の29%は米国からで、3285万トンだった。同年の米国の大豆輸出量は5300万トン。つまり対中輸出が約6割だった。

     今回、中国は、今後、毎年、最高だった2017年の農産物購入額の2倍を買うと決定した。もしその購入品目の金額が変わらないとしたならば、米国の農業州が他の国に輸出するのをやめて、もっぱら中国にだけ輸出したとしても、中国の大豆需要を賄うことは出来ない。だから農業州は、大豆の作付けを増やして、4分の1以上輸出量を増加させないと、中国の需要に応じ切れないのだ。明らかに、これは2016年の大統領選挙でトランプを支持した農業州にとっては、現地農業の繁栄を推進するプレゼント目録であり、トランプがこうした州で、来年の大統領選挙で引き続き支持される基礎固めになる。

    (2)「一括交渉」と「二段階交渉」

     10月の交渉前、米側は、ずっと貿易赤字問題と知的財産権侵害問題を「一括交渉」する立場を堅持してきた。理由は、交渉内容と密接な関係がある。知的財産権侵害問題は今回の交渉の革新的な問題だが、米国では、こうした問題は司法権の問題だ。つまり盗用、偽物などが米国市場に入ってくることは、知的財産権の商法に属し、知的財産権の窃盗は刑法の範囲となる。で、民法だろうが刑法だろうが、これは独立した司法部門が処理することで、行政当局が両国間で交渉してどうこうは出来ない。

     知的財産権窃盗問題では、行政当局の下にある連邦調査局が調査し、証拠を収集し、容疑者を逮捕することも出来るが、最終判断は裁判所が決める。中国側からいえば、個人や企業が米国でコピー商品を売るのは、実際は政策の許すところで、知的財産権窃盗活動ともなれば政策と関連するものだ。しかし、米国の司法当局は、知的財産権の窃盗問題を外交交渉にするのは許さない。そして中国側は、最初からから知的財産権窃盗が政策だなどとは、決して認めていない。

     こうした状況の下で、知的財産権侵害問題の交渉では、実は最初から米国側は有効なプレッシャーをかける方法がないのだ。そして中国側はそれを十分に承知しており、「内政問題」「主権」をタテにして深く討論するのを拒否している。だから、米国側は、知的財産権問題が、直接有効な交渉方法がないばかりか、有効な拘束も出来ない。ならば有効な制裁手段となれば、関税値上げというのが使える手段となる。別の言い方をすれば、知的財産権問題は直接話し合えないとなれば、貿易赤字と知的財産権侵害という二つの問題を一緒にして、関税を制裁のプレッシャーの手段として、中国側に自主的に知的財産権侵害行為を制限させたいのだ。これが「一括交渉」を主張する理由である。

     しかし、中国側が、米国との交渉の行き詰まり状態をなんとかしようとする策略は、「一括交渉」を阻止し、いわゆる「2本レール」で交渉しようとういうもの。つまり貿易赤字問題と知的財産権侵害問題を切り離して、前者はなるべく論じないで、後者を段階的に進めようということだ。最後に、この「2本レール」の考え方は、現在の「二段階交渉」となった。

     第一段階の重点は、貿易赤字問題の解決で、第二段階が知的財産権問題で意見の交換を続けるだ、。「2本レール」の考え方が求めるのは、現在の経済利益で、大量の米国農業産品を輸入する代わりに、米国に関税の値上げをやめさせ、米国が次第に関税を値上げして中国経済へのさらなる打撃を回避しようというもの。米国側にいわせれば、段階的な交渉は少なくとも、膠着状態から抜け出し、米国の農業にも結構なことなので、一つの選択ではある。

    (3)5月から8月に、北京は「時を待つ」作戦から「変化を促す」に

     この10月交渉の最大の特徴は、中国側が対立する立場をやめて、交渉のテーブルに戻ったことだ。米国からすれば、これは当然歓迎だ。では、なぜ、中共はこの5月の「ちゃぶ台返しの交渉中断」後の米国との対抗意識から、180度の転換を行って、「行き詰まりにしてしまう」から「行き詰まり打破」に変わったのか? 最初に述べた習近平からトランプ大統領への手紙を見ると、まるでどちらも、この間に、不愉快な対立など全くなかったようだ。しかし、事実は違う。この数カ月間に北京の対米政策は、対立から積極的にこう着状態を解決する方向へ大きな転換があったのだ。

