• ★ドーバーの悲劇の再現。原因は「制度の利ザヤ」 2019年10月28日

    by  • October 29, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

     10月23日以来、英ロンドン近郊グレーズでトラックのコンテナから39人の凍死した遺体が発見された事件でもちきりです。最初は、全部中国人だと伝えられましたから、英国人は2000年にドーバーで起こった悲惨な事件を思い起こしました。今回の事件と驚くほどよくにていて、やはりアジアからの密航者でした。違いは、人数であの時は59人、今回は20人少ないのと、ドーバーでは暑さのために死亡、今回は凍死、です。(2000年のドーバー事件;。なお、日本では58人と報道されているが救助された2人のうち1人がのち死亡)

     コンテナの死者がどこの発展途上国から来ようと、彼らが命をかけて危険を冒して密入国しようとする原因は、西側福祉国家と自国の「制度の利ザヤ」です。この制度の「利ザヤ」こそが、無数の発展途上国の民衆を、西側国家に引き寄せているのです。

    ★グローバリズムが必然的に産む「利ザヤ取り」

     ドーバー港窒息死事件は2000年に起きました。中国が世界貿易組織(WTO)加入にまっしぐらで、当時のGDPは1.21兆米ドルで、世界第6位。貧しさから中国人は密入国を目指しました。2018年、中国のGDP総額は、13.61万兆米ドルに暴騰し、世界第二の経済体で、超億万長者の数は世界一で、政府は毎年、海外に数百億元の援助資金を出しているのに、中国人は、今尚、密入国を目指します。どうしてでしょうか?

     答えはただ一つ、中国人の密入国の目的は、両国の間に存在する「制度の利ザヤ」です。

     世界の国々は、先進国と発展途上国に分けられます。政治制度の違いや、経路依存問題(Path dependence=過去の歴史の轍から抜け出せない)が、社会の分配体制や福祉制度に大変な違いを及ぼします。両者の間には、極めて大きい制度的な差が生じます。これに加えて欧米では、人権問題が重視されますから、途上国からこうした先進国に来た移民や違法移民は、この分配体制に入ってしまえば、母国よりはるかに良い経済条件を得られます。これが中東やアフリカの難民が、万難を排して欧州に来ようとする理由であり、米国とメキシコ国境を越えようと、毎月10万人の違法移民がやってくる理由です。

     グローバリズムの開始以来、西側国家は違法移民に対して、人道主義的な原則を以って対応し、政策はますます手厚くなって来ました。才能と学習能力のある人の多くは、留学して学歴を得て、仕事を探し、現地社会に溶け込みました。同時に、西側社会の普遍的な価値観、人権の基準はますます高まり、一部の宗教には特別優遇の措置が政策的にとられ、客観的に見れば、「制度的利ザヤ」を求める日民や難民の数を、猛烈に増やすことを奨励したことになります。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、かってドイツがいかにして西側の先進国として完璧な国家であると褒め称えました。相対的に整った難民方、無料の宿舎、毎月352ユーロの生活費、無料の職業訓練と、訓練終了後の良い職業の保証です。

     メディアがよく報道した、シリアのグツヤの話は、西側の難民への極度の優遇がよくわかる例です。グツヤは膨大な家族を持っており、4人の妻と23人の子供がいました。子供のうち22人(女12、男10、1〜22歳)は、全員がドイツに来て、社会救済措置を受け、ドイツは法律に基づいて福祉費用を計算し、毎月この27人に対して1万ユーロ(120万円)を支給したのです。この種のすばらしい福祉補助金が、すなわち「制度の利ザヤ」です。

     米国のミネソタ州のイスラム女性議員のオルマは、一家全員が米国の福祉措置に頼っています。彼女はまさに大成功した「制度の利ザヤ取り人」です。大学教育を受け、米国政界に入り、米国の社会制度に対して、無制限の批判を行う権利を手に入れたのですから。

     ★福建省はなぜ、密入国者の本場になったか

    「八闽多山,地狭人稠」とは復権の経済地理条件を表した昔の言葉です。(訳注;闽は福建省。山が多く、土地が狭く、人口が多い)
    明清以来、外へ向かう移民が盛んで、台湾、南洋から世界各地には、皆、福建省移民の足跡があります。1840年代のアヘン戦争以後、「売猪子」(訳注;中国から米国に騙されて労働者として売られた人々)は、例えば米国西部の鉄道工夫として、奴隷労働者として海外に行きましたが、基本的には皆、福建、広東両省の人が中心でした。

     1970年代末期の中国改革開放以来、福建人は海外にツテを色々もっている有利さを生かして、合法、非合法の道を通じた海外移住ブームが起きました。現地政府すら違法移民とは怪しげな関係を結んでいました。厦門大学の庄国土教授の統計だと、1980年から2005年にかけては、20万人以上の福建長楽の人々が米国に移民し、その大部分は違法移民だったと言います。

