• 程暁農★中共の金融開放は、「ホテル・カリフォルニア」 2019年10月25日

    by  • October 28, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

    中両文収録「何清漣 2017中国」Amazonで発売。「2018」編集中;20152016Amazon改訳版を電子ブックで。Kindle Unlimited なら無料です
    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

     中国経済の不振は、ますますはっきりしてきた。昔の経済繁栄は、もう歴史となり、苦境はどうしようもない現実だといえよう。ここ数年来、経済下降を緩和しようと、中共は、あの手この手で大量に通貨を投入し、成長刺激を試みたが、効果は微々たるものだった。最近では、政府メディアすら「2018年下半期以来の十数兆元の人民元による経済刺激政策は、強心剤を注射するように中国の経済的活力を呼び覚ますことは出来なかった。せいぜい経済下降をちょっと緩めた程度だ」と認めている。

     比喩的に言えば、状況は、病勢の重篤な病人に、医者は不断に「強心剤」を注射し、ちょっとの間、病人を元気にしておくしか手がないようなものだ。もはや、すぐに即効性ある特効薬はないも同様なのだ。

     「強心剤」を多用しすぎると、病人は衰弱する。所詮、強心剤は救急効果しかなく、病巣を取り除くことは出来ない。10月10日に、「大紀元」に「★中国経済は「ぎっこんばったん」時代へ。深まる苦境 2019年10月10日」
     通常、経済困難に遭遇した当局は、十分に気をつけて、病人が耐えられないような「劇薬」の使用は避けるべきだ。しかし、最近の中共は、全く反対で、外国金融機関に金融業開放を決めた。この決定は、中国の脆弱な金融システム構造に明らかに衝撃的だ。

     10月中旬、李克强首相は、外資銀行の参入を加速、緩和させる国務院令に署名し、業務範囲制限を撤廃することにした。政府メディアも「これは、中国経済の、再度の新たなる冒険である」と認めている。

     金融業界の開放は、中共が2001年に世界貿易機関(WTO)加入時に行った多くの約束のうちの一つだが、長年、中共は、約束を果たすのを拒んできた。なぜ経済繁栄時に、中共が固く拒絶した外国金融機関への開放を、今、この苦境で、あえて危険を犯してまで行うのか?

     これを理解するには、まず、中共が過去に、なぜ金融開放の約束を拒否してきたかと、現在、何が中共をそうさせざるを得ないかを見なければならない。

     ★金融開放への波の20年

    2001年、中国がWTOに加入したばかりの時、元々は数年内に金融開放を行うと言ってたが、実際はこの「数年内」は、20年近く経ってから、ようやく実行に移されようとしている。なぜ、中共は長期にわたって、やらなかったのか?

     根本的な原因は、中国の銀行業は計画経済の束縛を受けており、計画部門の「お財布」だったから、通常の商業銀行の運営方式にモデルチェンジ出来なかったのだ。いわゆる商業銀行の運営は、主に大衆の預金を資金として、銀行は借り手の借金を運用するので、当然、貸すときは慎重に相手を調べる。いったん貸し倒れになったら、抵当を差し押さえ、銀行預金者の貴重な預金を守らねばならない。しかし、中共の銀行システムは、長い間ずっと官業官営だったので、上の命令通り貸し出すために、本当の銀行ルールにそってなど運営出来ないのだ。

     改革前の毛沢東時代には、中共の経済コントロールは、計画経済モデルで、財政部門に、全国の預金が集中しており、国家計画委員会が用途を指定し、分配していた。銀行は財政資金の収支や、口座間の振替以外に、ごく少量の住民の預金と、企業の流動資金しか貸せなかったし、その用途も国有企業の短期流動資金の需要に限られていた。経済改革が始まった1980年代、財政支配の資金量がはっきり減少し、住民収入が高まり、耐久消費財購入のための貯蓄が大幅に増え、銀行資金の元となる資金の源は、ますます国民の貯蓄に変わっていった。

     しかし、資金源が変わっても、銀行の管理方式は変わらなかった。というのは、経済を握る国家計画委員会は、収支、計画経済時代の古い考え方を引きずっており、国民の貯蓄はあてにならない、いつでも引き出されると思っていて、一旦大量に引き出されたら物価を直撃しかねないと思っていたからだ。銀行の貯蓄というのは「檻の中のトラ」出会って、極力「檻から出さないように」しなければならないと思っていたのだ。