     去年の米・中交渉の前期に、米側は、もし交渉が進展しなければ、今年1月1日から関税アップだとした。その後、双方が知的財産権問題で、進展があったとして関税は据え置かれた。明らかに米側は知的財産権問題で合意を達成したかったのであって、必ずしも関税値上げ措置をしたかったわけではなかった。

     今年の5月、双方が「一括方式」で各問題で基本的に合意を達成し、のちに米側が明らかにしたように、協議の文章の句読点まで打ち終わって、サインするだけだった。まさにこの時にあって、中国側は、100歩中99歩まで来ていた過程を、全部ひっくり返して、自分たちが交渉してきた成果に対するサインを拒絶したのだった。そこで、米側は一部の関税を値上げして報復したのだった。

     7月6日、中共の宣伝メディアの「多維ニュースネット」は、はっきりと「米・中共通認識の小舟は、すぐひっくり返る。ただ今回小舟をひっくり返したのは中国かもしれない」と書きいた。翌日には「米国の農民はトランプの重要な票田だとみなされている。トランプは2016年の大統領選挙で、農業大州の選挙情勢がキーとなった。現在トランプは6月19日に正式に2020年の大統領選挙に出馬すると行っている。農業経済がめちゃめちゃな状態ならば、2020年の選挙事情に影響を及ぼすだろう」と言った。

     これは、7月段階では、北京は交渉を継続するつもりがなかっただけでなく、米国農産物の対中輸出を遮断するために、自分から課税して、トランプに打撃を与えることまで考えて、米中経済対立の思想と世論操作を準備していたのだ。7月9日の多維ニュースネットは、さらに一歩進めて「今や、誰も、地球上最大の二つの国家の間の矛盾が一朝一夕に解決するなんておもっていない。それどころか”新冷戦”の匂いを嗅ぎつける人もいる」と書いた。

     私は8月26日に、★米中関係の危機は何を表すのか — 米中関係暗転の分析(1) 2019年8月26日 
    「★米中関係の危機は何を表すのか — 米中関係暗転の分析(2) 2019年8月27日

     を書いた。そこで、「中国がこの5月に「ちゃぶ台返し」で、去年9月からの交渉の内容を全てオジャンなった。これに対して、米国は、部分的に関税を上げる一方で、引き続き中国に交渉のテーブルに戻るようにとの意思を表明してきた。もし、中共が、ただ時間稼ぎであれこれ言うだけならば、米・中関係は、うまくはいかないとしても、今日のように大幅に悪化はしなかった。しかし、北京は明らかに、『忍耐』を無駄遣いする気はなく、二日前に自ら対米製品に関税を発動したのは、攻撃姿勢だ。

     はっきり分かることがある。もし、トランプ政権が、小幅の関税値上げだけで、中共がそれに歩調をあわせて行ったならば、中共の「引き伸ばし策」は、中共を「長い痛み」で苦しめ、トランプ大統領は無傷で、選挙でもより強固になったかもしれない。

     しかし、一旦、中共が「打って出て変化させる」となって、米国にある程度の「短期的な苦痛」を与える戦略をとったとなれば、少なくともトランプ大統領の経済面の政治的実績を傷つけ、選挙区を揺るがせ、米政局を中共に有利に傾かせる方に誘導出来る。

     しかし、一旦、中共が「打って出て変化させる」となって、米国にある程度の「短期的な苦痛」を与える戦略をとったとなれば、少なくともトランプ大統領の経済面の政治的実績を傷つけ、選挙区を揺るがせ、米政局を中共に有利に傾かせる方に誘導出来る。

     一旦、北京が突然の攻撃をかけたら、トランプが全面的に関税値上げに踏み切ることは明らかだ。というのは、米国は、すでに北京が5月に「ちゃぶ台返し」の挙に出たことで、友好的な双方の折衝を通じて、問題解決する余地を失っているからだ。

     (4)10月に北京はなぜ、180度態度を変えたのか?