     これも、当然、「制度の利ザヤ取り」です。改革開放が40余年を経た今も、この「制度の利ザヤ」は、依然として存在します。「南方周末」は2011年1月10日に掲載した「福建小村移民史 — 50年来、村民3千人以上が米国人になった」では、福建省長楽の曹朱村の村民の半世紀にわたる米国密航の話を紹介して、血涙と財産という、現代と同じお話を紹介しています。

     ;1960年代、第一陣の曹朱村出身者が、船から飛び降りて泳いで米国に入国した。35人だった。中国は当時、3年連続の大飢饉で逃げ出して、各種の政治運動も絶えなかった無茶苦茶な時代で、密航密入国が現実から逃れる一番の方法だった。改革開放後には、密航密入国の方法もやや変化し、「船からドボン」の危険を伴う方法から、観光旅行に変わった。「蛇頭」も「旅行顧問」と変わった。渡航者が十分な金を払うと、世界旅行に出て、まずナウルで国籍を購入し、シンガポール、フィリピン、デンマーク、チェコ、オランダを経て、最後にカナダから米国に入国する。半世紀にわたるリレー式移民で、本物の曹朱村村長は、すでに米国に移住しており、今、米国にいる村民は、もう3千人に上る。村民はニューヨークでなければ、ニューヨークの路上にいる。

     ;村の人々は海外からどんどん送ってくるお金を持って次々に村を離れ、近くの福州や長楽市に家を買って、安逸な生活を送りはじめた。この幸福の最終駅は13時間の時差のある都市、ニューヨークだ。死亡することもあるが、それは延々と途切れることのない移民の「代価」で、決して人々の歩みを止めはしない。先に米国に移民できた人々から聞く、伝説の「グリーンカード」、高収入、失業保険、低収入への救済措置、無料の医療、教育…村の人気が下がるにつれ、お金が逆に溜まっていった。

     村の老人や子供を守るために、村ではお金をあつめて、パトロールチームを作った。1人、毎月800元だ。村の立派さは、四川省から来た労働者たちを唖然とさせた。「以前、ドルが高かった頃に、麻雀卓の上には100ドル札ばかりだった」。村で老人が亡くなると、あらゆる葬儀参加者には、喪主から数百元の「ご祝儀」が渡された。村人は基本的に皆、「村の米国人」に養われていたのだ。どの家も、みなメイドを雇い、その給料は1800元前後だった。そして、村人はみなただ日向ぼっこして、英気を養って麻雀に励み、定期的に米国政府が彼らの孫に送ってくれる粉ミルクを受け取っていた。

     福建には似たような村がたくさんある。米国人になった村人が、海外からどっさりお金を送ってくるので、米国の議事堂のような建物をたて、村々の間でどこが一番立派かを競い合うのだった。

     ★西側の「制度の利ザヤ」はいつまでも続くのか?

     西側からお金を得るのは、こうした年月、あまりにも簡単でした。グローバリズムは、どんどんお金を送ってくれたのです。グロバーリズムが産んだ国際主義者は、自国の貧困と中産階級がますます衰えていくのには関心を持たず、中国の「洋留守児童」(訳注;両親が海外に出稼ぎに行っておいていかれた子供)に関心を示しました。福建省からの密入国者が中国において来た子供を送り返す際に、米国に戻れなくなることを心配してあげたのです。クリスチャン・サイエンス・モニター1月20日の記事では「中国某省への考察 — 如何にして大量の米国生まれの中国在住の子供たちを教育するか」は、2万人にのぼる米国国籍を持つ、中国の留守児童に関心を示しています。

     2015年の欧州の難民ブームを喜んで迎えたドイツのメルケル総理は「永遠にドイツを変えた」(訳注;ドイツ文化、人口、民族構成を変えた、でも人権が一番大事だから…と)と発言し、それ以後、多少風向きが変わりました。それでも世論はやはり同情と支持です。例えば、米国が今年、メキシコ国境で100万人の違法移民をシャットアウトした時、フランスのメディアは相変わらず、米国のこの行いを批判しました。フランスは、とっくに違法移民を歓迎しなくなっているのですが。さらにあるメディアは、難民が言う「メルケルママ」であろうと、ドイツはかつてのドイツではなく、現在、難民をなんとか母国に返そうとして懸命で、同時に受け入れた難民を養うのに必死だと報じました。

     本当の問題は中国にあるのです。20年前、中国経済の発展が始まった時、福建人は「制度差の利ザヤ」を求めて密航の冒険をしました。今や、中国は世界第二位の経済体ですが、福建人は、やはり密航密入国の「利ザヤ」を求める冒険に身を投じます。中国の肉食人たちは、考えてみるべきでしょう。中国には一体、何の問題があるのか?なぜ中国人はいつも他郷を目指すのかを。(終わり)

     原文は、何清涟:“多佛惨案”再现,只缘制度利差

    中両文収録「何清漣 2017中国」Amazonで発売。「2018」編集中;20152016Amazon改訳版を電子ブックで。Kindle Unlimited なら無料です
    何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

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