     同時に、国家計画委員会は、自分たちが支配する銀行資金の運用方は、固く守っていた。1990年代になって、国有企業の全面的な損害がますます深刻になって、金融システムの4大銀行(工商、中国、建設、農業)は、国営企業の輸血の命令を承って、「安定団結」ために貸し出しを続け、最後には国営企業の衰退は、銀行の不良貸付を激増させ、ほとんど金融システムの破綻寸前まで行ってしまった。

     中国がWTOに加入し、外国企業が中国にどっと押し寄せたとき、中国の銀行はまさに国営企業の大量破産の巻き添えを食って、貸し出し金はジャブジャブの無駄遣いで困っていた。中共は当然、外国銀行に国内経営を許すわけにはいかなかった。国有銀行の破産は必至だったからだ。そこで当局は、金融開放の閂をしっかりかけて、外国銀行を締め出した。

     しかし、2005年に中国経済が「資金不足」に陥ったときに、緊迫した情勢の下で、当局は金融の正門を開けることにした。2006年にいは、外国銀行の進出を許し、香港上海銀行(HSBC)、JPモルガン、友利(ウリィ)銀行、ドイツ銀行などが次々に進出し、支店を開設した。しかし、物事は分からないもので、2008年にリーマンショックによる国際金融危機が勃発し、その影響の波及を恐れ、再び、開いた正門を閉じて、金融危機の津波が中国に押し寄せるのを防ぎにかかった。

     ★繁栄の過ぎ去った後の、金融界の憂鬱

     2008年以後、中共は土地財政と通貨の超過発行で経済発展を刺激する道を歩んだ。2009年の中国の通貨供給量の指標M2(現金通貨と預金通貨と準通貨の合計)はGDP比で170%に達した。2015年から今年の第3四半期までの広義の通貨は、連続5年にわたってGDPの倍以上だ。経済の表面的な繁栄の下で、主に何年も対米貿易の黒字で毎年数千億ドルも入ってきた蓄積によって、中国の外貨準備高は、一度は2014年6月には4兆ドルに接近した。国内の人民元資金は過剰となり、対外的には外貨準備高が十分余裕が出来たので、中共は当然、もう対外金融開放など考えなくなった。

     しかし、この「栄華」ははかないもので、中共の金融は面倒なことになった。国内銀行が、不動産産購入に熱中し、不動産バブルがますます膨み、爆発寸前に至った。経済は下降し始め、貨幣の超過発行によって牽引されてきた経済発展の道は、ついにどん詰まりにきてしまったのだ。不動産賃貸料は天井知らずで、資金は空転し、金融投機が大流行で、中国経済は、「実を離れて虚に集中」という捻じ曲がった段階に入った。

     2017年以来、経済が下り坂になったことから、生産拡大の余地が見出せなくなって実体産業の未来が暗くなると、銀行は不動産に貸し出しする以外なく、また信用出来そうな企業も見つけ出せなくなってしまった。「お金はだぶついているが、動かない」状態、つまり優良な借り手がいなくなったのだ。

     2018年には、山のようなデフォルト(債務不履行)、生産能力過剰、借金過多による企業破産が起こり、まともに地道な経営をつづけてきた中小企業の生存環境も日増しに悪化した。企業は、大量の資金を借りようとはしなくなった。以前は、銀行は地方政府のインフラ建設プロジェクトには、極めて意欲的だったが、今では高リターンの期待できるプロジェクトはいくつもない。残ったのは全てハイリスク、ローリターンのプロジェクトばかりで、地方政府に融資するのは、お金の無駄なのだ。

     そこで、中央銀行は不断に「放水」し続けるのだが、企業は借りようとしないし、銀行もあえて貸そうとしない局面となって、その結果は、巨額に資金が金融機関の中で山積みだ。

     この2年間、銀行業が融資によって生み出す資産の速度は、過去の約15%から8%になった。中央銀行が、商業銀行に「放水」する資金の大半は銀行にあり、中央銀行の資金の蛇口は、時には逆流する始末だ。つまり中央銀行からの商業銀行への融資は、増えるどころか下がってしまい、今年の9月末には去年末より4.2%減となったのだ。資金過剰で、経済が下り坂の状況で、この時期に、中国は本当に、外国金融機関に投資によって、お金を来て欲しいのだろうか? 明らかに違う。つまり、今、中共の金融業開放には、別の意図があるのだ。

     ★金融開放で外貨準備救援?