     北京の対米戦略の転換は非常に早かった。8月には「攻撃して変化を促す」(訳注;トランプ支持の農業州の大豆や豚肉を買わない)だったのが、10月初めには、突然米国に対する抵抗路線を放棄し、突然、硬直状態の打破に動いた。この転換点は、おおむね9月末だった。

     というのは、9月25日、多維ニュースネットはまだ「今、中・米が話し合う必要があるのはコントロールするためであって、協議するためではない。いかなる国際競技も違反することがある。いわゆる”契約精神”とは過去何千年以上も、未来だって相当長い時間”理想状態”のことだ。これは一国内の協議は国家政府が公証、監督するからである。しかし、国際契約規則には公証、監督する方法はなく、国連や国際法廷は執行能力のない組織で、今日の時勢では、ただ強国の道具にすぎない」と書いた。

     これは赤裸々に、北京はこれまでもいかなる国際条約(海洋法条約、知的財産権公約)や国家間の競技の束縛を守ろうとはしないし、国家間の協議の拘束を受けないということを暗に示しており、重い圧力の下にあってのみ、交渉のテーブルに座るということだ。

     ならば、今回、どんな圧力が北京に、対トランプ農業州票田に対する攻撃を放棄し、初志に反して、トランプの農業州の票田を強化するのを助けるに至ったのか? もちろん北京は説明はしない。しかし、分析には値するし、ここでは二つ挙げておこう。

     第一;中国経済は最近、一連の下落の兆候が絶えない。8月の全国工場の輸出納品値はマイナスだっただけでなく、9月の外貨準備高も下降し始めたし、その上、製造業も不況入り、消費も不振で、今後、必然的に失業が増えるし、財政収入は減理、外貨もきつくなるなどの問題がある。しかし、こうした問題は、もう効果がすぐに表れるるような対症療法はない。

     こうした状況の下で、対米輸出をなんとかするのは、やむをえない選択だ。そして、それを実現するには対米関係を改善するのが、第一だ。中国の世界の大部分の国々への輸出は、所詮はそれらの国々からの輸入と大体同じで、対米輸出だけが、中国が毎年何千億ドルもかせげる源なのだ。

     更に中共を心配させているのは、米国はまだ関税を完全に実施していないし、現在の税率もそんなに高くはないが、しかし、米国の企業からの大量の発注書は、「世界の工場」(中国)から、その他の国々に移りつつあり、外国企業の大群は、いまや別の国々に供給チェーンを作り始めている。一旦こうした計画が完成してしまったら、米国市場は「絵に描いた餅」になってしまう。だから、今この時に、米国との緊張を緩和するのは、必要なばかりか出来るだけ早くやらないと、間に合わない。

     第二;最近の米国の政治状況に、北京はガッカリした。民主党の大統領候補の1人、バイデンの一家はスキャンダルが相次ぎ(訳注;バイデンの息子がウクライナや中国で不正な所得をあげていたというニュースなど)、北京はこの中国の「老朋友」が当選するとは思えなくなってきた。もしトランプ大統領が倒れないなら、北京はいつまでもトランプに逆らうよりは、来年の大統領選挙の前に握手してしまったほうがよいと思ったのだ。というのは、トランプ大統領は、もし自分が再選されたなら、北京に対してもっと厳しい要求を突きつけてやる、と公言しているのだから。

     北京のこの対米戦略の180度転換は突然のようだが、ちゃんと理由がある。この短期間の抵抗姿勢から、一気にジャンプして握手してしまうということから、当然分かることだが、今後の米中関係は、本当に誠実な約束の上になど築かれることはない。全てはその時々の利害得失によるのだ。米・中間の第二段階の知的財産権を中心とする交渉も、おそらくあまり楽観は出来ないだろう、ということだ。(終わり)

     原文は;中美谈判重启意味着什么?

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