     外国の金融機関が中国に投資すると、二つの結果が生まれる。その一つは、外為資金を人民元に交換して、中国の運営に使える。その二つ目は、中国の金融業が人民元資金を放出することができる。しかし、前述の通り、中国は今や、人民元資金は過剰で、外資がもたらす人民元資金は必要としていない。ならば、中共の対外金融開放は、何のためなのだろう? 中共が、重視しているのは外為そのもので、その理由は外貨備蓄が切迫しているのだ。

     中共の外貨準備高は、かつて4兆米ドル近くもあった。しかし、2014年6月の最高記録だったのが、今では、その4分の1は減ってしまい、3兆ドル前後しかなく、それもまだ減り続けている。ちょっと目には、それでも3兆ドルの外貨準備というのは莫大な数字であって、それだけ沢山あれば、外貨不足などという局面が出現するなどということがあるだろうか?

     答えは、「ある」なのだ。というのは3兆ドルのうちまず2兆ドルは短期外債で、こうした短期外債は期日が来たら直ちに償還されねばならない。その他に、外国企業の対中国投資も6千億ドル近くある。しかし、米・中貿易交渉が一年以上続いていて、多くの外国企業が続々と資本を引き上げている。彼らの資本の引き揚げと利潤の送金額は巨額の支出となり、対外開放金融の状況では、当局はこうした支出を止めるわけにはいかない。

     それなのに、中共が長年、外貨保有高を補充する頼みの綱の米国からの数千億ドルに上る貿易黒字による外貨収入の道は絶たれてしまった。今後、毎年輸入する石油、食料、製造業の部品などの経済必需品の外貨支出は、すみやかに外貨の残高数千万ドルを使わせることになる。だから、中共の「衣服の襟を合わせるとひじが袖から出てしまう」状態になっているのだ。

     まさにこれが理由となって、中共はこの度、外資に金融業界を開放したのだ。中国投資をのぞむ外国資本の金融機構のエネルギーが、欠乏する外貨をどんどん送ってくれて、焦眉の急を救ってくれるように、また長期的な欠乏の憂いを無くしてくれるように、と。

     しかし、グローバル金融業の動きには、一つ共通した特徴がある。それは「錦に花を添える」のは得意だが「雪中、炭を送る」(困った時に助ける)ことはしないのだ。「錦に花」は企業経営が順調なときに、融資してくれることだ。しかし、「雪中、炭を送る」のは義挙である。金融機関がしたがらない理由は簡単で、彼らは顧客のお金を使って経営しているのであって、自分たちのお金ではないからだ。もし、お客のお金で、「犬に肉饅頭をぶつける」ようなことをしたら、どうにも言い訳できないのだ。

     10月に、金融業対外開放を宣言する前、9月に中共は海外機関の中国株式や債券への投資制限を取り消すと宣言した。しかしこの9月のニュースは一向に、ウォール街に中共が期待した反応を引き起こさなかった。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(9月12日)には、中国市場はもう海外投資家の「夢の地」(Field of Dreams)ではない、今は入ることは出来ても出ることは叶わない「ホテル・カリフォルニア」だと書いた。「ホテル・カリフォルニア」は1977年のイーグルスの大ヒット曲で、歌詞の最後は「You can check out anytime you like… but you can never leave」(いつでもチェックアウトできる、でも決してここから離れることは出来ない)。明らかにウォール街は、北京は外国投資を歓迎するが、安全にその金を持ち出せるかは、運次第だと気がついている。畢竟、中共の外貨は不足しているのだ。

     中国経済の下降ぶりから見ると、外貨不足の局面はますます深刻化するだろうし、「ホテル・カリフォルニア」状態は解消う出来そうにない。今回の、対外金融開放は、一見「改革」のようだが、今や中共の「改革」のスローガンは昔とは違い、もう目くるめくような光を放ってはいない。

     外資が重視するのは経済の真相であって、あいにく中共は真相暴露を恐れており、なんとしてでも経済の真相を、「包装紙」でくるんでいる。しかし、包装紙が多ければ多いほど、外資は警戒し、懸念はますます重くなる。

     今回の金融開放は北京の外貨備蓄を救うか?おそらく、またただの夢に終わるだろう。(終わり)

     原文は;程晓农:中共开放金融救经济?

    (訳者注;国務院は、2019 年 9 月 30 日付で『「中華人民共和国外資保険会社管理条例」及び「外資銀行管理条例」の改定に関する国務院の決定』(中華人民共和国国務院令第 720 号)を公布。保険業と銀行業に対する外資規制を緩和し、金融部門の対外開放の拡大を図るもので、9 月 30 日より実施)

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